いよいよ今週後半から9月。例年の経験則からして、秋はさまざまな出来事があり、マーケットが動きやすい時期です。この8月も欧米の債務問題をめぐる駆け引きや、為替介入などいろいろな出来事がありましたが、様々な動きを見ていて、起こりうる可能性が高いのは、インフレだと思っています。
インフレとは何かを一言でいえば、物価が上昇して通貨の価値が下がるということです。今日1万円で買える物が、日がたてば買えなくなってしまう状態です。
経済学的には、実需に供給が追い付かないデマンド・プル・インフレや、賃金や原材料価格の上昇が原因のコスト・プッシュ・インフレなどがありますが、現在起きているのは、紙幣の乱発によるインフレと考えられます。
米国の人たちはすでにインフレを実感しているのではないでしょうかね。数年前、100ドルは1万円以上の価値がありましたが、今では8000円もないわけです。100ドルは3千円とか4千円、あるいは無価値になる時代がそう遠からず訪れることでしょう。食料価格やガソリン価格という形で、影響が表れています。
その原因がリーマン・ショック以来、金融緩和が行われ、ドル紙幣が大量供給されたためであるということは、日々、金融市場をウォッチしていると、よく分かりますね。
金価格が一貫して上昇基調にある状況を見ると、単なる投機による暴騰ではなく、貨幣価値の下落を嫌った逃避的な動きがある様子がうかがえます。ドルだけでなく、同じように加盟国の財政問題を抱え、国債が乱発されているユーロも価値が下がっていますし、金準備が薄く、基本的に米ドルの価値が裏付けになっている、私たちの国の通貨である円も、通貨暴落の影響を免れない状況です。
円高なので、円の価値は多通貨に対しては相対的に上がっていますが、以前に指摘した通り、資源や貴金属、食料など実物の価格が上昇しているので、実質的にはそれほど上昇しているとは言えない状況です。
民主党代表選で、残念なのは、誰もこうした状況を憂慮し、対策を明確に打ち出そうとしないことです。まあ、ドルが絡む問題なので、下手に触れると虎の尾を踏んでしまう恐れがあるので、仕方ない面はあります。野田佳彦財務相、前原誠司前外相なんかは、背後に米国の影がちらつくので、米国の言いなりでしか、そもそも動かないでしょうしね。
また、それを報じるマスコミの問題意識の欠如も問題ですね。特権階級で偉そうにいばりくさっていますが、基本的には知的訓練を受けていないので、頭は悪いし、利益誘導にも権力にも弱い。円高が進むと、ワンパターンのように町工場の苦境ばかりをクローズ・アップしますが、借金漬けの米国はもう、お金がなくて、日本製の優秀な自動車や電気製品を買うお金がないのです。米国への輸出で金儲けする時代はもう終わったのです。
円高対策イコール落ち目の米国を支えるということ。更生してくれれば、いいですが、まともに働いて国を建てなおす気概はないですね。一部には良心的な人たちもいますが、最悪の結末は避けられないでしょう。
米国を相手に商売する時代は終わったのです。それよりも何だかんだ軋轢はあっても、日本文化や日本製品に対する支持が強い、中国の中間層化から富裕層向けに物を売った方が、実利を得られる。
米国は、自分たちの破綻を少しでも先延ばしするために、日本を利用し、使い捨てにするでしょう。私たちはその思惑を見抜き、対策を立てなければならない。
円高対策はすなわち、ドルの通貨価値の暴落の道連れで、結局は、円の価値も貶めてしまう行為になるのです。これまでさんざんだまされてきたのに、どうして見抜けないのか。政治家、官僚、マスコミの罪は大きい。
こういう時期に、円安にして輸出を増やして、儲けようなど虫のいい話などありえません。最悪の事態に対して、できる限り、ソフトランディングできるよう、マネージメントするくらいのことしかできないのです。ここ一カ月の日本の動向を見る限り、国富をむしり取られるんでしょうね。円高対策の美名の下、底なし沼にはまり、身動きが取れなくなることでしょう。
そうなると、一番、わかりやすい形で起きる現象は、通貨価値の下落、すなわちインフレでしょう。すべて問題が解決するとは思いませんが、インフレによる経済の混乱に備えておくことはとても重要です。