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ラーメン道 ワクワクの味 阿佐ヶ谷編1





  いつの間にか、続・つけ麺スペシャル! 昨年来、ダイエットで10キロ以上体重を落とし、摂生を続けているので、時々、外食をする時は、ワクワク感でいっぱいになります。ラーメン店巡りをするときは、前もって、どの店に行くか決めてから行くのですが、前日から楽しみで夜も眠れないくらいです。
  今回訪問した、阿佐ケ谷のつけ麺店「麺爽 かしげ」は、とりわけ期待を寄せていました。行くと決めた日から胸が高まり、指折り数えるくらいでした。
  なぜそこまで楽しみにしていたかというと、ある「確信」があったからです。4月16日に芝・大門の「麺や ポツリ」(http://blog.livedoor.jp/petemouse/archives/51985653.html)を訪れて以降、「つけ麺はイタリアンと親和性が高いのでは」とずっと考えていました。
  ポツリでは、粉チーズを注文しませんでしたが、濃厚煮干しスープとチーズは、ベストなコンビネーションに間違いないだろうと直感し、つけ麺とチーズを組み合わせた時の味に思いをはせ、ポツリでその機会を逸したことをずっと悔やんでいました。
  ただ、そのためだけにポツリを再訪するのは芸がないので、以前から当たりをつけていた、つけ麺店を目指すことにしました。それが阿佐ケ谷・かしげです。


  中央線の中野、高円寺、阿佐ケ谷、荻窪、西荻窪は、かつて生活圏だったので、「ホーム」に近い感覚なのですが、この阿佐ケ谷もあまりラーメンとは結び付きません。どちらかというと、ブラックホールというか、ラーメン店が多い地域にあって、あまり目立ったものがなかった地域でした。
  最近は、起業として、意欲的な人がラーメン店を興すので場所なんて関係ないんですね。というか、これまで人気ラーメン店がなかった地域だからこそ、新規開業のメリットが大きいとも言えるのでしょう。思いも寄らなかった場所にちょっと気になるラーメン店を見かけることが多くなりました。
  その一方で、昔ながらの中華料理店が減っていますね。伝統的な醤油味のあっさりしたラーメンのほか、ギョーザや唐揚げとか麻婆豆腐とかチンジャオローズとかをやっていて定食もあるし、ビールでも頼んで一品料理としてつまみでもいいような。「餃子の王将」に近い業態ですよね。カレーとか豚カツなんかもやっていたりして。
  やはり外食に求める顧客の嗜好の変化とか、世代交代の流れもあるのでしょう。「きたなシュラン」に出てくるような、油汚れが店のあちこちに目立って、どこか昭和の香りのする店は、店主の高齢化、引退とともに、徐々に姿を消し、代わって新しいスタイルの小ぎれいで、凝った味の店が目立つようになりました。これも時代の流れでしょうね。
  阿佐ケ谷もそんな控えめな中華料理店がちょこちょことある街だったのですが、かしげはJR阿佐ケ谷駅の北口を出て左手の飲食店街の入り口近くにあります。
  最近は足を運ぶ機会がほとんどなくなってしまいましたが、私の中では阿佐ケ谷というと、ちょっと良い感じの居酒屋が多いという印象があります。特に焼き鳥とか串焼きとか牛タンとか鉄鍋餃子とか、ひとくくりにして「焼き物」がおいしいお店をよく知っています。そんなお店がある(あった)一角にかしげはあります。
  午後2時前に訪れたときには、店内には誰もいませんでした。なぜかB’zががんがんかかっていて、店主は私が入店したことにしばらく気付きませんでした。
  一瞬、「大丈夫かいな?」と不安が頭をよぎりましたが、あれだけ楽しみにしていたつけ麺です。こちらも層簡単には引き下がるわけには生きません。意を決して券売機で「濃厚チェダーチーズつけ麺」(880円)を選択。並、大盛、特盛は同じ値段で、体調もそろそろ本調子に回復しつつあるので、特盛にしました。
  しばらく客がいなかったせいか、やや時間がかかったような気もしましたが、5分ほどで着丼。ちなみに着丼とは最近少しずつ広がっている、飲食店で注文した料理が出されることをいいます。




