北海道旅行2日目、札幌駅南側にある、そば店「そば徳」で鴨せいろを食した後、北口に行き、レンタカーを借りました。ネットで申し込もうと思ったのですが、入力などの手続きが面倒だったので、ホテルを出る前に電話で問い合わせ。
一人旅で、急ぐ必要もなかったので、デミオやビッツクラスのコンパクトカーでよかったのですが、週末ということもあり、あいにく希望の車種はなくて、受付の人の「遠出されるのであれば、燃費がいいハイブリッド車なんかどうですか?」というお誘いに応じて、2クラス上のプリウスを借りることにしました。
プリウスは街中で、発進と停止を繰り返す場合は、燃費向上が見込めても、高速道路や北海道の田舎道のような信号が少ないところでは、普通の車と燃費はさほど変わらないのではないかという思い込みがありましたが、ハイブリッド車を運転したことがないというのが大きな理由です。
エンジンキーがなくパワーボタンを押して始動する方式であったり、サイドブレーキがなく足で踏む方式であったり、いわゆるシフトレバーがなく駐車するときはパーキングボタンを押す必要があったりと、操作方法が全然わからず、「やべぇ」と思ったのですが、「慣れれば大丈夫さ」と言い聞かせて出発。
ハイブリッド車は停止するときにモーターを回し、バッテリーを充電するので、ブレーキがやたらとよく利き、最初は慣れずに急ブレーキ気味になることも多く、この旅で唯一、ストレスフルな展開となりました。しかも、札幌に5年以上住み、札幌市内の道路は知り尽くしているはずだったのですが、まともに北海道で車を運転するのは10年ぶりぐらいなので、すっかり道を忘れてしまい、高速道路に出る道がわからず、右往左往しながら、カーナビの力を借りて、やっとのことで道央自動車道に乗りました。ここまでくればこっちのもんです。
札幌~旭川間は約130キロ。1時間ちょっとのドライブです。カーブがあったり、景色が変わったりはするんですが、北海道の道路なので基本的には東名高速などと違って単調で、飛ばす人は飛ばすんですよね。速度違反のカメラに撮られたり、高速警察隊に摘発されたりするので注意が必要です。
追い越しなんかすると、平気で制限速度を大幅にオーバーし、一発で免許停止、下手すれば拘留されてしまう恐れもあるので、北海道を車で旅する人は気を付けましょう。かつてなら要領よく走ったのですが、今回は慣れない車で怖いので、律儀な運転に徹しました。
この日は旭川で宿泊予定ですが、いい季節なので、まずは富良野方面に行くことにしました。
旭川鷹栖インターで降り、旭川市街を通過し、富良野や帯広方面へとつながる北海道でも有数の観光メーンストリート国道237号に入ります。
旭川近郊を抜けると信号はほとんどなくなり、北海道らしい田舎道になります。最初の町は美瑛。「丘のまち」で知られ、丘陵地帯に広大な農地が広がり、ヨーロッパの田園地帯にいるような錯覚にとらわれます。
私は美瑛の街の東側の大雪山系の風景が好きなので、237号をいったん離れ、大雪山方向に車を走らせました。
車を走らせること約15キロほどでしょうか。大雪の山々は7合目くらいまで雪に覆われ、一足先に冬が訪れていることがうかがえます。
大雪山系のふもとには白金温泉という温泉地があり、その手前に神秘的な「青い池」があります。本当は行けそうなら十勝岳の中腹まで車で上がろうかと思ったのですが、冠雪の様子からして、無理そうだったので、青い池までで引き返すことにしました。
最近、北海道で冬を過ごしていないので分かりませんが、冬タイヤを履いていても、雪深いところをハイブリッド車で行くのはちょっと厳しいような気がしました。
美瑛の市街地に引き返したのは午後4時前、もうあと30分もすれば、日が暮れてしまいそうでした。本当は富良野に行って、ドラマ「北の国から」的な、風景も楽しかったのですが、美瑛の丘を楽しみたかったので、富良野行きは断念。美瑛をめぐることにしました。
美瑛にしろ、富良野にしろ、ラベンダーが咲き誇り、畑も緑、緑した、初夏が一番、観光客に人気のあるシーズンなんでしょうけれど、秋の景色もいいですね。
ほとんどの畑は収穫を終え、あとは長くて、雪深い冬を待つばかり。夏の余韻をわずかに残しつつも、どこかに憂いのようなものも含んでいて、季節感と旅情を掻き立てられます。
すっかり日も暮れ、旭川に着いたのは午後5時過ぎ。JR旭川駅は、かつてはひなびた感じだったのですが、高架駅になり、東京23区内にあるJRの駅のような先進的な駅に生まれ変わっていました。
ホテルにチェックインし、少し休憩した後、街へと繰り出します。
旭川の繁華街は、ほかの道内の都市と同様、街が碁盤の目の形状に区画整理されていて、「3条6丁目」が中心地なので、「3・6街」と呼ばれています。
観光地であり、自衛隊の駐屯地もあるので、この規模の街にしては、大きな歓楽街を形成しており、東北以北では「ススキノに次いでナンバー2」ともいわれていましたが、長引く不況の影響で、私が住んでいた頃と比べると、活気が失われているように感じられました。これはススキノにもいえることです。
4、5階建の飲食ビルがあちこちにあるのですが、土曜日ということもあるのでしょうけれど、2階以上の階にある、スナックやバー、キャバレーなどはほとんどシャッターが閉ざされているビルもあり、さびしい状況でした。
随分と長~い前振りになってしまいましたが、ここからが本題です。この日のメーンイベントは、海鮮、特にこれからが旬の「生ガキ」を食すことにあります。
旭川は内陸にあるのですが、道北やオホーツク海側の道東を結ぶ、交通の要衝で、新鮮な魚介類が集まるんですよね。だから旭川では、ぜひ海鮮料理を楽しみたいです。
なぜ、初日に、札幌で、“旭川名物”の塩ホルモンの店を訪れたのか? これで理由がお分かりでしょう。旭川で魚介類を楽しむために、あえてこういう選択肢をとったのです。
旭川にはいろんな魅力的な店があるので、正直、決め打ちはできないのですが、私の好きな店は「サロマ湖」です。その名の通り、オホーツク海側のサロマ湖から取り寄せた魚介類が魅力的なお店です。
店内はカウンターと小上がりがあり、家族連れでも大丈夫ですが、午後7時すぎに訪れると、小上がりの電気は消され、カウンターのみでした。客は私も含めて6人ほど。
夫婦が切り盛りしていて、蛍光灯の薄暗い明かりの中、いかにも「北の居酒屋」という雰囲気に包まれています。そんな中、場所にやや似つかわしくない2人の若いアルバイトの女性が華やぎを添えていました。
夏場なら生ものオンリーで攻めたいところです。ただ、この季節は体が冷えてしまうのでそうもいきません。しかも、私は生ビール一筋なので、焼き物、煮物とうまく組み合わせて考える必要があります。ここは生ガキのほか、ホタテの刺身も有名で、私は「先発」としてホタテ刺身を思い描いていたのですが、献立がかかれた紙が貼ってある壁を見ると、「限定 サンマ刺身」の文字が躍っていました。
私はサンマには目がありません。この季節、スーパーでサンマ刺身が並ぶと、必ずかごに入れますし、年中、機会があればサンマの塩焼きを食べます。「好きな食べ物は?」と聞かれたら、「サンマ」と即答するでしょうね。
この時期、北海道や東北沖で獲れるサンマは脂ののり方がハンパなく、鮮度も高く絶品です。これを見逃す手はなく、急きょ先発を変更。サンマを注文しました。
お造りのような形で出てきたのですが、新鮮なサンマの目があまりにも澄んでいて、思わず、サンマと目が合いました。身は弾力があり、舌にのせると脂がとろけて、いうことなしです。「北海道に来てよかった!!」。至福の瞬間でした。
生もの次は魚の焼き物を想定していたのですが、これも見事に覆されてしまいました。「サロマ湖直送 シマエビ」とあったら、これも避けて通れないではないですか。
ゆでたシマエビが6尾。薄暗い店内に鮮やかなエビの朱色がまぶしく、生き生きしたオーラが感じられました。これも弾けるような身の食感が楽しく、独特の甘みがあって、最高の一品でした。ここでなければ食べられないでしょう。
私は普段、あまり好んでエビは食べませんが、北海道のエビは別格。シマエビのほか、北海道沖で獲れる、ボタンエビやブドウエビの刺身は大好きです。
寒くて足が震えるような状況だったのですが、おいしくてビールが進んでしまいました。本当は無理を押してでも、生ものをもっと食べたかったのですが、体が冷えていたので、焼き物へ。
この店で、ホタテは絶対にはずせないので、ホタテバターを頼みました。地デジチューナーをつけたのでしょうか、12型くらいのブラウン管テレビがNHKののど自慢台湾大会を放映。店のご夫妻や居合わせた客から「台湾の人なのに日本の歌が歌えてうまいよね」。まったく同感でした。
北の街の情緒ある居酒屋で、台湾ののど自慢大会の歌を聴くという、一見ミスマッチでしたが、なんか心に響くものがあり、台湾の人が歌う「瀬戸の花嫁」を聴くと、涙腺が緩みそうになりました。
目の前で奥さんがフライパンを使って、ホタテバターをつくってくれました。実は、この店でホタテバターを頼むのは初めてで、本来はホタテ刺身を選ぶところ、次善の策だったのですが、味は感激の一言。
ホタテが丸ごとバター焼きにして出されるのですが、ホタテの香ばしい風味が思う存分凝縮されていて、うまく焼かれたステーキのようでした。新鮮なホタテでないとこのうまみは出ないでしょうから、ステーキ以上の味でしょうね。おそらく。
ホタテ刺身もおいしいのですが、正直、それ以上でした。久しぶりにサロマ湖を訪れて、大きな収穫でした。もし、この店を訪れる方がいるならば、ホタテバター焼きを一押しします。選んで間違いはありません。
焼き物を食べてひと心地したところで、お目当ての生ガキへ。これを食べるために北海道へ来たのだといっても過言ではありません。
瀬戸内海の広島や岡山が国内のカキの名産地とされますが、北の海のカキも一味違い、絶品です。瀬戸内海産は何となく泥臭さが残るような気がするんですけどね。北海道の清浄で、それでいて栄養たっぷりの海流の中で育ったカキのおいしさは別格だと思います。
カキの身を口に含むと、汽水湖であるサロマ湖の海の味が広がりました。新鮮な海の幸をいただくと、全身が覚醒され、生気がみなぎりますね。自然の恵みを受けているんだということをしみじみと感じました。1年に1回とまではいかないでしょうが、何年かに1回、ぜひこれを食べたいと思いますね。
ちなみに、岩からはがしたカキを殻つきのまま、焼いた(蒸した)、「カキのガンガン焼き」というのもこの店の人気メニューなのですが、今回は生もの中心にすることにしました。
生ガキ以外、当初思い描いていた「投手リレー」とは、まったく異なる展開でしたが、満足感、幸福感を十分に感じて、サロマ湖でのひとときを締めくくることにしました。
新鮮なサンマ、シマエビ、ホタテバター焼き、生ガキの黄金のリレーに、生ビール3杯で、お会計はなんと「5500円」。これでも旭川では高いくらいですね。たらふく飲み食いしても通常は3千円超えればいいほうです。東京だったら、下手すれば数万円ですよ。
