2011年3月11日、記録破りのマグニチュード9.0の大地震が東北地方を襲い、その後の大津波を伴って、死者と行方不明者を合わせ約3万人という第二次大戦後で最大の災害が起きた。亡くなった方々のご冥福をお祈りするとともに、被災者の方々に心よりお見舞いを申し上げ、その悲しみと苦しみに心を馳せるものである。
この地震の影響は実に広範囲の地域で感じられた。首都圏ではほとんどすべての交通機関が止まり、自宅に戻れない帰宅難民が出た。ターミナル駅では2万人を超える人々が足止めにあったようだ。大規模な停電や石油精製所の火災も起き、電力が我々の生活のあらゆる局面でいかに重要な働きをしているかという事を実感した。
これまで3回にわたって、自衛隊には必要な装備を調達する資金的余裕がなく、既存の装備の維持整備費にも事を欠いている現状を述べた。それは今回の大震災の現場でも露呈している。その原因は少なからず予算の使い方に問題がある。
装備調達や維持整備予算の執行を効率化すれば大幅に調達コストを下げることができる。また部隊規模も問題だ。現状は予算規模から見れば不可能な規模の部隊を無理して維持している。部隊の規模が大きければ、より多くの装備、より多くの整備・維持費、より多くの人員が必要だ。
自衛隊は“高い買い物”をしている
まず装備調達コストの問題を検証してみよう。よく知られているが、自衛隊の装備の単価は高い。
表1 G20参加国と監視の対象国(塗りつぶし)
G7
G7以外の国
国際機関
日本
中国
IMF
米国
インド
世界銀行
英国
ブラジル
など
ドイツ
ロシア
フランス
南アフリカ
イタリア
韓国
カナダ
オーストラリア
メキシコ
インドネシア
サウジアラビア
トルコ
アルゼンチン
EU
※太線内はBRICS
(出所)G20プレスリリースに基づき筆者作成
4月14〜15日に米国ワシントンでG20財務大臣・中央銀行総裁会議が開催された。
激震と津波に加えて、人災とも言える原発危機の発生は、出口が見えない未曾有の複合危機の様相を呈している。原発危機は、経済、社会の前提となる生命、安全を脅かす。さらに、原発危機がもたらす様々な不確実性の拡大が、経済の損失と落ち込みを助長する。その影響の規模を現段階で試算しても意味はない。
今、求められるのは、以下の二つだ。第1に、影響の最小化をどう図り、経済復興をどう進めるべきか。第2に、原発危機が明らかにしたエネルギー政策や組織ガバナンスの欠陥など経済・社会システム上の改革をどう進め、社会の再生と新たな持続的成長パスへの移行をどう図っていくか。ここでは、復興の政策課題に絞って考えてみたい
被害額の多寡よりも「不確実性」の波及が問題
まず被害の状況について見る。
政府が矢継ぎ早の金融支援に動く一方、被災地の地域金融機関の存在感が霞んでいる。被災企業に対する過去の不良債権が重く、追加融資には慎重にならざるを得ない。公的資金投入で、被災地の金融界全体が一時的に政府管理下となる可能性さえある。
「何とか復興資金にメドが立ちました」。東北地方のあるトヨタ自動車系ディーラー幹部は胸をなで下ろす。
このディーラーでは、東日本大震災で複数の販売店が被災。店舗復旧や販売車両の仕入れに多額の資金が必要だったが、いち早く手を差し伸べたのは取引先の地方銀行ではなく、トヨタ本体だった。震災を受け、ディーラーに資金を無利子ないし低利で融資する仕組みを緊急整備したのだ。