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ラーメン道 ラーメン遺産・残したい味 渋谷編1



  長かった今年のゴールデンウイークもいよいよ最終日。このところつけ麺ばかりでしたが、久々に最後はラーメンで締めておきましょうかね。
  この十数年で、東京のラーメン事情は大きく変化しました。研究熱心な若い世代が開業するお店が、新風を吹き込み、あまり知られていないお店でも、飛び込みで入ると、そこそこレベルが高くて、“はずれ”に出くわす確率がきわめて低くなりました。
  つけ麺、油そばが勢力を伸ばしたり、フレンチやイタリアンのお店がランチ時間帯限定で、オリジナルのラーメンを提供していたりして、スタイルも多様化しています。


  また、従来は、神田、荻窪など、ラーメン店が集まるエリアがあり、“ラーメンの街”として知られていましたが、今では、23区内ならどこでも街角にちょっと存在感のあるラーメン店を見かけるようになりました。
  東池袋・大勝軒、永福町・大勝軒、麺屋武蔵、横浜家系など、有名店で修業し、のれん分けや独立するケースも目立ちます。ラーメン二郎なんかも同様ですね。最近は23区を飛び出し、首都圏近郊で開店したり、地方にも系列店がみられるようにもなりました。札幌、旭川、喜多方、和歌山あたりのラーメン店が逆に東京に進出するケースもあります。


  多くの店がしのぎを削り、お互いを刺激し合い、切磋琢磨するので、ラーメンは日々進化し、楽しませてくれます。とても一人の力ではフォローしきれないほどです。
  半面、昔ながらのラーメン店は、姿を消しつつあります。東京ラーメンの原点(正確にいうならば、浅草で明治時代に開業したお店もあるので、東京ラーメンの源流の一つ)は闇市で売られた大陸や台湾の影響を受けた、かけそばスタイルの麺料理ですね。東京の旧国鉄の主要駅前には大抵、終戦直後にできた闇市や自然発生的な市場、商店街があり、その名残で、古くからのひなびた中華料理店をよく見かけます。


  そこから始まったラーメンが、多くの人の味覚に受け入れられ、広がるようになりました。最近は新興ラーメン店に押されて、少なくなりましたが、街場の小ぢんまりした中華料理店で、その味が受け継がれ、醤油ラーメンをベースにチャーシューメン、ワンタンメンなどが供されました。瓶ビールと餃子、ザーサイあたりを頼んで、晩酌して、ラーメンで〆るというスタイルは、日々の小さな幸せですよね。
  最近は新しい味を追い求めていたので、昔ながらの味からは遠ざかっていたのですが、つけ麺店なんかを研究しているうちに、オーソドックスな味がどんどん消えていっていることに気づき、東京ラーメンの“原点”をしっかりフォローしておきたいと思いました。


  ノスタルジーに駆られ、まずは、渋谷「喜楽」を訪れることにしました。かの「神の舌」を持つといわれる石神秀幸さんが「ラーメン文化遺産」に“認定”したお店です。


  喜楽は渋谷道玄坂の、ラブホテルや風俗店なんかが混在する、ちょっと香ばしい雰囲気の一角にあります。現在地でいつから開業しているのかは知りませんが、この辺も闇市とか古くからの商店街の名残を残しているのでしょう。
  ゴールデンウイーク前半に訪れたのですが、休日で午後1時前と食事どきだったこともあり、店の前には10人ほどが並んでいました。
  並んでいる人たちは若い人もいるのですが、渋谷にいる割にはあか抜けていなかったり、年配の人もちょっとうだつの上がらない風采、女性は水商売風で同伴っぽかったりと、いい味を出していました。みんなちょっとこだわりを持って不器用に生きているんでしょうね。そしてラーメンを愛しているのでしょう。


  私は一応“渋谷仕様”の服装をしていたので、ちょっとこの列では浮いていて、気おくれしてしまいました。最近は若者が自分に合った服を着るので、渋谷の若者のファッションは一つのスタイルに流されず多様ですね。本当の意味で個性的で、いいことだと思います。
  お店はちょっとこぎれいな、おそらく“自社ビル”であろう3階建てのビルの1、2階にあります。宗教団体が支持母体の某政党のポスターが貼ってあるのもいかにも。いい味を出しています。入り口には店主の奥さんでしょうか、おばあちゃんがいて、列に並んでいる人からあらかじめ注文をとります。


