相場格言に「上昇3日、下げ1日」(のようなもの)があります。基本的には自由(ご承知の通り、実際には政策介入で本当に自由化どうかは大いに疑問があるのですが)に値動きするマーケットでは、大体、前日終値なんかを基準に上昇する日と下落する日を分析すれば、上昇する日の方が多く、おそらくならせば格言通り3:1くらいの比率なのでしょう。
ドル・円や日経先物なんかをウォッチしていると、あまり実感が湧かないかもしれないし、特にこの1年間は迷走する時間帯が長く、当てはまらないかもしれませんが、昨年の東日本大震災直後のパニック的な暴落や、為替介入前後の動きを考えても、下げたのは一瞬で、むしろその後反転、上昇した時間の方が圧倒的に長く、ショートよりもロングで狙った方が安全に稼げたという思い出があります。
買って(ロングで)儲けるというのは、ごく単純で何となく人間の本能的に受け入れやすいものがあると思いますし、以前にも若干触れましたが、大手金融機関やファンドには空売り規制がかかっているので、ショートよりもロングで稼がなければならないという事情があり、それでさっと下げて、上昇させた方が得策という思惑も働くでしょう。
これはテクニカルがどうのこうのというよりは、相場の持つ根源的な性質ですね。ある意味、こうした性質をうまく利用すれば、システムトレードというのも理にかなっているのですが、往々にして、相場の動きをとらえきれません。システムつぶしみたいな動きが必ず出てきますし、先物はほぼ24時間取引になっているので、何を基準に取引すればいいのか分かりづらい部分もありますからね。
こうしたことを踏まえれば、ショートというのがいかに危険な取引か、ギャンブルに近いか理解できるでしょう。2006年から2007年ごろの、日経平均が16000~18000といった高値圏にあった頃は、さすがにいつバブルがはじけるかという時期だったので、ショートの方が稼ぎやすく、私の周囲でも「ショートでしか稼いだことがない」「ロングが怖い」という声をよく聞きました。
リーマン・ショックを挟んで、7000割れまで下げたわけですから、1万円超の下げ幅です。さすがにこういう局面では、思い切ってショートを振っていった方がいいでしょう。ただ、まさにリーマン・ショック真っただ中の11500から7000割れにかけては、1日の下げ幅が1000円超とか、その一方で上げ幅も1000円超を記録するという、パニック状態だったので、うまくショートを仕込んだとしても、安閑としていられなかったでしょう。下値めどもわかりにくかったのではないかと思います。
また、株も為替もそうですが、あまりにも下げすぎたら、必ず政策介入が入ります。本当に実効性があるかどうかは別にして、介入が入ったら、売りに対する牽制になるので、そこからさらに売り進もうとする動きは歯止めがかかり、そこが目先の底になります。一方、上昇しすぎた場合は、大したアクションはありません。せいぜい政策金利が引き上げられるくらいでしょうかね。それに不思議とドル高は牽制されませんし。
しかも、下げる場合は、短期間にそれなりの値幅を伴うのに大して、上昇局面では時間をかけてだらだらと上げます。だから、一回、踏み上げでつかまると、なかなか逃れられず、しかもロスカットのタイミングを逸してしまうことも多いのです。
だから、ショートというのは基本的にやりづらく、よほどうまくやらないと、失敗すれば命取りになりかねません。もちろんロングで失敗するケースもありますが、下げるときは勢いよく下げるケースが多いので、軌道修正がやりやすいですし、ショートに反転すれば挽回できるケースも少なくないです。
ちなみに、昨年の東日本大震災直後に福島原発事故をネタにしたパニック売り(仕掛けたのはおそらく米国勢でしょう)があり、一気に7800まで下げたときは、オプションを仕込んだ人たち(震災前までは11000をトライするかどうかが焦点でイケイケでした)が多額の借金を抱えて撤退し、口座開設先のネット証券会社から、証拠金を吹き飛ばし、さらに損失までこうむったトレーダーが、かなり強引に取り立てを受け、社会問題化しました。
このショックで、先物・オプションから撤退する証券会社も出て、ひまわり証券は、先物・オプションだけでなく、証券部門からも撤退し、FX会社になってしまいました。
東日本大震災の場合は、直後に逃げ場がありましたが、ロングでもショートでも心して臨まないと危ないということです。とはいえ、私が今まで見てきた中では、ロングで失敗するよりは、ショートで踏み上げられて、資金を失っ撤退というケースが極めて多いです。
ショートはリスクがあるということを踏まえつつ、当面(今後1~3年)の大目標は、欧州が連鎖して国家経営に行き詰まり、最終的に米国が国家破綻というところにあります。だから、それをうまく利用してショートでボロ儲けすることを照準としなければなりません。そこへ至る道は曲折、多難が予想されますが、総合力を結集して、臨まなければなりません。