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インフレ

  米国の財政問題がクローズアップされた、昨年8月をボトムに米国株式は上昇し、約半年遅れで日経平均やドル・円も追随する形で本格的に上昇し始めました。
  ほとんどの人はロングでおいしい思いをしていることでしょうが、何度も繰り返しているように、油断してはいけません。世界経済の構造的な問題は何一つ解決しているわけではないのです。
  本来、欧米は金融ばくちや不動産ころがしで、被った巨額な損失について、汗水をたらして返済しなければならないのですが、欧米人がまじめに働いて金を稼ごうとしているニュースは聞いたことがありません。
  もちろんユーロ安を追い風にドイツやフランスの自動車メーカーが世界的に販売が好調で、米国の三大メーカもトヨタ叩きや、日本の工作機械などの技術を導入し、品質の高い小型車を市場投入した結果、復活しつつあります。自動車産業に従事する人たちが働いている点では健全さを取り戻しつつあることは事実です。
  しかし、そんなものはほんの一面であり、ほとんどの欧州の一般大衆は、失業してもまともに仕事をさがそうともせず、しかもプライドが高いので、中国やトルコ、中近東、アフリカからの出稼ぎ労働者なんかと、競争して泥臭く働き、国を良くしようというマインドは皆無と言っていいでしょう。
  一度、バクチ経済にはまったら、なかなか、おいしい思いをした、ほんの一時期(それ以外は転落と破滅の時間でした)を忘れられず、バクチのそんはバクチで取り返そうと思っているような連中ばかりです。
  欧米の生産性が高いというのは、金融セクターが(インチキをやって)強く、しかも、通貨高が続いていたからであって、今となってはそんなものをまともに取り合う奴はバカでしょう。コンビニのアルバイトでさえも、接客態度が丁寧で、きびきびと仕事をする日本と比較して、本当の意味でどちらの労働生産性が高いか、欧米のダメ人間どもは思い知るべきでしょうね。
  金融市場の回復局面はいつまで続くのか分かりませんが、この状況がしばらく続けば、ほとんどの人は、完全に金融危機から脱したと錯覚するでしょうね。でも、それは偽りの回復であって、紙切れを金融市場に大量投入することで見せかけだけつくろったに過ぎないのです。
  しばらくは、その紙切れの争奪戦が繰り広げられ、再びリーマン・ショック前ほどではないにしても、過熱してバブルとなるのでしょうが、金融緩和の効果が切れたら、また元の木阿弥です。今度こそいよいよ、不都合な現実から逃げられないでしょうね。
  欧米が没落し、かつての英国や米国と比べると、頼りないし、世界の隅々まで圧倒的な影響力を及ぼすとまではいかないでしょうが、相対的に中国、ロシアなど新興国が浮上することでしょう。欧米は金持ちも一般大衆も貧困に突き落とされ、完全に没落するでしょう。それがまじめに働かない連中の末路です。
  今の状況は砂上の楼閣、蜃気楼であり、これこそまさに実物、実態に裏付けられない、インフレーションにほかなりません。
  実際にそのことは、金価格によって裏付けられていて、リーマン・ショック前は700~1000ドルのレンジで推移していたのが、現在はおおむね、その2倍の水準である1500~1700ドルで上下しています。昨年来一部では「金価格こそバブル」みたいなマヌケなコメントが聞かれますが、高値で安定しています。
  金価格が2倍になったということは、単純に考えると、お金の価値は2分の1にまで減価したということです。もちろん全体的な物価は2倍にはなっていないので、実際にはそこまでは価値は下がってはいませんが、今後、食料、資源、エネルギー価格が上昇すればそうも言っていられなくなります。
  欧米人は頭が悪いので、金融市場の回復でちょっと利益を得て、それで安心して、喜んでいるだけでしょうけど、私たちはそれが不労所得であっても、頭を使うこと(頭脳労働)で、それを守り、将来に向けて有効に活用する方法を考えなければなりません。
