逆指標?

  今年の年初に“債権王”ビル・グロス氏が米国債の保有割合を減らすと発言したことは、世界の金融関係者に衝撃を与えました。
  米国債が投資対象として「危険だ」と正面切って明言することは、タブーと考えられてきました。橋本龍太郎元首相が「米国債を売りたい誘惑に駆られることがある」と発言したことや、中川昭一財務相が米国との非公式の会談で、米国債の追加購入に難色を示したことで、恐ろしいリベンジ(復讐)を受けたことでも、いかにセンシティブな問題かうかがい知ることができます。
  グロス氏の発言とは裏腹に、米国債はとっても“魅力的な”投資対象になっています。特に欧州の財政、金融問題がクローズ・アップされて以降、その傾向が強まっています。
  確かに、米ドルに代わる、基軸通貨や決済システムが出てこない以上は、価値の貯蔵手段として、とりあえずドル資産を持たざるを得ないし、今なお世界帝国なわけですから、世界第2の規模の経済圏であるユーロがガタガタしているとなると、資金は米国債に逃避せざるを得ません。
  ただ、やはりかねて主張している通り、米国はすでに国家破綻状態にあり、あとはどのタイミングで崩壊するかという状況です。ここへ来て、何か必死になって崩壊を食い止めようとする動きもないわけではないでしょうが、金価格の上昇傾向を見る限り、無理でしょうね。
  さて、ビル・グロス氏が注目発言をしています。「米国債投資を縮小は誤りだった」と。投資家は、柔軟に状況判断すべきなので、誤りを謙虚に見つめなおすことは必要ですが、なぜ、この時期に修正するのかというのは疑問です。
  米国政府から何か圧力があったのでしょうか? それとも、グロス氏の発言は“逆指標”ととらえる向きも多く、「そろそろ、本当に米国債やばくなってきたよ」というサインなのでしょうか。謎は深まります。

(以下、グロス氏の記事を転載)
 [ニューヨーク 29日 ロイター] 債券ファンド世界最大手、米パシフィック・ インベストメント・マネジメント(PIMCO)のビル・グロース共同最高投資責任者(CIO)は、米国債や政府関連証券への投資を縮小したことは誤りだったと考えている。フィナンシャル・タイムズ紙オンライン版が29日報じた。
 グロース氏は米経済に対して一段と弱気見通しを示した。PIMCOのトータル・リターン・ファンドPTTRX.Oは3月、景気が回復しインフレにつながると見込み米国債の保有をゼロにしていたが、米国債の上昇で運用成績は悪化した。リッパーによると過去4週間の同ファンドの運用成績はマイナス0.97%で、指標となるバークレイズの米国総合債券指数はプラス0.23%だった。年初来ではプラス3.29%で、指標指数は4.55%。
 報道によるとグロース氏は「指標をアンダーパフォームすると、帰宅し悔やんだものだ。米経済の実質成長率が2%になると考えたのは誤りだった。達成できないようだ」と述べた。同氏は、今月初めに連邦準備理事会(FRB)が今後2年は低金利を維持すると表明して以降、米国経済に対する見方を大幅に変えたという。