  20分くらいして入店できました。中華麺(650円)の大盛(100円)を頼みました。あらかじめ注文していたので、席に着いて数分で出てきました。
  事前に写真で見ていたのですが、出てきた中華麺をみて、感慨深いものがありました。醤油ラーメンの上にもやしと半分に切った煮玉子、チャーシュー数切れがトッピングされ、まさに「正統派東京ラーメン」のスタイルでした。
  日ごろ、私は玉子は固ゆでがいいと、しつこく言い続けていますが、目の前にトッピングされているものは、私がまさに求めているものです。
  煮玉子と言えば、荻窪「丸福」の玉子そばが有名で、私は東京ラーメンの3本の指に入ると思っていますが、この渋谷・喜楽と、荻窪・丸福は煮玉子、もやしのトッピングと、同じようなスタイルです。どちらも旧国鉄駅近くに広がった市場で発祥したルーツを忠実に残していると思います。喜楽の店主は台湾出身だそうですが、丸福もおそらく台湾系のスタイルが土台なのでしょうね。
  見た目から大体、味は想像できましたが、スープを一口すすると、期待通りの味でした。丸福と同系統の味です。豚骨、鶏ガラのこってり系なのですが、とてもすっきりした味わいに仕上がっています。
  私はラーメンのトッピングで、もやしが大好きなのですが、喜楽は長時間湯通ししているのに対し、丸福はさっと熱湯につける程度で、喜楽がややしなっとしているのに対して、丸福の方はシャキッとしています。好みの問題ですが、私はどちらかというと丸福のものが好きです。
  麺も喜楽と丸福とでは対照的で、喜楽が太麺を使っているのに対し、丸福は細めの麺です。どちらがいいかは、その時の好み、体調や気分次第でしょう。どちらもおいしいです。
  古くからの東京ラーメンのスタイルを守っている店があるんだなと感心しつつ、あっという間に完食してしまいました。
  作りとしては、喜楽が素朴で、ともすればやや大雑把なのですが、丸福はトッピングの乗せ方など、すみずみまで丁寧で、味わいもやや洗練されています。
  丸福は化学調味料を使用しているので、その辺抵抗感がある人も多いのでしょうが、私は「グルタミン酸肯定派」です。私の信頼する漢方医は、化学調味料は世間の否定的な評価とは反対に、脳にポジティブな影響を与えるケースが多い(もちろん個々人の体質によります。体に合わずネガティブな影響を受ける人もいる)のだそうです。ちなみに私は昔、カップめんに白コショウと化学調味料をたっぷり振り掛けるのが好きでした。
  有名中華料理店でも“隠し味”として使っているところも、あるようですね。香港や上海に行ったら、そんなことは気にしていられません。


  蛇足ですが、化学調味料は(人によって)脳を活性化させる方向に働くケースがありますが、人工甘味料(アスパルテーム)は、往々にして脳に悪影響を与えるそうなので、「ダイエット○○」は気を付けた方がいいと思います。
  私は、丸福もラーメン文化遺産に選ばれてしかるべきだと思いますが、化学調味料はタブー視されているので、難しいのでしょう。もし選んだら炎上は必至で、石神さんの看板に傷がつくことになりかねないでしょうね。ただ、もし丸福を意図的に無視しているのであるならば、私は石神さんという人は底が知れるのではないかと思っています。
  前にも書きましたが、ラーメンってそこまで、オーガニックだとか、添加物一切不使用とかを喧伝して公明正大に売られる食べ物なんでしょうかね? むしろ対極にある食べ物だと思います。いずれ、詳しく述べたいと思いますが、オーガニックだって本当に体にいいものはごくわずかなのです。


  くどくどと書いてしまいましたが、神の舌を持つという人がお墨付きをつけているだけあって、喜楽は東京ラーメンを知る上で、貴重です。ラーメンに関心がある方は、渋谷にお立ち寄りの際、ぜひ試してほしいと思います。
  渋谷の裏通りなんかには、台湾系のお店や、ひなびた中華料理店をたまにみかけますが、これらもつぶさに調べると、終戦直後のルーツを持った味と出会えるかもしれません。
  中華の麺料理の要素を受け継ぎつつ、日本人の舌に訴えかけるラーメンの原点がそこにあります。これに対して、煮干しやサバ節など、魚介系の素材を入れ、日本そば風のテイストにしたものも、もう一方の東京ラーメンの原点ですね。後日、紹介したいと思います。