こんなに素晴らしいのですが、訪れる客が少なくなっているのはかえすがえす、残念でなりません。特にサロマ湖のような、居酒屋には末永く続いてほしいので、もっと多くの人に来てほしいですね。皆さんも余裕があれば、北海道や旭川に限らず、日本各地を旅行して、ぜひ楽しみながら利益還元してほしいと切に願います。
サロマ湖を出て、旭川ラーメンを食べることにしました。(続く)
タグ別アーカイブ: 紀行
食欲の秋~北海道グルメ④ 旬の海鮮を食べ尽くす
北海道旅行2日目、札幌駅南側にある、そば店「そば徳」で鴨せいろを食した後、北口に行き、レンタカーを借りました。ネットで申し込もうと思ったのですが、入力などの手続きが面倒だったので、ホテルを出る前に電話で問い合わせ。
一人旅で、急ぐ必要もなかったので、デミオやビッツクラスのコンパクトカーでよかったのですが、週末ということもあり、あいにく希望の車種はなくて、受付の人の「遠出されるのであれば、燃費がいいハイブリッド車なんかどうですか?」というお誘いに応じて、2クラス上のプリウスを借りることにしました。
プリウスは街中で、発進と停止を繰り返す場合は、燃費向上が見込めても、高速道路や北海道の田舎道のような信号が少ないところでは、普通の車と燃費はさほど変わらないのではないかという思い込みがありましたが、ハイブリッド車を運転したことがないというのが大きな理由です。
エンジンキーがなくパワーボタンを押して始動する方式であったり、サイドブレーキがなく足で踏む方式であったり、いわゆるシフトレバーがなく駐車するときはパーキングボタンを押す必要があったりと、操作方法が全然わからず、「やべぇ」と思ったのですが、「慣れれば大丈夫さ」と言い聞かせて出発。
ハイブリッド車は停止するときにモーターを回し、バッテリーを充電するので、ブレーキがやたらとよく利き、最初は慣れずに急ブレーキ気味になることも多く、この旅で唯一、ストレスフルな展開となりました。しかも、札幌に5年以上住み、札幌市内の道路は知り尽くしているはずだったのですが、まともに北海道で車を運転するのは10年ぶりぐらいなので、すっかり道を忘れてしまい、高速道路に出る道がわからず、右往左往しながら、カーナビの力を借りて、やっとのことで道央自動車道に乗りました。ここまでくればこっちのもんです。
札幌~旭川間は約130キロ。1時間ちょっとのドライブです。カーブがあったり、景色が変わったりはするんですが、北海道の道路なので基本的には東名高速などと違って単調で、飛ばす人は飛ばすんですよね。速度違反のカメラに撮られたり、高速警察隊に摘発されたりするので注意が必要です。
追い越しなんかすると、平気で制限速度を大幅にオーバーし、一発で免許停止、下手すれば拘留されてしまう恐れもあるので、北海道を車で旅する人は気を付けましょう。かつてなら要領よく走ったのですが、今回は慣れない車で怖いので、律儀な運転に徹しました。
この日は旭川で宿泊予定ですが、いい季節なので、まずは富良野方面に行くことにしました。
旭川鷹栖インターで降り、旭川市街を通過し、富良野や帯広方面へとつながる北海道でも有数の観光メーンストリート国道237号に入ります。
旭川近郊を抜けると信号はほとんどなくなり、北海道らしい田舎道になります。最初の町は美瑛。「丘のまち」で知られ、丘陵地帯に広大な農地が広がり、ヨーロッパの田園地帯にいるような錯覚にとらわれます。
私は美瑛の街の東側の大雪山系の風景が好きなので、237号をいったん離れ、大雪山方向に車を走らせました。
車を走らせること約15キロほどでしょうか。大雪の山々は7合目くらいまで雪に覆われ、一足先に冬が訪れていることがうかがえます。
大雪山系のふもとには白金温泉という温泉地があり、その手前に神秘的な「青い池」があります。本当は行けそうなら十勝岳の中腹まで車で上がろうかと思ったのですが、冠雪の様子からして、無理そうだったので、青い池までで引き返すことにしました。
最近、北海道で冬を過ごしていないので分かりませんが、冬タイヤを履いていても、雪深いところをハイブリッド車で行くのはちょっと厳しいような気がしました。
美瑛の市街地に引き返したのは午後4時前、もうあと30分もすれば、日が暮れてしまいそうでした。本当は富良野に行って、ドラマ「北の国から」的な、風景も楽しかったのですが、美瑛の丘を楽しみたかったので、富良野行きは断念。美瑛をめぐることにしました。
美瑛にしろ、富良野にしろ、ラベンダーが咲き誇り、畑も緑、緑した、初夏が一番、観光客に人気のあるシーズンなんでしょうけれど、秋の景色もいいですね。
ほとんどの畑は収穫を終え、あとは長くて、雪深い冬を待つばかり。夏の余韻をわずかに残しつつも、どこかに憂いのようなものも含んでいて、季節感と旅情を掻き立てられます。
すっかり日も暮れ、旭川に着いたのは午後5時過ぎ。JR旭川駅は、かつてはひなびた感じだったのですが、高架駅になり、東京23区内にあるJRの駅のような先進的な駅に生まれ変わっていました。
ホテルにチェックインし、少し休憩した後、街へと繰り出します。
旭川の繁華街は、ほかの道内の都市と同様、街が碁盤の目の形状に区画整理されていて、「3条6丁目」が中心地なので、「3・6街」と呼ばれています。
観光地であり、自衛隊の駐屯地もあるので、この規模の街にしては、大きな歓楽街を形成しており、東北以北では「ススキノに次いでナンバー2」ともいわれていましたが、長引く不況の影響で、私が住んでいた頃と比べると、活気が失われているように感じられました。これはススキノにもいえることです。
4、5階建の飲食ビルがあちこちにあるのですが、土曜日ということもあるのでしょうけれど、2階以上の階にある、スナックやバー、キャバレーなどはほとんどシャッターが閉ざされているビルもあり、さびしい状況でした。
随分と長~い前振りになってしまいましたが、ここからが本題です。この日のメーンイベントは、海鮮、特にこれからが旬の「生ガキ」を食すことにあります。
旭川は内陸にあるのですが、道北やオホーツク海側の道東を結ぶ、交通の要衝で、新鮮な魚介類が集まるんですよね。だから旭川では、ぜひ海鮮料理を楽しみたいです。
なぜ、初日に、札幌で、“旭川名物”の塩ホルモンの店を訪れたのか? これで理由がお分かりでしょう。旭川で魚介類を楽しむために、あえてこういう選択肢をとったのです。
旭川にはいろんな魅力的な店があるので、正直、決め打ちはできないのですが、私の好きな店は「サロマ湖」です。その名の通り、オホーツク海側のサロマ湖から取り寄せた魚介類が魅力的なお店です。
店内はカウンターと小上がりがあり、家族連れでも大丈夫ですが、午後7時すぎに訪れると、小上がりの電気は消され、カウンターのみでした。客は私も含めて6人ほど。
夫婦が切り盛りしていて、蛍光灯の薄暗い明かりの中、いかにも「北の居酒屋」という雰囲気に包まれています。そんな中、場所にやや似つかわしくない2人の若いアルバイトの女性が華やぎを添えていました。
夏場なら生ものオンリーで攻めたいところです。ただ、この季節は体が冷えてしまうのでそうもいきません。しかも、私は生ビール一筋なので、焼き物、煮物とうまく組み合わせて考える必要があります。ここは生ガキのほか、ホタテの刺身も有名で、私は「先発」としてホタテ刺身を思い描いていたのですが、献立がかかれた紙が貼ってある壁を見ると、「限定 サンマ刺身」の文字が躍っていました。
私はサンマには目がありません。この季節、スーパーでサンマ刺身が並ぶと、必ずかごに入れますし、年中、機会があればサンマの塩焼きを食べます。「好きな食べ物は?」と聞かれたら、「サンマ」と即答するでしょうね。
この時期、北海道や東北沖で獲れるサンマは脂ののり方がハンパなく、鮮度も高く絶品です。これを見逃す手はなく、急きょ先発を変更。サンマを注文しました。
お造りのような形で出てきたのですが、新鮮なサンマの目があまりにも澄んでいて、思わず、サンマと目が合いました。身は弾力があり、舌にのせると脂がとろけて、いうことなしです。「北海道に来てよかった!!」。至福の瞬間でした。
生もの次は魚の焼き物を想定していたのですが、これも見事に覆されてしまいました。「サロマ湖直送 シマエビ」とあったら、これも避けて通れないではないですか。
ゆでたシマエビが6尾。薄暗い店内に鮮やかなエビの朱色がまぶしく、生き生きしたオーラが感じられました。これも弾けるような身の食感が楽しく、独特の甘みがあって、最高の一品でした。ここでなければ食べられないでしょう。
私は普段、あまり好んでエビは食べませんが、北海道のエビは別格。シマエビのほか、北海道沖で獲れる、ボタンエビやブドウエビの刺身は大好きです。
寒くて足が震えるような状況だったのですが、おいしくてビールが進んでしまいました。本当は無理を押してでも、生ものをもっと食べたかったのですが、体が冷えていたので、焼き物へ。
この店で、ホタテは絶対にはずせないので、ホタテバターを頼みました。地デジチューナーをつけたのでしょうか、12型くらいのブラウン管テレビがNHKののど自慢台湾大会を放映。店のご夫妻や居合わせた客から「台湾の人なのに日本の歌が歌えてうまいよね」。まったく同感でした。
北の街の情緒ある居酒屋で、台湾ののど自慢大会の歌を聴くという、一見ミスマッチでしたが、なんか心に響くものがあり、台湾の人が歌う「瀬戸の花嫁」を聴くと、涙腺が緩みそうになりました。
目の前で奥さんがフライパンを使って、ホタテバターをつくってくれました。実は、この店でホタテバターを頼むのは初めてで、本来はホタテ刺身を選ぶところ、次善の策だったのですが、味は感激の一言。
ホタテが丸ごとバター焼きにして出されるのですが、ホタテの香ばしい風味が思う存分凝縮されていて、うまく焼かれたステーキのようでした。新鮮なホタテでないとこのうまみは出ないでしょうから、ステーキ以上の味でしょうね。おそらく。
ホタテ刺身もおいしいのですが、正直、それ以上でした。久しぶりにサロマ湖を訪れて、大きな収穫でした。もし、この店を訪れる方がいるならば、ホタテバター焼きを一押しします。選んで間違いはありません。
焼き物を食べてひと心地したところで、お目当ての生ガキへ。これを食べるために北海道へ来たのだといっても過言ではありません。
瀬戸内海の広島や岡山が国内のカキの名産地とされますが、北の海のカキも一味違い、絶品です。瀬戸内海産は何となく泥臭さが残るような気がするんですけどね。北海道の清浄で、それでいて栄養たっぷりの海流の中で育ったカキのおいしさは別格だと思います。
カキの身を口に含むと、汽水湖であるサロマ湖の海の味が広がりました。新鮮な海の幸をいただくと、全身が覚醒され、生気がみなぎりますね。自然の恵みを受けているんだということをしみじみと感じました。1年に1回とまではいかないでしょうが、何年かに1回、ぜひこれを食べたいと思いますね。
ちなみに、岩からはがしたカキを殻つきのまま、焼いた(蒸した)、「カキのガンガン焼き」というのもこの店の人気メニューなのですが、今回は生もの中心にすることにしました。
生ガキ以外、当初思い描いていた「投手リレー」とは、まったく異なる展開でしたが、満足感、幸福感を十分に感じて、サロマ湖でのひとときを締めくくることにしました。
