逆さにして考える

  たまにチャートを逆さにして見ると、インスピレーションをもらえることがあります。株価や株価指数は、大口の参加者がロング主体のため、「ショートで踏まれるリスクが大きい」と以前、触れたように、下げたところで無理やり買いが入るため、いびつな形状になり、あてにならない面もありますが、為替なんかは、ドル買いの反対は、ドル売りであると同時に円買いということであり、「ロング」という視点で見ると、それなりに材料は提供してくれます。
  ドル・円チャートを見ると、1ドル=360円の時代から一貫して、下落基調をたどっています。このトレンドを打破できるかどうかが、まさに「ドル復権」の鍵になるかと思われますが、すでにご案内の通り、米国が国力を回復することなど現状ではまず考えられないですね。
  イランを攻撃したり、北朝鮮を使って何か突拍子もないことを考えたり、あるいは中東でやらせの核テロでもやって世界を恐怖に陥れるとか、感染症、食中毒といった、いつもながらの手で、世界を混乱させ、一時的にふかすことは可能でしょうけど、せめて1ドル=150円くらいまで上げないと、下落トレンドに内包されてしまいますよね。
  そんなことはテクニカルでは説明はついたとしても、まずファンダメンタル的に不可能でしょう。もしあるとすれば、日本に対して、「地震兵器」で攻撃し尽くすぐらいしか考えられませんが(笑)、さすがにそうなると、米国債を売るでしょうから、帳簿上、帳簿外を含めた、米国債が売り浴びせられ、結局、ドルも道連れになるという・・・。
  ちょっと頭の悪い奴が「有事のドル買いだー」とか興奮して、北朝鮮のミサイル発射で、ドルを買ったみたいですが(笑)、それでいくら儲けたのでしょうかね。東日本大震災直後に円が急伸しましたが、そういうものなのです。ドルはすでに破綻国通貨であり、経済実態以上に過大評価されているので、何か有事が起きたからといって、簡単に買われるような通貨ではないのです。
  むしろ、世界情勢が混迷すればするほど、米国の指導力の低下が明らかになり、しかも米国財政への打撃が明確になってくるでしょうから、ドルを売りたい誘惑に駆られます。
  そういう意味ではドル・円チャートは、割と素直に実態を反映していると思います。面倒くさいのは、下がると為替介入やら、日銀の金融緩和が入るので、下落トレンド内で、戻して、トレンドが緩やかになってしまうことです。これこそまさにテクニカル的な動きですね。ファンダメンタルでは実力のない通貨が、テクニカルで上昇できる範囲まで戻してしまうという、困った状態です。
  いずれにせよ、ドル・円に関しては、チャートを逆さにしてみれば、下落トレンドに沿ってゆるやかにドルが下落しているということは分かります。
  ただ、本当は2010年秋までは、エリオット波動を形成しながら、ドルが下落していたのが、為替介入によって断ち切られ、緩やかな下落トレンドの範囲内でしか下げられなくなりました。その辺もチャートを逆さにすると見えてきますね。
  いずれまた、ファンダメンタルと実際の為替レートは懸け離れているので、修正すべく、暴落する局面があるでしょう。そうなったら、緩やかなトレンドに回帰できるのか? それとも下がりっぱなしになるのか? あるいはドル時代が消滅し、チャート自体が無用になってしまうのか? そこはこれからのお楽しみですね。
  まだ詳しく分析していませんが、ダウだって訳のわからない上昇を演じているものの、ドルの価値を反映したチャートにすれば、もっと明確に下落トレンドが見えてくるでしょうし、逆さにすれば、米国の経済崩壊が浮き彫りになってくることでしょう。たとえ個別企業では生き残れる企業があったとしてもです。
  世間一般の人たちは、さすがに「米国が国家破綻に向かっている」とまでは考えないでしょうが、「米国が衰退(没落)しつつある」ということまでは理解できるでしょう。これをドル・円チャートのように逆さにして考えると、「新興国がますますプレゼンスを増す」ということにつながるでしょう。
  さすがに表だってかつての英国や米国のような粗暴な手段で、世界帝国にのし上がるようなことはないでしょうから、新興国が急速に膨張するということはないでしょうが、それでも、しばらくの間は右肩上がりが続くでしょうから、一時的に上下することはあっても、中長期の視点で、これらの国や企業に投資することは、有効だと考えられます。
  金融市場以外でも、何事も、逆さにして考えると、新たな視座が開け、考えるヒントを与えてくれるかもしれないですね。常識と考えられていることにひそんでいる真実とか、死角とかが見えてくると思います。