米国のニクソン政権下で国務長官を務めたヘンリー・キッシンジャー博士は、米国の世界戦略に今でも大きな影響力を及ぼしています。昨年秋、日本が環太平洋連携協定(TPP)に参加するかどうかをめぐり、国内が大きく揺れる中、絶妙なタイミングで来日し、野田佳彦首相が「交渉参加」を表明する“後押し”となりました。
ニクソン大統領というと、ウォーターゲート事件で歴史上初めて、米大統領が失脚したことで知られますが、ワシントンポストの駆け出しの若手記者が「スクープ」するなど、毎度毎度のことですが、米国で何かが起きると、胡散臭さがつきまといます。
政権中枢にいたキッシンジャー博士は、うまくスキャンダルを潜り抜け、40年近くたった今でも日本そして世界に対して、存在感を示しています。日本の小物政治家どもがちょこちょことワシントンを訪れ、キッシンジャー詣でをしているのは半ば公然の事実です。
博士の背後には大きな後ろ盾がいて、エージェントとして動いていることは明白で、まさに世界を動かす“黒幕”なのですが、著書や発言を見る限り、かなりの知性を持った人物であることもまた事実。朝貢国である日本は宗主国の米国に対して、いっぱい食わせてやるぐらいの気概が必要なのですが、対抗できる頭の良さを持ち合わせた人物は存在しません。この事実は粛々と受け止めなければなりません。
キッシンジャー博士の“カウンターパート”的な存在が、元NHK記者で現在米国のシンクタンクに所属する日高義樹氏で、毎年年初に、日高氏のテレビ東京番組(現在「ワシントンの日高義樹です」)に、博士本人が出演して、その年の世界の動きを予測します。
予測は当たらないことも多いのですが(わざとミスリードさせる面も多々あるでしょうけど)、世界を動かす人物の発言だけに見逃せません。難点は聞き手(日高氏)のクオリティーで、冷戦構造が抜け切れないんでしょうね。やたらと中国との対立をあおります。まさにそれこそ米国の思うつぼで、日本と中国が対立する構図を利用して、普天間移設など要求をエスカレートさせたり、米国債を買わせたりと、やられ放題です。博士も陰で苦笑していることでしょう。
それはさておき、キッシンジャー博士の2012年の10大予測は
①ドルは下げ止まり安定する
②円はこれ以上、高くならない
③ユーロは時間をかけて危機を脱する
④EUが1~2年のうちに崩壊することはない
⑤中国経済は7~8%拡大する
⑥イランの核兵器に対する反発が強まる
⑦北朝鮮の新しい政権には亀裂が出てくる
⑧米国の軍事力が減っても同盟国の力で埋め合わせられる
⑨ロシアが帝国主義的国家体制をとるのは難しい
⑩大統領選挙後、米国は統一を取り戻す
です。トレーダーとしては①、②が気になりますね。私などは米国崩壊説の立場なので、非常に嫌な予想です。ただ、これはこれとして直視しないといけません。本気でそう思っていて、ドルを反転させる意思を持っているのか、単なる希望的観測なのかは話しぶりからは読めませんでした。確かに相場は円高に対してやや飽和してきた感もあります。
③~⑤は当たり障りないでしょうね。欧州に関しては、なんだかんだ言って、団結を維持するでしょう。かつては欧州は列強の集まりでしたが、今や弱っちい国ばかりで、結束しないと中国やロシア、台頭するトルコなんかに呑み込まれてしまうでしょう。
⑥、⑦はセンシティブですね。抑えた表現でしたが、イランに対しては敵意というものがにじみ出ていました。はっきり言って「はい、はいそうですか」と聞き流していい話だとは思いますが、⑧みたいなことを言い出してくるので、そうなると話は別です。
要は、米国単独ではイランを攻撃できないということです。世論も許さないでしょう。だから、いざ戦うとなったら、核拡散防止と対テロのための「多国籍軍」を組織する腹積もりなのです。この辺、露骨に思惑が表れてきますね。
当然、日本も金だけでなく、自衛隊の参加を強要されることでしょう。すでに巨額の金を貢いでいるにもかかわらず、さらに自衛隊派遣の議論をすることになると思うと、本当に辟易します。
⑨はプーチンに対するロシア国内の不満が噴出していますが、いろいろと背景事情があるということでしょう。「米国も一枚かんでいるよ」というメッセージでしょうか。ロシアは現在、中国と比較的共同歩調をとることが多いですが、一枚岩ではなくなる可能性を考慮しておいた方がいいでしょう。昨年のリビアのカダフィ政権崩壊の際の動きをもう一度、精査する必要があります。
⑩も「はい、そうですか」ですよね。統一を取り戻すって、もともと、統一しているじゃないですか。民主党が政権を取ろうが、共和党が政権を取ろうが、変化しませんよね。ティーパーティー、リバータリアン系と、民主、共和両勢力とは明確に対立軸が描けますが、リバータリアンの動きを巧妙に封じ込めますからね。
ロン・ポールを巧妙に埋没させて、共和党を弱体化し、オバマ再選につなげるということなのでしょう。統一を取り戻すというよりは、支配層があらためて団結を強めるということでしょうか。
キッシンジャー博士の2012年の10大予測は、こんなところです。まだ今年は始まったばかりで、先が読めない部分が多いですが、いろいろと物事が動き出す中で、博士が何を意図して発言したか、少しずつ解明できるでしょう。貴重なインタビューであることは間違いありません。
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未来予想と後講釈