ラーメン道 バランスの取れた味 品川編2

  このところ、とにかくがむしゃらにつけ麺を食べまくりましたが、皆さんもそろそろ飽きてきたと思いますので、つけ麺スペシャルは今回でいったん小休止してもいいかなと思います。何より私自身、さすがに豚骨魚介の濃厚つけ汁ばかり続くと、別の味付けのものを食べたくなりました。


  どうしても一度、足を運んでおきたい店があったので、先日、江の島へ行った帰りしな、行ってみました。つけ麺好きにはよく知られている「TETSU」です。千駄木が本店なのですが、品川の「麺達七人衆」にある支店の方を訪れました。
  TETSUも豚骨(鶏ガラも)と魚介を合わせた、濃厚なスープで知られる店です。東京のつけ麺店は豚骨魚介が主流で、店によって微妙に味が違い、東京駅八重洲口の「六厘舎」や、住吉の「中川會」など頭一つ、二つ他店より抜け出た存在もあるのですが、基本的な味の組み立ては同じです。
  なので、豚骨、魚介の根底にあるものはどれも変わらないのか、それとも、同じ豚骨魚介でも、全然別物もあるのか確かめたくて、TETSUのつけ麺を試してみることにしました。


  ゴールデンウイークの初日、江の島を訪れた帰り、鎌倉から横須賀線に乗り、品川で下車したのは午後6時半ごろでした。江の島でしらす丼を食べ、途中ソフトクリームやらコロッケやらを立ち食いしたので、それほど空腹ではなかったのですが、連休で人出が多く、しかも夕食時にさしかかっているので、混んでいるのかなと思い、すぐにお店へ向かいました。


  そしたら、予想に反して、それほど混雑はしていませんでした。というより、麺達七人衆自体、なんとなく閑散としていて、あまり地の利がよくないのかなと思いました。前に麺達七人衆の「なんつっ亭」を取り上げた時も触れましたが、品川は新幹線が停車し、京浜急行のターミナルではあるのですが、通過客がほとんどで、百貨店や大型の商業施設も集積しておらず、あまり人が滞留する場所ではないので、条件としては不利ですね。


  味玉つけめん(850円)の大盛(+100円)を選びました。私が訪れた時は、なんつっ亭なんかは、客の入りが悪かったのですが、TETSUはいま流行のつけ麺店で名前が知られているだけあって、麺達七人衆全体が客が少ない中、店内は8割ほど埋まっていて健闘していました。
  5分ほどして“着丼”。平均的な待ち時間ですね。まずはレンゲで軽くつけ汁をすくって、いつもの“儀式”を。他店と比べると、ややあっさり目の味でした。豚骨魚介であるというベースはやはり同じでしたね。
  つけ麺なので、麺にからむようにつけ汁は濃厚にしてあるのですが、何となくさらっとした感じもあって、後口も悪くないですね。週に何度も通っても飽きないような味でした。
  麺は自家製麺だそうで、浅草・開花楼や、タピオカ入りの麺と比べると、もちもち感は抑え目ですが、つけ汁との相性がよく、とてもバランスが取れていました。弾力のあるもっちりとした麺が人気ですが、以前に指摘したように、これを好まない人もいるし、私自身、讃岐うどんのように、だしをはねかえしてしまう弾力感はあまり好みではありません。TETSUの麺は弾力を求める人、そうでない人双方から受け入れられやすいのではないでしょうか。
  あちこちでつけ麺を食べて回っていたこともあり、江の島やら鎌倉やらを散策して疲れていたこともあり、こうした状況でつけ麺はややヘビーかなとも思ったのですが、取り越し苦労で、いったん口にすると、次から次へと後を引き、あっという間に完食してしまいました。
  ちなみにつけ汁は食べ進むにつれて冷めるので、店員さんに頼めば焼き石を入れてくれます。これはユニークなサービスですね。私の隣の席の人が頼んでいましたが、私は勢いで焼き石で温めなおすことなく、食べきってしまいました。