  チェダーチーズは喫茶店のミルクが入っているような容器に別添で、店の人が「麺にかけてください」と声を掛けてくれました。ちなみに食べログでこの濃厚チェダーチーズつけ麺の感想を寄せていた人がいて、何の説明もなく、つけ汁に少しずつチーズを入れ、「あってもなくても変わらなかった」旨のコメントがあったのですが、チェダーチーズは液状なので、そもそも味、香りの濃厚なスープに入れると埋没してしまうのでしょうね。粉チーズだとチーズの存在感を感じられるのでしょうけど。この辺は注意が必要です。
  麺は芝・大門ポツリと同様、タピオカでんぷんを練り込んだもっちりした太めの麺でした。前に訪れた上野の油そば店もたぴおか入り麺を使っていましたが、今、はやりのようですね。
  早速、チェダーチーズを麺にかけて食してみます。その前につけ汁をちょっとだけ味見しましたが、魚介を前面に押し出した豚骨ベースのスープで、ポツリとそっくりの味でした。この味とチーズを組み合わせたらどうか、ずっと思い描いていたので、思惑がはまり、うれしかったのですが、その反面で、「魚介+豚骨」を売り物にした、つけ麺店はどこも似たり寄ったりの味になってしまうのかなという気もしました。
  特盛の麺に対してチェダーチーズはやや少なめなったのですが、チェダーチーズが程よくかかった部分を漬け汁にひたして一口。幸せな気分になりました。思惑通りの味。まさに求めていたものでした。チーズと魚介のスープは非常にマッチします。
  ついでながら、ワインとつまみでも置いておいたら、夜はもっとにぎわいそうなのになと思いました。店内はカウンター8席なので回転率重視でしょうから難しいでしょうけどね。そういうところは、ひなびた昔ながらの中華料理店の方に軍配が上がります。
  チーズが入ると、味に奥行きが出ていいですね。粉チーズでなく、チェダーチーズにしたところも面白いです。チェダーチーズというと、メキシカンテイストで、突飛な感じもしますが、既成概念を超えて、おいしいものをよりおいしく楽しもうという創意工夫が感じられます。麺に直接つけて食べると本当においしいです。
  タピオカ麺については、おおむね好評のようで、私も好きです。「ゴムのような食感がする」という否定的な意見もあるようですが、これについては理解できるような気がしますね。某チェーン展開するさぬきうどん店の「もちもち感」を押し出した麺はあまり好きではありません。さぬきうどん自体、弾力がありすぎて、うどんつゆと融合するのを拒んでいるようで味気ない気がします。タピオカ麺は味をつけ汁の味となじむか、はね返してしまうのか、ぎりぎりのラインのような気がします。
  全体的に麺とつけ汁の味は調和していて、しかもチェダーチーズという“隠し味”が効いている上、特盛の麺のボリュームもあって、満足感がありました。粉チーズやトマトなんかを添えればイタリアン・テイストだったんでしょうけど、この濃厚チェダーチーズつけ麺は、「和風ジャンクフード」と言ってもいいくらい、インパクトがありました。




  かつてはラーメンどころというと、1990年代のラーメンブームのはしりである荻窪とか、神田とか、新宿とか、中華料理店が多い中野、高円寺とかが有名でしたが、最近は起業として、いろんなところで意欲的な店主が店を始めるので、荻窪がどうのとか神田がどうのとかいう時代ではなくなりました。
  むしろ、老舗ののれんにあぐらをかいていると、時代の流れに取り残されたり、客からも見放されなけないという、シビアな状況です。かつての“横綱”である某店にそれを感じます。日本そばがどうとか、豚骨がどうとか、鶏ガラがどうとか、既成概念にとらわれず、おいしいものを生み出したものが勝ちという、怖い時代に入りつつあります。詳しくは次回でお話ししたいと思います。


  ただ、そういう新興勢力がいつまで人気を保ち続けられるか、定番として長く愛されるか、まだ答えは出ていません。新しいものがもてはやされるときもあれば、原点に回帰することもあります。人の味覚は案外保守的なので、月並みな言い回しですが時間が経てば正解が見えてくることでしょう。
  かしげは、私が店に入った時には、客は誰もいませんでしたが、しばらくすると一人、また一人と客が入ってきて、着々とファンを固めつつある様子がうかがえました。豚骨、魚介のつけ汁は、ともすればマンネリ気味かなという気がしなくはないですが、時々無性に食べたくなる味であり、飽きさせない工夫をしたり、スープを改良すれば、末永く愛される可能性を秘めています。