欧米各国が国家破綻し、金融恐慌が起きるという未来予想の下、私は発言していますが、予想なんてだれでもできるんですよね。大きな方向性は分かっていても、うまく流れに乗って行動し、結果を出すことができなければ何の意味もありません。
反原発のパイオニアだった人たちがまさにそうですよね。京都大原子炉研究所の小出裕章さんとか、ジャーナリストの広瀬隆さんとか、東京電力福島第1原発事故が起きる前から、「原発やばい」「やばい」言い続けてきたわけですが、彼らはキワもの扱いされて、事故前は相手にもされず、結局事故を防ぐことはできませんでした。
事故が起きてからもてはやされて、脚光を浴びてはいますが、果たして彼らにとってそれは本意だったのでしょうか? というか、原発事故が起きてから悟ったのではないでしょうか? 「実はちやほやされる今の方が実はおいしい」と。広瀬さんあたりは、そこそこお金も入っているでしょうから、反原発なんてもはや目的ではありませんよね。“反原発”のふりをして、教祖様のようにあがめられる状況に満足してしまっているのではないでしょうか。
彼らは瓢箪から駒というか、ひょんなことで“幸運”をつかんだわけですが、大多数の筋金入りの反原発派は、事故があって盛り上がってはいるものの、彼らの言うことなど、事故から時間が経って風化すれば、そのうち誰も耳を貸さなくなるでしょう。
何よりも、原発事故が起きたらとんでもないことが起きると思われていましたが、福島事故の規模は大きいことは大きかったですが、結果は実はたいしたことはありませんでした。東日本大震災があった3月11日の直後は、関東地方全体が放射能汚染で逃げなければならないと、私も覚悟しましたが、事故の影響が少しずつ明らかになるにつれて、実は“しょぼい”ということが分かりました。
この期に及んでなお、放射能が危険だとさわいでいる人たちも、うすうす気づいているのではないでしょうか。反原発で大騒ぎしたくて、放射能の影響を言い立てているにすぎないでしょう。
そんなことを翻って考えると、欧米が国家破綻すると、騒いでいる私なんかも、同じような状況なんですよね。世の中のほとんどの人は、うすうす何か起こりそうだということを感じつつも、まさか欧米がつぶれるなどとは、信じきってはいないんですよ。
そして、3・11のような大きな衝撃が起きてはじめて事態の深刻さに気付く。それで、私みたいなのは、「だからずっと欧米がやばいと言い続けてきたでしょう」としたり顔で偉そうに講釈を垂れますが、大して利益も上がらず、しかも世の中全体がパニクっているので、それにおつきあいして右往左往せざるとえないという・・・。
小出さん、広瀬さんクラスなら、評論や講演活動をしてお金儲けできるでしょうが、私のようなマイナーな人間はそんな器用なことはできません。
だから、うまく未来予想を活用できない限りは、何の意味もなく、未来予想も後講釈も大して変わらないことになります。
今まで何も手をこまねいて漫然と過ごしてきたわけではなく、一応、未来予想を生かすべくそれなりに行動はしてきたつもりですが、どこか、まだまだ将来の話のような感じがしていて、認識が甘かったと思います。実際に金融市場の動きも緊張感をまひさせるほど緩慢な動きでしたからね。
ただ、そろそろ気を引き締めなおす時期に来ていると思います。どういう結果を出したいのか、たとえそれが皮算用にしても具体的にイメージし、行動を起こすべき時なのだと、あらためて自らに言い聞かせようと思っています。
反原発のパイオニアだった人たちがまさにそうですよね。京都大原子炉研究所の小出裕章さんとか、ジャーナリストの広瀬隆さんとか、東京電力福島第1原発事故が起きる前から、「原発やばい」「やばい」言い続けてきたわけですが、彼らはキワもの扱いされて、事故前は相手にもされず、結局事故を防ぐことはできませんでした。
事故が起きてからもてはやされて、脚光を浴びてはいますが、果たして彼らにとってそれは本意だったのでしょうか? というか、原発事故が起きてから悟ったのではないでしょうか? 「実はちやほやされる今の方が実はおいしい」と。広瀬さんあたりは、そこそこお金も入っているでしょうから、反原発なんてもはや目的ではありませんよね。“反原発”のふりをして、教祖様のようにあがめられる状況に満足してしまっているのではないでしょうか。
彼らは瓢箪から駒というか、ひょんなことで“幸運”をつかんだわけですが、大多数の筋金入りの反原発派は、事故があって盛り上がってはいるものの、彼らの言うことなど、事故から時間が経って風化すれば、そのうち誰も耳を貸さなくなるでしょう。
何よりも、原発事故が起きたらとんでもないことが起きると思われていましたが、福島事故の規模は大きいことは大きかったですが、結果は実はたいしたことはありませんでした。東日本大震災があった3月11日の直後は、関東地方全体が放射能汚染で逃げなければならないと、私も覚悟しましたが、事故の影響が少しずつ明らかになるにつれて、実は“しょぼい”ということが分かりました。
この期に及んでなお、放射能が危険だとさわいでいる人たちも、うすうす気づいているのではないでしょうか。反原発で大騒ぎしたくて、放射能の影響を言い立てているにすぎないでしょう。