  最初は、客の入りが思ったほどでなく、思わず心配してしまいましたが、午後7時前になると、徐々に増えだして、店の前に列ができていました。それでも、列があるのはTETSUだけで、ほかのお店は、それほどの混雑ではありませんでした。
  煮干しラーメンだとたまに、店によってこんなに味わいが変わるのかと、驚かされることがありますが、豚骨魚介のつけ麺は、これまで私が見てきた限りでは、それほど大きなばらつきはなさそうです。
  今のままでも十分おいしいのですが、単なる豚骨魚介だけだと、横並びになってしまうでしょうから、激しい競争に生き残っていくためには、いろいろと新機軸を打ち出したり、他店との明らかな違いを感じさせる味付けが必要になるでしょうね。
  どのお店も研究熱心だし、努力家が多いので、いずれ、私たちをあっと言わせるような新しい味が出てくることでしょう。それを楽しみにしたいと思います。

ラーメン道 深みのある味 四ツ目通り編2

  怒涛のつけ麺スペシャル。そろそろ私の中では佳境に入ってきました。「六厘舎 TOKYO」で、ずば抜けたつけ麺と出会い、東京のつけ麺に対する評価、序列のようなものが固まってきました。
  今回、江東区住吉にあるつけ麺店「麺屋 中川會」を訪れたことでそれが確信に変わりつつあります。中川會といえば、六厘舎と並んで、つけ麺店の代表格のような存在で、テレビ、雑誌のつけ麺特集では、必ずと言っていいほど取り上げられるお店です。
  あちこちつけ麺店を食べ歩いて、味の記憶が鮮明なうちに、自分の中での評価を確立したいと思い、たまたま時間があったので、六厘舎を訪れた翌日、中川會に行ってみました。




  四ツ目通りは、スカイツリーのおひざ元、押上から錦糸町を経て東陽町に向かう東京東部の幹線道路の一つで、高層マンションが続々と建ち、人口が増加している地域で、近年、ラーメン店も相次いで開店し、注目されている地域です。ラーメン店が立ち並ぶ街道としては、西の環七通りに対抗し、いずれ「東の四ツ目通り」と称される日がくるかもしれません。
  昨年7月に「肉そば けいすけ」の住吉店を取り上げたので四ツ目通りのお店を紹介するのは2度目。けいすけから200~300メートルほどの距離の目と鼻の先に中川會はあります。
  東京メトロ半蔵門線の住吉駅から店までの経路を調べようと、スマホで検索したら、「中川会」と入力すると、全国の「医療法人・中川会」ばかりヒットしました。「中川会」というと医療法人というのが世間一般の相場なのでしょう。「幸楽」「来々軒」とくれば中華料理、「大三元」といえば雀荘といった感じでしょうか。検索するときは「中川會」とするか、「つけ麺 中川会」とした方がよさそうです。


  以前にたまたま近くを通りかかった際に中川會の前には長い行列ができていたので、待たなければならないのかなと覚悟していましたが、予想に反して、午後1時前に店に着いたときには、近所の事業所に働いているとみられる、作業服姿の40~50代の男性3人しかおらず、5分も待たずに店内に入ることができました。
  「アド街ック天国」とか夕方の情報番組や何かで、何度か取り上げられているのを見ましたが、長い行列で大盛況という印象でした。やや地の利が悪いのか、一時の勢いは落ち着きつつあるということでしょうかね。平日ということもあるのでしょう。休日の方が人が集まりやすいような感じもします。
  店内は天井と壁が黒基調で、カウンターの木目が映え、つけ麺店というよりは、落ち着いたジャズバーみたいな雰囲気です。
  つけ麺大盛(750円+100円)を注文しました。思いのほか、簡単に入店できましたが、やはり人気店のつけ麺ということもあり、期待が高まります。


  注文から5分ほどで、お目当てのつけ麺とご対面。中川會も、豚骨、魚介がベースで、見た目、風味はほかのつけ麺店のものと同じような感じでした。麺は六厘舎と同じ、浅草・開花楼製で、それぞれオーダーメードで、別物なんでしょうけど、ボリューム感があり、微妙にウエーブがかかっているのが特徴です。
  早速、まずはつけ汁だけを吟味します。舌先にのせると、食べなれた豚骨魚介なのですが、ほんのりとした甘みがあり、全体に深みと奥行きが感じられました。
  中川會のつけ汁は、野菜と生シイタケ、そしてリンゴ、オレンジなど果物をふんだんに取り入れているのが特徴なのですが、それがはっきりと感じられる味で、他店の豚骨魚介とベースは同じなのですが、野菜と果物のエキスが格の違いを押し出しています。
  トッピングに六厘舎同様、魚粉エキスが添えられているのですが、これはつけ麺のスタンダードになりつつありますね。味にアクセントがついて、最後まで食べ飽きません。
  「神の舌」を持つという美食家の石神秀幸さんが中川會のつけ麺について、「頭一つ抜けた存在感を示す」と評していましたが、まさにその通りだと思います。
  つけ汁にインパクトがある上、それに負けない開花楼の弾力感があり、小麦の風味が生きた麺のコンビネーションがよく、食べごたえがあります。