新鮮なサンマ、シマエビ、ホタテバター焼き、生ガキの黄金のリレーに、生ビール3杯で、お会計はなんと「5500円」。これでも旭川では高いくらいですね。たらふく飲み食いしても通常は3千円超えればいいほうです。東京だったら、下手すれば数万円ですよ。
こんなに素晴らしいのですが、訪れる客が少なくなっているのはかえすがえす、残念でなりません。特にサロマ湖のような、居酒屋には末永く続いてほしいので、もっと多くの人に来てほしいですね。皆さんも余裕があれば、北海道や旭川に限らず、日本各地を旅行して、ぜひ楽しみながら利益還元してほしいと切に願います。
サロマ湖を出て、旭川ラーメンを食べることにしました。(続く)
一人旅で、急ぐ必要もなかったので、デミオやビッツクラスのコンパクトカーでよかったのですが、週末ということもあり、あいにく希望の車種はなくて、受付の人の「遠出されるのであれば、燃費がいいハイブリッド車なんかどうですか?」というお誘いに応じて、2クラス上のプリウスを借りることにしました。
プリウスは街中で、発進と停止を繰り返す場合は、燃費向上が見込めても、高速道路や北海道の田舎道のような信号が少ないところでは、普通の車と燃費はさほど変わらないのではないかという思い込みがありましたが、ハイブリッド車を運転したことがないというのが大きな理由です。
エンジンキーがなくパワーボタンを押して始動する方式であったり、サイドブレーキがなく足で踏む方式であったり、いわゆるシフトレバーがなく駐車するときはパーキングボタンを押す必要があったりと、操作方法が全然わからず、「やべぇ」と思ったのですが、「慣れれば大丈夫さ」と言い聞かせて出発。
ハイブリッド車は停止するときにモーターを回し、バッテリーを充電するので、ブレーキがやたらとよく利き、最初は慣れずに急ブレーキ気味になることも多く、この旅で唯一、ストレスフルな展開となりました。しかも、札幌に5年以上住み、札幌市内の道路は知り尽くしているはずだったのですが、まともに北海道で車を運転するのは10年ぶりぐらいなので、すっかり道を忘れてしまい、高速道路に出る道がわからず、右往左往しながら、カーナビの力を借りて、やっとのことで道央自動車道に乗りました。ここまでくればこっちのもんです。
札幌~旭川間は約130キロ。1時間ちょっとのドライブです。カーブがあったり、景色が変わったりはするんですが、北海道の道路なので基本的には東名高速などと違って単調で、飛ばす人は飛ばすんですよね。速度違反のカメラに撮られたり、高速警察隊に摘発されたりするので注意が必要です。
追い越しなんかすると、平気で制限速度を大幅にオーバーし、一発で免許停止、下手すれば拘留されてしまう恐れもあるので、北海道を車で旅する人は気を付けましょう。かつてなら要領よく走ったのですが、今回は慣れない車で怖いので、律儀な運転に徹しました。
この日は旭川で宿泊予定ですが、いい季節なので、まずは富良野方面に行くことにしました。
旭川鷹栖インターで降り、旭川市街を通過し、富良野や帯広方面へとつながる北海道でも有数の観光メーンストリート国道237号に入ります。
旭川近郊を抜けると信号はほとんどなくなり、北海道らしい田舎道になります。最初の町は美瑛。「丘のまち」で知られ、丘陵地帯に広大な農地が広がり、ヨーロッパの田園地帯にいるような錯覚にとらわれます。
私は美瑛の街の東側の大雪山系の風景が好きなので、237号をいったん離れ、大雪山方向に車を走らせました。
車を走らせること約15キロほどでしょうか。大雪の山々は7合目くらいまで雪に覆われ、一足先に冬が訪れていることがうかがえます。
大雪山系のふもとには白金温泉という温泉地があり、その手前に神秘的な「青い池」があります。本当は行けそうなら十勝岳の中腹まで車で上がろうかと思ったのですが、冠雪の様子からして、無理そうだったので、青い池までで引き返すことにしました。
最近、北海道で冬を過ごしていないので分かりませんが、冬タイヤを履いていても、雪深いところをハイブリッド車で行くのはちょっと厳しいような気がしました。
美瑛の市街地に引き返したのは午後4時前、もうあと30分もすれば、日が暮れてしまいそうでした。本当は富良野に行って、ドラマ「北の国から」的な、風景も楽しかったのですが、美瑛の丘を楽しみたかったので、富良野行きは断念。美瑛をめぐることにしました。
美瑛にしろ、富良野にしろ、ラベンダーが咲き誇り、畑も緑、緑した、初夏が一番、観光客に人気のあるシーズンなんでしょうけれど、秋の景色もいいですね。
ほとんどの畑は収穫を終え、あとは長くて、雪深い冬を待つばかり。夏の余韻をわずかに残しつつも、どこかに憂いのようなものも含んでいて、季節感と旅情を掻き立てられます。
すっかり日も暮れ、旭川に着いたのは午後5時過ぎ。JR旭川駅は、かつてはひなびた感じだったのですが、高架駅になり、東京23区内にあるJRの駅のような先進的な駅に生まれ変わっていました。
ホテルにチェックインし、少し休憩した後、街へと繰り出します。
旭川の繁華街は、ほかの道内の都市と同様、街が碁盤の目の形状に区画整理されていて、「3条6丁目」が中心地なので、「3・6街」と呼ばれています。
観光地であり、自衛隊の駐屯地もあるので、この規模の街にしては、大きな歓楽街を形成しており、東北以北では「ススキノに次いでナンバー2」ともいわれていましたが、長引く不況の影響で、私が住んでいた頃と比べると、活気が失われているように感じられました。これはススキノにもいえることです。
4、5階建の飲食ビルがあちこちにあるのですが、土曜日ということもあるのでしょうけれど、2階以上の階にある、スナックやバー、キャバレーなどはほとんどシャッターが閉ざされているビルもあり、さびしい状況でした。
随分と長~い前振りになってしまいましたが、ここからが本題です。この日のメーンイベントは、海鮮、特にこれからが旬の「生ガキ」を食すことにあります。
旭川は内陸にあるのですが、道北やオホーツク海側の道東を結ぶ、交通の要衝で、新鮮な魚介類が集まるんですよね。だから旭川では、ぜひ海鮮料理を楽しみたいです。
なぜ、初日に、札幌で、“旭川名物”の塩ホルモンの店を訪れたのか? これで理由がお分かりでしょう。旭川で魚介類を楽しむために、あえてこういう選択肢をとったのです。
旭川にはいろんな魅力的な店があるので、正直、決め打ちはできないのですが、私の好きな店は「サロマ湖」です。その名の通り、オホーツク海側のサロマ湖から取り寄せた魚介類が魅力的なお店です。
店内はカウンターと小上がりがあり、家族連れでも大丈夫ですが、午後7時すぎに訪れると、小上がりの電気は消され、カウンターのみでした。客は私も含めて6人ほど。
夫婦が切り盛りしていて、蛍光灯の薄暗い明かりの中、いかにも「北の居酒屋」という雰囲気に包まれています。そんな中、場所にやや似つかわしくない2人の若いアルバイトの女性が華やぎを添えていました。
夏場なら生ものオンリーで攻めたいところです。ただ、この季節は体が冷えてしまうのでそうもいきません。しかも、私は生ビール一筋なので、焼き物、煮物とうまく組み合わせて考える必要があります。ここは生ガキのほか、ホタテの刺身も有名で、私は「先発」としてホタテ刺身を思い描いていたのですが、献立がかかれた紙が貼ってある壁を見ると、「限定 サンマ刺身」の文字が躍っていました。
私はサンマには目がありません。この季節、スーパーでサンマ刺身が並ぶと、必ずかごに入れますし、年中、機会があればサンマの塩焼きを食べます。「好きな食べ物は?」と聞かれたら、「サンマ」と即答するでしょうね。
この時期、北海道や東北沖で獲れるサンマは脂ののり方がハンパなく、鮮度も高く絶品です。これを見逃す手はなく、急きょ先発を変更。サンマを注文しました。
お造りのような形で出てきたのですが、新鮮なサンマの目があまりにも澄んでいて、思わず、サンマと目が合いました。身は弾力があり、舌にのせると脂がとろけて、いうことなしです。「北海道に来てよかった!!」。至福の瞬間でした。
生もの次は魚の焼き物を想定していたのですが、これも見事に覆されてしまいました。「サロマ湖直送 シマエビ」とあったら、これも避けて通れないではないですか。
ゆでたシマエビが6尾。薄暗い店内に鮮やかなエビの朱色がまぶしく、生き生きしたオーラが感じられました。これも弾けるような身の食感が楽しく、独特の甘みがあって、最高の一品でした。ここでなければ食べられないでしょう。
私は普段、あまり好んでエビは食べませんが、北海道のエビは別格。シマエビのほか、北海道沖で獲れる、ボタンエビやブドウエビの刺身は大好きです。
寒くて足が震えるような状況だったのですが、おいしくてビールが進んでしまいました。本当は無理を押してでも、生ものをもっと食べたかったのですが、体が冷えていたので、焼き物へ。
この店で、ホタテは絶対にはずせないので、ホタテバターを頼みました。地デジチューナーをつけたのでしょうか、12型くらいのブラウン管テレビがNHKののど自慢台湾大会を放映。店のご夫妻や居合わせた客から「台湾の人なのに日本の歌が歌えてうまいよね」。まったく同感でした。
北の街の情緒ある居酒屋で、台湾ののど自慢大会の歌を聴くという、一見ミスマッチでしたが、なんか心に響くものがあり、台湾の人が歌う「瀬戸の花嫁」を聴くと、涙腺が緩みそうになりました。
目の前で奥さんがフライパンを使って、ホタテバターをつくってくれました。実は、この店でホタテバターを頼むのは初めてで、本来はホタテ刺身を選ぶところ、次善の策だったのですが、味は感激の一言。
ホタテが丸ごとバター焼きにして出されるのですが、ホタテの香ばしい風味が思う存分凝縮されていて、うまく焼かれたステーキのようでした。新鮮なホタテでないとこのうまみは出ないでしょうから、ステーキ以上の味でしょうね。おそらく。
ホタテ刺身もおいしいのですが、正直、それ以上でした。久しぶりにサロマ湖を訪れて、大きな収穫でした。もし、この店を訪れる方がいるならば、ホタテバター焼きを一押しします。選んで間違いはありません。
焼き物を食べてひと心地したところで、お目当ての生ガキへ。これを食べるために北海道へ来たのだといっても過言ではありません。
瀬戸内海の広島や岡山が国内のカキの名産地とされますが、北の海のカキも一味違い、絶品です。瀬戸内海産は何となく泥臭さが残るような気がするんですけどね。北海道の清浄で、それでいて栄養たっぷりの海流の中で育ったカキのおいしさは別格だと思います。
カキの身を口に含むと、汽水湖であるサロマ湖の海の味が広がりました。新鮮な海の幸をいただくと、全身が覚醒され、生気がみなぎりますね。自然の恵みを受けているんだということをしみじみと感じました。1年に1回とまではいかないでしょうが、何年かに1回、ぜひこれを食べたいと思いますね。
ちなみに、岩からはがしたカキを殻つきのまま、焼いた(蒸した)、「カキのガンガン焼き」というのもこの店の人気メニューなのですが、今回は生もの中心にすることにしました。