そんなことを翻って考えると、欧米が国家破綻すると、騒いでいる私なんかも、同じような状況なんですよね。世の中のほとんどの人は、うすうす何か起こりそうだということを感じつつも、まさか欧米がつぶれるなどとは、信じきってはいないんですよ。
そして、3・11のような大きな衝撃が起きてはじめて事態の深刻さに気付く。それで、私みたいなのは、「だからずっと欧米がやばいと言い続けてきたでしょう」としたり顔で偉そうに講釈を垂れますが、大して利益も上がらず、しかも世の中全体がパニクっているので、それにおつきあいして右往左往せざるとえないという・・・。
小出さん、広瀬さんクラスなら、評論や講演活動をしてお金儲けできるでしょうが、私のようなマイナーな人間はそんな器用なことはできません。
だから、うまく未来予想を活用できない限りは、何の意味もなく、未来予想も後講釈も大して変わらないことになります。
今まで何も手をこまねいて漫然と過ごしてきたわけではなく、一応、未来予想を生かすべくそれなりに行動はしてきたつもりですが、どこか、まだまだ将来の話のような感じがしていて、認識が甘かったと思います。実際に金融市場の動きも緊張感をまひさせるほど緩慢な動きでしたからね。
ただ、そろそろ気を引き締めなおす時期に来ていると思います。どういう結果を出したいのか、たとえそれが皮算用にしても具体的にイメージし、行動を起こすべき時なのだと、あらためて自らに言い聞かせようと思っています。
ストーリー、神話
3年前、サントリーとキリンが経営統合に向けた交渉に入ることが明らかになった時、「なんだそれ?」と違和感を感じた方も多かったのではないでしょうか? 両社ともあまりにも社風が違い過ぎ、素人目に見てもうまくいかいだろうなぁと思われましたが、案の定、半年後ぐらいにあっさりと破談になってしまいました。
経営統合の目的は、少子高齢化で国内市場の成長が見込めないことから、両社一体となって海外展開し、成長戦略を打ち出していくというものでした。こうした動きは、新日本製鉄と住友金属工業の企業同士の統合であったり、日立製作所とNECの半導体部門を統合したエルピーダメモリ、三菱電機を加えたルネサスエレクトロニクスのような事業部門の統合であったり、トヨタ自動車と富士重工業の資本、業務提携であったりと、さまざまな形態がありますが、この10年くらいで活発化しています。
背景には、人や情報、お金の流れが活発になり、企業の海外展開がしやすくなったことや、そのことが競争を促し、国内市場だけに固執していると、世界の流れに取り残されてしまうという事情があります。また、金融機関やそれに付随するコンサルタント企業、会計、法律事務所にとって非常にうまみのあるビジネスであり、必要以上に促進されたという側面もあります。
日本だと、個別の事業会社は非常に保守的ですが、外資系の金融機関や、その腰巾着である国内金融機関にそそのかされて、経営統合やM&Aに乗り出すというケースも少なくないと思います。当事者同士がその気はないのに、金融機関がマスコミにリークして、経済産業省なんかも巻き込んで既成事実化し、業界再編に結び付けていくという、一つのパターンとなっていますね。
ただ、日本では、まだまだ企業の経営統合に対するアレルギーは強く、業界でどんなに劣勢にある企業であっても、経営トップ、社員とも独立を維持したいという意識が残っていますね。鶏口牛後ということわざもある通り、自分の意思で動ける方がやりがいがあるというのは大きいでしょう。
また、これは歴史、文化、気風の違いが大きいと思いますが、法律とか契約のみに縛られ、所詮は紙切れ一枚だけの関係である欧米と比べると、日本企業は家族とか仲間とか連帯意識が強いです。同じようなものをつくっている企業間でも、社風がずいぶん違います。
冒頭に取り上げたキリン、サントリーの例だと、キリンはシェア至上主義で、消費者に迎合する商品を大量生産することで現在の地位を築き上げる一方、サントリーは株式を上場しておらず、シェアは低くても、文化とかブランドイメージを前面に押し出すことで、存在感を示してきました。キリンのビールと、サントリーのビールを目の前に置かれたら、全く同じ商品であっても、サントリーを選ぶ人は多いでしょう。
キリンの製品は積極的に選ばれるというよりは、きめ細かく、かつ強力な販売網で、強引に買わせているという感じです。だから、サントリーとは対極にあり、水と油のような関係です。
サントリーは、かつては“サントリー文化人”なる、インテリ層(中身は薄っぺらいことこの上ないのですが)を育成し、ライフスタイルにこだわりを持つ層のマーケットを開拓し、最近では小雪さんとか菅野美穂さんなんかをCMに起用して、ちょっと大人で、おしゃれなイメージを打ち出して、テーマパークのようなイメージ戦略を取っています。
キリンもサントリーも同じような商品をつくっているわけですが、サントリーの「ストーリー」にだまされてきた人たち(私もです)にとっては、キリンとの経営統合の話が出た時、「裏切られた」という感じがしたわけです。さすがに当事者たちも違和感を払しょくできなかったでしょうね。破談はなるべくしてなったと思います。
企業の持つ固有の社風、文化というのは無視できないものがあります。長い間、平和で豊かで、それでいて厳しい消費者の目線を受けて、育てられた、日本企業は特にその傾向が顕著です。だから、ハゲタカファンドが考えるように簡単には企業同士をくっつけるのは難しいことなのです。
