ラーメン道 辛さを究める 神田編2

  今年は11月半ばくらいまで、平年よりかなり気温が高い日が続いていましたが、ここへ来て、いままでの借金を取り返すかのように、真冬並みの寒い日が続いています。
  年がら年じゅうラーメンを食べていますが、夏はどちらかと言えば、つけ麺、醤油ラーメンがいいなと思いますし、冬は、味噌ラーメンや豚骨系のこってりしたラーメンがおいしく感じられます。
  神田へ行く用事があり、今回は、冬の寒さを吹き飛ばすため、辛くてしびれる味噌ラーメンのお店「鬼金棒(きかんぼう)」を訪れてみました。
  師走の神田は、独特の雰囲気がありますね。年の瀬が迫り、凛とした寒さの中に張り詰める緊張した空気と、一年のうち最も書き入れ時の忘年会シーズンのにぎやかさが同居し、「いよいよ今年も終わるんだなぁ」としみじみと感じさせられます。


  鬼金棒は、辛いもの好きにとっては、知る人ぞ知る有名店です。私も担々麺仲間の知り合いから教えてもらいました。麺屋武蔵で修業された店主が独立したことでも知られ、先週土曜日(12月17日)のテレビ東京系の「アド街ック天国」の神田鍛治町編で、「〆のラーメン」ということで、ほんの一瞬紹介されていました。
  1年ほど前に、フジテレビ系の「人志松本の○○な話」でも、「ヨダレの出る話」で、勝俣州和さんがおすすめの店として取り上げられていたと思います。


  鬼金棒は、1年くらい前は、店の前に行列が途絶えず、最低でも30分待ちは覚悟しないといけなかったのですが、30メートル離れた場所に、以前は限定メニューだった、辛くてしびれるつけ麺専門店ができ、客足が分散し、昼時など混雑する時間帯を除いては、すぐに入店し、着席できるようになりました。
  今回、私が訪れたのは午後2時過ぎで、カウンターのみ8席の店内には、サラリーマン風の人たちがほとんどで、2席ほど空いていたため、入り口で食券を買ってすぐに座れました。
  夜なんかは、結構、女性客も多くて、「世の中には、辛い物好きが結構いるんだなぁ」と認識させられます。


  「もやしカラシビ味噌らー麺」(880円)と、辛いラーメンのお供の半ライス(100円)を選びました。「カラシビ」とは、赤唐辛子の辛さと、舌をしびれさせる山椒のことを指すのですが、唐辛子、山椒ともに量を調節できます。
  辛いものが苦手の人は「抜き」か「少なめ」、辛い物好きの人は「普通」、ちょっと物足りないと思う人は「増し」、強烈な辛さを求める人は「鬼増し」(+100円)の5段階から選択できます。
  実は私は昨年、「増し」を食べたら、当時患っていた、逆流性食道炎を悪化させてしまい、辛いのを食べたいのはやまやまなのですが、以来、「普通」に抑えることにしています。
  「普通」でも相当、辛くてしびれるので、普通の辛い物好きの人なら、十分満足感を得られると思います。今回も私は辛さの程度は「普通」にしています。
  四川風汁なし担々麺を味噌ラーメン風にアレンジした味と言えば分かりやすいでしょうか。スープは豚骨ベースで、そこに味噌が加わるので、ごま油や辣油などで味付られた担々麺とはまた違った、独特の奥深い味を併せ持ちます。
  麺は太めで、やや平たくて、長方形型をしているのですが、スープとよく絡みます。辛くてしびれるので、ライスを注文すると「逃げ場」ができますし、トッピングのチャーシューも、武蔵の系統をひく角煮タイプで、全体に甘みがあり、これもしびれた舌を癒すのに最適で、どんなに辛くてしびれても、後を引くおいしさを引き立てます。
  私はラーメンの具で一番好きなのがもやしですが、特に味噌ラーメンにはよくマッチします。これもチャーシューやライス同様、カラシビらー麺に味の変化を与えてくれるので、ぜひもやしの増量をお勧めします。
  普通の味噌ラーメンと比べると、辛くてしびれる分、食べるペースは落ちるのですが、スープを飲み干し、間食した時の達成感は、ひと味違いますね。大きな仕事をやり遂げた時のような、すがすがしさがあります。




  気持ちよく完食して体も温まり、いい気分で店を後にしました。今回は寒さを吹き飛ばそうということで、紹介しましたが、山椒が効いたこの辛さは、夏の暑い時に食べても、おいしいと思います。
  辛いものが苦手な人や、胃腸の弱い人は、カラシビ「抜き」も選べますし、私は試したことはないですけど、普通の味噌ラーメンとしても、レベルは高いと思いますので、お勧めしたいと思います。
  辛い味噌ラーメンというと、赤唐辛子味噌を効かせたものや、オロチョンラーメンなんかをよく見かけますが、山椒と組み合わせ、四川風の要素を取り入れたのは、ユニークな発想だと思います。さすがは店主が麺屋武蔵で修業しただけあるなと思わせますね。
  正直、東京の味噌ラーメンで、私が紹介できる引き出しは限られていますが、鬼金棒は胸を張って、「これはいい!」と言えるお店です。