エニグマ

  ユーロ危機はいったん収束して(したことにして)しばらくは、堅調な局面に移行するという予測は、マーケットの反応を見る限り、現時点では難しいようです。このところ3日おきぐらいに相場の様相ががらりと変わるので、目先の動きに一喜一憂して、安易に相場に対する見方を変えるのは良くないのかもしれません。それに1週間も経てば、雲が晴れて視界が良くなり、上にも下にも、明確な展開が開ける可能性も大いにあります。なので、基本的には話半分であるということを、おことわりしておきます。
  ただ、一時的に上昇、下落が鮮明になったとしても、長続きはしないと思いますので、何らかのポジションを立てた場合の注意事項としては、有効なのではないかと考え、まとめておきます。
  7月上旬だったと思いますが、海外のメディアのマーケットコメントで、ドル・円相場について、“enigmatic”であると評していたのが印象的でした。
  ご承知の通り、enigmaとは、第2次世界大戦中にドイツ軍が使用していた暗号機、あるいは暗号そのもののことです。開発当初は、最新の技術で、解読するのは難解とされていましたが、大戦のかなり早い段階で解読できていたとみられ、当初、劣勢だった連合国側が徐々に形勢を逆転するのに、一定の貢献があったことでしょう。
  enigmaという言葉の響きから、謎めいた感じがしますね。このドイツ軍のenigmaが転じて、謎めいたこと、ものを示す単語になっています。
  最近の金融相場の動きはまさに、このenigmaという言葉で表現するのがぴったりではないでしょうか? 私はドル・円を中心に見ていますが、昨年後半以降、特に9月に為替介入が行われてからの値動きは難解で、まさにenigmaです。
  日経先物もenigmaicですね。たまに分かりやすい動きをすることがありますが、特に日中なんかは上にも下にも動けず、ドル・円以上に謎めいた動きをする時間帯が非常に多くなっています。
  日中の細かい動き、売買動向をしっかりウォッチしないと、「暗号」を解読できない状況になっています。火曜日の値動きから水曜日夕方から深夜、未明にかけての上昇は、よほど訓練して分析力をつけないと読みづらいでしょうね。
  私は、完全に新たな局面に移行したものとばかり思っていましたが、昨日夕方にドルがあっけなく値を消してしまい、それに追随するように日経先物もどんよりとした動きになり、楽観的なシナリオを否定せざるを得なくなりました。
  enigmaticな動きになる理由は、先行きが全く不透明である(基本的には世界恐慌の一歩手前である)ということと、このような状況下で、金融緩和とか為替介入とか、不自然な政策を強行しようとしていることにほかなりません。政治がマーケットをゆがめているからこういう事態になってしまうのです。
  私は基本的にはenigmaを解読する自信はあります(あるつもりです)が、非常に疲れるんですよね。それでいて値幅も知れているので、労多くして利益が少ないという割に合わない思いをすることがあります。
  だから、まともに付き合うべき相場地合いではないということです。私にとっては主戦場のドル・円で大きな値動きを逃すのは非常に悔しいですが、先物のミニ1枚チャレンジは、基本的には定期預金、投資信託、個人向け国債よりも、はるかに高い利回りを目指しているので、時々、ちょこちょこ稼げばいいかなというスタンスです。
  あまりのめり込んでいいことは何一つありませんからね。今の金融市場は。時々、ちょっとしたボーナスが転がり込んでくるという方が、幸せだし、楽しんで取り組めるのではないでしょうか。最近は、ばかばかしいし、面倒くさいので、細かい集計はしていませんが、6月下旬時点と比べると、資産は2倍強に増えていますからね。元本は約8万円と、微々たるものですが、4カ月で倍にできたというのは、下手なヘッジファンドより上出来ではないでしょうかね。と、自画自賛してみます。まあ、もっと稼げるチャンスがあるにはあったのですが。
  まあ、とにかく市場のキーワードは、enigma、エニグマです。日々謎解きをしていかないと、何も得られないということです。信じるか信じないかは別にして、読み解くキーワードは発信していきたいと思います。