3・11ショック(巨大地震、大津波、原発事故)は、短期的な景気の変動に空前の影響を及ぼしつつある。津波が経済を襲うようなものだ。日本は短い間に、かつて経験したことのないような大きな景気の波動を経験することになるだろう。それは「急激に落ち込んだ後」に、一転して「急激に経済活動が回復する」という大きな波となるだろう。
もう一度ストックとフローについて
前々回のこのコラム(3月23日)では、大震災直後でまだ具体的な材料が乏しい中で、概念的な整理だけを行った。要点だけもう一度述べておこう。
震災の経済的影響としては、まずストックが大規模に滅失する。同時にフローの経済活動もレベルが下がる。ここまでが「フェーズ1」の局面である。
不慮の大震災に見舞われた日本の景気が世界から取り残されつつある。欧米で高まる利上げ機運が助長する円安は、輸入で復旧・復興を支えるには痛手だ。日本経済の地盤沈下を最小限に抑えるため、復興策のスピード感が問われる。
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東日本大震災から1カ月余りが経過し、外国為替市場では、円相場が主要通貨の中で独歩安の様相を強めている。震災発生直後こそ1ドル=76円25銭の最高値をつける波乱はあったが、その後の1カ月で10円近くも急落。約半年ぶりの円安水準となる85円台まで押し戻された。「日本売り」を想起させるこの動きは、勢いづく海外景気とは裏腹に、未曾有の災害にもがく日本経済の不透明さを映し出している。
政府では復興に向けた財源調達や被災地企業の支援について活発な議論が始まっている。米カルフォルニア大学サンディエゴ校の星岳雄教授は、ここでどのようなアプローチを取るかで、20年の停滞を続けていた日本経済が今後変革できるか否かが大きく左右されるとみる。
バブル崩壊後の日本の財政金融政策に関する数多くの実証研究で知られる星教授に3月31日、話を聞いた。(聞き手は日経ビジネス記者、広野 彩子)
——東日本大震災が今後、日本経済に与えるインパクトについて、どうご覧になりますか。
星 岳雄(ほし・たけお)氏 プロフィール米カルフォルニア大学サンディエゴ校教授。1983年東京大学教養学部卒、88年マサチューセッツ工科大学から経済学博士号(Ph.D)取得。
東日本大震災、福島第1原子力発電所の事故で、日本の食卓が脅かされています。魚、野菜、コメ……日本の“食料基地”東北地方を襲った天災、人災の影響は計り知れません。
日経ビジネス4月18日号の特集で取り上げたのは「食の危機」。私たちの食卓はどう変わってしまうのか、日本は今後食料問題にどう対峙していくべきなのか、総力を挙げて取材しました。
私事で恐縮ですが、生まれてこのかたスーパーでワカメを買ったことがありませんでした。親の実家は三陸地方。ワカメやホタテの養殖を生業としており、いつも送ってもらっていたからです。複雑に入り組んだリアス式海岸は天然の良港で、被災地域県の養殖ワカメのシェアは79%。