  それと、忘れてはいけないのは、「カレ変ライス」(+150円)です。麺を食べ終わった後、残ったつけ汁にカレー粉を入れてくれ、小ライスと一緒にかき混ぜることで、ドライカレーか、カレーおじやのようなものに“変身”します。これが、豚骨魚介のだしが利いていて絶品です。まさに〆には欠かせない、一粒で二度おいしい、うれしいおまけです。




  この1カ月ほど、ラーメンを封印し、つけ麺ばかり食べてきましたが、六厘舎と中川會のものは別格ですね。練りに練られていて、あまりの完成度の高さにうならされます。素直に「おいしいものを食べたな」と、食べ終わった後に、とても心地よくなりました。
  あえて、六厘舎か、中川會かとなると、さらに頭一つ抜け出した形で、六厘舎でしょうかね。つけ汁を口にした時のインパクトは中川會もなかなかのものだったのですが、六厘舎はさらにそれを上回る衝撃でした。好みによる部分もあるでしょうが、豚骨魚介のみで直球勝負、高いレベルに昇華させてしまった点で、六厘舎に軍配が上がると思います。
  ということで、現時点で、私の中でのつけ麺ランキングは、
    ①六厘舎 TOKYO(東京駅八重洲口・東京ラーメンストリート)
    ②中川會(江東区・四ツ目通り)
    ③蕃茄(練馬区・大泉学園)
ですね。私が考える「つけ麺 御三家」です。つけ麺に関しては、まだまだ知らないことがあるので、このランキングはあくまでも暫定であり、今後、塗り替わる可能性は大いにあります。サプライズに期待したいところです。
  ただ、このところ、つけ麺ばかり食べていたので、そろそろ、ラーメンや油そばも食べたいなかなというのが率直な思いです。

ラーメン道 キング・オブ・つけ麺 東京駅編1

  ゴールデンウイークに入りました。新緑が鮮やかで本格的に生気がみなぎる季節です。金融市場は混とんとし、マイナスオーラが全開ですが、外に出ていい気をもらいましょう。
  さて、まだまだつけ麺スペシャル。味覚に対する記憶が鮮明なうちに、つけ麺について徹底的に追究したいという思いが強くなり、チャレンジを続行しました。つけ麺と言えば、避けて通れないのが、東京駅八重洲口地下の「東京ラーメンストリート」にある「六厘舎 TOKYO」でしょう。




  つけ麺店はあちこちに増えていますが、六厘舎はつけ麺のテレビ、雑誌などのメディアが代表的なお店を紹介する際、ほぼ100%出てくるほどの有名店です。つけ麺に関心を持った以上、知らん顔はできるはずもありません。
  ラーメンストリートには、何度か足を運んだことがあり、六厘舎の盛況ぶりは知ってはいましたが、当時はつけ麺に関心がなく、スルーしていました。ストリートにある、お店も正直、私にとってはあまり興味を引く対象ではなく、北海道や東京・九段から出店した某店は、ラーメンを食べたことがありますが、メディアの評価ほど、魅力があるとは思えません。実際、最近は店の前に通ると、時間帯によっては閑古鳥が鳴いている状況もみられ、だから、当初は、六厘舎もその程度のものだと思っていました。


  六厘舎はもともと大崎で店を構えていたのですが、口コミで徐々に人気が広がり、長い行列が近所の人の迷惑になるとのことで昨年8月に大崎での営業をやめ、現在では、ごくたまに大崎で不定期で店を開いてはいるようですが、基本的にはラーメンストリート一本勝負のようです。
  いつも店の前を通るたびに人だかりができているのは知っており、行列覚悟でした。「平日だしお昼時は外して2時前くらいに行けば、それほど混んでいないだろう」「その前に八重洲ブックセンターでも寄るか」などと考えていたら、甘かった。1時半すぎでしたが、長い行列ができていました。


