なぜ、ドルは安いのか-。本日未明、ドル・円は一時、1ドル=78円台半ばまでドルが暴落。2008年のリーマン・ショック以降、ずるずると円高傾向が続いているにもかかわらず、この疑問に、誰もまともに答えようとしません。政治家も経済界も金融界に身を置く人たちも。
相場には「市場で起きていることはすべて正しい」という格言があります。東日本大震災直後の3月17日に1ドル=76円台前半と史上最高値をつけたのは厳然たる事実だし、その後、日米欧の当局による協調介入で、85円台中盤まで戻したことも、また事実で、私たちは投資家としても、物価が為替の影響を受けるという意味で、生活者としても、これらを粛々と受け入れなければなりません。
目先、様々な要因で、上下するものの、ここ数年、ドルが一貫して、下落トレンドにあることだけは間違いない。大きなトレンドがあるのに、これに対して、まともに向き合おうとしないのは、単なる怠慢か、本当に無能なのか、それとも何か隠された大きな秘密でもあるのかということになります。
当たり前のことですが、再度確認すると、ドルが売られるということは、ドルが市場から信認されていないということにほかならない。そして、大震災で日本が未曾有の国難に見舞われてもなお、マーケットや国際社会ではドルより円を選択する人が多いのです。
私が学生時代、国際経済学の先生から「米国は超大国だから巨額な貿易赤字を出しても、お金を刷ればいくらでもファイナンスできる。市場はいずれ、自然のメカニズムで赤字を是正する方に動くので、何の問題はないんだ」と教わりました。
では、ドルを刷り続け、赤字が人類史上例がない天文学数字に達した時に何が起こるか? それについては何も教えてくれなかった。質問しても、そんなことは「杞憂」だとして、軽くあしらわれた。しつこく追及すれば、変人扱いされたことでしょう。今から、十数年前のことです。
それが今となっては、“変人”の素朴な疑問が、現実のものとなり、今すぐにでも対処方法を考えなければならない喫緊の課題になったわけです。原発問題と似ていますよね。昨年の今頃、「原発がやばい」と警鐘を鳴らしても、誰も聞く耳を持ちませんでしたが、東京電力福島第1原発の事故が起きた今、その懸念は正しかったといえるわけです。
現在直面している、ドル崩落、原発事故、いずれをとっても、日本の指導者層のバカさ加減に辟易させられます。
政治家が役に立たないというのは、前から分かっていたことですが、現場を抱えているはずの経済界の無能ぶりには暗澹とさせられます。
「これ以上、円高が進めば、日本から出ていかなければならない」。じゃあどうすればいいの? 為替介入しろということでしょうか? 日本単独でやっても効果が薄いのは、昨年9月の介入からも明らかになったことで、何ら具体策を示さないで、わめいているのが日本の経済界です。
円高はなるべくしてなっているのです。米国は、金融バクチに興じ、それが失敗し、そのツケとこれから本格的に付き合わなければならないのです。そのことが分かっているのでしょうか?
もし、それを理解した上で、円高是正を求めているなら、日本を破滅させる売国行為にほかならない。国家破産する国を支え、貢いだところで、一時しのぎにはなっても、何も変わりはしない。
1972年のニクソン・ショック以来、問題の先送りをしただけではないですか。米国はモノづくりでも、サービスでも、何をやってもほかの国に勝てないのです。もちろんボーイング、インテル、マイクロ・ソフト、グーグル、アップル、アマゾンなど、優れた企業はあるにはある。でもそれは、米国が軍事力を背景にした、世界帝国であり、そのアドバンテージを生かせるからこそ存在できるのであり、これらの企業と、同じ土俵で、自由競争すれば、日本、韓国、台湾、中国といったアジア勢は間違いなく勝てるでしょう。それらをさらに素晴らしいものに高めることだってあり得る。
米国が競争力があるように見せかけるために、金融を使ったわけです。しかし、ダメ人間は何をやってもダメ人間です。一時は、金融力で世界を席巻したものの、バクチに興じた末に、結局自滅してしまった。
こんな奴らが、世界で偉そうに幅を利かせていた時代は、もう終わったのです。お願いですから、経団連の会長さん、その他、企業トップのみなさん、現実を直視してください。
そして、米国の手先になるのはもうやめましょう。日本が為替介入や、外貨準備で積み上げたドル資産は、どんどん値下がりし、紙切れになる可能性だって出ています。
日本から出て行っても結構です。でも、その先どうするのですか? 結局、中国やロシアに乗っ取られ、いずれあなたたちもお払い箱になるだけです。
大震災後、あらためて、日本の「現場力」に対する評価が高まりました。現実を直視し、自分のなすべきことを着実にこなせる人が尊いのです。当たり前のことを当たり前にやることが大切なのです。
現場はすごいのに、日本の経済トップはなぜこんなに無能なのか? いまだに米国に対するコンプレックスが強いのか? 不思議なことばかりです。
米国と付き合っても、今まで以上に、自動車やテレビを買ってもらえるわけでなく、それどころか代金を踏み倒されるだけの話です。今こそ米国と決別し、新しい枠組みで考えるべきでしょう。好むと好まざるとにかかわらず、中国との関係も再構築しなければならない。
米国が没落してから考えていてはもう遅いのです。ダメ人間との関係はきっぱり清算し、未来志向で進んでいきたいものです。