アナログ放送終了
本日正午、東日本大震災で被災した、東北3県を除いて、地上アナログ放送が終了し、デジタル放送に移行しました。
この数年で、薄型テレビの性能が格段に向上し、世帯普及率も高まっているので、時代の流れだと思います。しかし、“電子立国”日本としては、遅すぎはしないか。この意思決定の遅さは致命的とも言えるでしょうね。誰かがリーダーシップを取って、もっと早くやるべきだったと思いますし、まだ経済に勢いがあったリーマン・ショック前に実現していれば、日本の電機業界は違った展開をたどっていたことでしょう。
韓国では、過去の植民地支配を許してしまった反省や、1990年代の経済危機を経験しているので、世界の流れに取り残されることに対して危機感が共有できており、国民全体に一体感がある。それがサムスン・グループや現代グループの活力につながっています。
日本の場合は、米国に脅されたり、いかさま「グローバリゼーション」に対しては敏感ですが、本当に何が必要なのか、何をすべきかといったことについて、非常に鈍感です。
当初、地デジ移行に難色を示していたというのが、ほかならぬ電機業界というのが、何ともやりきれませんよね。国全体の競争力向上や消費者のメリットよりも、ブラウン管テレビやアナログテレビ研究開発、投資回収にしか関心がなかった。巨額な投資を強いられる放送局側の意向も働いたともいわれています。
こういう利害が対立する場面で、政治家が泥をかぶってでも、説得や調整に回らなければならないはずですが、だれも火中の栗を拾おうとしませんでした。
意思決定の遅れが、国際競争力の低下に直結してしまう、同じような構図が、本当の意味での規制緩和、産業誘致、農業の国際展開、発電所などインフラの輸出、ハブ空港、中枢港湾整備などにあらわれていますよね。
ブラウン管テレビが主流だった、10年前、シャープが日本のテレビをすべて壁掛け(薄型)にするという野心的な目標を打ち出しました。本来、業界をリードすべき、ソニー、パナソニック(当時は松下電器産業)などは、様子見を決め込んだわけです。
それが市場に受け入れられるようになって、猫も杓子も薄型テレビに参入するようになりました。富士通やNEC、三洋電機、パイオニアなども、薄型テレビを出していたわけですが、体力のないメーカーは徐々に淘汰されていきました。国内市場だけではペイしないので、海外展開できる投資ができるかどうかということが分岐点となりました。
薄型テレビ普及の過程で、液晶VSプラズマの戦いもあった。当初は、小型は液晶、大型はプラズマというすみわけがあり、シャープなんかもプラズマパネルを外部から購入し、商品ラインナップにプラズマテレビがあった時代がありました。ソニーもしかり。富士通なんかはむしろ、プラズマメーカーでした。
ところが、薄型パネルの大型化の技術が急速に発展し、プラズマと品質、価格面でそん色のないレベルに達してしまった。プラズマテレビの筆頭格だったパナソニックは、液晶パネルの製造会社を日立と共同で設立する状況に追い込まれています。
今では、テレビ用のパネルを自前でしかも国内で製造しているのはシャープと、パナソニックだけになってしまいました。他メーカーは台湾や韓国のメーカーからパネルを仕入れています。
今年の株主総会でパナソニックは、プラズマと液晶の二正面戦略を余儀なくされていることに対して、株主から「過剰投資ではないか」と責め立てられました。しかし、プラズマ、液晶のいずれの工場も稼働率が非常に高い状態が続いており、現経営陣は2正面戦略を続ける方針をあらためて確認しています。
しかし、今やテレビは「1インチ1000円」の時代です。売れ筋の32型や37型などは3~4万円も出せばかなりの性能のものを買えてしまいます。数年前まで「1インチ1万円」とか「5000円」と言われていたので、いかに価格破壊が進んでいるかがうかがえます。
日本企業は高い技術力を武器に、高付加価値のハードを売って稼げるところが強みでしたが、韓国、台湾勢に加え、中国が実力をつける中、そのビジネスモデルは崩れつつあります。
私は物持ちがいい方なので、7~10年という長いサイクルでテレビを買い替えています。エコポイント制度を利用して、ようやく昨年11月に地デジ化し、3D機能も一応、導入しました、次に買い替える時は、どんなテレビになっているのか? 日本のメーカーは生き残っているのか? テレビの将来像がまったく見えません。
おそらくネット接続機能やビデオ・オンデマンド機能なんかがさらに進化するのでしょうけど、それほど目新しい技術ではありません。何か画期的なブレークスルーはあるのか? 将来の道筋を示すことこそが、政治家や企業トップの仕事ではないでしょうか?