トヨタ自動車の国内シェアは50%を超え、「トヨタ一門でなければ人にあらず」みたいな状況になっていますが、それでも、「マツダのロータリーエンジンがいい(撤退の方向ですが)」「スバルのスポーティーな走りは捨てがたい」「技術はやっぱり三菱」といったこだわりが残っているし、つくり手も意識しています。生き残りを考えれば、マツダ、三菱、富士重工業はくっつけてしまえば、企業規模もそれなりの大きさになるし、スケールメリットも見込めるでしょうが、そんなに簡単な話ではありません。
これからも、いろんな分野で、品質、アイデア優れた製品、生産が効率的でコストパフォーマンスが高い製品をつくる企業を中心にグローバル化が進むと思いますが、市場はおどろくべき勢いで成長しており、成熟化も早いと思います。そうなると、大量生産でどこででも入手できる企業の製品よりも、ちょっとした違いやこだわりを打ち出せる企業に関心が集まる流れもできるのではないでしょうか。
トヨタでなくマツダ、キリンでなくサントリーといった、ほんのささいな違いでしかなくても、消費者のこだわりや自尊心をくすぐる何かが重要になる時代が来るはずです。
だから、単にシェア至上、成長市場ではなく、企業の歴史、文化、社風といった、それぞれのストーリーを大事にするべきではないでしょうかね。トヨタやフォルクスワーゲン、現代自動車が世界を席巻してもマツダや三菱、スバルは残っていてほしいし、韓国サムスン電子、LG電子が巨大になろうとも、日立製作所、東芝、パナソニック、さらには三菱電機、富士通、シャープ、NECなんかは残ってほしい。
くだらないこだわりなんですけれどもね。それでも、特に日本人は、細々としたストーリーを大切にします。こうしたこだわりが生きがい、やる気につながっている部分は大きいです。
単に生きるだけなら、トヨタの車に乗り、デルのパソコンを使い、マクドナルドや吉野家で外食し、イトーヨーカドーやローソンで買い物し、圧倒的なシェアを誇る企業の大量生産やサプライチェーン体制を、ただただ受け入れるだけでいいのですから。
私たちが暮らしている自治体や地域、国もそうですね。ここからさらにグローバル化が進めば、ますます人の転居も容易になり、障壁は低くなると思います。でもよりよい環境をつくり、維持していくには人と人とのつながりは大切だし、そのベースになるのは歴史とか文化ですよね。
戦前、日本の優秀さを宣伝するために「日本民族」なる、おかしな概念がつくりだされましたが、日本はもともと、土着民がいて、そこに先進的な文化を持った中国人がやってきて都市国家をつくり、やがてそれが広がって日本という国ができました。朝鮮半島から来た人や南方系、モンゴル系などさまざまなエスニック・グループも加わって、今の日本人がいるのです。
そこで日本が一体感を持つには、重要になるのは、建国の神話とか、ストーリーですよね。これは日本だけでなく、どこの国でも国民国家を築く上で、不可欠のものです。
だから、一時期、「自虐史観」をただす目的で、保守派の「新しい歴史教科書」をつくる運動が盛り上がりましたが、あれはある意味、自然なことだと思います。
韓国みたいな、敗北と服従という悲惨で屈辱的な歴史のオンパレードの国でも、国としてまとまるには、きれいなストーリーをつくる必要があるのです。
ただ、日本の場合は、神話、ストーリーの裏返しにある、歴史の真実というか、汚い面、情けない面もしっかり認識しておく必要があります。それがあってこその日本神話、ストーリーだと思います。国際社会ではきれいごとだけではなく、残酷な事実に対して免疫をつけ、それを乗り越えないと、しっかりとした自己主張をできないでしょうから。
グローバル化が進み、自分を見失ってしまいがちですが、守るべき範囲をきちんと設定し、神話、ストーリーを確立することで、自分らしさを打ち出すことも大切です。
経営統合の目的は、少子高齢化で国内市場の成長が見込めないことから、両社一体となって海外展開し、成長戦略を打ち出していくというものでした。こうした動きは、新日本製鉄と住友金属工業の企業同士の統合であったり、日立製作所とNECの半導体部門を統合したエルピーダメモリ、三菱電機を加えたルネサスエレクトロニクスのような事業部門の統合であったり、トヨタ自動車と富士重工業の資本、業務提携であったりと、さまざまな形態がありますが、この10年くらいで活発化しています。
背景には、人や情報、お金の流れが活発になり、企業の海外展開がしやすくなったことや、そのことが競争を促し、国内市場だけに固執していると、世界の流れに取り残されてしまうという事情があります。また、金融機関やそれに付随するコンサルタント企業、会計、法律事務所にとって非常にうまみのあるビジネスであり、必要以上に促進されたという側面もあります。
日本だと、個別の事業会社は非常に保守的ですが、外資系の金融機関や、その腰巾着である国内金融機関にそそのかされて、経営統合やM&Aに乗り出すというケースも少なくないと思います。当事者同士がその気はないのに、金融機関がマスコミにリークして、経済産業省なんかも巻き込んで既成事実化し、業界再編に結び付けていくという、一つのパターンとなっていますね。
ただ、日本では、まだまだ企業の経営統合に対するアレルギーは強く、業界でどんなに劣勢にある企業であっても、経営トップ、社員とも独立を維持したいという意識が残っていますね。鶏口牛後ということわざもある通り、自分の意思で動ける方がやりがいがあるというのは大きいでしょう。