  東京駅の集客力はやはりずば抜けています。六厘舎の大崎の本店は12席。昨年開店した東京駅の店は26席とスペースは倍増したのに、次々と行列の最後尾に人がつく盛況ぶりです。その一方で、周囲のお店はお昼時が過ぎて閑散としているので、その辺、地の利はいいとはいえシビアですね。
  普段なら、わざわざ長い行列に並んでまでラーメンを食べようなどとは思いませんが、この日は「勝負する」と決めていたので、素直に待つことにしました。場所柄、出張途中のビジネスマン風の人が多く、“観光名所”となっていることもあり、年配の人のグループや、若い女性の姿も目立ちました。並んでもせいぜい20~30分くらいだろうと高をくくっていたのですが、50分近く待つことになりました。
  それなりの覚悟はしていたので、行列のお供に本を持参。東北楽天ゴールデンイーグルスの野村克也氏の「プロ野球重大事件-誰も知らない“あの真相”」(角川oneテーマ21、724円)で、買ってから積ん読状態だったのを、これを機に読んでしまうことにしました。
  題名からして生々しいのですが、昨年の巨人の清武英利ゼネラルマネージャーの“乱”や中日の落合博満監督の解任など、最近の話題を野村氏が独自の視点で斬るもので、非常に興味深いものでした。
  内容のほとんどは、戦後の野球史や、野村氏の経験から培った野球理論の焼き直しなのですが、野球に対する情熱、日本の野球界を守りたいという思いにあふれていて、シンパとしては思わず目頭が熱くなりました。周囲の人は全く持って理解不能でしょうけど(苦笑)。


  少しずつ前進し、ようやく店内に入ると、「お待ちしておりました」という掛け声で出迎えられます。商売口上なのですが、長い待ち時間の後だけに悪い気はしません。
  席に着くと、カウンターから厨房が見えましたが、さすがに人気店だけあって、10人近いスタッフが調理と洗い場に分かれ、ひっきりなしの注文に対応していました。


  味玉つけ麺の大盛(950円+100円)を選びました。私が入店した時は、ちょうど客が入れ替わるタイミングだったので、時間がかかるかなと思いましたが、5分もたたないうちに、つけ麺が出てきたので、ちょっと驚きました。
  目を引くのが、つけ汁のトッピングの海苔の上にのった魚粉ですね。こういうスタイルのつけ麺は初めてなので、ちょっと胸が高鳴ります。
  まずはレンゲの先でちょっとつけ汁をすくって軽く一口。味覚が一気に覚醒され、なぜ人気なのかよく分かりました。今、はやりの豚骨と魚介を組み合わせたスープなのですが、洗練されていてインパクトのある味です。他店より明らかに飛び抜けています。コンセプトは「ガサツで荒々しく男らしいつけ麺」とのことですが、なんのなんの。とても繊細です。
  麺は浅草・開花楼製とのことですが、つけ汁との相性が非常にいいです。これまでタピオカ粉が入った麺を使っているお店をいくつか訪れましたが、六厘舎は小麦粉一本勝負。微妙な縮れ具合がつけ汁にうまくからみます。
  トッピングはナルト、刻みネギ、チャーシュー、シナチクとオーソドックスな東京ラーメンスタイルですが、つけ汁の味付けとよく調和していました。魚粉は正直、初めてで食べ方が良くわかりませんでしたが、少しずつつけ汁に溶いていくと、味が微妙に変化し、最後まで食べ飽きない趣向となっていました。
  東京でつけ麺というと、真っ先に六厘舎が挙げられる理由が、よく理解できました。この店を差し置いてほかはありえないでしょう。豚骨魚介はスタンダードになりつつありますが、六厘舎の味は、他店と食べ比べると、明らかに違います。伝統的な醤油味の東京ラーメンが好きな人にも受け入れられやすいのではないでしょうか。つけ麺に関心のある人には絶対にこのお店をお勧めします。


