今年は4年に1度の米大統領選挙の年。米アイオワ州で行われた共和党の党員集会で、実質的に選挙戦がスタートし、穏健派(とされる)ロムニー前マサチューセッツ州知事が、強硬派(とされる)サントラム元上院議員との接戦を制し、8票差という僅差で勝利しました。
日本の陰謀論者の人たちの“希望の星”でリバタリアンのポール下院議員も善戦しましたが、一歩及びませんでした。
たまに、このブログにも陰謀論者の人のコメントが寄せられますけど、前にも言ったことがありますが、私は陰謀論は信じていません。要は世間では認められず、何の努力もしない、引きこもりの人たちが「おれはこんなすごいことを知っていてえらいんだ」みたいな自己顕示欲で、陰謀論を信奉しているにすぎないということです。
その人たちはポール氏の論文とか報道される発言などをきちんと読みこなしているのでしょうかね。ポール氏の支柱となっているリバタリアンの思想は、引きこもりの陰謀論者の思考方法とは真逆にあります。
誰にも頼らず、自分自身の力で生きていくという、一見かっこいいですが、なかなかそれを個々人が実行するのは難しく、自分自身に厳しい思想であるということは言うまでもありません。
他人を批判するだけで、自分自身を高める努力をせずに、のうのうと生きている、そこらの引きこもりの連中が安易に信奉できる思想ではないのです。そこを理解した上で、ポール氏について語るべきでしょうね。
私自身は、陰謀論信奉者がからんでくるので面倒臭いので、ポール氏について全くこれまで論評してきませんでしたが、考え方に共鳴する部分は少なからずあるし、立派な人物だと思っています。気骨を持った米国人で尊敬もしています。
米軍普天間飛行場の移設問題に関しても、日本のメディアのインタビューなんかに答えていますが、米国は過剰に外国に介入すべきでないという考え方や、日本は自分で自分の防衛を考えるべきだという考え方は、全くもって正論だと思います。
共和党で大統領選立候補者として取りざたされている人の中では、一番まっとうなことを言っているし、「こういう人が大統領になったらならいいな」とも思っています。
しかし、選挙に勝てるかどうかというのは別問題ですね。陰謀論的に言うと、「ポール氏は、今なお猛威を振るっているネオコンの連中とは全く違う考え方で、目の敵にされているので、人気が出る前につぶされるだろう」という、これはいつの時代でも政敵は徹底的につぶされる宿命にあるので、妥当な考え方だと思います。
ポール氏が抜きんでようとすれば、出る杭を打とうという動きは強まることが予想され、現にそうなっているので、異論はあまりありませんが、それ以前に、ポール氏の考え方が米国民に広く受け入れられるかどうかという問題もありますね。
リバタリアンの思想は、米国の開拓者精神を体現したものですが、今の疲弊し、落ちぶれた米国にとって、個々人が奮起し、自立を促すことも必要ですが、まずは、立て直すためには、弱者を救済しなければどうにもならないでしょう。お互いに切磋琢磨しながら、自立性を高めることは大切ですが、そのためにはすべての人に対して機会を平等に設けなければなりません。
そのためには民間の力を最大限活用することも必要ですが、ある程度は政府の役割も重要になってくると思います。そのあたり、政府の介入を極力排除するという、リバタリアンの考え方は理想論にすぎないのではないだろうか、現実はそううまくいかないのではないだろうか、という疑問も生じます。
それに、それぞれの人の利害もからんでくるでしょうから、ポール氏が仮に大統領になったとして、政府の役割を縮小して、個人の自立を促したとして、どれだけ具体的なメリットがあるのか、それは実現可能なのか、ということをわかりやすくアピールしないといけないでしょうね。見る限り、その部分が欠けていると思います。
私は基本的には米国人はバカだと思っているし、どうしようもない国だと思っていますが、その人の思想信条が何であるか、どういう政策を打ち出すかがオープンになっている点で、米国の選挙システムは、優れていることは認めます。
一応、あの選挙では私は支持しましたが、訳のわからない橋下徹という人物が圧勝したり、郵政改革旋風が吹いたと思えば、今度は政権交代の風が吹くという、思想信条、政策よりも、風によって左右される日本の政治状況を見るにつけ情けないですね。
ポール氏が勝つ要素はあまりないと思っているので、世間の皆さんほど、私は熱狂はしませんが、ティーパーティー運動が米下院議員選挙で一定の支持を集め、存在感を示したように、ポール氏がそれなりにまとまった得票を獲得することで、あの国を動かしている人たちも無視できなくなるでしょうから、一定の効果を挙げることでしょう。期待するとしたらその辺りでしょうかね。