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情報

  日々マーケットと対峙していく上で、最も重要なのは情報収集と分析です。これは個人投資家でもプロでも共通しています。情報といっても幅広く、まず重要なのはファンダメンタルですね。日々発表される経済指標とか金利動向などをウォッチしていれば大体は事足ります。3カ月くらいフォローしていれば、最低限のデータは得られるでしょう。
  FXでは、経済指標発表前後に仕掛けがあり、一攫千金をめぐるさまざまな思惑がうごめきます。大証の日経先物は以前は取引時間が限定され、かつては午後2時に発表されていた毎月の機械受注統計も、相場への影響に配慮して午前の取引時間前に発表されるようになっていたので、経済指標とは無縁の動きをしていましたが、最近では午前3時まで取引されるようになり、米国の経済指標に敏感に反応するようになりました。
  以前は、先物取引の“強者”のブログなどを読むと、相場は「ファンダメンタルではなくテクニカルで動く」みたいな講釈を垂れる人がよくいましたが、取引時間がシームレスに近づくと、やはり経済指標、すなわちファンダメンタルに影響されるんですよね。
  もちろん、値幅などテクニカル要因で決まる部分も多く、テクニカル分析も情報収集活動の一環と考えていいでしょう。ただ、これだけ欧米の債務危機や景気減速が注目され、それらによって相場が左右されると、テクニカル分析の入り込む余地は小さくなります。
  また、経済指標、金利動向とともに重要度を増しているのが、為替介入や政策対応ですね。これらは先日の為替介入でもお分かりの通り、トレンドを跳ね返す力はありませんが、一時的に価格が乱高下する要因になるので、無視できません。トレンドを変えられない以上は、「トラブル・メーカー」以外の何者でもないような気もしますが・・・。
  逆に言うと、為替介入や政策対応ではもはや大きな流れは変えられなくなっているとも考えられます。1995年に1ドル=79円をつけた時には介入で、140円方向への円安に大きくトレンドが変わっていますが、それから比べると、昨年9月以来の3回の介入がいかに非力なものか。介入規模としては過去最大規模ということで、ブラック・ホールに国富を吸い取られているようなものですね。
  こうした情報収集以外に重要なのは、日々の政治、経済、国際ニュースに接して分析できるだけの知識の積み重ねですね。たとえば先日、バイデン米副大統領が訪中して、誰と会い、どんなことを話し合ったのか。そこから、マーケットがどう反応するかということを予測することも大切です。
  これは一朝一夕に身につくものではなく、普段からの努力が必要ですし、常に自分が間違っているという前提で謙虚に鍛錬していく姿勢も求められます。でないと新しい事態に柔軟に対応できません。核となるのは読書ですが、良書に出会わなければなりませんし、国内ではいい書物が少ないので、海外にアンテナを広げることも重要です。
  私もできる限り、良書を紹介したいと思います。まずやるべきなのは、海外の指導者、エリート層がどういう考えを持っているのか、政治潮流を理解することです。そして、どういう人物がキーパーソンなのかを把握し、日々の言動をウォッチするのが、知見を広げる近道ですね。先日の書評でも触れましたが、こういう状況でも世界経済は米国主導であることには変わらないので、中田安彦氏「ジャパンハンドラーズ」などを読むと、誰の言動をフォローするべきかヒントをくれますね。
  さまざまな努力を行うことで、国内金融機関なら、個人投資家でもプロと同等か、それ以上のレベルになれるでしょう。1ドル=150円にドルが暴騰すると、真剣に予想する投資ファンドの社長もいるくらいですから、プロといっても底は知れています。彼らは運用実績でなく、手数料などの報酬で稼いでいる人たちですからね。
  ただ、できる限りの武装をしても太刀打ちできないことがあります。それは、政府と一部の金融機関が結託している場合です。というか、それが本来の相場の姿なんですよね。一部の“金持ちクラブ”がすべての投資家の生殺与奪を握っている。
  相場に余裕があった時は、ハッピーな人も多かったので表面化しなかったのですが、これだけテンパってしまうと、市場で大もうけできるのはほんの一握りの人たちで、インサイダー情報がないと利益を上げるのは至難になってしまう。欧米流の金融資本主義の本性が露呈し、限界が見えてきてしまっているのです。
  現在のマーケットの状況は、真実が明るみに出て、欧米が奈落の底へ落ちていってしまう瀬戸際にあるのか、それともだましだましやりながら、何とか活路を見出そうとしているのかといったところです。どちらかというと後者ですかね。
  ただ、いずれかの時点で決着をつける、あるいは決着をつけざるを得ない状況に追い込まれることは必至なわけで、欧米の政治指導者や、金融機関トップは、どう始末をつけるのか、シナリオを描いているでしょう。
  こればかりは個人投資家にはうかがい知ることはできず、わずかなヒントを見逃さず、読み解いていくしかありません。仮に読み解けたとしても、相場が動いた後になってしまう可能性が高いですが。