生ガキ以外、当初思い描いていた「投手リレー」とは、まったく異なる展開でしたが、満足感、幸福感を十分に感じて、サロマ湖でのひとときを締めくくることにしました。
新鮮なサンマ、シマエビ、ホタテバター焼き、生ガキの黄金のリレーに、生ビール3杯で、お会計はなんと「5500円」。これでも旭川では高いくらいですね。たらふく飲み食いしても通常は3千円超えればいいほうです。東京だったら、下手すれば数万円ですよ。
こんなに素晴らしいのですが、訪れる客が少なくなっているのはかえすがえす、残念でなりません。特にサロマ湖のような、居酒屋には末永く続いてほしいので、もっと多くの人に来てほしいですね。皆さんも余裕があれば、北海道や旭川に限らず、日本各地を旅行して、ぜひ楽しみながら利益還元してほしいと切に願います。
サロマ湖を出て、旭川ラーメンを食べることにしました。(続く)
食欲の秋~北海道グルメ④ 旬の海鮮を食べ尽くす
北海道旅行2日目、札幌駅南側にある、そば店「そば徳」で鴨せいろを食した後、北口に行き、レンタカーを借りました。ネットで申し込もうと思ったのですが、入力などの手続きが面倒だったので、ホテルを出る前に電話で問い合わせ。
一人旅で、急ぐ必要もなかったので、デミオやビッツクラスのコンパクトカーでよかったのですが、週末ということもあり、あいにく希望の車種はなくて、受付の人の「遠出されるのであれば、燃費がいいハイブリッド車なんかどうですか?」というお誘いに応じて、2クラス上のプリウスを借りることにしました。
プリウスは街中で、発進と停止を繰り返す場合は、燃費向上が見込めても、高速道路や北海道の田舎道のような信号が少ないところでは、普通の車と燃費はさほど変わらないのではないかという思い込みがありましたが、ハイブリッド車を運転したことがないというのが大きな理由です。
エンジンキーがなくパワーボタンを押して始動する方式であったり、サイドブレーキがなく足で踏む方式であったり、いわゆるシフトレバーがなく駐車するときはパーキングボタンを押す必要があったりと、操作方法が全然わからず、「やべぇ」と思ったのですが、「慣れれば大丈夫さ」と言い聞かせて出発。
ハイブリッド車は停止するときにモーターを回し、バッテリーを充電するので、ブレーキがやたらとよく利き、最初は慣れずに急ブレーキ気味になることも多く、この旅で唯一、ストレスフルな展開となりました。しかも、札幌に5年以上住み、札幌市内の道路は知り尽くしているはずだったのですが、まともに北海道で車を運転するのは10年ぶりぐらいなので、すっかり道を忘れてしまい、高速道路に出る道がわからず、右往左往しながら、カーナビの力を借りて、やっとのことで道央自動車道に乗りました。ここまでくればこっちのもんです。
札幌~旭川間は約130キロ。1時間ちょっとのドライブです。カーブがあったり、景色が変わったりはするんですが、北海道の道路なので基本的には東名高速などと違って単調で、飛ばす人は飛ばすんですよね。速度違反のカメラに撮られたり、高速警察隊に摘発されたりするので注意が必要です。
追い越しなんかすると、平気で制限速度を大幅にオーバーし、一発で免許停止、下手すれば拘留されてしまう恐れもあるので、北海道を車で旅する人は気を付けましょう。かつてなら要領よく走ったのですが、今回は慣れない車で怖いので、律儀な運転に徹しました。
この日は旭川で宿泊予定ですが、いい季節なので、まずは富良野方面に行くことにしました。
旭川鷹栖インターで降り、旭川市街を通過し、富良野や帯広方面へとつながる北海道でも有数の観光メーンストリート国道237号に入ります。
旭川近郊を抜けると信号はほとんどなくなり、北海道らしい田舎道になります。最初の町は美瑛。「丘のまち」で知られ、丘陵地帯に広大な農地が広がり、ヨーロッパの田園地帯にいるような錯覚にとらわれます。
私は美瑛の街の東側の大雪山系の風景が好きなので、237号をいったん離れ、大雪山方向に車を走らせました。
車を走らせること約15キロほどでしょうか。大雪の山々は7合目くらいまで雪に覆われ、一足先に冬が訪れていることがうかがえます。
大雪山系のふもとには白金温泉という温泉地があり、その手前に神秘的な「青い池」があります。本当は行けそうなら十勝岳の中腹まで車で上がろうかと思ったのですが、冠雪の様子からして、無理そうだったので、青い池までで引き返すことにしました。
最近、北海道で冬を過ごしていないので分かりませんが、冬タイヤを履いていても、雪深いところをハイブリッド車で行くのはちょっと厳しいような気がしました。
美瑛の市街地に引き返したのは午後4時前、もうあと30分もすれば、日が暮れてしまいそうでした。本当は富良野に行って、ドラマ「北の国から」的な、風景も楽しかったのですが、美瑛の丘を楽しみたかったので、富良野行きは断念。美瑛をめぐることにしました。
美瑛にしろ、富良野にしろ、ラベンダーが咲き誇り、畑も緑、緑した、初夏が一番、観光客に人気のあるシーズンなんでしょうけれど、秋の景色もいいですね。
ほとんどの畑は収穫を終え、あとは長くて、雪深い冬を待つばかり。夏の余韻をわずかに残しつつも、どこかに憂いのようなものも含んでいて、季節感と旅情を掻き立てられます。
すっかり日も暮れ、旭川に着いたのは午後5時過ぎ。JR旭川駅は、かつてはひなびた感じだったのですが、高架駅になり、東京23区内にあるJRの駅のような先進的な駅に生まれ変わっていました。
ホテルにチェックインし、少し休憩した後、街へと繰り出します。
旭川の繁華街は、ほかの道内の都市と同様、街が碁盤の目の形状に区画整理されていて、「3条6丁目」が中心地なので、「3・6街」と呼ばれています。
観光地であり、自衛隊の駐屯地もあるので、この規模の街にしては、大きな歓楽街を形成しており、東北以北では「ススキノに次いでナンバー2」ともいわれていましたが、長引く不況の影響で、私が住んでいた頃と比べると、活気が失われているように感じられました。これはススキノにもいえることです。
4、5階建の飲食ビルがあちこちにあるのですが、土曜日ということもあるのでしょうけれど、2階以上の階にある、スナックやバー、キャバレーなどはほとんどシャッターが閉ざされているビルもあり、さびしい状況でした。
随分と長~い前振りになってしまいましたが、ここからが本題です。この日のメーンイベントは、海鮮、特にこれからが旬の「生ガキ」を食すことにあります。
旭川は内陸にあるのですが、道北やオホーツク海側の道東を結ぶ、交通の要衝で、新鮮な魚介類が集まるんですよね。だから旭川では、ぜひ海鮮料理を楽しみたいです。
なぜ、初日に、札幌で、“旭川名物”の塩ホルモンの店を訪れたのか? これで理由がお分かりでしょう。旭川で魚介類を楽しむために、あえてこういう選択肢をとったのです。
旭川にはいろんな魅力的な店があるので、正直、決め打ちはできないのですが、私の好きな店は「サロマ湖」です。その名の通り、オホーツク海側のサロマ湖から取り寄せた魚介類が魅力的なお店です。
店内はカウンターと小上がりがあり、家族連れでも大丈夫ですが、午後7時すぎに訪れると、小上がりの電気は消され、カウンターのみでした。客は私も含めて6人ほど。
夫婦が切り盛りしていて、蛍光灯の薄暗い明かりの中、いかにも「北の居酒屋」という雰囲気に包まれています。そんな中、場所にやや似つかわしくない2人の若いアルバイトの女性が華やぎを添えていました。
夏場なら生ものオンリーで攻めたいところです。ただ、この季節は体が冷えてしまうのでそうもいきません。しかも、私は生ビール一筋なので、焼き物、煮物とうまく組み合わせて考える必要があります。ここは生ガキのほか、ホタテの刺身も有名で、私は「先発」としてホタテ刺身を思い描いていたのですが、献立がかかれた紙が貼ってある壁を見ると、「限定 サンマ刺身」の文字が躍っていました。
私はサンマには目がありません。この季節、スーパーでサンマ刺身が並ぶと、必ずかごに入れますし、年中、機会があればサンマの塩焼きを食べます。「好きな食べ物は?」と聞かれたら、「サンマ」と即答するでしょうね。
この時期、北海道や東北沖で獲れるサンマは脂ののり方がハンパなく、鮮度も高く絶品です。これを見逃す手はなく、急きょ先発を変更。サンマを注文しました。
お造りのような形で出てきたのですが、新鮮なサンマの目があまりにも澄んでいて、思わず、サンマと目が合いました。身は弾力があり、舌にのせると脂がとろけて、いうことなしです。「北海道に来てよかった!!」。至福の瞬間でした。
生もの次は魚の焼き物を想定していたのですが、これも見事に覆されてしまいました。「サロマ湖直送 シマエビ」とあったら、これも避けて通れないではないですか。
ゆでたシマエビが6尾。薄暗い店内に鮮やかなエビの朱色がまぶしく、生き生きしたオーラが感じられました。これも弾けるような身の食感が楽しく、独特の甘みがあって、最高の一品でした。ここでなければ食べられないでしょう。
私は普段、あまり好んでエビは食べませんが、北海道のエビは別格。シマエビのほか、北海道沖で獲れる、ボタンエビやブドウエビの刺身は大好きです。
寒くて足が震えるような状況だったのですが、おいしくてビールが進んでしまいました。本当は無理を押してでも、生ものをもっと食べたかったのですが、体が冷えていたので、焼き物へ。
この店で、ホタテは絶対にはずせないので、ホタテバターを頼みました。地デジチューナーをつけたのでしょうか、12型くらいのブラウン管テレビがNHKののど自慢台湾大会を放映。店のご夫妻や居合わせた客から「台湾の人なのに日本の歌が歌えてうまいよね」。まったく同感でした。
北の街の情緒ある居酒屋で、台湾ののど自慢大会の歌を聴くという、一見ミスマッチでしたが、なんか心に響くものがあり、台湾の人が歌う「瀬戸の花嫁」を聴くと、涙腺が緩みそうになりました。
目の前で奥さんがフライパンを使って、ホタテバターをつくってくれました。実は、この店でホタテバターを頼むのは初めてで、本来はホタテ刺身を選ぶところ、次善の策だったのですが、味は感激の一言。
ホタテが丸ごとバター焼きにして出されるのですが、ホタテの香ばしい風味が思う存分凝縮されていて、うまく焼かれたステーキのようでした。新鮮なホタテでないとこのうまみは出ないでしょうから、ステーキ以上の味でしょうね。おそらく。
ホタテ刺身もおいしいのですが、正直、それ以上でした。久しぶりにサロマ湖を訪れて、大きな収穫でした。もし、この店を訪れる方がいるならば、ホタテバター焼きを一押しします。選んで間違いはありません。
焼き物を食べてひと心地したところで、お目当ての生ガキへ。これを食べるために北海道へ来たのだといっても過言ではありません。
瀬戸内海の広島や岡山が国内のカキの名産地とされますが、北の海のカキも一味違い、絶品です。瀬戸内海産は何となく泥臭さが残るような気がするんですけどね。北海道の清浄で、それでいて栄養たっぷりの海流の中で育ったカキのおいしさは別格だと思います。