  阿佐ヶ谷の街は、落ち着き払っているというか、常に自然体という感じで、いつも行くたびにホッとする感じがします。そんな街に新しい店ができ、街と一緒にこれからの時代を共有していけるか、興味深いところです。

ラーメン道 濃厚煮干しとイタリアンの意外な関係 浜松町編1





  体調とか味覚って変わりやすいので、おいしいと思うもの食べたいと思うものがある時、それが旬です。おいしい物、食べたいものを食べて気を蓄えましょう。どんな食べ物も、本当においしいと思えるのは一瞬しかありません。であるならば、その時の感覚を存分に楽しみたいですよね。
  個人的には、今つけ麺づいています。伝統的な東京ラーメンが好きなので、「つけ麺なんて・・・」と思っていたのですが、ちょこちょこ食べるようになって「意外といけるじゃん」と思い始めています。長い冬を越し、体力的にやや落ち込んでいるというのも大きいですね。ストレートに訴えかけるラーメンがもちろん一番好きなのですが、つけ麺の方が食べやすい感じがして、最近よくお世話になっています。
  つけ麺はこの5、6年くらいの間に急速に注目を集め、提供するお店も増え、それなりの理想、志を持って始めた店主が多く、趣向をこらした味が楽しめます。ラーメンと比べると、はずれが少ないですよね。
  まあ、このマイブームがいつまで続くのか。もう少し気温が上がり、気力、体力がみなぎってくれば、再び醤油ラーメンを中心にがんがん積極姿勢に転じるのではないかと予想しますが、ラーメンについて語る上でも、いろんなスタイル、味を知っておくと奥行きが増すと思うので、しばらくはつけ麺に軸足を置いてもいいかなと思っています。






  つけ麺店の中で、気になっていたのが、芝・大門の「麺や ポツリ」です。雑誌に取り上げられているのを何度か目にして、ずっと興味を持っていました。「濃厚煮干し」がこのお店の目玉の一つで、煮干しラーメン好きにとっては、心浮き立つものがあります。
  最近は煮干しスープを前面に押し出す店が増えていますが、ちょっと飽きてきたというか、案外ワンパターンなんですよね。
  豚骨や鶏ガラ、カツオ節のように、万人受けする味ではないので、思い切ってがつんとやって固定ファンをつかむか、動物系とうまくコラボさせて特徴を出すかみたいな。私が一番、好きなのは西早稲田の「メルシー」の味ですが、あの味は煮干しラーメンをあちこちで食べましたが、ほかにないですね。
  煮干し臭いんだけれども、いつ食べても飽きないような味に落とし込んでいて、煮干し系では「原点」の味だと思います。
  「煮干し」をうたっていても、期待した味と違い、がっかりすることは少なくないのですが、それでも煮干しの味が好きなので、「煮干し」を銘打ったラーメンを見るとつい試したくなります。


  ラーメンは、最近になって魚介系や煮干しが市民権を得て、売り物にする店が増えましたけど、つけ麺は当初から魚介系をアピールする店が多いですね。東池袋・大勝軒は、動物系がベースながらも、煮干し、さば節が存在感を出していて、むしろ「魚介系」といってもいいのではないかというほどです。超人気店「六厘舎」も魚粉が有名です。
  ただ、つけ麺で煮干しを押し出すお店は少なく、つけ麺と煮干しがコラボすればどうなるのか? 興味が湧きます。太麺とつけ汁をどうからめるかがポイントでしょうね。煮干しはスープと一体的に食すラーメンだと、存在感が出ますが、麺にちょっとだけつける場合は、特徴が薄れてしまいます。そこをどうクリアするかがポイントですね。