リーダーとは

  民主党代表選は明日(27日)告示。週明けの29日に党所属の国会議員による投票で選出されます。大きなベクトルで動いているので、日本の新首相がマーケットを動かすとは思えませんが、ちょっとした仕掛けはあるでしょうから、若干の影響はあることでしょう。
  当初は野田佳彦財務相に決まるのかと思われましたが、前原誠司前外相が出馬を表明し、鹿野道彦農相や海江田万里経済産業相も立候補の方向で、混戦模様です。
  こうなると、日本の“宗主国”であるアメリカ様の御意向は、前原総理でしょうかね。米国は前原氏が期待したほど能力を発揮せず、英語も下手で、中国、ロシアの反発が強いので、一度は見限りましたが、ほかに人物がおらず米国にとって「ましな選択」であるということで、前原氏を支持することでしょう。
  また、在日韓国人から献金を受けたという、脛に傷があるので、これが逆にいつでも総理の座から降ろせるということでもあり、総理に担ぎ上げるには、むしろ好都合という事情もあります。
  私は正直、小沢一郎という人物は嫌いですが、彼のふるまいなど人間的に嫌いということであって、彼の政治理念とか、政策については、支持する部分は多いです。特に米国への従属を脱却し、自立した国をつくっていくという点では、長年の日本人の悲願であり、ぜひ頑張ってほしい。地方分権についても同様です。
  鳩山政権下で、米国の年次報告書をつっぱねたことや、米軍普天間飛行場の移転について、正面から疑義を呈したことについて、激しい巻き返しに遭いましたが、評価できることだと思っています。
  先月下旬から金融市場は、緊迫した状況が続いています。日本は欧米と比べ、財政を含め経済状況が健全で、中国、インドなど成長著しいアジアのマーケットと近接しているという、有利な条件に恵まれているので、一時的に、欧米の巻き添えを食らって、困難に見舞われるとしても、力強く立ち直れるものとばかり思い込んでいました。
  ところが、そうは簡単にはいかないようですね。米国の差し金によって、唯々諾々と、大金を投入して為替介入をさせられるわけです。しかも、介入の効果は簡単に剥げ落ち、また、新たな対策を迫ってくる。
  結局、米国は日本を道連れにするつもりなのでしょう。経団連やほんの一部の中小企業の声を聞くと、円高は切実な問題に見えますが、日本全体にとってこれほど歓迎すべきことはない。
  もちろん、日本が抱える米国債などドル資産は目減りし、強烈なデフレ圧力にはなりますが、元々、戻ってくるカネではないのです。米国も踏み倒しが前提で、返すつもりはないでしょう。
  それは仕方ないとしても、もうこれ以上、米国債やドルを買い支える必要はない。そうする義理ももはやないのではないでしょうか。米国と心中だけはごめんです。
  小沢氏が前原不支持を決めたということは、米国に対して決別を宣言をしたにほかならないということです。現在の日本の政治家で、米国との関係をきちんと認識しているのは、小沢氏しかいないといっても過言でないでしょう。
  日米関係は別に特殊なものではありません。帝国と衛星国の関係を歴史的に振り返ると、あり得ることで別に不思議でもなんでもない。ただ、一国が強大な軍隊を世界各地に派遣して、支配するという体制はもはや維持できないし、時代遅れの考え方です。
  日本は米国に過度に依存することから脱却しないといけない。そして、日本の国益を常に考えるべきでしょう。
  先日、紹介した中田安彦氏の「日本再占領」で存分に触れられていますが、日本の官僚機構が自己保身のため、米国に国益を差し出すという、あってはならないことが起きています。
  それを政治主導で、あるべき姿に戻すのが、政治家の役割ではないでしょうか。これは誰がリーダーになっても重要なポイントです。リーダーを変えることですべてが直ちに解決するとは思いませんが、少しずつでも前進できるような人にリーダーになってほしいと切に望みます。