  いずれ強烈なインフレが起きるでしょうから、今から、それに備えておく必要があります。基本的には、現在、日本では現金とゴールドは容易に交換できるので、純金、あるいはプラチナ、銀など貴金属を買うのが手っ取り早いでしょうね。食料やエネルギーを備蓄するのも本来は望ましいのですが、どうやってストックするのか? 家に蔵や大きなガレージでもなければ不可能です。それができる人はやったらいいですが、できない人はやはり、ゴールドを持つのがいいと思います。
  不動産が微妙なんですよね。たとえばローンを組むのがいいのかどうか。普通のインフレなら借金をしてでも不動産を買えば、そのうちローン負担が軽くなるので、ベストな選択なのですが、インフレに合わせて、インフレの進行以上にお金が入ってこなければ、地獄に落ちることになります。さすがにそこは読み切れないですね。
  以前にも、金投資に関しては、いろいろと考察したことがありますが、金融市場で利益が上がり、金を買うのにいい環境であるので、あらためて整理しておきましたが、金投資以外にも、魅力的な資金活用方法はあるでしょうから、余裕があるときに、研究しておくといいですね。

エリート

  情報網が発達して分かったことは、実はエリートって大して世の中の役に立ってはいないのではないかということです。前々から言われていたことではあるのですが、それが明確になりますね。1929年の世界恐慌のあたりですかね? 「大学は出たけれど」みたいなことが言われたようですが、昔から大学を出たところで、金儲けできる知恵が身に付くわけではなく、今の学生は分数ができないとか、割合が分からないとか、学力低下も進んでいるので、大学教育のむなしさに拍車がかかっていることでしょう。
  ただ、矛盾するようですが、社会に出ていろんな人と接すると、旧帝国大系の大学を出ている人は、総じて、基礎能力が高い人が多いですね。何をやらせてもそつがないというか、仕事が整然としていて、安心感があります。役人になっても銀行員になっても大手企業に勤めても、間違いなく重宝されると思います。「事務職」として。
  こういう人たちは日本では「優秀」と評価されるし、まさに偏差値教育の「勝ち組」だし、一定程度は社会のニーズもあると思います。道を踏み外さなければ、生き残っていけると思います。日本で今、いわゆるエリート層を形成している人たちでもあります。
  でも、日本、そして海外でも求められているのは、付加価値を生み出せる人なんですよね。端的に言えば、お金儲けができる人、お金、富を生み出せる人です。他人を管理し、その労働の果実をピンハネするような連中(すなわちエリート)では決してない。
  ぐだぐだと屁理屈を並べている連中よりも、人の役に立つ仕事をして、さっとお金を稼げる人が一番偉いのです。日本ではこれまで、ものづくりに従事する人たちが引っ張ってきました。大学の工学部や理学部の研究室で得体のしれない研究をぐじぐじとやるよりも、工業高校なり高専を出て、故障しない自動車、ちょっと光る機能を持った家電製品を安定的に生産できる人の方がずっと価値があります。
  残念なことに、高い付加価値を生み出してきた日本のものづくりは転機に差し掛かっていて、電機メーカーはすでに輝きを失い、完全に進むべき方向が分からなくなっているし、自動車メーカーがそれに続くのは時間の問題です。やたらと円高のせいにしたがる人がいますが、それ以前からその兆候は明らかでしたから、問題は根深いと考えた方がいいでしょう。
  それでも、生産現場では、工作機械や全体的な生産管理、システムにおいて日本は欠かせない存在で、米国の自動車メーカーの復活の背景には、過剰なトヨタバッシングとともに、ビッグ3が日本の工作機械を大幅に導入し、品質が格段に向上したことがいわれています。米国のメディアもいち早く取り上げ、ビジネス界では常識なのですが、日本では誰も取り上げませんね。
  目に見える分野では、敗北に次ぐ敗北を重ねていますが、世界のものづくりを支える存在として、新しい活路を見出しつつあることも事実なのです。