また、これは歴史、文化、気風の違いが大きいと思いますが、法律とか契約のみに縛られ、所詮は紙切れ一枚だけの関係である欧米と比べると、日本企業は家族とか仲間とか連帯意識が強いです。同じようなものをつくっている企業間でも、社風がずいぶん違います。
冒頭に取り上げたキリン、サントリーの例だと、キリンはシェア至上主義で、消費者に迎合する商品を大量生産することで現在の地位を築き上げる一方、サントリーは株式を上場しておらず、シェアは低くても、文化とかブランドイメージを前面に押し出すことで、存在感を示してきました。キリンのビールと、サントリーのビールを目の前に置かれたら、全く同じ商品であっても、サントリーを選ぶ人は多いでしょう。
キリンの製品は積極的に選ばれるというよりは、きめ細かく、かつ強力な販売網で、強引に買わせているという感じです。だから、サントリーとは対極にあり、水と油のような関係です。
サントリーは、かつては“サントリー文化人”なる、インテリ層(中身は薄っぺらいことこの上ないのですが)を育成し、ライフスタイルにこだわりを持つ層のマーケットを開拓し、最近では小雪さんとか菅野美穂さんなんかをCMに起用して、ちょっと大人で、おしゃれなイメージを打ち出して、テーマパークのようなイメージ戦略を取っています。
キリンもサントリーも同じような商品をつくっているわけですが、サントリーの「ストーリー」にだまされてきた人たち(私もです)にとっては、キリンとの経営統合の話が出た時、「裏切られた」という感じがしたわけです。さすがに当事者たちも違和感を払しょくできなかったでしょうね。破談はなるべくしてなったと思います。
企業の持つ固有の社風、文化というのは無視できないものがあります。長い間、平和で豊かで、それでいて厳しい消費者の目線を受けて、育てられた、日本企業は特にその傾向が顕著です。だから、ハゲタカファンドが考えるように簡単には企業同士をくっつけるのは難しいことなのです。
トヨタ自動車の国内シェアは50%を超え、「トヨタ一門でなければ人にあらず」みたいな状況になっていますが、それでも、「マツダのロータリーエンジンがいい(撤退の方向ですが)」「スバルのスポーティーな走りは捨てがたい」「技術はやっぱり三菱」といったこだわりが残っているし、つくり手も意識しています。生き残りを考えれば、マツダ、三菱、富士重工業はくっつけてしまえば、企業規模もそれなりの大きさになるし、スケールメリットも見込めるでしょうが、そんなに簡単な話ではありません。
これからも、いろんな分野で、品質、アイデア優れた製品、生産が効率的でコストパフォーマンスが高い製品をつくる企業を中心にグローバル化が進むと思いますが、市場はおどろくべき勢いで成長しており、成熟化も早いと思います。そうなると、大量生産でどこででも入手できる企業の製品よりも、ちょっとした違いやこだわりを打ち出せる企業に関心が集まる流れもできるのではないでしょうか。
トヨタでなくマツダ、キリンでなくサントリーといった、ほんのささいな違いでしかなくても、消費者のこだわりや自尊心をくすぐる何かが重要になる時代が来るはずです。
だから、単にシェア至上、成長市場ではなく、企業の歴史、文化、社風といった、それぞれのストーリーを大事にするべきではないでしょうかね。トヨタやフォルクスワーゲン、現代自動車が世界を席巻してもマツダや三菱、スバルは残っていてほしいし、韓国サムスン電子、LG電子が巨大になろうとも、日立製作所、東芝、パナソニック、さらには三菱電機、富士通、シャープ、NECなんかは残ってほしい。
くだらないこだわりなんですけれどもね。それでも、特に日本人は、細々としたストーリーを大切にします。こうしたこだわりが生きがい、やる気につながっている部分は大きいです。
単に生きるだけなら、トヨタの車に乗り、デルのパソコンを使い、マクドナルドや吉野家で外食し、イトーヨーカドーやローソンで買い物し、圧倒的なシェアを誇る企業の大量生産やサプライチェーン体制を、ただただ受け入れるだけでいいのですから。
私たちが暮らしている自治体や地域、国もそうですね。ここからさらにグローバル化が進めば、ますます人の転居も容易になり、障壁は低くなると思います。でもよりよい環境をつくり、維持していくには人と人とのつながりは大切だし、そのベースになるのは歴史とか文化ですよね。
戦前、日本の優秀さを宣伝するために「日本民族」なる、おかしな概念がつくりだされましたが、日本はもともと、土着民がいて、そこに先進的な文化を持った中国人がやってきて都市国家をつくり、やがてそれが広がって日本という国ができました。朝鮮半島から来た人や南方系、モンゴル系などさまざまなエスニック・グループも加わって、今の日本人がいるのです。
そこで日本が一体感を持つには、重要になるのは、建国の神話とか、ストーリーですよね。これは日本だけでなく、どこの国でも国民国家を築く上で、不可欠のものです。
だから、一時期、「自虐史観」をただす目的で、保守派の「新しい歴史教科書」をつくる運動が盛り上がりましたが、あれはある意味、自然なことだと思います。
韓国みたいな、敗北と服従という悲惨で屈辱的な歴史のオンパレードの国でも、国としてまとまるには、きれいなストーリーをつくる必要があるのです。