  今回のポツリは、JR浜松町、都営大門両駅から芝・増上寺へ向かう道の途中にあります。雑誌でも店名について触れられていて、「街の片隅にポツリとたたずむ・・・」みたいな紹介文が添えられていますが、新興店だけれども、すっかり街の風景の一部に溶け込んでいるという感じですね。
  私にしては珍しく、午後1時前という、お昼時にお店に到着しました。私の前に2人ほどが店の前で順番を待っていました。
  すぐそばには昭和電工の本社がありますし、中小の企業がたくさんあるので、場所柄、ビジネスマン風がほとんどで、中には営業ウーマンもいました。私のような冷やかし客は浮いていました。
  ここへ来た目的はただ一つ。濃厚煮干しつけ麺(780円)を食べることです。麺の量は並盛、大盛、W盛のいずれかを無料で選べ、迷うことなく、W盛を選択しました。ちなみにW盛はつけ汁が足りなくなるかもしれないので、その時は注ぎ足してくれるそうです。
  麺は、「小麦胚芽(芽の出る部分)麺」を使用しているとのことで、栄養が豊富だそうで、「おいしい麺で勝負するんだ」という心意気を感じますね。タピオカも練り込んでいるそうです。弾力ある食感にするため使うんでしょうけど、最近、麺にタピオカ粉を使う店がつけ麺店、油そば店には多いですね。清涼感もあって、私は好きです。
  トッピングも有名で赤ワインと和風だしに付け込んだ玉子や、粉チーズもあるのですが、この日は、煮干しと対決したいと思って、あえて注文しませんでした。


  さて、煮干しを前面に押し出したつけ麺。W盛だけあってボリューム感がハンパなく、むっちりした太麺は箸では持て余すくらいでした。
  重量感のある太麺を持ち上げ、麺の端の方をつけ汁にちょこんとつけて、一口。うまかったですね。麺のほとんどの部分はつけ汁がついていないのに、つけ汁の味を感じられました。塩加減や濃いめの風味がうまく計算されているからでしょうね。
  つけ汁はその名の通り濃厚で、全体的にドロッとしているのですが、煮干し特有の臭み、苦みは全くと言っていいほどなく、クリーミーな感じで、本当に煮干しかという感じでした。もう少し、えぐみがあっていいかなという気もしました。
  ただ、西新宿の煮干しラーメンの有名店「凪」の特濃煮干しもそうですが、煮干しを濃くすると、クリーミー感が出るんですよね。しかも、つけ麺なんで、クリーミーで太めの麺とくれば、完全にパスタ感覚です。ここで粉チーズと赤ワイン風味の玉子をトッピングしておけばと後悔しました。
  この間、何かの番組で、中国でさまざまな麺料理を食べつくすという企画があって、ごく素朴な田舎で、麺料理を出してもらったら、ゆでた麺に、ひき肉とか細かく刻んだ野菜のあんがかかっていて、レポーターが「これはイタリアのパスタです」みたいなコメントをしていましたが、ラーメンにせよスパゲティー、パスタにせよ、ルーツは中国なので、当然と言えば当然なんですよね。
  以前も書きましたが、私は、汁なし担々麺や、油そばを食べるたびに、パスタを食べているような感覚を持ちますが、ポツリのつけ麺も同じような感じです。


  次回はぜひ、玉子とチーズをトッピングして、イタリアン全開で楽しみたいですね。一応触れておくと、つけ汁の具は、シナチク、刻みネギとオーソドックスで、あと、控えめにチャーシューが入っているのですが、つけ麺のお店は大き目のチャーシューで押してくるところが多いのですが、やや持て余すこともあるので、つけ汁の入った小どんぶりの端にちょっとあるこのスタイルも悪くないです。
  このお店は麺自体がおいしく、つけ汁も濃い味つけなのですが、最後まで飽きない味なので、麺とつけ汁だけで十分満足感が得られます。




  「つけ麺なんてどこも似たような味だろう」と思っていたら、店によって全然違いますね。むしろラーメンよりも味の違いが出やすいのかもしれません。奥の深さを感じました。
  麺とつけ汁のコンビネーションを追求しないといけないので、ラーメン以上に味の組み立てを計算しなければならないでしょうから、どの店も、いろいろと工夫が感じられます。
  つけ麺店はどこも店主、店員に若い世代が多く、意欲的ですね。全体的なレベルがものすごく高いです。新しい味を提供しようと、研究熱心だし、フレンチやイタリアンなど全く異なるジャンルの料理人がつけ麺の世界に乗り出すケースなんかもあるようです。
  いろんな意味で今が旬のつけ麺。いろいろと食べ歩いて、刺激を受けたいと思います。
 

