静かなる崩壊

  昨年も何度か、同じようなことを書いた記憶があるのですが、欧州にせよ米国にせよ、一気にどん底に落ちるのではなく、じわりじわり、ゆっくりとしたスピードで転落していくのは、日本にとってあまり歓迎すべきでない状況です。
  よく陰謀論なんかを信奉している人は、悪だくみの元締めの一派が、米国を計画倒産させて、世界を壊滅状態に追い込み、そこから再び、新しい世界秩序を牛耳るみたいなストーリーがあるみたいに言い立てますし、私自身も米国に寄生している連中が米国を見捨てるのかなぁと漠然と思っていました。だから、崩れるときには一気にくるのかなと予想していました。
  しかし、米国の財政破綻がいよいよ表面化した、昨年夏以降の動きを見ていると、米国を見限るところか、株価を不自然な水準にまでつり上げ、そう簡単には売り崩せないような状況になっています。
  それに表面上だと思いますが、このところ異常に中国に対して対抗心を燃やしますよね。いまさらながら「アジア重視」みたいなことを言い出し、TPPにこだわってみたり、普天間飛行場の移設について高飛車な姿勢を崩さなかったりと、未練がましい動きに出ています。
  また、イランへの戦争を視野に対イラン原油禁輸などで圧力を強めたり、北朝鮮の総書記死亡に乗じて、いろいろとちょっかいを出してきます。
  物理的に距離が離れていて、歴史、文化的にも米国がアジアに君臨し続けるのは難しいと思うんですがね。何より、金融ばくちと不動産転がしで成り立ってきた、経済が崩壊しつつあり、アジアでプレゼンスを確立するのは、費用的にも無理になっています。
  米国がアジアからいなくなって困るのは、ずぶずぶの関係になりすぎた韓国ぐらいのもんです。だから、さっさと国家破綻して、アジアから出て行ってくれればいいのですが、しつこく居座ろうとします。
  一番面倒なのは為替ですよね。数カ月に一度、円高ドル安を演出して、日本に為替介入をさせ、数兆円ずつ搾り取っていきます。米国なんて堕ちるところまで堕ちるに決まっているのに、戦後最高値をたかだか1円、2円更新しただけで大騒ぎするなよと。ドルを暴落させて、米国の優良企業株や不動産を買いあさればいいんですよ。ただ、それだけの話です。
  今後も数円円高が進行するたびに、介入させられ、何兆円かずつ献上しなければならないのでしょうか? 今の財務省、そしてその連中に完全に操られている野田政権は本当にやりかねないので、怖いところです。
  世界でも最も健全な経済を維持してきた日本ですが、こうやって米国に抱きつかれるような形で、国富を吸い上げられ、体力を奪われて、心中させられることになるのでしょう。困ったもんです。
  すでに米国に対しては、米国再購入という形で十二分な貢献をしているはずです。だからその分は損切りは避けられないし、覚悟を決めるべきでしょう。しかし、これ以上の出血は何としても避けたいところです。
  ずるずると為替介入をさせられ、傷口が大きくなり、取り返しのつかない事態に陥る前に、さっさと米国が国家破綻し、守るべきものを守ってリセットし、新しい時代を切り開きたいものです。
  しかし、この期に及んでまだ、米国にしっぽを振る連中が大勢いるのは、情けない限りです。米国はもともと何か起きても日本を軍事的脅威から守ろうとは思っていないし、リーマン・ショック前までは輸出で儲けさせてくれましたが、米国民は貧困ラインに陥り、もはやいい物をつくっても買ってくれないのです。日本にとって何のメリットもないのに、米国ににじり寄って何がしたいのか?
  従来なら、米国との同盟し、中国やロシア、北朝鮮と対抗することが、国益を守ることだと考えられていましたが、実は、茶番だったということにみんなが気付き始めています。要は、東アジアで米国が存在感を示すには、お互いが仲良くできないような状況をつくり出せばいいわけです。米国の世界戦略にまんまと乗せられてきましたが、みんなしっかり気付いています。
  それでもなおインチキを仕組もうとしている米国なので、崩壊するときは、一気に崩れるというよりは、現在のようにじりじりと後退していくと考えた方がいいのかもしれません。
  これだけ国家を挙げて赤字を垂れ流し、ドルを刷り散らかしている米国がいまだに偉そうにふるまっているのが不思議ですが、醜態をさらしながらも、まだまだ生き延びたいようなので、粘り強く国家破綻を待つしかありません。