カキの身を口に含むと、汽水湖であるサロマ湖の海の味が広がりました。新鮮な海の幸をいただくと、全身が覚醒され、生気がみなぎりますね。自然の恵みを受けているんだということをしみじみと感じました。1年に1回とまではいかないでしょうが、何年かに1回、ぜひこれを食べたいと思いますね。
ちなみに、岩からはがしたカキを殻つきのまま、焼いた(蒸した)、「カキのガンガン焼き」というのもこの店の人気メニューなのですが、今回は生もの中心にすることにしました。
生ガキ以外、当初思い描いていた「投手リレー」とは、まったく異なる展開でしたが、満足感、幸福感を十分に感じて、サロマ湖でのひとときを締めくくることにしました。
新鮮なサンマ、シマエビ、ホタテバター焼き、生ガキの黄金のリレーに、生ビール3杯で、お会計はなんと「5500円」。これでも旭川では高いくらいですね。たらふく飲み食いしても通常は3千円超えればいいほうです。東京だったら、下手すれば数万円ですよ。
こんなに素晴らしいのですが、訪れる客が少なくなっているのはかえすがえす、残念でなりません。特にサロマ湖のような、居酒屋には末永く続いてほしいので、もっと多くの人に来てほしいですね。皆さんも余裕があれば、北海道や旭川に限らず、日本各地を旅行して、ぜひ楽しみながら利益還元してほしいと切に願います。
サロマ湖を出て、旭川ラーメンを食べることにしました。(続く)
一人旅で、急ぐ必要もなかったので、デミオやビッツクラスのコンパクトカーでよかったのですが、週末ということもあり、あいにく希望の車種はなくて、受付の人の「遠出されるのであれば、燃費がいいハイブリッド車なんかどうですか?」というお誘いに応じて、2クラス上のプリウスを借りることにしました。
プリウスは街中で、発進と停止を繰り返す場合は、燃費向上が見込めても、高速道路や北海道の田舎道のような信号が少ないところでは、普通の車と燃費はさほど変わらないのではないかという思い込みがありましたが、ハイブリッド車を運転したことがないというのが大きな理由です。
エンジンキーがなくパワーボタンを押して始動する方式であったり、サイドブレーキがなく足で踏む方式であったり、いわゆるシフトレバーがなく駐車するときはパーキングボタンを押す必要があったりと、操作方法が全然わからず、「やべぇ」と思ったのですが、「慣れれば大丈夫さ」と言い聞かせて出発。
ハイブリッド車は停止するときにモーターを回し、バッテリーを充電するので、ブレーキがやたらとよく利き、最初は慣れずに急ブレーキ気味になることも多く、この旅で唯一、ストレスフルな展開となりました。しかも、札幌に5年以上住み、札幌市内の道路は知り尽くしているはずだったのですが、まともに北海道で車を運転するのは10年ぶりぐらいなので、すっかり道を忘れてしまい、高速道路に出る道がわからず、右往左往しながら、カーナビの力を借りて、やっとのことで道央自動車道に乗りました。ここまでくればこっちのもんです。
札幌~旭川間は約130キロ。1時間ちょっとのドライブです。カーブがあったり、景色が変わったりはするんですが、北海道の道路なので基本的には東名高速などと違って単調で、飛ばす人は飛ばすんですよね。速度違反のカメラに撮られたり、高速警察隊に摘発されたりするので注意が必要です。
追い越しなんかすると、平気で制限速度を大幅にオーバーし、一発で免許停止、下手すれば拘留されてしまう恐れもあるので、北海道を車で旅する人は気を付けましょう。かつてなら要領よく走ったのですが、今回は慣れない車で怖いので、律儀な運転に徹しました。
この日は旭川で宿泊予定ですが、いい季節なので、まずは富良野方面に行くことにしました。
旭川鷹栖インターで降り、旭川市街を通過し、富良野や帯広方面へとつながる北海道でも有数の観光メーンストリート国道237号に入ります。
旭川近郊を抜けると信号はほとんどなくなり、北海道らしい田舎道になります。最初の町は美瑛。「丘のまち」で知られ、丘陵地帯に広大な農地が広がり、ヨーロッパの田園地帯にいるような錯覚にとらわれます。
私は美瑛の街の東側の大雪山系の風景が好きなので、237号をいったん離れ、大雪山方向に車を走らせました。
車を走らせること約15キロほどでしょうか。大雪の山々は7合目くらいまで雪に覆われ、一足先に冬が訪れていることがうかがえます。
大雪山系のふもとには白金温泉という温泉地があり、その手前に神秘的な「青い池」があります。本当は行けそうなら十勝岳の中腹まで車で上がろうかと思ったのですが、冠雪の様子からして、無理そうだったので、青い池までで引き返すことにしました。
最近、北海道で冬を過ごしていないので分かりませんが、冬タイヤを履いていても、雪深いところをハイブリッド車で行くのはちょっと厳しいような気がしました。
美瑛の市街地に引き返したのは午後4時前、もうあと30分もすれば、日が暮れてしまいそうでした。本当は富良野に行って、ドラマ「北の国から」的な、風景も楽しかったのですが、美瑛の丘を楽しみたかったので、富良野行きは断念。美瑛をめぐることにしました。
美瑛にしろ、富良野にしろ、ラベンダーが咲き誇り、畑も緑、緑した、初夏が一番、観光客に人気のあるシーズンなんでしょうけれど、秋の景色もいいですね。
ほとんどの畑は収穫を終え、あとは長くて、雪深い冬を待つばかり。夏の余韻をわずかに残しつつも、どこかに憂いのようなものも含んでいて、季節感と旅情を掻き立てられます。
すっかり日も暮れ、旭川に着いたのは午後5時過ぎ。JR旭川駅は、かつてはひなびた感じだったのですが、高架駅になり、東京23区内にあるJRの駅のような先進的な駅に生まれ変わっていました。
ホテルにチェックインし、少し休憩した後、街へと繰り出します。
旭川の繁華街は、ほかの道内の都市と同様、街が碁盤の目の形状に区画整理されていて、「3条6丁目」が中心地なので、「3・6街」と呼ばれています。
観光地であり、自衛隊の駐屯地もあるので、この規模の街にしては、大きな歓楽街を形成しており、東北以北では「ススキノに次いでナンバー2」ともいわれていましたが、長引く不況の影響で、私が住んでいた頃と比べると、活気が失われているように感じられました。これはススキノにもいえることです。
4、5階建の飲食ビルがあちこちにあるのですが、土曜日ということもあるのでしょうけれど、2階以上の階にある、スナックやバー、キャバレーなどはほとんどシャッターが閉ざされているビルもあり、さびしい状況でした。
随分と長~い前振りになってしまいましたが、ここからが本題です。この日のメーンイベントは、海鮮、特にこれからが旬の「生ガキ」を食すことにあります。
旭川は内陸にあるのですが、道北やオホーツク海側の道東を結ぶ、交通の要衝で、新鮮な魚介類が集まるんですよね。だから旭川では、ぜひ海鮮料理を楽しみたいです。
なぜ、初日に、札幌で、“旭川名物”の塩ホルモンの店を訪れたのか? これで理由がお分かりでしょう。旭川で魚介類を楽しむために、あえてこういう選択肢をとったのです。
旭川にはいろんな魅力的な店があるので、正直、決め打ちはできないのですが、私の好きな店は「サロマ湖」です。その名の通り、オホーツク海側のサロマ湖から取り寄せた魚介類が魅力的なお店です。
店内はカウンターと小上がりがあり、家族連れでも大丈夫ですが、午後7時すぎに訪れると、小上がりの電気は消され、カウンターのみでした。客は私も含めて6人ほど。
夫婦が切り盛りしていて、蛍光灯の薄暗い明かりの中、いかにも「北の居酒屋」という雰囲気に包まれています。そんな中、場所にやや似つかわしくない2人の若いアルバイトの女性が華やぎを添えていました。
夏場なら生ものオンリーで攻めたいところです。ただ、この季節は体が冷えてしまうのでそうもいきません。しかも、私は生ビール一筋なので、焼き物、煮物とうまく組み合わせて考える必要があります。ここは生ガキのほか、ホタテの刺身も有名で、私は「先発」としてホタテ刺身を思い描いていたのですが、献立がかかれた紙が貼ってある壁を見ると、「限定 サンマ刺身」の文字が躍っていました。
私はサンマには目がありません。この季節、スーパーでサンマ刺身が並ぶと、必ずかごに入れますし、年中、機会があればサンマの塩焼きを食べます。「好きな食べ物は?」と聞かれたら、「サンマ」と即答するでしょうね。
この時期、北海道や東北沖で獲れるサンマは脂ののり方がハンパなく、鮮度も高く絶品です。これを見逃す手はなく、急きょ先発を変更。サンマを注文しました。
お造りのような形で出てきたのですが、新鮮なサンマの目があまりにも澄んでいて、思わず、サンマと目が合いました。身は弾力があり、舌にのせると脂がとろけて、いうことなしです。「北海道に来てよかった!!」。至福の瞬間でした。
生もの次は魚の焼き物を想定していたのですが、これも見事に覆されてしまいました。「サロマ湖直送 シマエビ」とあったら、これも避けて通れないではないですか。
ゆでたシマエビが6尾。薄暗い店内に鮮やかなエビの朱色がまぶしく、生き生きしたオーラが感じられました。これも弾けるような身の食感が楽しく、独特の甘みがあって、最高の一品でした。ここでなければ食べられないでしょう。
私は普段、あまり好んでエビは食べませんが、北海道のエビは別格。シマエビのほか、北海道沖で獲れる、ボタンエビやブドウエビの刺身は大好きです。
寒くて足が震えるような状況だったのですが、おいしくてビールが進んでしまいました。本当は無理を押してでも、生ものをもっと食べたかったのですが、体が冷えていたので、焼き物へ。
この店で、ホタテは絶対にはずせないので、ホタテバターを頼みました。地デジチューナーをつけたのでしょうか、12型くらいのブラウン管テレビがNHKののど自慢台湾大会を放映。店のご夫妻や居合わせた客から「台湾の人なのに日本の歌が歌えてうまいよね」。まったく同感でした。
北の街の情緒ある居酒屋で、台湾ののど自慢大会の歌を聴くという、一見ミスマッチでしたが、なんか心に響くものがあり、台湾の人が歌う「瀬戸の花嫁」を聴くと、涙腺が緩みそうになりました。
目の前で奥さんがフライパンを使って、ホタテバターをつくってくれました。実は、この店でホタテバターを頼むのは初めてで、本来はホタテ刺身を選ぶところ、次善の策だったのですが、味は感激の一言。
ホタテが丸ごとバター焼きにして出されるのですが、ホタテの香ばしい風味が思う存分凝縮されていて、うまく焼かれたステーキのようでした。新鮮なホタテでないとこのうまみは出ないでしょうから、ステーキ以上の味でしょうね。おそらく。
ホタテ刺身もおいしいのですが、正直、それ以上でした。久しぶりにサロマ湖を訪れて、大きな収穫でした。もし、この店を訪れる方がいるならば、ホタテバター焼きを一押しします。選んで間違いはありません。
焼き物を食べてひと心地したところで、お目当ての生ガキへ。これを食べるために北海道へ来たのだといっても過言ではありません。
瀬戸内海の広島や岡山が国内のカキの名産地とされますが、北の海のカキも一味違い、絶品です。瀬戸内海産は何となく泥臭さが残るような気がするんですけどね。北海道の清浄で、それでいて栄養たっぷりの海流の中で育ったカキのおいしさは別格だと思います。