ただ、日本の場合は、神話、ストーリーの裏返しにある、歴史の真実というか、汚い面、情けない面もしっかり認識しておく必要があります。それがあってこその日本神話、ストーリーだと思います。国際社会ではきれいごとだけではなく、残酷な事実に対して免疫をつけ、それを乗り越えないと、しっかりとした自己主張をできないでしょうから。
グローバル化が進み、自分を見失ってしまいがちですが、守るべき範囲をきちんと設定し、神話、ストーリーを確立することで、自分らしさを打ち出すことも大切です。
ストーリー、神話
3年前、サントリーとキリンが経営統合に向けた交渉に入ることが明らかになった時、「なんだそれ?」と違和感を感じた方も多かったのではないでしょうか? 両社ともあまりにも社風が違い過ぎ、素人目に見てもうまくいかいだろうなぁと思われましたが、案の定、半年後ぐらいにあっさりと破談になってしまいました。
経営統合の目的は、少子高齢化で国内市場の成長が見込めないことから、両社一体となって海外展開し、成長戦略を打ち出していくというものでした。こうした動きは、新日本製鉄と住友金属工業の企業同士の統合であったり、日立製作所とNECの半導体部門を統合したエルピーダメモリ、三菱電機を加えたルネサスエレクトロニクスのような事業部門の統合であったり、トヨタ自動車と富士重工業の資本、業務提携であったりと、さまざまな形態がありますが、この10年くらいで活発化しています。
背景には、人や情報、お金の流れが活発になり、企業の海外展開がしやすくなったことや、そのことが競争を促し、国内市場だけに固執していると、世界の流れに取り残されてしまうという事情があります。また、金融機関やそれに付随するコンサルタント企業、会計、法律事務所にとって非常にうまみのあるビジネスであり、必要以上に促進されたという側面もあります。
日本だと、個別の事業会社は非常に保守的ですが、外資系の金融機関や、その腰巾着である国内金融機関にそそのかされて、経営統合やM&Aに乗り出すというケースも少なくないと思います。当事者同士がその気はないのに、金融機関がマスコミにリークして、経済産業省なんかも巻き込んで既成事実化し、業界再編に結び付けていくという、一つのパターンとなっていますね。
ただ、日本では、まだまだ企業の経営統合に対するアレルギーは強く、業界でどんなに劣勢にある企業であっても、経営トップ、社員とも独立を維持したいという意識が残っていますね。鶏口牛後ということわざもある通り、自分の意思で動ける方がやりがいがあるというのは大きいでしょう。
また、これは歴史、文化、気風の違いが大きいと思いますが、法律とか契約のみに縛られ、所詮は紙切れ一枚だけの関係である欧米と比べると、日本企業は家族とか仲間とか連帯意識が強いです。同じようなものをつくっている企業間でも、社風がずいぶん違います。
冒頭に取り上げたキリン、サントリーの例だと、キリンはシェア至上主義で、消費者に迎合する商品を大量生産することで現在の地位を築き上げる一方、サントリーは株式を上場しておらず、シェアは低くても、文化とかブランドイメージを前面に押し出すことで、存在感を示してきました。キリンのビールと、サントリーのビールを目の前に置かれたら、全く同じ商品であっても、サントリーを選ぶ人は多いでしょう。
キリンの製品は積極的に選ばれるというよりは、きめ細かく、かつ強力な販売網で、強引に買わせているという感じです。だから、サントリーとは対極にあり、水と油のような関係です。
サントリーは、かつては“サントリー文化人”なる、インテリ層(中身は薄っぺらいことこの上ないのですが)を育成し、ライフスタイルにこだわりを持つ層のマーケットを開拓し、最近では小雪さんとか菅野美穂さんなんかをCMに起用して、ちょっと大人で、おしゃれなイメージを打ち出して、テーマパークのようなイメージ戦略を取っています。
キリンもサントリーも同じような商品をつくっているわけですが、サントリーの「ストーリー」にだまされてきた人たち(私もです)にとっては、キリンとの経営統合の話が出た時、「裏切られた」という感じがしたわけです。さすがに当事者たちも違和感を払しょくできなかったでしょうね。破談はなるべくしてなったと思います。
企業の持つ固有の社風、文化というのは無視できないものがあります。長い間、平和で豊かで、それでいて厳しい消費者の目線を受けて、育てられた、日本企業は特にその傾向が顕著です。だから、ハゲタカファンドが考えるように簡単には企業同士をくっつけるのは難しいことなのです。
トヨタ自動車の国内シェアは50%を超え、「トヨタ一門でなければ人にあらず」みたいな状況になっていますが、それでも、「マツダのロータリーエンジンがいい(撤退の方向ですが)」「スバルのスポーティーな走りは捨てがたい」「技術はやっぱり三菱」といったこだわりが残っているし、つくり手も意識しています。生き残りを考えれば、マツダ、三菱、富士重工業はくっつけてしまえば、企業規模もそれなりの大きさになるし、スケールメリットも見込めるでしょうが、そんなに簡単な話ではありません。
これからも、いろんな分野で、品質、アイデア優れた製品、生産が効率的でコストパフォーマンスが高い製品をつくる企業を中心にグローバル化が進むと思いますが、市場はおどろくべき勢いで成長しており、成熟化も早いと思います。そうなると、大量生産でどこででも入手できる企業の製品よりも、ちょっとした違いやこだわりを打ち出せる企業に関心が集まる流れもできるのではないでしょうか。
