今年は「中国に対する先入観を取り払うべきだ」としつこく言い続けるつもりですが、そのようなことを言っている時点でもはや出遅れているし、負け組だと思っておいてください。歴史が動くスピードは、どんどん速くなっています。すでに人より遅れているのだから、今日、明日にでも行動するくらいのスピード感が必要です。
中国は英国や米国から遅れて、100年も200年も後に台頭する帝国なので、今までの世界帝国と何が違うのかを分析する必要があります。英国や米国は他国に戦争を仕掛けたり、虐殺をはじめ野蛮の限りを尽くして、のし上がった帝国ですが、さすがに21世紀なので、そうそう無茶はできません。
もちろん、すでにいろいろと報じられたり、巷間言われているように、中国が野蛮な部分を残していることは事実だし、国内の少数民族や、海外進出した現地の人々と摩擦があることは事実です。そういう面をクローズアップすると中国に対する嫌悪感しか持てないでしょう。
また、国際政治の舞台は、日本人が考えているような甘い世界ではないので、中国は手持ちのカードを最大限に生かすべく、いろいろと嫌がらせをしてくるでしょう。それに対しては、こちらもしたたかに対応していく必要があるし、的確に反応しないとやられっぱなしになります。逆に中国自身が学ぶ面もあるでしょう。
ただ、それは政治の仕事であり、はっきり言って私たちの日常生活とは全く関係のない、浮世離れした世界です。すでに経済では、中国を中心に世界は回りつつあるし、無視できない存在です。というよりは、中国の動きについていかなければこの先数十年、すくなくとも5年、10年は食いっぱぐれることになります。決して侮ってはいけないのです。
中国が台頭するということは、とりもなおさず、世界の中心がユーラシア大陸内部に移るということです。ということは必然的に、私たちの住む、日本列島というのは、世界の辺境になってしまうということです。
15世紀以降の海洋の時代では、海を通じて人や物が動いたので、海に囲まれている日本は、“極東”ではあっても、それなりに交通の要衝でもあったので、アドバンテージを得ることができましたが、これからは、地理的に劣勢であることを認識しておく必要があります。
「移動手段に飛行機があるし、インターネットで世界とつながっているじゃないか」という意見もあるでしょうが、じゃあ、移動が容易で情報のやり取りが容易になったからといって、たとえば北のはずれの稚内に脚光が集まりますか? 沖縄の離島に人が集まりますか? 住みやすくなりましたか? と問いたいですね。
米国なんて、広大な平野が広がり、しかも自然豊かで、人間が暮らすのに適した気候です。空港もネット回線もあります。にもかかわらず、世界の誰からも注目されない田舎都市しかありませんね。
やはり人や物、金、情報が集まるところが世界の中心なのです。ユーラシア大陸内部に世界の人口のほとんどが集中しているわけだし、そこに都市ができ、人や物、金、情報が集積すれば、新しい“帝都”ができるのです。そのダイナミズムを理解する必要がありますね。
英国や米国は時代のスピードが遅く、しかも限られた条件の中での帝国だったのですが、これからできるのは公害や水、食料、エネルギーなど技術的な課題が次々とクリアされ、制約がどんどんなくなっていくなかでの新しい帝国です。
今までの発想を根本から変えなければなりません。これからの時代にどういったものが必要とされ、売れ行きが良いのか。あるいは嗜好され、人気を博すのか、絶えず研究を怠らないようにしたいですね。
少なくとも、日本は人が集まるような仕掛けづくりが必要ですね。今はまだ中国人というと、貧しく、品がなく、犯罪集団みたいに見られているし、現にそうですが、レベルの高い層を引き付けなければならないし、大陸との間で頻繁に行き来し、活動するような人を育てていかないといけないですね。
日本人は自意識過剰で、被害妄想が強いですが、中国における日本のプレゼンスは明らかに低下しています。日本にとっては大きな貿易相手でも、中国からすると、どんどん役割は低下しています。そのうち、見向きもされず、こちらから努めて関心を引かないといけないような時代が来るでしょうね。
中国の正史などを見てもわかるように昔から、中国にとって日本は取るに足らない小さな国なのです。それがたかだかこの100年かそこら、先に近代化したので、立場が一時的に逆転したにすぎない。これからは本来あった位置に戻るにすぎないのです。
しかも米国の衰退が明らかになれば、資源でもない限り、中国が海洋に乗り出してくる必要性は低下するでしょうね。日本に大きな米軍基地があり、いろいろとちょっかいを掛けてくるので、中国の海軍力増強なんて話が出てくるのです。
米国がいなくなれば、そのうち海洋に対する関心はうすれるでしょうね。まあ、漁業とか海底油田など最低限の権益は守るだろうし、一応、日本、韓国、フィリピン、ベトナムに対するけん制もするでしょう。ただ、関心は内陸に向かうでしょうから、ウエイトは必然的に下がるでしょう。海には人はいませんし、いても船に乗れる人数しかいませんが、陸にはうじゃうじゃ人がいるので、どうしても緊張が高まります。
日本人など、大陸の端っこにある、カスみたいな島々に住んでいる、土人にすぎないし、江戸時代まではその程度の扱いでした。
だから、私たちは自分たちの立場や立ち位置をもう一度、確認する必要があるし、これからの時代、よほど努力しないと世界から振り向いてもらえないということを認識しなければなりません。