カキの身を口に含むと、汽水湖であるサロマ湖の海の味が広がりました。新鮮な海の幸をいただくと、全身が覚醒され、生気がみなぎりますね。自然の恵みを受けているんだということをしみじみと感じました。1年に1回とまではいかないでしょうが、何年かに1回、ぜひこれを食べたいと思いますね。
ちなみに、岩からはがしたカキを殻つきのまま、焼いた(蒸した)、「カキのガンガン焼き」というのもこの店の人気メニューなのですが、今回は生もの中心にすることにしました。
生ガキ以外、当初思い描いていた「投手リレー」とは、まったく異なる展開でしたが、満足感、幸福感を十分に感じて、サロマ湖でのひとときを締めくくることにしました。
新鮮なサンマ、シマエビ、ホタテバター焼き、生ガキの黄金のリレーに、生ビール3杯で、お会計はなんと「5500円」。これでも旭川では高いくらいですね。たらふく飲み食いしても通常は3千円超えればいいほうです。東京だったら、下手すれば数万円ですよ。
こんなに素晴らしいのですが、訪れる客が少なくなっているのはかえすがえす、残念でなりません。特にサロマ湖のような、居酒屋には末永く続いてほしいので、もっと多くの人に来てほしいですね。皆さんも余裕があれば、北海道や旭川に限らず、日本各地を旅行して、ぜひ楽しみながら利益還元してほしいと切に願います。
サロマ湖を出て、旭川ラーメンを食べることにしました。(続く)
食欲の秋~北海道グルメ紀行④ 旬の海鮮を食べ尽くす
北海道旅行2日目、札幌駅南側にある、そば店「そば徳」で鴨せいろを食した後、北口に行き、レンタカーを借りました。ネットで申し込もうと思ったのですが、入力などの手続きが面倒だったので、ホテルを出る前に電話で問い合わせ。
一人旅で、急ぐ必要もなかったので、デミオやビッツクラスのコンパクトカーでよかったのですが、週末ということもあり、あいにく希望の車種はなくて、受付の人の「遠出されるのであれば、燃費がいいハイブリッド車なんかどうですか?」というお誘いに応じて、2クラス上のプリウスを借りることにしました。
プリウスは街中で、発進と停止を繰り返す場合は、燃費向上が見込めても、高速道路や北海道の田舎道のような信号が少ないところでは、普通の車と燃費はさほど変わらないのではないかという思い込みがありましたが、ハイブリッド車を運転したことがないというのが大きな理由です。
エンジンキーがなくパワーボタンを押して始動する方式であったり、サイドブレーキがなく足で踏む方式であったり、いわゆるシフトレバーがなく駐車するときはパーキングボタンを押す必要があったりと、操作方法が全然わからず、「やべぇ」と思ったのですが、「慣れれば大丈夫さ」と言い聞かせて出発。
ハイブリッド車は停止するときにモーターを回し、バッテリーを充電するので、ブレーキがやたらとよく利き、最初は慣れずに急ブレーキ気味になることも多く、この旅で唯一、ストレスフルな展開となりました。しかも、札幌に5年以上住み、札幌市内の道路は知り尽くしているはずだったのですが、まともに北海道で車を運転するのは10年ぶりぐらいなので、すっかり道を忘れてしまい、高速道路に出る道がわからず、右往左往しながら、カーナビの力を借りて、やっとのことで道央自動車道に乗りました。ここまでくればこっちのもんです。
札幌~旭川間は約130キロ。1時間ちょっとのドライブです。カーブがあったり、景色が変わったりはするんですが、北海道の道路なので基本的には東名高速などと違って単調で、飛ばす人は飛ばすんですよね。速度違反のカメラに撮られたり、高速警察隊に摘発されたりするので注意が必要です。
追い越しなんかすると、平気で制限速度を大幅にオーバーし、一発で免許停止、下手すれば拘留されてしまう恐れもあるので、北海道を車で旅する人は気を付けましょう。かつてなら要領よく走ったのですが、今回は慣れない車で怖いので、律儀な運転に徹しました。
この日は旭川で宿泊予定ですが、いい季節なので、まずは富良野方面に行くことにしました。
旭川鷹栖インターで降り、旭川市街を通過し、富良野や帯広方面へとつながる北海道でも有数の観光メーンストリート国道237号に入ります。
旭川近郊を抜けると信号はほとんどなくなり、北海道らしい田舎道になります。最初の町は美瑛。「丘のまち」で知られ、丘陵地帯に広大な農地が広がり、ヨーロッパの田園地帯にいるような錯覚にとらわれます。
私は美瑛の街の東側の大雪山系の風景が好きなので、237号をいったん離れ、大雪山方向に車を走らせました。
車を走らせること約15キロほどでしょうか。大雪の山々は7合目くらいまで雪に覆われ、一足先に冬が訪れていることがうかがえます。
大雪山系のふもとには白金温泉という温泉地があり、その手前に神秘的な「青い池」があります。本当は行けそうなら十勝岳の中腹まで車で上がろうかと思ったのですが、冠雪の様子からして、無理そうだったので、青い池までで引き返すことにしました。
最近、北海道で冬を過ごしていないので分かりませんが、冬タイヤを履いていても、雪深いところをハイブリッド車で行くのはちょっと厳しいような気がしました。
美瑛の市街地に引き返したのは午後4時前、もうあと30分もすれば、日が暮れてしまいそうでした。本当は富良野に行って、ドラマ「北の国から」的な、風景も楽しかったのですが、美瑛の丘を楽しみたかったので、富良野行きは断念。美瑛をめぐることにしました。
美瑛にしろ、富良野にしろ、ラベンダーが咲き誇り、畑も緑、緑した、初夏が一番、観光客に人気のあるシーズンなんでしょうけれど、秋の景色もいいですね。
ほとんどの畑は収穫を終え、あとは長くて、雪深い冬を待つばかり。夏の余韻をわずかに残しつつも、どこかに憂いのようなものも含んでいて、季節感と旅情を掻き立てられます。
すっかり日も暮れ、旭川に着いたのは午後5時過ぎ。JR旭川駅は、かつてはひなびた感じだったのですが、高架駅になり、東京23区内にあるJRの駅のような先進的な駅に生まれ変わっていました。
ホテルにチェックインし、少し休憩した後、街へと繰り出します。
旭川の繁華街は、ほかの道内の都市と同様、街が碁盤の目の形状に区画整理されていて、「3条6丁目」が中心地なので、「3・6街」と呼ばれています。
観光地であり、自衛隊の駐屯地もあるので、この規模の街にしては、大きな歓楽街を形成しており、東北以北では「ススキノに次いでナンバー2」ともいわれていましたが、長引く不況の影響で、私が住んでいた頃と比べると、活気が失われているように感じられました。これはススキノにもいえることです。
4、5階建の飲食ビルがあちこちにあるのですが、土曜日ということもあるのでしょうけれど、2階以上の階にある、スナックやバー、キャバレーなどはほとんどシャッターが閉ざされているビルもあり、さびしい状況でした。
随分と長~い前振りになってしまいましたが、ここからが本題です。この日のメーンイベントは、海鮮、特にこれからが旬の「生ガキ」を食すことにあります。
旭川は内陸にあるのですが、道北やオホーツク海側の道東を結ぶ、交通の要衝で、新鮮な魚介類が集まるんですよね。だから旭川では、ぜひ海鮮料理を楽しみたいです。
なぜ、初日に、札幌で、“旭川名物”の塩ホルモンの店を訪れたのか? これで理由がお分かりでしょう。旭川で魚介類を楽しむために、あえてこういう選択肢をとったのです。
旭川にはいろんな魅力的な店があるので、正直、決め打ちはできないのですが、私の好きな店は「サロマ湖」です。その名の通り、オホーツク海側のサロマ湖から取り寄せた魚介類が魅力的なお店です。
店内はカウンターと小上がりがあり、家族連れでも大丈夫ですが、午後7時すぎに訪れると、小上がりの電気は消され、カウンターのみでした。客は私も含めて6人ほど。
夫婦が切り盛りしていて、蛍光灯の薄暗い明かりの中、いかにも「北の居酒屋」という雰囲気に包まれています。そんな中、場所にやや似つかわしくない2人の若いアルバイトの女性が華やぎを添えていました。
夏場なら生ものオンリーで攻めたいところです。ただ、この季節は体が冷えてしまうのでそうもいきません。しかも、私は生ビール一筋なので、焼き物、煮物とうまく組み合わせて考える必要があります。ここは生ガキのほか、ホタテの刺身も有名で、私は「先発」としてホタテ刺身を思い描いていたのですが、献立がかかれた紙が貼ってある壁を見ると、「限定 サンマ刺身」の文字が躍っていました。
私はサンマには目がありません。この季節、スーパーでサンマ刺身が並ぶと、必ずかごに入れますし、年中、機会があればサンマの塩焼きを食べます。「好きな食べ物は?」と聞かれたら、「サンマ」と即答するでしょうね。
この時期、北海道や東北沖で獲れるサンマは脂ののり方がハンパなく、鮮度も高く絶品です。これを見逃す手はなく、急きょ先発を変更。サンマを注文しました。
お造りのような形で出てきたのですが、新鮮なサンマの目があまりにも澄んでいて、思わず、サンマと目が合いました。身は弾力があり、舌にのせると脂がとろけて、いうことなしです。「北海道に来てよかった!!」。至福の瞬間でした。
生もの次は魚の焼き物を想定していたのですが、これも見事に覆されてしまいました。「サロマ湖直送 シマエビ」とあったら、これも避けて通れないではないですか。
ゆでたシマエビが6尾。薄暗い店内に鮮やかなエビの朱色がまぶしく、生き生きしたオーラが感じられました。これも弾けるような身の食感が楽しく、独特の甘みがあって、最高の一品でした。ここでなければ食べられないでしょう。
私は普段、あまり好んでエビは食べませんが、北海道のエビは別格。シマエビのほか、北海道沖で獲れる、ボタンエビやブドウエビの刺身は大好きです。
寒くて足が震えるような状況だったのですが、おいしくてビールが進んでしまいました。本当は無理を押してでも、生ものをもっと食べたかったのですが、体が冷えていたので、焼き物へ。
この店で、ホタテは絶対にはずせないので、ホタテバターを頼みました。地デジチューナーをつけたのでしょうか、12型くらいのブラウン管テレビがNHKののど自慢台湾大会を放映。店のご夫妻や居合わせた客から「台湾の人なのに日本の歌が歌えてうまいよね」。まったく同感でした。
北の街の情緒ある居酒屋で、台湾ののど自慢大会の歌を聴くという、一見ミスマッチでしたが、なんか心に響くものがあり、台湾の人が歌う「瀬戸の花嫁」を聴くと、涙腺が緩みそうになりました。
目の前で奥さんがフライパンを使って、ホタテバターをつくってくれました。実は、この店でホタテバターを頼むのは初めてで、本来はホタテ刺身を選ぶところ、次善の策だったのですが、味は感激の一言。
ホタテが丸ごとバター焼きにして出されるのですが、ホタテの香ばしい風味が思う存分凝縮されていて、うまく焼かれたステーキのようでした。新鮮なホタテでないとこのうまみは出ないでしょうから、ステーキ以上の味でしょうね。おそらく。
ホタテ刺身もおいしいのですが、正直、それ以上でした。久しぶりにサロマ湖を訪れて、大きな収穫でした。もし、この店を訪れる方がいるならば、ホタテバター焼きを一押しします。選んで間違いはありません。
