バカでもできる銀行業

  今朝の朝刊各紙やテレビの経済ニュースで、トップ級の扱いだったのは、大手銀行グループの2011年4~9月期決算で、純利益が伸びたというニュースですね。5グループ合わせて、前年同期比18.5%の1兆5209億円で、三菱UFJ・FG、三井住友トラストHD、りそなの3グループが増益、一方、みずほFG、三井住友FGが減益となっています。
  純利益は伸びているのですが、国内の資金需要は震災後、一時的に伸びたという要因はあるものの、依然として低迷しており、企業の海外進出意欲は旺盛ですが、それが必ずしも、業績に結びついていないというのが実情です。当然、欧州の金融危機も重くのしかかります。
  何が利益に結び付いたかというと、大きな規模な企業倒産が少なく、与信関連費用が低下したことと、保有株式の含み益、そして、無視できないのは国債売買による収益ですね。
  要は、国債を持っていれば、何もしなくても利子収入が入ってくるし、適度に値動きがあるので、安く買って高く売るという単純な「国債ころがし」をしていれば、安定的、しかも手っ取り早く稼げるということです。
  カネ余りで、世界的に運用環境は厳しくなっているとはいえ、資金を必要としている分野は全くないわけではなく、どうすればビジネスを拡大したり、安定的に利益を挙げていけるか企業に助言したり、取引先企業同士をマッチングし、新しいビジネス展開を提案したり、そうしたことをするのが銀行の役割なはずで、本来の業務であるわけですが、努力をせずに楽してカネを稼ごうとしているのが、今の銀行の姿です。
  日本国債なんて、欧米の国債と比べると、はるかに安定しているので、おいしいビジネスですよね。しかも、閉鎖的なマーケットなので、参入者は限られているので、競争原理もほとんど働きません。日々、日経平均の小さな値幅でかつエニグマチックな動きと格闘している我々からするとうらやましい限りです。
  もっとも、3カ月に1度ほど、わりと大きなチャンスがめぐってくるので、個人投資家の方が何の努力もしない大手金融機関のトレーダーやファンドマネージャーなんかよりも、優秀なデイトレーダーの方がはるかに運用成績は上回るわけですが・・・。
  大手銀行に勤めて、大きな資金を融資したり、運用したりしている人たちは「プロ」と思われていますが、実はそうではないのです。これは日々、マーケットと対峙していると感覚的に分かりますよね。
  マーケットでは、米国の金融機関の価格操作にだまされて、つねにカモとして狙われているだけで、稼げる場所は閉鎖され守られている日本国債市場しかありません。
  融資するにしても、ほとんどは大手企業に必要もないのにカネを貸し付けて、無理やり利子を得ているにすぎません。住宅ローンなんかも、安定した収入や担保を持つ人にしか化さないので、これで稼げなかったら馬鹿ですよね。
  銀行業というのが、基本的には「負け組」の業種であることは間違いないでしょう。政府の規制によって守られ、あとは確実に利益が稼げるようなビジネスを細々と続けるだけで、かろうじて命脈を保っているだけなのです。
  銀行だけでなく証券会社も同様ですね。ただ、証券会社の場合は、銀行ほどおいしい収益源に恵まれていないので、より厳しい状況にあります。だから詐欺のような金融商品を売りつけて手数料収入を得るしか仕事がなく、金融危機や株価下落があるたびに顧客に損をさせ、恨みを買っています。
  金融機関に勤めているといえば、スマートなイメージを持たれがちですが、所詮はダメ人間の集まりでしかありません。また、人間の欲望が最も交錯するところでもあり、私の親戚、友人、知人にも銀行員が多いですが、彼らの教科書は「ナニワ金融道」という、笑うに笑えない状況です。
  もし金融業に就職したい人がいるならば、あまりお勧めはできないですね。来たるべき金融恐慌がおきれば、一部、残すべきところは生き残るでしょうけど、その他はほぼ壊滅するでしょう。就職難なのでなかなかえり好みはできないという事情もあるでしょうけれども。
  だったら、トレード技術を磨いて、「個人営業」の金融機関をやった方がいいと思いますけれどもね。個人投資家、小規模投資家の方がいろいろ可能性は大きいと思いますが。