  とはいえ、日本の輸出比率は諸外国と比べると相当低く、経済全体に占める製造業の割合も決して高いとはいえません。ものづくりだけに目を奪われると、日本経済の全体について把握するのは難しくなってしまいます。
  ものづくりと並んで、ものすごい実力を持っているのは、サービス業や流通業ですね。日本人のきめ細やかな心遣いは、飛びぬけているので、海外に出るとそれが際立ちます。デパートやスーパー、コンビニなんて、もっともっと進出の余地がありますね。タイムリーで繊細な商品管理やサプライチェーン、商品開発力をもってすれば、欧米の連中など簡単に蹴散らせるでしょう。豊かな食文化を背景にして育まれてきた外食も同様です。
  現場で汗臭く、地道に努力する人たちが今後も日本を豊かにし、支えていくことでしょう。日本人が日本人らしくしていれば、心配することは何もないと思います。
  面倒なのは、ちょっとお勉強のできる、頭でっかちな連中です。彼らが足を引っ張りさえしなければ、平安を享受できるのに、米国に巧妙にエリート意識をくすぐられてだまされ、手下となって、米国債購入、為替介入などで国富を献上したり、消費税増税など国民から搾取して、わざわざ国を貧しくしようとします。
  東日本大震災からの復興をめぐってもやっかいなのは、ちょっと頭のいい人たちですよね。「放射能」「放射能」と大騒ぎしているのは、“意識の高い人”たちです。もうすでに危機は去ったし、大半の人は放射能の影響など皆無と言っていいほどなのに、いまだに騒ぎ続けないと気が済まないようです。そして日本人の不安心理に付け込んで、利権を得ようとする、卑しい人たちが国内外にたくさんいます。
  人権だとか、環境権だとか、ぐだぐだ言っても死ぬときは死ぬし、しぶとく生き残る人は生き残ります。所詮一人一人はちっぽけな人間であり、それは謙虚に受け止めないといけません。運命とか運に左右される部分も大きいでしょう。
  くだらない、社会に人にまったく役に立たないことを考えるよりも、どうすれば富を生み出せるか、金儲けできるか、考えた方がよほどいいと思います。くだらないことをぐだぐだと考えるだけでなく、人に押し付け、不利益や害を及ぼすのは最悪ですよね。エリートというのはそういう存在なのです。

それはそれ

  トレードをやっていて難しいのは、どうやって視点を切り替えるかということです。上昇するのか下落するのか、長期的な視点でみるべきなのか短期で割り切るのか、ファンダメンタルかテクニカルか、などなど。特に最近は、自然な景気循環や相場のバイオリズムを無視した値動きで成り立っているので、その辺の兼ね合いが非常に難しいくなっています。
  ここ1、2年の値動きを考えると、一つの局面が長続きするということはなさそうです。大体、1カ月長くて2、3カ月も、ある動き、相場環境が続けばいい方ではないでしょうか。一つだけ長続きしていることがあるといえば、相場全体がインチキで成り立っており、そのインチキ度合いがさらに加速しつつあり、どこに値を持っていくか、決断できず、限られたレンジでランダムに動く時間帯が長くなっているということです。
  端的に言うと、「偽りの相場」であり、今、私たちが直面しているのは虚偽の値動きにすぎないということです。だから、相場全体の動きが見えにくくなってなっています。
  ただ、そのような中でも、上昇局面や下落局面があり、雇用統計、金融政策決定会合など重要イベントがあれば、それをにらんだ(胡散臭い)値動きをするし、SQ、配当落ち前後も駆け引きがえげつなくなります。
  そんな相場でも、大きな値幅で動いてくれれば、チャンスは多いのですが、基本的には動いて100円、200円程度のもので、いろいろとしがらみをつくるので、ポジションに利益が乗ってきても、安閑とはしておられず、常にプレッシャーにさらさらます。
  もし、長きにわたって相場とかかわっていくのであれば、「これもまた相場」と達観できるくらいでないといけないですね。