焼き物を食べてひと心地したところで、お目当ての生ガキへ。これを食べるために北海道へ来たのだといっても過言ではありません。
瀬戸内海の広島や岡山が国内のカキの名産地とされますが、北の海のカキも一味違い、絶品です。瀬戸内海産は何となく泥臭さが残るような気がするんですけどね。北海道の清浄で、それでいて栄養たっぷりの海流の中で育ったカキのおいしさは別格だと思います。
カキの身を口に含むと、汽水湖であるサロマ湖の海の味が広がりました。新鮮な海の幸をいただくと、全身が覚醒され、生気がみなぎりますね。自然の恵みを受けているんだということをしみじみと感じました。1年に1回とまではいかないでしょうが、何年かに1回、ぜひこれを食べたいと思いますね。
ちなみに、岩からはがしたカキを殻つきのまま、焼いた(蒸した)、「カキのガンガン焼き」というのもこの店の人気メニューなのですが、今回は生もの中心にすることにしました。
生ガキ以外、当初思い描いていた「投手リレー」とは、まったく異なる展開でしたが、満足感、幸福感を十分に感じて、サロマ湖でのひとときを締めくくることにしました。
新鮮なサンマ、シマエビ、ホタテバター焼き、生ガキの黄金のリレーに、生ビール3杯で、お会計はなんと「5500円」。これでも旭川では高いくらいですね。たらふく飲み食いしても通常は3千円超えればいいほうです。東京だったら、下手すれば数万円ですよ。
こんなに素晴らしいのですが、訪れる客が少なくなっているのはかえすがえす、残念でなりません。特にサロマ湖のような、居酒屋には末永く続いてほしいので、もっと多くの人に来てほしいですね。皆さんも余裕があれば、北海道や旭川に限らず、日本各地を旅行して、ぜひ楽しみながら利益還元してほしいと切に願います。
サロマ湖を出て、旭川ラーメンを食べることにしました。(続く)
一人旅で、急ぐ必要もなかったので、デミオやビッツクラスのコンパクトカーでよかったのですが、週末ということもあり、あいにく希望の車種はなくて、受付の人の「遠出されるのであれば、燃費がいいハイブリッド車なんかどうですか?」というお誘いに応じて、2クラス上のプリウスを借りることにしました。
プリウスは街中で、発進と停止を繰り返す場合は、燃費向上が見込めても、高速道路や北海道の田舎道のような信号が少ないところでは、普通の車と燃費はさほど変わらないのではないかという思い込みがありましたが、ハイブリッド車を運転したことがないというのが大きな理由です。
エンジンキーがなくパワーボタンを押して始動する方式であったり、サイドブレーキがなく足で踏む方式であったり、いわゆるシフトレバーがなく駐車するときはパーキングボタンを押す必要があったりと、操作方法が全然わからず、「やべぇ」と思ったのですが、「慣れれば大丈夫さ」と言い聞かせて出発。
ハイブリッド車は停止するときにモーターを回し、バッテリーを充電するので、ブレーキがやたらとよく利き、最初は慣れずに急ブレーキ気味になることも多く、この旅で唯一、ストレスフルな展開となりました。しかも、札幌に5年以上住み、札幌市内の道路は知り尽くしているはずだったのですが、まともに北海道で車を運転するのは10年ぶりぐらいなので、すっかり道を忘れてしまい、高速道路に出る道がわからず、右往左往しながら、カーナビの力を借りて、やっとのことで道央自動車道に乗りました。ここまでくればこっちのもんです。
札幌~旭川間は約130キロ。1時間ちょっとのドライブです。カーブがあったり、景色が変わったりはするんですが、北海道の道路なので基本的には東名高速などと違って単調で、飛ばす人は飛ばすんですよね。速度違反のカメラに撮られたり、高速警察隊に摘発されたりするので注意が必要です。
追い越しなんかすると、平気で制限速度を大幅にオーバーし、一発で免許停止、下手すれば拘留されてしまう恐れもあるので、北海道を車で旅する人は気を付けましょう。かつてなら要領よく走ったのですが、今回は慣れない車で怖いので、律儀な運転に徹しました。
この日は旭川で宿泊予定ですが、いい季節なので、まずは富良野方面に行くことにしました。
旭川鷹栖インターで降り、旭川市街を通過し、富良野や帯広方面へとつながる北海道でも有数の観光メーンストリート国道237号に入ります。
旭川近郊を抜けると信号はほとんどなくなり、北海道らしい田舎道になります。最初の町は美瑛。「丘のまち」で知られ、丘陵地帯に広大な農地が広がり、ヨーロッパの田園地帯にいるような錯覚にとらわれます。
私は美瑛の街の東側の大雪山系の風景が好きなので、237号をいったん離れ、大雪山方向に車を走らせました。
車を走らせること約15キロほどでしょうか。大雪の山々は7合目くらいまで雪に覆われ、一足先に冬が訪れていることがうかがえます。
大雪山系のふもとには白金温泉という温泉地があり、その手前に神秘的な「青い池」があります。本当は行けそうなら十勝岳の中腹まで車で上がろうかと思ったのですが、冠雪の様子からして、無理そうだったので、青い池までで引き返すことにしました。
最近、北海道で冬を過ごしていないので分かりませんが、冬タイヤを履いていても、雪深いところをハイブリッド車で行くのはちょっと厳しいような気がしました。
美瑛の市街地に引き返したのは午後4時前、もうあと30分もすれば、日が暮れてしまいそうでした。本当は富良野に行って、ドラマ「北の国から」的な、風景も楽しかったのですが、美瑛の丘を楽しみたかったので、富良野行きは断念。美瑛をめぐることにしました。
美瑛にしろ、富良野にしろ、ラベンダーが咲き誇り、畑も緑、緑した、初夏が一番、観光客に人気のあるシーズンなんでしょうけれど、秋の景色もいいですね。
ほとんどの畑は収穫を終え、あとは長くて、雪深い冬を待つばかり。夏の余韻をわずかに残しつつも、どこかに憂いのようなものも含んでいて、季節感と旅情を掻き立てられます。
すっかり日も暮れ、旭川に着いたのは午後5時過ぎ。JR旭川駅は、かつてはひなびた感じだったのですが、高架駅になり、東京23区内にあるJRの駅のような先進的な駅に生まれ変わっていました。
ホテルにチェックインし、少し休憩した後、街へと繰り出します。
旭川の繁華街は、ほかの道内の都市と同様、街が碁盤の目の形状に区画整理されていて、「3条6丁目」が中心地なので、「3・6街」と呼ばれています。
観光地であり、自衛隊の駐屯地もあるので、この規模の街にしては、大きな歓楽街を形成しており、東北以北では「ススキノに次いでナンバー2」ともいわれていましたが、長引く不況の影響で、私が住んでいた頃と比べると、活気が失われているように感じられました。これはススキノにもいえることです。
4、5階建の飲食ビルがあちこちにあるのですが、土曜日ということもあるのでしょうけれど、2階以上の階にある、スナックやバー、キャバレーなどはほとんどシャッターが閉ざされているビルもあり、さびしい状況でした。
随分と長~い前振りになってしまいましたが、ここからが本題です。この日のメーンイベントは、海鮮、特にこれからが旬の「生ガキ」を食すことにあります。
旭川は内陸にあるのですが、道北やオホーツク海側の道東を結ぶ、交通の要衝で、新鮮な魚介類が集まるんですよね。だから旭川では、ぜひ海鮮料理を楽しみたいです。
なぜ、初日に、札幌で、“旭川名物”の塩ホルモンの店を訪れたのか? これで理由がお分かりでしょう。旭川で魚介類を楽しむために、あえてこういう選択肢をとったのです。
旭川にはいろんな魅力的な店があるので、正直、決め打ちはできないのですが、私の好きな店は「サロマ湖」です。その名の通り、オホーツク海側のサロマ湖から取り寄せた魚介類が魅力的なお店です。
店内はカウンターと小上がりがあり、家族連れでも大丈夫ですが、午後7時すぎに訪れると、小上がりの電気は消され、カウンターのみでした。客は私も含めて6人ほど。
夫婦が切り盛りしていて、蛍光灯の薄暗い明かりの中、いかにも「北の居酒屋」という雰囲気に包まれています。そんな中、場所にやや似つかわしくない2人の若いアルバイトの女性が華やぎを添えていました。
夏場なら生ものオンリーで攻めたいところです。ただ、この季節は体が冷えてしまうのでそうもいきません。しかも、私は生ビール一筋なので、焼き物、煮物とうまく組み合わせて考える必要があります。ここは生ガキのほか、ホタテの刺身も有名で、私は「先発」としてホタテ刺身を思い描いていたのですが、献立がかかれた紙が貼ってある壁を見ると、「限定 サンマ刺身」の文字が躍っていました。
私はサンマには目がありません。この季節、スーパーでサンマ刺身が並ぶと、必ずかごに入れますし、年中、機会があればサンマの塩焼きを食べます。「好きな食べ物は?」と聞かれたら、「サンマ」と即答するでしょうね。
この時期、北海道や東北沖で獲れるサンマは脂ののり方がハンパなく、鮮度も高く絶品です。これを見逃す手はなく、急きょ先発を変更。サンマを注文しました。
お造りのような形で出てきたのですが、新鮮なサンマの目があまりにも澄んでいて、思わず、サンマと目が合いました。身は弾力があり、舌にのせると脂がとろけて、いうことなしです。「北海道に来てよかった!!」。至福の瞬間でした。
生もの次は魚の焼き物を想定していたのですが、これも見事に覆されてしまいました。「サロマ湖直送 シマエビ」とあったら、これも避けて通れないではないですか。
ゆでたシマエビが6尾。薄暗い店内に鮮やかなエビの朱色がまぶしく、生き生きしたオーラが感じられました。これも弾けるような身の食感が楽しく、独特の甘みがあって、最高の一品でした。ここでなければ食べられないでしょう。
私は普段、あまり好んでエビは食べませんが、北海道のエビは別格。シマエビのほか、北海道沖で獲れる、ボタンエビやブドウエビの刺身は大好きです。
寒くて足が震えるような状況だったのですが、おいしくてビールが進んでしまいました。本当は無理を押してでも、生ものをもっと食べたかったのですが、体が冷えていたので、焼き物へ。
この店で、ホタテは絶対にはずせないので、ホタテバターを頼みました。地デジチューナーをつけたのでしょうか、12型くらいのブラウン管テレビがNHKののど自慢台湾大会を放映。店のご夫妻や居合わせた客から「台湾の人なのに日本の歌が歌えてうまいよね」。まったく同感でした。
北の街の情緒ある居酒屋で、台湾ののど自慢大会の歌を聴くという、一見ミスマッチでしたが、なんか心に響くものがあり、台湾の人が歌う「瀬戸の花嫁」を聴くと、涙腺が緩みそうになりました。
目の前で奥さんがフライパンを使って、ホタテバターをつくってくれました。実は、この店でホタテバターを頼むのは初めてで、本来はホタテ刺身を選ぶところ、次善の策だったのですが、味は感激の一言。
ホタテが丸ごとバター焼きにして出されるのですが、ホタテの香ばしい風味が思う存分凝縮されていて、うまく焼かれたステーキのようでした。新鮮なホタテでないとこのうまみは出ないでしょうから、ステーキ以上の味でしょうね。おそらく。
ホタテ刺身もおいしいのですが、正直、それ以上でした。久しぶりにサロマ湖を訪れて、大きな収穫でした。もし、この店を訪れる方がいるならば、ホタテバター焼きを一押しします。選んで間違いはありません。
