チェンジ!

  海外の人から見て、日本の首相がころころ変わるのはとても奇異に見えているようだし、マーケットやなんかでは一種のリスクととらえる向きもあるようですが、日本を支配したいと願う人にとってはこれほど都合のいい状況はないんだろうと思います。
  政治に最も大切なものは、「継続性」だと思います。脈々と受け継がれた、歴史とか文化とか国柄のような大局的なものから、財政、行政の進め方といった実務的なものまで、過去があって現在があるわけで、何かを変えようと思っても、これまでの経緯を熟知した上で、しっかり検証し、何が問題なのかを的確にあぶりださないと、単に表面上だけ、物事を変えてもうまくいかないはずです。
  郵政改革やら政権交代やら、毎度毎度、一過性のブームがあって、選挙のたびに盛り上がっても、その後、厳しい現実を見せつけられ落胆させられるのは、こういうことが背景にあるからでしょう。
  政治がしっかりと受け継がれていたならば、もっと政治は重厚感のあるどっしりしたものになるだろうし、米国の世界戦略にやすやすと組み込まれ、去勢された猫のような、ふぬけな国にはならなかったはずです。
  米国は表面上、日本に対して長期政権の誕生を望みつつも、政権が長続きしない状況を一番、うまく利用していますよね。米国の要求を唯々諾々と受け入れ、積極的に国益を売り渡す小泉政権なんかは長続きしましたけど、米国の意向に従わない政権は鳩山政権のようにあっけなく倒されます。
  政権が長続きしないから、何も知らないで、首相や大臣にかつぎ上げられて意気揚々とのぼせ上がっている、頭の弱い連中をだまくらかし、やれ米国債購入だの、やれ為替介入だの、やれ普天間飛行場など、厚かましく要求をエスカレートするなんてたわいもないことでしょう。
  よく「日本をダメにした政治家~」とか「政治家ワースト~」みたいな、政治家を“逆評価”する書籍や、ランキングサイトがありますが、消費税増税、普天間移設、環太平洋連携協定参加に、血道を上げる、野田佳彦首相はどのように評価されるのでしょうかね。
  なかなか、多くの人の目に触れる場で評価するのは、勇気がいるし、それなりの根拠を示さないといけないので難しいですが、私の評価では「史上最悪」の部類に入るんだろうと思っています。
  日本人の大きな美点は、謙虚であることにあると思うのですが、自分自身の器の大小を自己判断できるということは政治家だけでなく、人の上に立つうえで重要なことだと思います。ある意味、自己分析がしっかりできているということは「資質」と言ってもいいのではないかと思います。
  野田氏に関しては、人間的には悪い人ではないです。たぶん。松下政経塾に入っていたということもあり、志も高い人だったんでしょうね。
  でも、最近よくテレビやなんかでも面白おかしく取り上げられていますが、威勢が良かった野党時代との言動の差が激しすぎます。状況に応じて、方針を変えるというのは、場合によっては大切なことだし、それができるのは政治家やリーダーしかありません。ただ、基本姿勢や理念があっけなく変わるというのは、資質以前の問題で、薄っぺらく、節操のない人間だということになるでしょう。
  端的に言うと、トップに立つ器でないということです。大臣ですら重責過ぎたのですが、民主党あるいは日本全体に人材が不足しているため、やむを得ず、選ばざるを得なかったという、「でもしか首相」だったわけです。こんな人物に日本のかじ取りを任せていると思うと、背筋が寒くなりますね。
  私自身もそうでしたけど、若いころは、夢が多くて、自分自身の理想も高いんだけれども、実際に社会に出て、実践してみると、物事そう簡単に動くものでもないし、理想にこだわりすぎて、逆に状況を悪化させてしまうこともあり得ます。それはまさに「若気の至り」というものであり、失敗はむしろいい経験につながります。
  ただ、ある程度、社会でいろいろと経験して、いい歳をした大人が、「理想に燃えすぎて失敗した」というのは、ちょっと情けないですよね。ましてや日本国すべての責任を負わなければならない首相なのですから、軽々に行動して失敗されては困ります。
  これから世界に起きる激動を考えると、失敗は許されません。ちょっとした判断のミスが将来に禍根を残し、致命傷にならないとも限らないのです。
  日本の首相なんて、よれよれの世界帝国ですが、今なお、君臨する米国のコマの一つにすぎないわけです。そして、いろいろと私たち一般国民の想像を絶する恫喝なんかも日々受けているでしょうから、帝国にあらがうことはそう簡単ではないとも思います。でも、そこで生きていく私たちにとって日本という国は、かけがえのない存在であり、何としても国を守り、生き延びていかなければなりません。
  そんな厳しい現実があるのに、政治家の認識の甘さときたら、どうしうようもないですね。米国と刺し違え、文字通り命を掛けるぐらいの気概ではないと務まらない職業のはずですが、毎度毎度、風に乗ってどこかの政党がなりローカルパーティーが選挙で躍進するたびに「何とかチルドレン」みたいな連中が幅を利かせます。
  次の総選挙こそ、本当の意味での「チェンジ」が求められるのですが、政治家の顔ぶれ、あるいは立候補しそうな人たちを考えると、ちょっと期待薄ですね。
  一気に何もかも解決できるとも思えないので、はっきり言って遅きに失しているし、何をいまさらの世界なのですが、それでも地道に一つずつ問題を解決し、つくりあげていくしかないんでしょうね。私たちもなかなか思い通りにはならずにこらえられないこともあるでしょうが、それでも耐え忍ぶ長丁場の覚悟が必要です。