 

ラーメン道 花も団子も 吉祥寺編①



  春が来れば、何かが変わる。この冬はただそれだけを思って、ささやかな希望を胸に、寒くて、一年で最もつらい季節を過ごしてきました。何度も冬に引き戻されそうになりながら、それでも一歩一歩前進し、ここまでやってきました。
  待ちに待った季節の季節の到来で、新年度に入って、プラスのエネルギーが一気にはじけるのかと思いきや、ここへ来て金融市場は雲行きが怪しくなり、妙なタイミングでの北朝鮮のミサイル発射、混迷を増す一方の国内政局、さらにこの先を起こりうる事態を考えると、せっかく高まりつつある気分も、なんとなく押されがちになってしまいます。
  個人的にはまだ冬を引きずって、体が重いのですが、一日も早くマイナスの気から解放され、プラスの気を最大限に取り入れるためにも、積極的に外へ飛び出すことにしています。
  せっかくの桜の季節なので、その生命力にあやかりたいと、ラーメン店巡りも兼ねて、春の風を感じてきました。欲張りなので「花より団子」でも「団子よりも花」でもなく、「花も団子も」です。


  都内随所に“桜の名所”はありますが、私の中では、井の頭公園は間違いなく、トップ3に入りますね。東京西郊の落ち着いたたたずまいは、いつも心身を癒してくれ、大好きな場所なのですが、この季節は、桜を見るためだけにこの公園が造られたのではないかと錯覚するほど、趣が増します。


  桜を見るために吉祥寺までやって来たわけですが、どこでラーメンを食べるか迷いました。気になる新興店は何店かあるし、世間一般では、注目されているラーメンスポッではあるのですが、中央線沿線で、ラーメンというと、伝統的な東京ラーメン好きとしては、西荻窪以東という固定観念があり、「吉祥寺=ラーメンの街」という図式はあまりイメージががわかず、正直、「荻窪で途中下車するか」「ラーメン以外でもいいかな」とも思ってしまいました。ラーメン以外でもおいしい店はいろいろありますからね。
  で、いろいろと逡巡した結果、渡りに船の選択肢を発見。「麺屋武蔵 虎洞」でした。「何だ、また武蔵系列かい!」という感じなのですが、このところ胃腸の調子が前向きではないので、安心して食べれるラーメンが欲しかったのです。この辺、現在の体調と心境をお察しいただければありがたいです。


  中央線沿線の各駅は、どこも再開発が進んでいて、周辺の住宅街の雰囲気とマッチした、どこか品のある落ち着いた街並みが広がる一方で、闇市や昔ながらの駅前商店街といった昭和の名残を残した一角があります。高円寺の北口なんかが有名ですね。
  吉祥寺もその例にもれず、ハーモニカ横丁という、細々とした飲食店が軒を連ねる、ちょっとレトロな空気をかもしだすエリアがあります。麺屋武蔵・虎洞はその横丁の入り口付近にあります。


  すぐそばにメンチカツの有名店があり、午後3時前でしたが、行列ができていました。夕飯の買い出しでしょうかね。主婦や吉祥寺らしく若い人も多く並んでいました。
  麺屋武蔵・虎洞は小ぢんまりしていて、「食べログ」では13席となっていましたが、もっと少ない感じでした。私が入店した時は、ほぼ満席で、20~30代の男性ばかりでした。
  私は知らなかったのですが、このお店では以前は、「ラーメン二郎」と同じような野菜を大盛りにした、いわゆるインスパイア系のこってりラーメンを出していたそうですが、今は武蔵スタイルになっています。私はあまりラーメン二郎が好きではないので(それでも人に連れられるなどして年に1、2回は訪れるのですが)、体調が体調なので、オーソドックスな武蔵系の味がありがたいです。


