私はラーメン好き以前に日本そば党なので、日本そばの系統をひく、東京の醤油ラーメンが大好きです。最近は日経先物のブログでもラーメン紹介をするところがちらほらと見られますが、先物の日中の値動きがしょぼく、書くことがないということもあるし(単に文章力がないだけかもしれないですが)、ラーメンが根強いブームであるということもあるのでしょうが、伝統的な日本そば、東京ラーメンを踏まえた上で、論じる人は少ないですね。
最近は、全国各地で、ラーメンで“起業”する人が増え、ご当地ラーメンや、東池袋・大勝軒、ラーメン二郎をはじめ、東京で修業したり、東京の人気店の影響を受けたラーメン店を地方でも見かけるので、全国各地のラーメンを知ることができて面白いですね。
ただ、その半面、あくまでもラーメンなんて、所詮はB級グルメの範疇なので、「正統」とかいう概念を持ち込むのはどうかとも思うのですが、素材とか技術を駆使しているんだけれども、表層的な味覚に訴えかけるだけで、心に響かないラーメンも、ままあります。
残念なのは、大阪のラーメン店ですね。大阪というと「きつねうどん」のイメージがあり、麺文化が栄えているようなイメージがありますが、大阪でおいしいきつねうどんのお店なんてほとんど見かけませんからね(それでも何店かは知っていますが)。
大阪の日本そば店ははっきり言って終わっているし、あれだけ食に対する意識が高い地域にもかかわらず、ラーメンに関しては歴史が浅く、中には東京とか博多の味に影響されたりなんかして、おいしい店もあるのですが、全体的にどういう歴史的な流れを汲んでいるのか分からず、薄っぺらい感じは否めません。
粉もん文化といいながら、広島ほどお好み焼き文化が根付いているわけでもないですからね。大阪の人はもう一度、自分たちの食文化を見直した方がいいのではないでしょうか。ポテンシャルはあるのですから、大阪の文化とか味覚に根付いたラーメンが出てきてほしいと思います。
さて、私は日本そばと中華そばが融合した、東京ラーメンをこよなく愛するのですが、とんこつにも興味が湧いています。ほんのちょっと前までは無関心だったし、「あんなものはラーメンではない」という意識も強かったのですが。
東京で開業する新興店は、伝統的な日本そば(魚介系)の流れを汲む店がやはり圧倒的に多いのですが、それと並んで、横浜の家系ラーメンとか、博多の影響なんかもあるのでしょうけど、とんこつベースの店も勢いがありますね。
このブログでも、海外にも展開するラーメン界のキラ星、神奈川「なんつっ亭」の品川の支店を取り上げたことがありますが、とんこつラーメンに対する偏見を覆す、洗練された完成度の高いものに仕上がっていました。
今回は新宿・小滝橋通りの「麺屋武蔵」の系列店、上野にある「麺屋武蔵 武骨」を取り上げたいと思いますが、麺屋武蔵もあちこちに系列店が増え、ラーメン界の一大勢力になりつつありますね。
麺屋武蔵は昨年夏に初めて訪れたのですが、インパクトがありました。幅広く人気を取り込めるという点では、日本で1、2を争う最高水準ではないかと勝手に思っています。昨年12月に神田の辛くてしびれるミソラーメン店「鬼金棒」(厳密に言うと系列店ではなく系譜を引くお店なのですが)を取り上げましたが、今回は麺屋武蔵系の第2弾になります。
なぜ、麺屋武蔵の系列店が新宿や渋谷、池袋、品川のような若者やビジネスマンが多くいるところではなく、上野にあるのかは分かりませんが、あちこちにおいしいラーメン店があるというのはいいことだと思います。街の名所になり、地域の活性化に役に立つでしょうからね。
上野のいいところは、駅を出て、ちょっと歩くと、気軽に立ち寄れそうな飲食店がたくさんあることです。新宿、渋谷だと駅から遠いし、ビルの中にあるような店舗はちょっと敷居が高く、きっかけが必要なのですが、上野だとふらりと入れそうな気軽さがあります。