トヨタでなくマツダ、キリンでなくサントリーといった、ほんのささいな違いでしかなくても、消費者のこだわりや自尊心をくすぐる何かが重要になる時代が来るはずです。
だから、単にシェア至上、成長市場ではなく、企業の歴史、文化、社風といった、それぞれのストーリーを大事にするべきではないでしょうかね。トヨタやフォルクスワーゲン、現代自動車が世界を席巻してもマツダや三菱、スバルは残っていてほしいし、韓国サムスン電子、LG電子が巨大になろうとも、日立製作所、東芝、パナソニック、さらには三菱電機、富士通、シャープ、NECなんかは残ってほしい。
くだらないこだわりなんですけれどもね。それでも、特に日本人は、細々としたストーリーを大切にします。こうしたこだわりが生きがい、やる気につながっている部分は大きいです。
単に生きるだけなら、トヨタの車に乗り、デルのパソコンを使い、マクドナルドや吉野家で外食し、イトーヨーカドーやローソンで買い物し、圧倒的なシェアを誇る企業の大量生産やサプライチェーン体制を、ただただ受け入れるだけでいいのですから。
私たちが暮らしている自治体や地域、国もそうですね。ここからさらにグローバル化が進めば、ますます人の転居も容易になり、障壁は低くなると思います。でもよりよい環境をつくり、維持していくには人と人とのつながりは大切だし、そのベースになるのは歴史とか文化ですよね。
戦前、日本の優秀さを宣伝するために「日本民族」なる、おかしな概念がつくりだされましたが、日本はもともと、土着民がいて、そこに先進的な文化を持った中国人がやってきて都市国家をつくり、やがてそれが広がって日本という国ができました。朝鮮半島から来た人や南方系、モンゴル系などさまざまなエスニック・グループも加わって、今の日本人がいるのです。
そこで日本が一体感を持つには、重要になるのは、建国の神話とか、ストーリーですよね。これは日本だけでなく、どこの国でも国民国家を築く上で、不可欠のものです。
だから、一時期、「自虐史観」をただす目的で、保守派の「新しい歴史教科書」をつくる運動が盛り上がりましたが、あれはある意味、自然なことだと思います。
韓国みたいな、敗北と服従という悲惨で屈辱的な歴史のオンパレードの国でも、国としてまとまるには、きれいなストーリーをつくる必要があるのです。
ただ、日本の場合は、神話、ストーリーの裏返しにある、歴史の真実というか、汚い面、情けない面もしっかり認識しておく必要があります。それがあってこその日本神話、ストーリーだと思います。国際社会ではきれいごとだけではなく、残酷な事実に対して免疫をつけ、それを乗り越えないと、しっかりとした自己主張をできないでしょうから。
グローバル化が進み、自分を見失ってしまいがちですが、守るべき範囲をきちんと設定し、神話、ストーリーを確立することで、自分らしさを打ち出すことも大切です。
経営統合の目的は、少子高齢化で国内市場の成長が見込めないことから、両社一体となって海外展開し、成長戦略を打ち出していくというものでした。こうした動きは、新日本製鉄と住友金属工業の企業同士の統合であったり、日立製作所とNECの半導体部門を統合したエルピーダメモリ、三菱電機を加えたルネサスエレクトロニクスのような事業部門の統合であったり、トヨタ自動車と富士重工業の資本、業務提携であったりと、さまざまな形態がありますが、この10年くらいで活発化しています。
背景には、人や情報、お金の流れが活発になり、企業の海外展開がしやすくなったことや、そのことが競争を促し、国内市場だけに固執していると、世界の流れに取り残されてしまうという事情があります。また、金融機関やそれに付随するコンサルタント企業、会計、法律事務所にとって非常にうまみのあるビジネスであり、必要以上に促進されたという側面もあります。
日本だと、個別の事業会社は非常に保守的ですが、外資系の金融機関や、その腰巾着である国内金融機関にそそのかされて、経営統合やM&Aに乗り出すというケースも少なくないと思います。当事者同士がその気はないのに、金融機関がマスコミにリークして、経済産業省なんかも巻き込んで既成事実化し、業界再編に結び付けていくという、一つのパターンとなっていますね。
ただ、日本では、まだまだ企業の経営統合に対するアレルギーは強く、業界でどんなに劣勢にある企業であっても、経営トップ、社員とも独立を維持したいという意識が残っていますね。鶏口牛後ということわざもある通り、自分の意思で動ける方がやりがいがあるというのは大きいでしょう。
また、これは歴史、文化、気風の違いが大きいと思いますが、法律とか契約のみに縛られ、所詮は紙切れ一枚だけの関係である欧米と比べると、日本企業は家族とか仲間とか連帯意識が強いです。同じようなものをつくっている企業間でも、社風がずいぶん違います。
冒頭に取り上げたキリン、サントリーの例だと、キリンはシェア至上主義で、消費者に迎合する商品を大量生産することで現在の地位を築き上げる一方、サントリーは株式を上場しておらず、シェアは低くても、文化とかブランドイメージを前面に押し出すことで、存在感を示してきました。キリンのビールと、サントリーのビールを目の前に置かれたら、全く同じ商品であっても、サントリーを選ぶ人は多いでしょう。