  リーマン・ショック前に金融市場からどんどん参加者や資金が流出すれば、ボラティリティーがなくなって、いずれ取りつく島もなくなってしまうのかなと思っていましたが、もしそうなるなら、それはそれで自然の法則なので、日経先物やドル・円相場とかかわるのをやめればいいと思っていましたが、現在の状況は、人為的に相場をつくっているので、もっとタチが悪いですね。
 でも、たとえそうであっても現実を粛々と受け入れなければならないのです。「それはそれ」「あれはあれ」として、与えられた環境に適応して、乗り切っていかなければなりません。
  常々、「欧米はいずれ破たんする」と言い続けていて、いかに金融恐慌の際に、ショートを仕込んで、一儲けするかということを考えていますが、もし、仮に日経平均が15000円に戻すならば、その上昇気流に乗って、したたかに稼がなければなりません。それはそれ、あれはあれとして対応しないといけないのです。
  だから、内心、今の金融市場はインチキ、虚偽、欧米はもう終わっていると思っていても、涼しい顔をしてロングで儲ける芸当が必要です。短期と長期はしっかり区別すべきです。テクニカルよりやはりファンダメンタルが重要なのですが、そうであってもテクニカルに沿ってトレードしないと、稼げるものは稼げません。
  なかなか、頭を切り替えるのは難しく、一つのトレンドや考えに取りつかれてしまうと、恋々とこだわってしまうのですが、そういうところに落とし穴がひそんでいます。ちょっと変化球やつむじ風を起こせば、か弱い個人投資家や、頭の弱い日本の機関投資家なんかは、簡単にだまされてしまうでしょうからね。
  柔軟にといえば聞こえはいいでしょうが、おそらく右顧左眄、こうもり、風見鶏などなど、あまりうれしくないレッテルを貼られてしまうでしょう。、それくらいしたたかにがめつくいかないと、このインチキ相場は乗り越えられないのです。

あや戻し

  金融市場で示される価格が、あまりにも実体経済からかい離しているときは、いくらテクニカルだ云々いっても、戻りには限界があるのだということを、この数カ月の間、身をもって学ばされました。今となっては、2月中旬からの堅調相場は、“あや戻し”だったとほぼ断定できるでしょう。
  金融市場が総じて堅調を維持しているときは、マインドが好転し、マーケットに関わっている人は浮足立ってしまいます。過熱が続けば、ますますその傾向は強まるし、実際に2月中旬から3月下旬にかけては、それまでの警戒心に満ちた状況など全く忘れ去ったかのような状況になりました。
  リーマン・ショックを乗り越え、新たな景気拡大局面か? みたいな論調が出てくるのではないかと予想して見ていましたが、それに近いものも出てきましたね。確かにテクニカル的には1ドル=90円、日経平均1万1500円くらいならば正当化されてもおかしくはありませんでした。(現時点でもそうです)
  マーケットコメントでも言われている通り、昨今の株高、リスク回避姿勢の大幅な後退は、各国の金融緩和でじゃぶじゃぶになった資金が市場に流れ込み、値を押し上げている側面が大きいです。この点に関しては、珍しく正しい認識を示しているといえます。
  ただ、問題は金融緩和が本当に実体経済を好転させることができるかですよね。2000年代に入った当初の日本の状況を考えても分かるとおり、金融緩和したって隅々にまで資金が回るわけではありません。メガバンクをはじめ、金融関係のボンクラ人間の間でカネのやりとりがちょっとだけ増えるにすぎないのです。
  しかも、その資金だって、日本の金融機関の連中なんて総じて頭が悪いから、結局は欧米に持っていかれるという情けなさ。結局はルールを熟知して(実質的にインサイダー)、巧妙にインチキを仕掛ける、ごく一部の“勝ち組”が独占してしまうのです。
  今回もそのまったくそのパターンを踏襲してしまいました。もうあと3カ月も堅調が続くかなぁとも思いましたが、平和ボケする暇もなく、景気が本格回復したと思い込んで、積極的に打って出ようかという人たちのはしごをあっさりと外してしまい、知らない間にピーク・アウトしてしまいました。
