東日本で大地震が11日に発生して以降、荒い値動きを繰り返している外国為替市場。17日早朝、円相場は1ドル=76円25銭まで急騰し、1995年4月19日に付けた最高値(79円75銭)を16年ぶりに更新した。未曾有の大地震に見舞われた日本の窮状に国際金融の面から手を差し延べようと、主要7カ国(G7)も素早く連携。翌18日朝に緊急で開いた財務相・中央銀行総裁による電話会談で円高阻止に向けた為替介入の協調策で合意した。
タイミングを合わせて実施した政府・日銀による約半年ぶりの介入も奏功し、円はその後、81円台まで押し戻された。
G7電話会談の声明では、「日本における悲劇的な出来事に関連した円相場の最近の動きへの対応として、日本当局からの要請に基づき、米国、英国、カナダ当局、および欧州中央銀行は、日本とともに為替市場における協調介入に参加する」と明言した。
3月16日のニューヨーク市場で、円相場が一時1ドル=76円25まで急騰し、1995年以来の最高値を突破した。東日本巨大地震に端を発した日本経済の混乱は、世界経済にもじわりと影を落としつつある。
世界同時株安に、急激な円高相場。今後の日本経済、そして世界経済をどう見ればいいのか。クレディ・スイス証券の白川浩道チーフ・エコノミストに聞いた。
(聞き手は蛯谷敏=日経ビジネス記者)
—— 16年ぶりに最高値を更新した円相場の動きをどう見るか。
白川 浩道(しらかわ・ひろみち)氏
クレディ・スイス証券チーフ・エコノミスト兼経済調査部長
1983年、慶応義塾大学経済学部卒、日本銀行入行。
加藤隆俊氏
国際金融情報センター理事長
1941年生まれ。64年大蔵省入省、93〜95年国際金融局長、95〜97年財務官。2004〜2010年国際通貨基金(IMF)副専務理事、2010年から現職。著書は「円・ドル・元 為替を動かすのは誰か」
—— 3月16日のニューヨーク市場で、円相場が1ドル=76円25銭まで急騰し、16年ぶりに最高値を更新した。急激な円高の原因をどう見るか。
加藤 日本経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)を反映した動きではない。東日本巨大地震の影響で、今年前半の経済成長率はマイナスの影響を相当受けるだろう。(物流が滞ることなどで)部品が揃わないことから、輸出にもマイナスの影響が見込まれる。
高騰する原油価格。本誌試算では今後、一部業種の株価を大きく押し下げる。きっかけは北アフリカ、中東の政情不安だが、裏で演出したのは投機資金。本当の危機は、原油価格高騰ではなく、急激な乱高下。業績を直撃しかねない。
北アフリカ、中東に広がる政情不安で2月から急騰してきた原油価格が、回復の兆しを見せ始めた日本経済の先行きに暗い影を落とし始めている。
日本が需要の約90%を依存する中東のドバイ原油先物価格は3月4日に1バレル=110ドル23セントと、2011年初から約17%、前年同月比では約50%の大幅上昇となっている。
既に個人向けのガソリン価格や産業用のA重油、ガソリンなどが上昇を始め、連動して電気・ガス料金も4月から7カ月ぶりに大手14社が一斉値上げ。