武骨は、丸井上野店の東側の通りを御徒町方向に下った、以前紹介した油そば店「椿」と同じ通り沿いにあります。上野のアメ横やその界隈は、あか抜けないんだけれども、それでいてさすがに東京だけあって集客力はそれなりにあって、独特の雰囲気があります。
お店は上野と御徒町のちょうど中間地点くらいにあり、メーンストリートから外れているので、人通りは決して多くはないのですが、平日午後2時前に到着したときには、満員で5人ほどが席が空くのを待っていました。
メニューはスープの種類(色)に合わせて、大きく分けて3種類あります。ベーシックなとんこつと魚介スープを合わせた「白」、豆板醤を利かせた「赤」、そしてイカスミでつくった香油とマー油がスープを覆う「黒」です。私は「黒 武骨味玉らー麺」(850円)を選びました。
店内は12席で、柱で席が二分され、それぞれ別の入り口からでないと入れないという、ちょっと変わった構造になっています。
新宿の本店は店員がきびきびとしているのが印象的ですが、ここでも同様。麺をゆで上げたときの「よいしょ~!」という威勢のよい掛け声が気持ち良く響きます。
黒を頼んだので、ある程度予想はしていましたが、イカスミの黒が強烈なインパクトでした。コーヒーの茶色がかった黒とは違う、藍色がかったインクのような黒光りが独特の彩りを放ちます。
イカスミ香油はスープの表面を覆う程度で、れんげで軽くすくうと、すぐ下にはクリーム色のとんこつスープが見えました。独特の香ばしさを伴った、しかも、とんこつらしい丸みとこくのある味でした。それでいて普通のとんこつラーメンとは違う、さっぱりした後味という。
麺は、太めの麺でした。本場のとんこつラーメンは、やや粉っぽい感じがしますが、武骨のものは、おそらく他の系列店と同じ系統の麺を使っていると思われ、透明感と弾力があります。ここも普通のとんこつラーメンとは一線を画しています。
チャーシューは、武蔵おなじみの角煮を使っています。今年の冬は例年になく厳しいので、普通の平べったいチャーシューよりも甘みのある角煮の方がおいしく感じられますね。夏場は逆に感じるかもしれません。
イカスミをはじめ、一ひねりも二ひねりもしているので、印象に残る味でした。「武蔵でラーメンを食べた」という達成感が感じられます。
オーソドックスなスタイルのとんこつもいいですが、新しい可能性を切り開いたという感じです。独特のこだわりを持つ武蔵ならではですね。東京ラーメンの系譜を引いたからこういうつくりになるんでしょうけど、本場の人はどう評価するのでしょうか。とんこつの新しい形として好意的に受け止めるのでしょうか? それとも本場の味に慣れていると違和感を感じるのでしょうか? 興味があります。
一部の飲食店が口コミを操作していた事実が発覚した「食べログ」ですが、麺屋武蔵に関しては、賛否が拮抗しているという印象を持ちます。
私の場合、素朴な東京ラーメンや、日本そばを食べ慣れてきましたが、初めて麺屋武蔵のラーメンを食べたときは衝撃でしたけどね。「どうせ新興店なんてたいしたことないだろう」とタカをくくっていたのですが、よく考えてつくり込まれていているのに驚きました。
味付けはどちらかというと若者向けなのですが、幅広い層に受け入れられる味だと思います。否定的なコメントをした人にはもっともっとほかのお店と食べ比べてみてほしいし、麺屋武蔵にも何度か足を運んでほしいなとおもいます。
私には研究熱心さやラーメンにかける思いみたいなものが伝わってきました。
都内には麺屋武蔵の系列店が本店を含めて11店ありますが、一つ一つ訪ねてみたいと思いますね。麺屋武蔵が出すラーメンだから何かやってくれるだろうという期待感があります。