常に状況認識をあたらにせよ
この連載で指摘し続けているように「危機は進行する過程で必ず人災化する」。最初からそのように想定するのが世界の危機管理の常識である。米国の専門家は「福島の原発事故は人災化の典型例ではないか」と言う。ハーバード大学でも多くの専門家が「原発事故への対応をはじめとする政府の危機管理全般について、“人災化過程”を研究したい」と強い関心を寄せている。この件については次回以降で書いていきたい。
結論から言えば、危機の人災化を防ぐことができるのはリーダーシップだけである。「ハーバード流危機管理の要諦」と題した一連のコラムの冒頭で「最も愚かなリーダーが指揮を執ることを想定して危機管理を構築するのが最先端の危機管理の哲学である」と紹介した。
消費税増税は、震災復興の財源として不適切である。もし増税するなら、税率を一気に10%引き上げるべきだ。小幅の引き上げでは、増税分を価格に転嫁することができず、つらい思いをする中小・零細企業、商店が続出する。一方、消費税率を一気に10%引き上げたら、消費不況はますます深刻化するだろう。復興は遠のく。
従って、復興のための財源は、どうしても国債発行に頼らざるをえない。しかし、ただでさえ国債の発行規模が大きい日本で、さらに発行する国債がきちんと消化されるだろうか? 強い不安を抱く人たちが出てくる。直接、日本銀行に引き受けさせるべきだ。いや、日本銀行に直接引き受けさせてはならない。そんな論争も起きている。
3月11日の東日本大震災をきっかけに、不動産市場を巡る、これまでの常識が大きく揺らいでいます。
マンションデベロッパーがこぞって開発してきた高層マンションは予想を超える振動を経験し、液状化現象で地盤沈下に見舞われたウォーターフロントの住宅地にも注目が集まりました。停電発生で電力会社が進めてきた「オール電化」も見直しの機運が高まっています。いわゆる「帰宅難民」になった人々は、従来以上に職住接近を求め、何よりも建物の耐震性を重視することになるでしょう。
今回の特集では、震災が不動産市場にどんな衝撃を与え、そしてマイホームやオフィスを探す人々の「常識」がどう変わったのかを徹底検証しました。
カセットコンロから家庭教師まで、震災後に特需が起きた。財布のひもを締めるはずの不安感が、むしろ消費の原動力に。この需要、建材などの「復興需要」とはやや趣が異なるようだ。
小売業にとって、消費者の「不安感」ほど怖いものはない。先行きが不透明になれば、消費でなく貯蓄に回すのが消費者心理の常。ところが震災後の消費動向をつぶさに見ると、その定説とは正反対の動きがあるようだ。
オール電化のキッチンでは停電時に煮炊きができない。頼みの都市ガスも大地震では止まる。そんな現実を目の当たりにした消費者が買いに走ったのがカセットボンベや卓上コンロ。50%以上のシェアを持つ岩谷産業は「通常時の3倍以上」(同社広報)という需要に応えて増産に取り組む。
復興計画の検討が本格化すると同時に、復興財源を巡る議論も熱を帯びてきた。消費税率の引き上げか、所得・法人税の増税か、あるいは新税の創設か。いずれの増税策も、政府が国民の信頼を得られない限り、実行することはできない。
政府による復興計画の検討と同時に、復興に必要な財源を巡る議論も熱を帯びてきた。
内閣府の試算によると、東日本大震災の被害額は民間企業の設備や道路、港湾といったインフラだけで16兆〜25兆円。総額では30兆円以上に膨らむといった民間の試算もある。阪神・淡路大震災の時を上回る巨額の財源が必要になることは避けられない。
5月2日の成立を目指す2011年度第1次補正予算案では、基礎年金の国庫負担に充当するはずだった約2兆5000億円の転用や高速道路無料化の凍結などで計4兆153億円を捻出したものの、必要額にはまだ遠い。