金投資は有効か?

  金価格が連日のように史上最高値を更新。押し目があれば、一度、整理しておこうと思っていたのですが、全然押し目が入らず、タイミングを逸してしまい、はっきり言って「何をいまさら」なんですよね。私は3年ほど前から定期預金のつもりで金積み立てを毎月、コツコツとやっていますが、最近の暴騰に次ぐ暴騰でそこそこ利が乗っています。
  まず、金投資の基本を確認したいと思います。なぜ金に投資するかというと、歴史的にみて、価値が安定しているので、有事に備えての安全保障目的なんですよね。利子がつくわけでも、配当が出るわけでもない。
  最近になって、テレビのワイドショーやニュース番組でも、御徒町あたりの金業者に、使わなくなったアクセサリーを売ったら、高く売れたみたいな特集をやっていますけど、値上がり益を期待しての利殖目的で金投資するのもお勧めしません。
  この数週間の金融市場のドタバタぶりをウォッチしていて、現実味を増しているなぁと思うのは、「ハイパー・インフレ」が起きる可能性ですね。目下、マーケットが注視しているのは、週末のジャクソン・ホールでのバーナンキFRB議長の講演で、QE3について踏み込んだ発言がでるかどうかですが、市場参加者が期待するほどの中身になるかどうかは別にして、何らかの追加金融緩和の方針を示唆するのは間違いないと思います。
  すでに、ドルを刷りまくって、子供銀行券くらいの価値しかないのに、さらに紙切れを追加投入するわけですから、資源価格をはじめ、貴金属、レアメタル、穀物など、実物の価格が上がるのは間違いないでしょう。米国は越えてはいけない一線を越えてしまうのです。
  日本は、対ドル、対ユーロで円高なので、かなり有利な状況なのですが、悲しいことに米国に逆らえない立場なので、ドルや米国債を買い支えなければならず、こちらも追加の金融緩和を強いられるので、円もじゃぶじゃぶになってしまう。結局、米国の巻き添えで、インフレは避けられそうにありません。
  円高で、ドル建てで金を買うのに比べ、円で買う方が幾分、安く買えるわけですが、それでも円建ての金価格はかなり高水準にある。換言すれば、それだけ円の価値も下がっているということです。現時点ですでに円も、インフレに毒されているのです。
  このような状況なので、資産を金で持つことは基本的には有効であると考えられるのですが、現在の価格水準が金を買うタイミングなのかどうか、見極めるのは非常に難しいです。
  米国がドル価格を防衛するため、金のETFを売って、価格を抑えるのではないかという見方が、1年以上前から出ていますが、そんなことはものともせず、一貫して、上昇基調を続けています。
  時々、米国の某著名投資家から「金が上昇するの理由がわからない」みたいな発言が出てきますが、押し目買いしたいのか、あるいは、空売りして踏みあげられているんでしょうね。
  現在の金価格が、投機あるいはドル価格の低下によるものなのか、実需に基づくものなのか、ちょっと見えません。以前にも触れた通り、中国人やインド人は、歴史的に金を重視するので、経済成長に伴って需要が増大していることは間違いありません。
  米国はETFを使って、市場操作ができると考えているフシがありますが、実需に裏付けられた価格を覆すのは難しいでしょう。金相場をコントロールできないということは、米国の力が相当落ちているということの証左でもあります。
  今から金投資をするのは、価値が目減りするリスクを相当覚悟しなければなりません。とりあえず、資金の4分の1くらいを使って買ってみて、下がったら、何回でもナンピンするというスタンスがいいでしょうね。株式投資でもそうですが、買ったとたんに下げるというのは、よくあることです。だからじっと我慢するしかないわけです。
  まあ、現在のユーロ、ドルを取り巻く情勢を考えると、半年以内に何らかの大きな動きがあるでしょうから、「保険」のつもりで買ってみるのもいいでしょうね。保険といっても、掛け捨てではなく、実物資産として残るわけで、おそらく100年後も価値のある資産であり続けることでしょう。そう考えると、紙切れに投資するよりは有意義だと思うのですが。