  東京を離れて地方に行くと、それぞれ自然に恵まれ、そこで採れる海の幸、山の幸を堪能でき、そこでしか味わえない体験ができますが、ちょっと手の込んだものについては明らかに東京に軍配が上がりますね。多くの店、料理人が切磋琢磨し、技を競い合うので、やはりレベルが高いです。
  私の評価では、ラーメンでは麺屋武蔵(新宿)が現在のところ、東京ラーメンの系譜を受け継いで、頭一つリードしていると思いますが、つけ麺では六厘舎ですね。ラーメン、つけ麺でいいお店を紹介してくれと言われたら、この2点を真っ先に挙げるでしょう。
  もし納得してもらえなければ、そもそも東京ラーメン、東京で主流のつけ麺にはご縁がない、あるいは体質、味覚に合わないということでしょう。
  「神の舌」と持つと言われる石神秀幸さんとか、ラーメン官僚氏と比べると、私など市井のラーメン好きの一人にすぎませんし、あまり細かいことを吟味するよりも、店の雰囲気とか、そのお店と出会ったストーリー性なんかも大切にします。ただ、私が信頼する漢方医からは、「味覚は鋭い」とお墨付きをもらっており、それなりに選択眼はあると自負しています。
  六厘舎は、素直に「すごいな」と思える、数少ないお店だと思いますし、現在のつけ麺界で間違いなく頂点に君臨するにふさわしいと考えます。まさに「キング・オブ・つけ麺」です。興味のある方、地方から上京する方は、おいしいと思うかどうかは別にして、観光スポットでもあるし、話のネタにもなるので、お試しの価値は十分あると思います。

ラーメン道 怖いほどイタリアン! 練馬編1

  つけ麺スペシャルまだまだ続きます。ラーメンをしのぐ勢いで台頭しているつけ麺とはなにものなのか? なぜ受けているのか? 人気は長続きするのか? ということを自分なりに解明してみたいと思い、徹底的にいろんなところで食べてみたいと思います。
  時代の流れやファッション、人々の嗜好の在り方といった、単なる「食」を超えたところで、いろんな真実が見えてくると思います。投資にせよ短期のトレードにせよ、そこの感覚が大事ですよね。大きな流れを意識しつつ、その中でわずかな変化や何に関心が集まっているか、勢いのあるものないものを見極めることが大切です。
  中にはブームに単純にのっかる形でつけ麺を始めた店も多いですが、つけ麺をあちこちで食べての印象は総じて、レベルが高いです。地に足が着いたブームだと思います。
  その一方で、食文化としてつけ麺が定着するのか? そこはまだ未知数ですね。つけ麺に飽きたらラーメンに回帰する可能性もあるし、さらに違ったスタイルの麺料理が台頭し、つけ麺をあっという間に片隅に追いやってしまうかもしれません。これからは景気動向も気になりますね。




  今回は、阿佐ヶ谷の「麺爽 かしげ」の姉妹店だという、練馬・大泉公園のトマト風味を押し出したつけ麺が売りの「麺屋 蕃茄」を訪れてみました。かしげでは、つけ麺がチーズとマッチするかどうかを確認できたわけですが、さらに一歩進めてイタリアン風になるとどうなるかというのを確かめたかったので、蕃茄を選びました。
  結論から先に言うと、思った通りイタリア風のつけ麺でした。味が良く練れていて、本当においしくて、ここでも十分過ぎる満足感を得ることができました。でも、イタリア料理を食べているのか、それともイタリア風にアレンジされた日本の麺料理を食べているのか、分からなくなり、自分の目的を見失いそうで、率直に言って怖い感じでした。
  私はかつて荻窪に住み、中央線沿線(と言っても主には中野~西荻窪間にすぎませんが)を徘徊し、1990年代にラーメンブームの第一波が訪れ、その後しばらくして環七通りに新興のラーメン店がぽつぽつとでき始めたあたりから、ラーメンを本格的に食すようになったので、中央線、環七通りを軸に考えてきましたが、その発想は捨てた方がいいですね。完全に。
  おいしい物を提供するお店はどこにでもあるし、野心や気概を持った人もあちこちにいます。限られた地域にしかないというのは非常に狭量な考えであることを思い知らされました。
  練馬区は、スバ抜けて有名な店というのはあまり知りませんが、西武線の各駅周辺には学生や若い世代が結構集まっていて、古くからちょこちょことラーメン店、小規模の中華料理店が目立つ地域でした。実際に情報収集してみると、面白そうなお店があります。
  知り合いが春日や上石神井にいて時々、飲みに行ったりするのですが、練馬でラーメンを食べるのはもしかすると初めてかもしれません。