  味玉らー麺(850円)を選びました。スープの最初の一口の印象は、新宿の本店と似ているんだけれども、ややあっさりした感じだなというものでした。この時は、一番欲しかった味でした。
  本店は動物系と魚介系のダブルスープでぐいぐいと押してきますが、武蔵・虎洞も基本的なつくり方は踏襲しつつも、あっさりしていました。
  テーブル脇に瓢箪型の木製の容器に入った七味(山椒がよく利いていました)があり、それを一かけして納得。「これは日本そばの味だ」と。
  ラーメンなんだけど、ベーシックには日本そばがあるという、この味がうれしくて、七味を何かけもしてしまいました。周りの人は七味をふりかけていないようで、瓢箪の口から七味の出が悪く、格闘している私の姿を見て不思議に思ったかもしれませんが、武蔵・虎洞では七味は必須です。
  普通、ラーメンというとコショウか、赤唐辛子の粉末ですが、あえて七味を置いているところに麺屋武蔵の心遣い、センスを感じますね。持ち上げすぎでしょうか?
  東京ラーメンは、中国大陸の麺料理の味を受け継ぎつつも、日本そばの要素を持っていますが、麺屋武蔵も根底には、日本そばがあります。
  私は東京ラーメン、日本そばともにこよなく愛するのですが、麺屋武蔵の味がすぐに好きになった理由がわかる気がしました。
  麺屋武蔵の味の評価は食べログなんかを見ると、賛否が結構対立したりするんですよね。豚骨系や味噌からラーメンの世界に入った人の口には合いにくいし、逆に私のような東京ラーメン、日本そば系からエントリーした人にはなじみやすい味だと思います。
  麺屋武蔵は本店、支店合わせて都内に11店舗構えていることを考えると、この味は、東京の人には受け入れられやすい味なのではないでしょうか。


  この日は、「無理にラーメンを食べなくてもいいかな」とも思ったのですが、武蔵虎洞、訪れてよかったです。身近にあったら、週2ペースぐらいで通えるお店でした。
  東京ラーメンは食べた後の後口がすっきりしていていいですね。「ラーメンにしてよかったな」「また食べたいな」という気にさせられます。




  訳の分からない動きをする金融市場から離れて、外に出ると、いい気分転換になりますね。相場とかかわると相変らず、ストレスがたまりますが、時々リフレッシュしながら気長に付き合っていきたいと思います。
  まだまだ、体はあったまっていませんが、徐々に調子を上げて、活動を広げていきたいですね。

ラーメン道 桜の季節、つけ麺だ! 上野編③





  先日の東池袋「大勝軒」に続く、つけ麺店の紹介です。つけ麺を積極的に攻略しようという意図はさらさらなく、胃腸の調子がややすぐれず、嗜好がラーメンよりもつけ麺に傾いているというのが大きな理由です。桜見物に上野を訪れるついでに、前から行きたかったつけ麺店にトライしてみようという思惑もありました。
  昔から、なぜか上野で桜を見る機会が多く、私の中では「桜イコール上野公園」という図式が無意識に定着しています。さすがに都内有数の名所だけあり、平日にもかかわらず、大勢の花見客でにぎわっていました。




  気になっていたつけ麺店とは、「麺屋武蔵 相傳」です。麺屋武蔵の系列店は、今回訪れた相傳から、300~400メートル離れた場所にある、「麺屋武蔵 武骨」を2月21日に取り上げています。
  麺屋武蔵は新宿西口が総本店で、都内各地に系列店があり、新興ラーメン店では最も勢いのある店の一つですが、上野になぜ2店舗構えたのか不明です。
  割と年齢層が高い人が集まる上野よりも、新宿、渋谷あたりにもっとオープンさせてもいいような気もしますが、何か上野に懸ける思いがあるのでしょう。飲食店に限らず、魅力的なお店がある街は、人をひきつけますよね。町づくりをする上で、重要なポイントになると思います。
  午後2時すぎに私が店に入った時には、空席がいくつかあったのですが、アメ横自体が混雑していて、お昼時ではないにもかかわらず、すぐに満席になりました。
  武蔵のラーメンは、非常に完成度が高く、魚介の風味を大切にしていて、私にとっては、とても好きな味なので、期待が高まります。武骨もそうですが、ここ相傳でも、味の違いによって「赤」「白」「黒」の3種類の全く異なる風味のスープを選べます。
  一番人気は「黒」で、迷うことなく、つけ麺・黒(750円)を注文しました。武骨の「黒」はイカスミが中心ですが、相傳の「黒」はコーヒーで、どんな味になるか、わくわくさせられます。
  麺の量を無料で普通、中盛り、大盛りから選べるのもとってもうれしいサービスです。この日は中盛りにしました。