焼き物を食べてひと心地したところで、お目当ての生ガキへ。これを食べるために北海道へ来たのだといっても過言ではありません。
瀬戸内海の広島や岡山が国内のカキの名産地とされますが、北の海のカキも一味違い、絶品です。瀬戸内海産は何となく泥臭さが残るような気がするんですけどね。北海道の清浄で、それでいて栄養たっぷりの海流の中で育ったカキのおいしさは別格だと思います。
カキの身を口に含むと、汽水湖であるサロマ湖の海の味が広がりました。新鮮な海の幸をいただくと、全身が覚醒され、生気がみなぎりますね。自然の恵みを受けているんだということをしみじみと感じました。1年に1回とまではいかないでしょうが、何年かに1回、ぜひこれを食べたいと思いますね。
ちなみに、岩からはがしたカキを殻つきのまま、焼いた(蒸した)、「カキのガンガン焼き」というのもこの店の人気メニューなのですが、今回は生もの中心にすることにしました。
生ガキ以外、当初思い描いていた「投手リレー」とは、まったく異なる展開でしたが、満足感、幸福感を十分に感じて、サロマ湖でのひとときを締めくくることにしました。
新鮮なサンマ、シマエビ、ホタテバター焼き、生ガキの黄金のリレーに、生ビール3杯で、お会計はなんと「5500円」。これでも旭川では高いくらいですね。たらふく飲み食いしても通常は3千円超えればいいほうです。東京だったら、下手すれば数万円ですよ。
こんなに素晴らしいのですが、訪れる客が少なくなっているのはかえすがえす、残念でなりません。特にサロマ湖のような、居酒屋には末永く続いてほしいので、もっと多くの人に来てほしいですね。皆さんも余裕があれば、北海道や旭川に限らず、日本各地を旅行して、ぜひ楽しみながら利益還元してほしいと切に願います。
サロマ湖を出て、旭川ラーメンを食べることにしました。(続く)
食欲の秋~北海道グルメ③ 鴨とそばつゆの絶妙コラボ
先週末の北海道は、最高気温が15度前後と、この時期としては比較的暖かく、旅行に出発する前、何を着ていくのか悩んだのがうそのように、ジャケット1枚を羽織るくらいで快適に過ごせました。
2日目は、お世話になった人と会うため、旭川に向かいますが、その前に私には、ぜひともやっておきたい(食べておきたい)ミッションがありました。「そば」です。
北海道は日本一のそば産地で、道北寄りの幌加内、旭川近郊の江丹別、帯広に近い新得といったところが、全国的に知られています。毎年、お盆を過ぎる頃には新そばが広く出回り、秋には各地でそば祭りが開催されるので、そば好きの私としては、楽しみな季節です。
初日は塩ホルモンと味噌ラーメンと、ダイエットでこの半年ほどですっかり少食になってしまった私にとっては、かなりのヘビー・デューティーで、やや胃がもたれていたのですが、そばはぜひ食べておきたいし、疲れたい胃に、そばというのは、それほど重くなく、ちょうどいい選択でした。今回の旅行は本当にやることなすことがことごとく、うまく行き、ストレスのない旅でした。
ホテルのチェックアウト時間が午前10時で、お目当ての札幌駅南口近くにあるそば店「そば徳」の開店時間は午前11時。ちょうどいい時間があるので、札幌市中心部を散策しました。
秋の北海道は、きりっと冷えた空気に覆われ、寒さの中に凛としたものがあり、心に響くものがあるのですが、やや今年は全国的に気温が高い影響もあってか、力不足でした。れでも、街路樹のイチョウがまぶしい黄色を放ち、大通公園の木々が鮮やかに紅葉し、秋が深まっていることを実感させられます。
札幌と大通を結ぶ、地下道が完成し、初めて通ってみました。上を走る札幌駅前通りの道幅に合わせているのでしょう。非常に広々としていて、こんな大きな地下道を造る必要があるのか? という疑問がないでもなかったですが、冬場、11月下旬から4月初旬まで歩道が雪に覆われ、外出しづらくなる期間は、札幌駅からススキノまで、地下道一本でつながることで、とても便利になったことでしょう。
札幌駅周辺のサラリーマンが、ススキノへ足を伸ばし、飲みに行く機会が増える効果もあるかもしれませんね。
キャリーバッグをごろごろ引っ張りながら、公園や地下街のベンチ、書店で暇をつぶしつつし、いい頃合いを見計らって、そば徳へ。
店内には、かつおだしの香りがほんのりと漂い、常連さんでしょうか? すでに2、3人のお客さんが店内にいて、新聞を読みながら、土曜日午前のリラックスした時間に浸っていました。
このお店でぜひ食べたいのが「鴨せいろ」(950円)です。私は、そばの本場、東京をはじめ、全国各地でかなりそばを食べていますが、鴨せいろで、そば徳よりおいしいお店を知りません。1店だけ、「鶏肉せいろ」でおいしい店を知っていますが、鴨せいろでは断トツにおいしいです。
これだけおいしいのに、あまり知られていないのは、残念ですが、まあ、「私だけが知っている秘密」めいた、面白さもあり、誰も紹介しないので、こっそりとひっそりと今回、記録しておくことにします。
そば徳の鴨せいろは、鴨汁がアツアツの状態で出てきます。つめたいそばを汁につけると、だんだん温度が下がり、ぬるくなってしまうので、熱めにして味わってほしいというお店の配慮です。うれしいではないですか。
そばを汁に漬ける前に、ぜひ鴨汁だけを味わいたいですね。もちろん「そばつゆ」の役割を果たすので、塩辛く味付けがされているのですが、この鴨汁を一口すすると、思わず表情が緩みます。
全体に丸い味なんですよね。ちょっとしょっぱいそばつゆに、鴨の脂の甘さとジューシーな肉汁が加わることで、まろやかになり、味に奥行きがでます。なぜ鶏でなく、鴨を使うのかというのがよく分かります。鶏の脂だと、ややそっけないんですよね。鴨はそれ自体、いい出汁が出るので、そばつゆが全く違うものに変身します。ちょっと焦がした長ネギも、とてもいい組み合わせです。
東京にも江戸前の各店自慢の鴨せいろがたくさんあるのですが、そば徳ほど、心揺さぶられる味を私は知りません。とても、シンプルだと思うのですが、引き付ける味なのです。
北海道はどこでもそうですが、そば自体はおいしいんだけれども、つゆがちょっとね、というお店が多く、やはり江戸前の伝統の味、職人の技が光る、東京のそば店と比べると、物足りなく感じることもあるのですが、そば徳の鴨せいろに関しては、別格だと思います。
最後は、そば湯できっちりと〆て、幸せな気分で、店を出ました。朝方、小雨が降っていて、天気が気になったのですが、秋らしい抜けるような青空が広がりました。北海道に来てよかったなと、あらためてしみじみと実感しつつ、レンタカーで旭川方面に向かいました。(続く)
2日目は、お世話になった人と会うため、旭川に向かいますが、その前に私には、ぜひともやっておきたい(食べておきたい)ミッションがありました。「そば」です。
北海道は日本一のそば産地で、道北寄りの幌加内、旭川近郊の江丹別、帯広に近い新得といったところが、全国的に知られています。毎年、お盆を過ぎる頃には新そばが広く出回り、秋には各地でそば祭りが開催されるので、そば好きの私としては、楽しみな季節です。
初日は塩ホルモンと味噌ラーメンと、ダイエットでこの半年ほどですっかり少食になってしまった私にとっては、かなりのヘビー・デューティーで、やや胃がもたれていたのですが、そばはぜひ食べておきたいし、疲れたい胃に、そばというのは、それほど重くなく、ちょうどいい選択でした。今回の旅行は本当にやることなすことがことごとく、うまく行き、ストレスのない旅でした。
ホテルのチェックアウト時間が午前10時で、お目当ての札幌駅南口近くにあるそば店「そば徳」の開店時間は午前11時。ちょうどいい時間があるので、札幌市中心部を散策しました。
秋の北海道は、きりっと冷えた空気に覆われ、寒さの中に凛としたものがあり、心に響くものがあるのですが、やや今年は全国的に気温が高い影響もあってか、力不足でした。れでも、街路樹のイチョウがまぶしい黄色を放ち、大通公園の木々が鮮やかに紅葉し、秋が深まっていることを実感させられます。
札幌と大通を結ぶ、地下道が完成し、初めて通ってみました。上を走る札幌駅前通りの道幅に合わせているのでしょう。非常に広々としていて、こんな大きな地下道を造る必要があるのか? という疑問がないでもなかったですが、冬場、11月下旬から4月初旬まで歩道が雪に覆われ、外出しづらくなる期間は、札幌駅からススキノまで、地下道一本でつながることで、とても便利になったことでしょう。
札幌駅周辺のサラリーマンが、ススキノへ足を伸ばし、飲みに行く機会が増える効果もあるかもしれませんね。
キャリーバッグをごろごろ引っ張りながら、公園や地下街のベンチ、書店で暇をつぶしつつし、いい頃合いを見計らって、そば徳へ。
店内には、かつおだしの香りがほんのりと漂い、常連さんでしょうか? すでに2、3人のお客さんが店内にいて、新聞を読みながら、土曜日午前のリラックスした時間に浸っていました。
このお店でぜひ食べたいのが「鴨せいろ」(950円)です。私は、そばの本場、東京をはじめ、全国各地でかなりそばを食べていますが、鴨せいろで、そば徳よりおいしいお店を知りません。1店だけ、「鶏肉せいろ」でおいしい店を知っていますが、鴨せいろでは断トツにおいしいです。
これだけおいしいのに、あまり知られていないのは、残念ですが、まあ、「私だけが知っている秘密」めいた、面白さもあり、誰も紹介しないので、こっそりとひっそりと今回、記録しておくことにします。
そば徳の鴨せいろは、鴨汁がアツアツの状態で出てきます。つめたいそばを汁につけると、だんだん温度が下がり、ぬるくなってしまうので、熱めにして味わってほしいというお店の配慮です。うれしいではないですか。
そばを汁に漬ける前に、ぜひ鴨汁だけを味わいたいですね。もちろん「そばつゆ」の役割を果たすので、塩辛く味付けがされているのですが、この鴨汁を一口すすると、思わず表情が緩みます。
全体に丸い味なんですよね。ちょっとしょっぱいそばつゆに、鴨の脂の甘さとジューシーな肉汁が加わることで、まろやかになり、味に奥行きがでます。なぜ鶏でなく、鴨を使うのかというのがよく分かります。鶏の脂だと、ややそっけないんですよね。鴨はそれ自体、いい出汁が出るので、そばつゆが全く違うものに変身します。ちょっと焦がした長ネギも、とてもいい組み合わせです。
東京にも江戸前の各店自慢の鴨せいろがたくさんあるのですが、そば徳ほど、心揺さぶられる味を私は知りません。とても、シンプルだと思うのですが、引き付ける味なのです。
北海道はどこでもそうですが、そば自体はおいしいんだけれども、つゆがちょっとね、というお店が多く、やはり江戸前の伝統の味、職人の技が光る、東京のそば店と比べると、物足りなく感じることもあるのですが、そば徳の鴨せいろに関しては、別格だと思います。
最後は、そば湯できっちりと〆て、幸せな気分で、店を出ました。朝方、小雨が降っていて、天気が気になったのですが、秋らしい抜けるような青空が広がりました。北海道に来てよかったなと、あらためてしみじみと実感しつつ、レンタカーで旭川方面に向かいました。(続く)