  蕃茄は西武池袋線の大泉学園駅の線路沿いにあり、南口から歩いて1分という至近距離。電車の車窓から見えるかなと思ったら見えました。昼の1時前でしたが、自転車に乗ってきた近所の人らしき人が入店する様子が見え、「地元の人に受け入れられているんだな」と感じました。
  長引く不況で、東京でも駅付近のビルは空室が目立ち、未活用の建物、土地がちらほら目につくようになりました。阿佐ヶ谷・かしげも駅のそばですが、地の利のいい場所にラーメン店とか、ちょっとこだわりを持った店が入るのはいいですね。消費者金融、コンビニ、ケータイショップが目立つ街の風景はもう見飽きました。
  街に占めるラーメン店の割合なんてささやかだし、経済効果もしれているでしょうが、それでもおいしいものを食べてほしいという思いを受け止めてくれる人はいるだろうし、少しずつでも輪が広がればいい。いくら「地域に貢献」とか「コミュニティーを支える」みたいなきれいごとを並べ立てても、所詮、大手チェーンは大企業の論理でしか動かないし、彼らの思い描くようにお金が儲からなければ、その地域なんかどうでもいいのです。これも金融資本主義の害毒ですね。
  お昼時だったので、15席前後のカウンターはほぼ満席でした。トマトが売りだけあって、女性は敏感ですよね。近所の年配の主婦がおひとり様でいたり、ママ友らしき3人組、近くの会社に勤務しているとおぼしき女性会社員風の人などなど、女性比率が高かったですね。
  厨房は若い男性3人で切り盛りしていました。海老トマトつけ麺(880円)を選択。麺はこのお店も並盛、大盛、W盛がすべて同価格で、このところ復調著しいのでW盛にしました。

 
  店内は混雑していましたが、5分もしないうちに“着丼”。つけ汁は色合いからしてミートソースみたいな感じがしますが、エビのだしがきいた、豚骨、魚介ベースです。麺の上には、絹さやとトマトが盛り付けられ、色取りもいいですね。女性に受け入れられやすいと思います。
  麺はかしげ同様、太麺で、おそらくタピオカが入っているんでしょうね。コシがあって、パスタとはまた違う食感で、ここはさすがにイタリアンでなく、和風のつけ麺だということを感じさせます。
  弾力があり、重量感もある麺をたぐって、麺の先をちょこっとつけ汁につけ、口に運ぶと、トマトの酸味がほどよく利いていて、「う~ん、なるほどな」と思います。やはり、イタリアンですよ。イタリアン。
  イタリア料理でもだしが料理の深みを演出しますが、豚骨、魚介のダブルスープをベースにエビのだしが、奥の深さを加え、その上にトマトが統一感をかもしだし、普通考えられているつけ麺やラーメンの枠を超えて、まったく別の麺料理に生まれ変わったという感じです。
  ラーメンというのは、料理界ではどちらかというとサブカルチャー的な位置づけだと思います。ベースに日本そばや中華の麺料理があったり、水餃子とか、中華料理で定番の各種スープ、韓国の冷麺の影響なんかもあるかもしれません。


  主流の料理の影響を受けつつ、発展したきたのがラーメンであり、つけ麺でしょう。イタリア風のパスタの影響を受けて蕃茄のつけ麺が誕生したのも、そういう図式で考えると、自然なことですね。
  ただ、この海老トマトつけ麺は、かなりよくできていて、「イタリアンもどき」を食べているのか、「イタリアンの新しい料理」を食べているのか、分からなくなってしまいます。
  店主は中華料理店で修業された方のようですが、麺料理の原点は中国にあり、それがイタリアやら日本に広まったことを考えると、中華、イタリアン、日本を飛び越えた麺料理をつくりだしてしまったということでしょうか。
  単なる「中華そばもどき」、「イタリアンパスタもどき」、「日本そばもどき」ではなく、3つの系譜を受けた麺料理を融合してしまったのかもしれません。
  トマトは最近、ダイエット効果が注目されていますが、脳をすっきりさせる働きがあり(体質に合う人と合わない人がいますが合う確率が圧倒的に高い)ヘルシーな上、見た目も味も女性に受けることは間違いないと思いますし、イタリアンに造詣の深い人にも一度食べてみてほしいですね。受け入れられやすいのではないでしょうか。
  トマトを加えたつけ麺は、もっともっと発展する可能性があると思いますし、都心に出て注目を集めれば、競うようにいろんなスタイルの麺が生まれてくるでしょう。それにしても、どエライものが出てきたなと感じています。