  で、出てきたつけ麺は上の画像の通りです。ちょっと暗いのですが、麺の上を覆っているチャーシューの、やや無造作な感じが余計においしそうな感じがしました。ちょっと顔をのぞかせるもちもちの麺、その傍らにいる味玉も情感があります。
  私は、つけ麺は東池袋・大勝軒系と、友人に連れて行かれた広島風つけ麺くらいしか食べたことがなく、東京ラーメンほど語る知識は持ち合わせていないのですが、食べた感想は、「つけ麺ってこんなにバリエーションが豊富なんだ」ということです。
  あらかじめスープとコンビネーションで出されるラーメンと違い、つけ麺は、麺とスープが接する時間が短いので、つけ汁にどうインパクトを与えられるかがポイントですね。
  このお店のつけ麺は、麺と相性が良く、よく練られていると思いました。武蔵というと、私がラーメンを食べた時のイメージでは、「魚介系」なんですが、このつけ汁は豚骨ベースということで、やはり、つけ麺であることを意識したつくりになっています。
  つけ麺というと、やはり魚介のイメージが強い大勝軒の流れが気になってしまうのですが、スープの骨格が違うので、つけ麺をあまり食べない者にとっては「こういう味もあるんだな」ということを気づかされます。
  トッピングの味玉は、他の系列店と同じ食感で、私の好みは何度か書いた通りですので、おいておくとして、チャーシューは食べごたえがあり、豚骨スープに豚肉という、お好み焼き定食、うどん定食、焼きそば定食みたいな「炭水化物に炭水化物」的なところはあるのですが、スープになじんでいたと思います。




  武蔵系のラーメンが好きな人は、決して裏切られない味です。上野にはちょこちょこ出没するので、通ってみたいと思います。「赤」や「白」も試してみたいですね。
  胃腸の調子が悪く、つけ麺を食べにというよりは、花見ついでに立ち寄ったお店でしたが、つけ麺について興味が高まりましたし、おいしかったので、非常に気持ちよい一日になりました。


  暖かくなったので、どんどん外出して、いろんなことに挑戦してみるといいですね。

ラーメン道 つけ麺のパイオニア 池袋編②

  久しぶりのラーメン店紹介。今年は年初来寒い日が続き、3月になれば少しは楽になるのかなと思いきや、日中の最高気温が10度以下という日がほとんどで、寒さに弱い私はついつい出不精になってしまいました。これも地球温暖化が原因なのだそうです。暖冬でも猛暑でも冷夏でも温暖化、温暖化、実に都合がいいですね。
  例年、春先は体調を崩しがちなのですが、今年は花粉の飛散量が少ないこともあって、比較的楽に過ごせています。ただ、最近やや胃腸が弱っていて、食欲も減退気味で、ほんのりとした酸味がただよう、煮干しベースのつけ汁が恋しくなり、つけ麺界のパイオニア、東池袋「大勝軒」を訪れてみることにしました。


