私がトレードを始めたのは、ネット証券が出始めたころ、書店で立ち読みをしていたら、株を短期売買をして、わずかな値ざやを取ることで、月20万円ほど稼いでいるという方の本を見つけたのがきっかけです。その本は買わなかったので、書名や著者名は分かりませんが、今でも売っているならば、記念に買いたいですね。
まさに短期売買のパイオニアみたいな人で、売買手数料なんかもかなり高い時代だったので、いくら相場のボラティリティーはあっても、短期売買で稼ぐなんていう発想はすごいし、ましてそれを実行して、利益を上げたというのは、画期的ですね。米国やなんかではかなり早い段階で行われていたとは思いますが。
その後、相次いでネット証券ができて、大手、中小なんかもネット取引に力を入れるようになり、売買手数料の値下げ競争なんかもあって、個人投資家にとっては、参加しやすい条件が整いました。
リーマン・ショックで相場が急落したり、株式市場に流入する資金が細って、ボラティリティーが低下したりして、簡単に株取引はできても、相場自体が食えない状況になっていて、個人投資家だけでなく、大手金融機関のトレーダーでさえ手出ししづらい状況になってしまいました。
いまでも勢いのよい株はありますから、そこを狙ってデイトレードする人はいるんでしょうけど、デイトレがブームになった2005年、2006年ごろと比べると、活力は著しく衰えましたね。今、デイトレードや短期売買で本格的に稼いでいる人はそんなにはいないはずです。
短期売買をすることに対して、「楽して巨額の金儲けをしてけしからん」みたいな声もありましたけど、誰でもデイトレードで稼げるわけではないし、稼ぎやすい相場地合いも長続きせず、いい時代なんてほんの一瞬しかありませんでした。
みんなが短期売買に走り出すと、値動きが不安定化して、取引しにくくなるということもあり、狙える利幅も小さくなります。これもまた、市場原理ですよね。参入者が増えるとどうしても、限られたパイをめぐって競争が激化するし、利益も小さくなります。
短期売買が難しくなったからといって、じゃあ、長期的な視点で株やら先物やら、その他の金融商品を長期保有できるかというと、そうでもないんですよね。日経平均にせよ、ドル・円にせよ、堅調になったかと思えば、長続きせず、一気に奈落の底に落とされたりと、相場つきが短期間で変わってしまいます。
それになにより、日経平均4桁なんて、ついこの間までは、信じられないと思われていたのが、すっかりこの水準が定着してしまい、日経平均が1万円以下なら買いだとは言えなくなってしまいました。しかもじりじりと水準を切り下げるので、長期保有なんて危なっかしくて仕方ありません。
欧米はもはやマイナス成長モードに入りつつあり、金融ばくちと不動産ころがしの後始末もついていないので、日本はそのとばっちりをもろに食らい、先行きの見通しは明るくありません。というよりは、欧米の破綻、没落は不可避なので、いかに嵐を乗り切るかという視点しか持てず、長い目で投資しようという気にはなれません。
と言って、ショートで長期保有しようちしても、しつこく下げ止まり、しかもダウなんかは、金融緩和で資金を呼び込んだり、あれこれインチキな不正価格操作をすることで、値を吊り上げるので、安心してショートポジションをとることもできません。
長期投資を封じ込められたら、やはり短期売買に走らざるを得ないわけで、短期売買こそが、個人投資家が財産を増やしたり、保全したりする、究極の知恵、手段になってしまうというわけです。
また、今までと違って時代の変化が早く、企業の経営環境も、1年あるいは半年という短いサイクルで激変するので、安定して成長するなんてことはとても望めなくなりました。そうなると、それに合わせた投資行動が必要で、やはり短期的な視点にどうしてもならざるを得ません。
私の知っている人で、投資信託を800万円分購入し、今では300万円にまで目減りし、今なお保有しているという人がいて、まだ、日経平均が1万円を回復するみたいな淡い期待を抱いているみたいなのですが、あきらめた方がいいでしょうね。
金融商品を何年も放置して、儲けようなんていう考えの方が甘いし、古臭くて通用しない発想です。短期売買でさえ、一生懸命研究したからといって、報われるかというと、そうもいかない時代になってしまいました。善悪の問題ではなく、その場の状況に合わせて、的確な投資手法をとる。個人が生き残っていくには、それしかありませんね。