中国の底力

  中国浙江省・温州市で23日に起きた、高速鉄道の事故は世界に衝撃を与えました。日本でも翌日の新聞各紙は1面トップで大きく扱っていました。中でも朝日新聞は、中面や社会面でも、中国高速鉄道の技術上の問題点や、現場の模様を生々しく伝えており、かなり力が入っていました。
  全体的な論調としては、日本そして海外ともに、平たく言えば「中国そら見たことか」という感じでしょうかね。鉄道のスピードを上げることはできても、それを管理するシステムがしっかりしていないと、いずれ大事故が起きるであろうことは、事故前から各方面で指摘されていたことです。それに加えて中国では、「おから」と言われるずさんな工事もあちこちの現場で横行していて、建設上の不備も指摘されています。
  今回の事故については、海外のこうした論調に歩調を合わせるように中国国内でも批判が高まっています。そして何より、世界を驚かされたのは、事故原因の究明のあり方ではないでしょうか。衆人環視の中、事故があった先頭車両を地中に埋めてしまうという、世界的に見てありえない対応でした。いかに中国で、人命が軽んじられているかをうかがわせる象徴的なシーンであり、ショッキングでした。
  でも、こんなセンチメンタルな反応をしていても、中国という国とはまともには付き合えないでしょうね。中国は自分たちの目標に向かって意志を貫き通すでしょう。そのためには多少の犠牲を払っても何とも思わない。
  交通網を整備することは、国家運営上の重要な課題です。中国という国はやはり、長い歴史を持っているだけあってそれをよく熟知しています。かつて日本が満州国を建設した時、南満州鉄道が重要なファクターとなったことを思い出すべきでしょう。中国がチベットに鉄道を引いたのも同様です。鉄道、そして道路、現代では空路が政治、経済、社会、そして軍事面で、大きな意味を持ちます。
  日本でも、無駄と言われても、今でも道路整備に多額の公共事業予算が投入されているのは、やはり、それが必要だからです。東京都心と周辺部の高速道路網の貧弱さは、国力に直結する問題だし、今回の大震災で東北の日本海側の道路網が十分整備されていないことが分かり、人命や国土保全上問題があることが露呈した。ほかの地方でも同様の問題を抱えているでしょう。
  中国は、日本のようなナイーブな国ではなく、やると決めたことはやる国です。だから日本やヨーロッパから高速鉄道の技術を盗んででも、“独自”のものを確立してしまった。
  確かに、各国のメディアが指摘するように、今回の事故であらゆる分野で中国に対する信頼は失墜するでしょう。それでも、中国は意志を曲げることはないと断言します。
  貧しい国では、安上がりで高速鉄道を整備できるなら、のどから手が出るほどほしいわけです。ドイツや日本のように、金持ち相手にお公家様のような商売をしていては、物は売れません。中国はこれからも国内、ユーラシア大陸全体に高速鉄道網を拡大するだろうし、貧しい国にどんどん売り込んでいくでしょう。
  私たちは、そういう恐ろしい国と対峙して、生きていかなければならないのです。原発の放射能問題もそうですが、重箱の隅をつつくようなことをしていてはだめでしょうね。
  放射能は確かに人体に有害であるけれども、福島第1原発事故では、直ちに人が死ぬようなレベルではないし、すでに事故は収まりつつあり、現在まき散らされている放射能の量も、影響に個人差はあるでしょうが、がんになる確率を数パーセント引き上げる程度のものです。
  何よりも、私たちはこれから、セシウムの半減期である、30年後まで少なくとも、平常時より高い放射線量と付き合っていかねばならない。時々異常に放射線量が上昇するとかなら、警戒しなければならないですが、1号機、3号機の建屋爆発以降は、放出される放射能は一貫して減っているのです。なぜいたずらに不安をあおる必要があるのか?
  中国についても同様、個人の尊厳などというものは存在しないということを、今回の事故であらためてあぶりだされたわけですが、こんなことでめげる国ではない。すでに事故があった区間では、高速鉄道の運転を再開しているのです。1カ月も経てば、事故のことさえ、忘れてしまう人がほとんどではないでしょうか。
  はっきり言って、嫌な国なのですが、私たちは、中国からいろんなことを学ぶべきだし、付き合い方を考えるべきでしょう。しょうもない米国みたいな国と、つるむより、その方が、よほど刺激的だし、得るものは大きいはずです。
  日本も、これにめげず、世界中に「一番安全な」原発を売り込むくらいな貪欲さを見せてみてはどうか? 米国製の欠陥原発を即刻廃止する以外に、国内の原発を止める理由はないはずだが。