  東京では、4、5年前くらいから本格的につけ麺がブレイクし、いまやすっかり定番となり、いろんなお店が各所にできていますが、私はそれほどつけ麺に思い入れはないんですよね。
  常々強調しているように、ベーシックな醤油味の東京ラーメンが好きで、そこを基本にしつつ、新しくできたラーメン店に勉強のために、ちょいちょい手を出しているというような感じです。北海道で長く暮らしていたこともあって、味噌ラーメンも良く食べるし、辛い物好きなので担々麺なんかも外せないですが、やはりオーソドックスな醤油味が一番ですね。
  私が初めて東池袋・大勝軒に訪れたのは、15年ほど前ですかね。あまり詳しくはないのですが、現在の大勝軒は創業者の薫陶を受けたお弟子さんが再興したもので、現在とは違う場所で営業されていました。
  大勝軒は当時から大人気で、平日にもかかわらず行列ができていて、2月ごろだったでしょうか、20分ほど待ってようやく店内に入れました。そもそもは醤油ラーメンを所望して行ってみたのですが、味は調っているものの、正直、それほどインパクトはありませんでした。当時、私は荻窪の御三家に首ったけだったので、物足りなさを感じていました。
  ただ、その時、行列に並んでいたほとんどの人が「あつもり」「あつもり」と注文していたのが非常に気になりました。大勝軒でラーメンを頼むのはごく少数派で、みんな「あつもり」が目的で訪れているんだなということに気づきました。
  数か月後くらいに再訪して、初めて「あつもり」を注文したのが、私のつけ麺との初めての出会いです。今では各地に大勝軒の系列店があるので、行ったことがある方はご存知でしょうが、弾力のあるむちむちの麺が印象的でした。
  つけ汁の方は常時、マイナーチェンジはしているんでしょうけど、基本路線は変わっておらず、煮干しベースに酸味を効かせた味は、今も昔も変わっていません。正直、初めて食べた時は、それほど感動しませんでしたね。むしろ、「世の中の人ってこんな味が好きなんだ」と違和感がありました。
  でも、何日か経つと「そういえばあの味って今考えるとちょっとおいしかったのかも」と思わせるものがあって、好きでたまらないってほどではないんですが、定期的に食べたくなる味だなぁと感じつつ、今に至っています。


  かつての大勝軒はこじんまりした昔ながらの店舗で、店内もせせっこましくて、一見さんはやや近寄りがたい雰囲気があったのですが、現在の店舗は首都高のガード下で、サンシャインシティなどの中心部からは外れ、ひなびた感はあるものの、店内は完全に現在風の新興ラーメン店と同じ、こぎれいでシックな感じです。
  以前は店を見つけづらかったのですが、今は都電荒川線や、東京メトロ有楽町線の駅から近く、アクセスしやすくなっています。
  例によって混雑時間帯を避けるべく、午後2時すぎに訪れたのですが、行列はなく、スムーズに入店できましたが、根強いファンや近隣の人に愛されているようで、昼食時間帯ではないにもかかわらず、席は8割がた埋まっていました。


  ゆで玉子がすきなので、ゆであつ中盛り(850円)を注文。かねがね主張していますが、私はラーメンには固ゆでの玉子が合うと思っています。中途半端にとろっとした黄味より、ゆで上がったぼそぼそした黄味(おいしくなさそうな表現ですみません)の方がマッチしていると思います。
  黄味に火が通っていないと、玉子全体がぬるくなってしまい、スープの温度が冷め、おいしさが減退してしまうケースが有名店でも非常に多いです。しかもその方が主流です。
  大勝軒はしっかり固ゆで玉子で、私の基準では上級ランクです。つまらないささやかなこだわりでしかないのですが。ちなみに荻窪・丸福の玉子そばの玉子はおでんのように味がしみ込んだ煮玉子で最上級です。
  つけ麺を始めた人はいろいろいるようで、各地に元祖とか源流を主張するお店がありますが、つけ麺をメジャーにしたのは間違いなく大勝軒ですよね。いまや全国区ですから。
  どの店でも、大勝軒の味が根底にあることは間違いありません。全然違う味付けでも、無意識のうちに影響されているはずです。
  ベーシックな味は期待を裏切りませんよね。私にとって、好きで好きでたまらないというほどではないのですが、ほんのりした酸味、煮干しの香ばしさ、アクセントにちょっと忍ばせている赤唐辛子粉末が、弱った体にじわりとしみ込んでいきます。




  それほどお腹がすいているというわけではなかったのですが、食欲をそそられ、ちょっと多いかなとも思われた、中盛りの麺も難なくクリアできました。これほどつけ麺に感謝したことはかつてありません。すっかり生気を取り戻せました。
  なんだかんだいいつつ、月に1~2回はつけ麺を食べています。いつの間にか、食生活の一部として定着しているのですから、すごいことだと思います。
  最近の東京のラーメン店のトレンドは、スープをあんかけ風にしたものや、具が進化し、とんかつやステーキなど脱チャーシュー化が進んでいるようです。
  つけ麺のように日々の食事の中に割って入るくらいの強さをもち、新たなスタイルを確立できるのか? 注視したいと思います。