働けど働けど

  20日付の日本経済新聞で、ドル・円相場で、円が史上最高値をつけたことについての、大企業トップの反応がまとめられていました。
  その中で、スズキの鈴木修会長の「働けど働けど、一向に報われない心境だ」という、コメントが目を引きました。さすがに円高もこの水準になると、輸出企業はかなりの苦境だと思います。
  ただ、1ドル=70円台は単なる通過点にすぎません。ドルの実質的な価値は、ゼロに等しい。世界最強の軍事力を持つので、ゼロは言いすぎだとしても、政府、民間部門合わせて、人類史上最悪の赤字を抱えていることを考えると、20~30円くらいでしょうか。まあ、今なお基軸通貨として通用するので、色を付けて40~50円くらいですかね。
  だから、まだまだ円高は続きます。企業トップは、もうそろそろ泣き言ばかり並べたてるのはやめて、腹をくくってほしい。今までの円高とはまったく意味合いが違うのです。
  これから未曽有の大恐慌に陥るのですから、中途半端な円高対策なんて、大海の一滴、焼け石に水でしかないし、国内の富を簡単に吹っ飛ばしてしまうことになるのです。
  まだ、非常時という意識がないから、平時の対策を求めるのでしょうね。むしろ、ドルを暴落させるだけさせた方が、分かりやすいのではないでしょうか。そうした方が、企業を延命させるための非常手段もとりやすい。
  さすがに、米国が国家破綻すると、国内の金融機関も、ちょっと傾きかけの事業会社も、あおりを食らって、経営危機に陥るところが続出すると思います。そういうところは、期限付きで救済すればいい。米国がAIGやシティ・グループ、GMを救済したように、日本が、エルピーダ・メモリや日本航空に公的資金を投入したようになりふりかまわずやればいい。
  おそらく、世界中で同じようなことが起きるでしょう。一時的に、企業を国家管理することによる、統制経済のような様相になるのではないでしょうか。これは嵐から身を守るためにやむを得ないと思います。
  元はといえば、破産状態の米国を延命させてきたからこういうことになるんですよね。資本主義の最大の利点は、経営が立ちいかなくなった企業を倒産させるところにあります。そうすることで、健全な企業が生き残り、また、新しい企業が生まれ、新陳代謝ができる。
  ところが、40年前にすでに破産していた米国がしつこく操業を続けたことで、病気を抱え込むことになってしまった。延命措置の一つとして、日本による為替介入や米国債が行われたわけです。
  そして、それはむなしい努力だった。結局、抱え込んだドルや米国債はどんどん価値が下がり、結局は紙切れに帰してしまったのです。
  それが日本にとってはデフレ圧力となり、まさに「失われた20年」となった。米国をさっさと見捨てていれば、一時的に苦難はあったものの、今よりまともな状況になっていたはずです。「働けど働けど」楽にならなかったこの20年。そろそろ、この構図に気づくべきですね。
  昨日はフジテレビ前で、かなり大規模なデモがあったようですけど、誰か霞が関や虎ノ門の米国大使館前で「米国債を売ろうよデモ」をやらないですかね。ぜひ駆けつけるのですが。