このところ堅調に推移していますけど、それでも、金融市場を日々ウォッチしていると、昨年来、米国の株式市場をはじめ、世界の金融市場は、訳の分からない動きを続けています。私たちの身近な日経平均、ドル・円、ユーロ・円をはじめ、欧州株や欧州危機の影響をそれなりに受ける中国株に至るまで、ちょっとした材料で一喜一憂し、迷走状態です。
私なんか特にそうですけど、トレーダーは基本的には短気な人が多いし、相場のわずかな変化や動きに乗らないと利益を上げられないので、意味のない動きをする時間帯が長いと、本当にストレスがたまりますね。丹念に値動きや売買動向を追って相場を読み解いていく必要があるのですが、その一方で、あまりのめり込むと、冗談抜きで精神を病んでしまう恐れがあるので適度な距離感が必要です。
現在は、長らく世界をしてきた、欧米が衰退し、没落する真っ只中にあります。単に株が上がっただの下がっただのという、せこいレベルで物を見ていると大局を見失います。今、注目が集まっている消費税や、年金、福祉、健康保険をどうするかといった問題や政局も同様、従来の延長では対処できない状況なので、なるようになる(欧米が堕ちるところまで堕ちる)のを待ち、そこからスタートしないと、何事も始まらないのです。
家が火事に遭い、まだ火が燃え盛っていて、隣近所にも迷惑をかける恐れがあるのに、新しい家をどうするかという話をしているようなもので、鎮火し、すべての状況が明らかになるまでは、具体的な行動を起こすべきではないでしょう。もちろんある程度の想定はしておいて、いざ行動を起こすべき段階になったら、迅速に動けるように心構え、準備をしておくことは大切ですが。
いつも言っているように、現在の段階は欧米が没落に向かってはいるのですが、悪あがきをしているので、ちょっとした乱気流が起きているような状態です。大きな流れは変わらないのですが、生存本能が残っていて最後の命の火をともしているような状態です。
そりゃ、欧州は500年、米国は100年も世界を支配してきたのです。覇権を握ることのうまみや利権の上に乗っかっており、そうやすやすとは覇権を手放すことはしたくないでしょう。また、豊かさボケで、自分たちが没落の途上にあるとは認識できていないし、認識したとしても簡単には事実を認めたがらないという面もあるでしょうね。
NYダウは米国の財政破たん懸念から、昨年8~10月にかけて10500ドル近辺まで下げ、そこから13000ドル手前まで上昇しました。上昇幅は実に2500ポイント。
翻って日経平均を見ると、ダウと連動する形で、8100円あたりまで下落し、一応反転はしましたが、反発の勢いは弱く、9000円台にちょっと戻すのがせいぜいです。底値からは900ポイント上げたにすぎません。
一方、ドルは為替介入が入るので面倒なのですが、基本的には軟調(円高)に推移し、7月の80円台から、76~77円台で滞留する時間が長く続き、5%ほどの円高が続いているでしょうか。
円高を加味しても、ダウの異常な高さと、日経平均の低迷が際立ちます。日経平均だけでなく欧州、中国なんかも概して株価指数は底ばう時間が長かったので、金融緩和とそれに伴う通貨切り下げで、不当に米国が株価を吊り上げている構図がありありとうかがえますね。
ダウの水準からして、私は日経平均はすんなり、9000円、9500円、あるいは1万円の水準を回復できるのかとちょっとだけ期待しましたが、なかなか動いてくれませんでした。政策対応の力を借りてようやく動いたという感じで、インチキがなければ成り立っていない相場です。
米国株だけ突出して高いという状況は、リーマン・ショック前もありました、ダウの上昇に比して、日経平均、欧州各国株の出遅れが目立つ局面は随所で見られました。
ただ、そんなときでも、最終的にはある程度は、日本、欧州は出遅れを取り戻し、米国株が伸びきったところで、追い上げましたが、もはやそういう状況は望めないようです。
まさに“パクス・アメリカーナ”の終焉と言えるでしょうね。いままでは、米国が豊かになれば、日本、欧州もおこぼれにあずかれるという「ウイン・ウイン」の関係でいられましたが、もはやなりふり構っていられないということでしょう。ついこの間まで米国が世界経済をけん引しているということを株価から実感できたのですが、もはやけん引する力がなくなったということです。株価の連動性が薄れたことが何よりも、厳しい現実を物語っています。
むしろ米国は自らが生き延びることに汲々としており、他国を蹴落とすことなど、いとわないでしょうね。金融緩和や通貨安で他国に迷惑を掛けたり、借金を踏み倒したりと、今後も手段を選ばず、何でもやってくるでしょう。
だから、いずれ大きな崩壊が訪れるでしょう。とはいうものの、いつまで米国株が高い水準を維持するのか、見通せず、長丁場も覚悟しなければなりません。一つ言えるのは、いつまでもこのような状態を続けるのは不可能でしょうから早かれ遅かれ、大きなツケを払わなければならない時が来ます。我慢強く待つしかありません。
米国の国家破綻に乗じて、あるいは蹴落として、生き残る準備を今から、しっかりしておく必要があります。テンションや根気を維持するのはなかなか大変ですが、信じて待つしかありません。