  つかのまの間、相場は勢いづくので、皆さん総じて、一瞬だけ儲かるんでしょうけど、事情を知っている人たちはさっさと売り抜けてしまい、気付いたら抜け殻になっていたという。2007年ごろ、サブプライム問題の影が忍び寄りつつあるにもかかわらず、「日経平均2万円も視野に」なんて言われ、功を焦った人たちは18000台、17000台で全力でのめり込んでしまい、地獄へと転落してしまいました。
  今回は、ピークがわずか2~3週間でしかも、大して達成感のないまま、ドル・円も日経先物もいつの間にか、上昇相場前の定位置に戻ってしまいました。
  大抵の人は、この数年間、一度は直接、間接に地獄を見ているでしょうから、耐性はついているのでしょうけど、今度の金融バブルが完全に弾ければ、もしかするとはい上がれるチャンスは二度とないかもしれません。情け容赦ない倒産、失業の嵐が吹き荒れることでしょう。
  まずは金価格。リーマン・ショック前後の2倍程度の価格水準で推移しています。単純に金をベースに考えた場合、通貨価値が半減しているということになります。政治的な思惑もかかわっている原油も同様。その他、資源、食料も高止まりで、金融緩和した分、諸通貨の価値は確実に下がっています。
  最も注目したいのは不動産価格ですね。土地が上がらないことには、欧米の金融問題はどうにもこうにも回らないはずですが、一部で新築住宅や集合住宅の取引が活発化してはいるものの、地下は低迷、あるいは底割れの危険さえあります。中国ですら沿岸部はブームは完全に終わり、今後、内陸部が過熱して弾けるという感じでしょうか。
  サブプライム問題は解決したのではなく、棚上げあるいは塩漬けにされた状態で、ここがどうにかならない限り、欧米の復権というのはありません。というか没落は必至です。
  もともと中国はガチガチの共産主義から展開し、ゼロからスタートしたので、現在の地価水準でも十分高いのですが、欧米なんて、価値がないものに価値をつけており、米国なんて過疎地を住宅開発して東京郊外のような地価にまで引き上げたわけですから、いわゆる「原野商法」に近いですよね。
  日本のバブル崩壊後の軌跡を考えても、米国の地価水準はまだまだ高すぎます。今から半値あるいは3分の1まで落ち込んでもおかしくはありません。そうなると、サブプライム問題は解決どころか、米国全体が破綻への道をたどることになるでしょう。
  あらためて確認しておきますが、現在の状況は、お金をじゃぶじゃぶ印刷して、見せ掛けだけ経済指数を好転させただけのことです。所詮は、一時しのぎにすぎません。いつまでたっても実体経済は良くならないでしょうから麻薬のように依存症になり、ハイパーインフレということも考えられます。
  だから、今はとりあえず追加金融による恩恵を最大限に生かして、乗れる時だけ乗って、ささやかに利益を稼いで、紙切れはさっさと金にでも交換して、プチ・バブル崩壊に備えるのが賢明でしょう。

幻覚

  金融市場のエネルギーは日々どんどん失われていっていますが、それでもまだ「上昇」に期待する向きは多いですね。“幻覚”に惑わされないようにしなければなりません。
  金融相場と対峙している日本人にとって、やはり大きな出来事は2月14日の日銀、当局が発表した金融緩和でしょう。その10日ほど前にロイター通信が金融緩和観測を報じていたので、私は織り込み済みなのかなと思っていましたが、とても素直に反応し、日経平均も(対円で)ドルもユーロも上昇しました。
  25日線をはじめ、75日線とか200日線とかテクニカル的に意識されるラインを順調にこなし、2007~08年以降、一貫して下落基調だったので、そろそろいったん上昇トレンドを形成して、ためをつくり、次の金融恐慌までの「時間稼ぎ」をするのかなと(私自身にとってはそのように)思われました。