キリンの製品は積極的に選ばれるというよりは、きめ細かく、かつ強力な販売網で、強引に買わせているという感じです。だから、サントリーとは対極にあり、水と油のような関係です。
サントリーは、かつては“サントリー文化人”なる、インテリ層(中身は薄っぺらいことこの上ないのですが)を育成し、ライフスタイルにこだわりを持つ層のマーケットを開拓し、最近では小雪さんとか菅野美穂さんなんかをCMに起用して、ちょっと大人で、おしゃれなイメージを打ち出して、テーマパークのようなイメージ戦略を取っています。
キリンもサントリーも同じような商品をつくっているわけですが、サントリーの「ストーリー」にだまされてきた人たち(私もです)にとっては、キリンとの経営統合の話が出た時、「裏切られた」という感じがしたわけです。さすがに当事者たちも違和感を払しょくできなかったでしょうね。破談はなるべくしてなったと思います。
企業の持つ固有の社風、文化というのは無視できないものがあります。長い間、平和で豊かで、それでいて厳しい消費者の目線を受けて、育てられた、日本企業は特にその傾向が顕著です。だから、ハゲタカファンドが考えるように簡単には企業同士をくっつけるのは難しいことなのです。
トヨタ自動車の国内シェアは50%を超え、「トヨタ一門でなければ人にあらず」みたいな状況になっていますが、それでも、「マツダのロータリーエンジンがいい(撤退の方向ですが)」「スバルのスポーティーな走りは捨てがたい」「技術はやっぱり三菱」といったこだわりが残っているし、つくり手も意識しています。生き残りを考えれば、マツダ、三菱、富士重工業はくっつけてしまえば、企業規模もそれなりの大きさになるし、スケールメリットも見込めるでしょうが、そんなに簡単な話ではありません。
これからも、いろんな分野で、品質、アイデア優れた製品、生産が効率的でコストパフォーマンスが高い製品をつくる企業を中心にグローバル化が進むと思いますが、市場はおどろくべき勢いで成長しており、成熟化も早いと思います。そうなると、大量生産でどこででも入手できる企業の製品よりも、ちょっとした違いやこだわりを打ち出せる企業に関心が集まる流れもできるのではないでしょうか。
トヨタでなくマツダ、キリンでなくサントリーといった、ほんのささいな違いでしかなくても、消費者のこだわりや自尊心をくすぐる何かが重要になる時代が来るはずです。
だから、単にシェア至上、成長市場ではなく、企業の歴史、文化、社風といった、それぞれのストーリーを大事にするべきではないでしょうかね。トヨタやフォルクスワーゲン、現代自動車が世界を席巻してもマツダや三菱、スバルは残っていてほしいし、韓国サムスン電子、LG電子が巨大になろうとも、日立製作所、東芝、パナソニック、さらには三菱電機、富士通、シャープ、NECなんかは残ってほしい。
くだらないこだわりなんですけれどもね。それでも、特に日本人は、細々としたストーリーを大切にします。こうしたこだわりが生きがい、やる気につながっている部分は大きいです。
単に生きるだけなら、トヨタの車に乗り、デルのパソコンを使い、マクドナルドや吉野家で外食し、イトーヨーカドーやローソンで買い物し、圧倒的なシェアを誇る企業の大量生産やサプライチェーン体制を、ただただ受け入れるだけでいいのですから。
私たちが暮らしている自治体や地域、国もそうですね。ここからさらにグローバル化が進めば、ますます人の転居も容易になり、障壁は低くなると思います。でもよりよい環境をつくり、維持していくには人と人とのつながりは大切だし、そのベースになるのは歴史とか文化ですよね。
戦前、日本の優秀さを宣伝するために「日本民族」なる、おかしな概念がつくりだされましたが、日本はもともと、土着民がいて、そこに先進的な文化を持った中国人がやってきて都市国家をつくり、やがてそれが広がって日本という国ができました。朝鮮半島から来た人や南方系、モンゴル系などさまざまなエスニック・グループも加わって、今の日本人がいるのです。
そこで日本が一体感を持つには、重要になるのは、建国の神話とか、ストーリーですよね。これは日本だけでなく、どこの国でも国民国家を築く上で、不可欠のものです。
だから、一時期、「自虐史観」をただす目的で、保守派の「新しい歴史教科書」をつくる運動が盛り上がりましたが、あれはある意味、自然なことだと思います。
韓国みたいな、敗北と服従という悲惨で屈辱的な歴史のオンパレードの国でも、国としてまとまるには、きれいなストーリーをつくる必要があるのです。
ただ、日本の場合は、神話、ストーリーの裏返しにある、歴史の真実というか、汚い面、情けない面もしっかり認識しておく必要があります。それがあってこその日本神話、ストーリーだと思います。国際社会ではきれいごとだけではなく、残酷な事実に対して免疫をつけ、それを乗り越えないと、しっかりとした自己主張をできないでしょうから。
グローバル化が進み、自分を見失ってしまいがちですが、守るべき範囲をきちんと設定し、神話、ストーリーを確立することで、自分らしさを打ち出すことも大切です。
2月8日のポイント
そういえばSQ前。仕掛けをやりますかね。上下どちらもありですが、面倒な攻防です。ますます米国嫌いになります。さっさと国家破綻してくれと。
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