勝ちパターン

  日本シリーズは、シーズン中からパ・リーグのレベルが高いので、福岡ソフトバンクホークス有利とみて、あえて予想は書きませんでしたが、序盤のソフトバンク本拠地2連戦で、中日ドラゴンズがチェン、吉見の2枚看板と、最後は浅尾、岩瀬へのリレーで、厳しい投手戦を制し、2連勝し、一瞬、「おや!」と思いました。ソフトバンクはファルケンボーグ、馬原のセットアッパー、リリーフがうまく機能せず、もたつきました。
  ただ、ご存知の通り、第3戦~第5戦はナゴヤドームで、ソフトバンクが今度は3連勝。ソフトバンクの投手陣はリリーフに不安を抱えますが、自慢の破壊力ある打線が道を切り開きました。
  序盤は中日の勝ちパターン、中盤はソフトバンクの勝ちパターンがうまく機能し、それぞれのチームに流れが傾きました。逆転王手をかけたソフトバンクがこのまま逃げ切るのか、中日が食い下がるのか、非常に興味深い展開となりました。私はソフトバンクが強いと予想します。
  野球に限らず、ほかのスポーツでも、ビジネスでも、勝ちパターンを確立することが大切です。トレードでも、もちろんそうです。「どういう場合に自分は勝てるのか」ということを常に意識することが大切で、分の悪い勝負はなるべく避けることが勝ち続けるためには、重要です。
  年内に金融市場で大きな動き(クラッシュ)があるのかどうか。今のところまだ分かりませんが、遅くとも来年前半には深刻な局面は必至だと思います。
  今度の金融恐慌は、ソブリンリスクという、国家レベル、あるいは国際的な金融システムの信頼の根幹にかかわる問題なので、金融機関や一部自動車メーカーの経営問題にすぎなかった(問題が矮小化された)リーマン・ショックとは規模や衝撃が桁違いでしょうね。
  失業や自殺の嵐が吹くことでしょう。平和だった日々に突然、東日本大震災、東京電力福島第1原発事故が起き、私たちの生活や、世の中の空気が一変したように、今はまだ実感が持てませんが、来るべき時が来たら、世界の様子は全く変わってしまっているでしょう。一気に暗いニュース、つらいニュースの津波が押し寄せることでしょう。
  一人でも多くの人が希望を捨てずに、生き残ってほしいと思いますが、もし、生き延びることができるならば、私たちは前を向いて進まなければなりません。その時に大切なのは、目標であり、希望だと思うのですが、その時にベースになるのは、どうやって新しい勝ちパターンを構築するかということだと思います。
  勤勉に働き、高品質ですみずみまで細かい気配りの行き届いた工業製品をつくり、世界に輸出するという、ビジネスモデルを構築したのは戦後日本ですが、その勝ちパターンは、これまで何度も指摘しているように成り立たなくなっています。
  韓国、台湾、さらに中国が製造業のレベルを高めており、モノづくりの分野では競争が激化しており、さらに生産技術の向上で、世界的に過剰生産状態にあり、モノづくりはもちろん、産業の中では大切な位置を占めることには変わりないのですが、経済全体を引っ張っていく力は昔と比べると、弱くなるということは避けられないと思います。
  電機や自動車などの産業は、このところの円高傾向や、東日本大震災、タイの大洪水によるサプライチェーンの問題もあって、日本での生産が厳しくなっています。だからモノづくりの中でも、完成品を輸出するというビジネスモデルは厳しいですね。
  それでも米国のように巨額な貿易赤字を出さずに済んでいるのは、中国の富裕層というマーケットがあること、それに工作機械や検査機器など工業生産を支援する分野は、日本が突出して強いこと、自動車や電機などに不可欠な部品の中には日本でなければつくれないものが少なくないことなどが挙げられると思います。
  こうした、日本人の職人気質が今なお必要とされる分野や、日本人の感性でなければつくれないハイエンドな製品は、国内生産にこだわるべきでしょう。
  また、これからは、建設現場や、介護など、肉体労働をサポートするロボットなどは、高い技術を組み合わせなければならないので、日本人が得意とする分野ですね。こうした分野への研究開発や設備投資は惜しむべきでないでしょう。
  あと、最近少しずつ注目されているのは、日本のサービス業の質の高さですね。流通、小売りなんかそうだし、外食も面白い分野です。
  少し前に「ユニクロ」がニューヨークに旗艦店を出店したニュースが話題になりましたが、日本流のきめ細かい品ぞろえ、店員の接客マナーが米国人に受け入れられれば、かなりチャンスは広がります。ターゲットとする層が微妙に異なりますが、「ギャップ」とか「H&M」「フォーエバー21」なんかがライバルだと思いますが、ユニクロは日本人の感性を生かしたサービスで注目を引きます。旗艦店から、生活圏の店舗へと広がっていけるかどうか、興味深いです。
  日本のデパート、スーパーなんか、もっともっと出て行けばいいと思いますし、コンビニなんかはすでにアジアを中心にかなり世界を席巻しつつありますよね。外食なんかはこれからでしょうけど、牛丼のほかにも、回転寿司でも、ラーメンでも、居酒屋でも、カレーでも、てんぷらでも、売り込んでいければいいのだと思います。
  日本人のサービス精神は、海外に出れば結構、光るものがあります。それを日本人が気づいていないだけの話で、ビジネスのチャンスはかなり眠っています。宝の山なのです。そこは最近の日本人の引きこもり傾向の弊害ですね。
  売れるものはあっても、本当にビジネスとして成り立つのか、まだまだ未知数の部分が多いし、軌道に乗るまでは気長に努力していかねばならないでしょう。また、ポテンシャルはあっても、成功しないケースも出てくるでしょう。
  そういう中で、一つでも二つでも勝ちパターンを見つけていければいいのではないでしょうか。欧米人にも、中国人にも、韓国人にもない、素晴らしいものはたくさんあります。こう考えれば、結構、未来は明るいと思います。