  「1ドル=150円説」を唱えたり、「1ドル=70円なら全力買いする」と喧伝していた輩の「それ見たことか」というドヤ顔、離れた場所から対中国での対立をけしかけ、消費税増税やらTPPをごり押ししようとする米国のことを考えると、不愉快極まりないのですが、それでも分かり易いトレンドが形成されれば、投資家としてはこのチャンスをみすみす見逃すわけにもいかないので、それに乗っかり、それなりにいい思いもしました。
  さすがにこの勢いに私自身も呑まれたし、私が信頼する、かなり厳しめの見方をするエコノミスト、実務家も、「今度こそ本物かもしれない」みたいな雰囲気になりました。完全に幻覚に惑わされましたね。
  2月中旬から3月にかけての私の発言を振り返ると、浮かれつつも、基本的には欧米は没落するというスタンスは堅持してはいます。ただ、この上昇局面がどのくらい続くか、全然読めなかった(読めない)ですね。
  常々指摘している通り、本当は欧米ともに、経済はどうにもならない袋小路に追い詰められていて、価値のないドルやユーロを刷り散らかして(ユーロに関してはドイツ経済という裏付けはあるのですが)、金融市場に投入することで、見せかけの景気回復あるいは、破たん回避を演出しているだけです。
  だから、自然の法則としては、地球上にいる限り、重力から逃れられないのと同様、いずれは高く飛んだものは地面に落ちるのです。スマートに離陸し、空中に滞空する飛行機だって、燃料が切れたら、地上に戻るか、墜落するしかありえません。
  米国株を見る限り、地面からあまりにも高く飛び立ってしまったので、「ソフトランディング」というのはあり得るのかどうか、疑問視せざるを得ませんね。せめてダウの上昇を1万ドル前後にとどめていれば、まだましだったかもしれませんが、強欲に一部の人たちが利益を追求し、、指数の上昇だけを追い求めた結果、再び“バブル”の域にまで達してしまいました。
  だから、いつまで上昇局面(あるいは少なくとも崩壊の回避)が続くかどうかは、ドル、ユーロあるいは追随して円を刷り散らかし続けることができるか、あるいは、不自然な政策介入を続ける欧米の国家群に対する、世界の信認(我慢)がいつまで堪えられるかということに尽きます。
  金融市場が上昇し、マインドが緩むと、どうしても浮かれてしまうので、予想を狂わされてしまいます。リーマン・ショック前の、2008年4~6月ごろの状況がまさにそうでした。リーマン・ショックの時はテクニカル的にやばいかなということは感じられましたけどね。
  現在の状況は、ファンダメンタルでもテクニカルでも説明がつかなくなっています。ときどき政策介入という“麻薬”を投入して、幻覚を植えつけ、だましだまし崩壊を回避する、あるいは崩壊するにしても、都合の良いタイミングを見計らっているということにほかならないのではないかと考えています。
  テクニカルに関して言えば、素直に下げるところまで下げればいいんですよ。いくら欧米のダメ人間どもでも、生きていかなければならないでしょうから、堕ちれば、実力ある人、意志のある人は這いあがろうとします。
  1ドル=30円までいったん落ちて、50円まで戻す。それでいいいのではないですかね。ダウが3000ドルまで下げて、いったん底打ち、または景気循環に合わせて4500ドルまで50%上昇する。それが自然ですよね。
  そうなると困るのは、欧米の金融機関、ひいていえば、お金をコントロールすることで、覇権と利権を握ってきた人たち、いわゆる金融ユダヤ人(すべてがユダヤ人だけとは限りませんが)ですね。米国債や米国の地方債をしこたま買わされた日本も大打撃を受けることでしょう。
  しかし、人々の労働や努力、役に立つこと、創造性など、本当に価値のあるものを無視して、紙切れだけで、すべてが決められてきたシステムはおかしいし、そんなものが長続きするはずはありません。もし続けようとするならば、断固として反対しなければなりません。
  今の世界経済は実体経済を無視し、一見華やかなように見えて、あっけなく崩れてしまう砂上の楼閣、まさに幻覚を見せられているにすぎないのです。幻覚と現実を区別すべき時に来ていますね。