国際的観光地になれるか 小江戸・川越
先日、つけ麺店紹介でも書きましたが、昔ながらの建物が残り、風情があるということで「小江戸」として売り出し中の観光地・川越に行ってみました。
歴史には関心がありますけど、「川越」と聞いても、正直、今ひとつピンとくるものはありません。地元で郷土史を学んだ人や、より深く日本史について研究した人にとっては、受け止め方が違うのでしょうけど、私としては、興味をそそられる対象としては、オーソドックスに大阪や奈良の古墳群であり、平城京、平安京だったりします。
何より、これはあーだこーだ言ってみたところで仕方のないことですが、世界史レベルでみると、日本の歴史などスケールは小さいものです。メソポタミア、中国と比べると、日本の歴史(文章でしっかり記録されたもの)が始まったのはずっと後で比べるべくもないし、紀元前にすでに高度な政治機構が出来上がり、すぐれた政治思想、哲学、文学などが確立していたギリシャ、ローマもしかり。
ユーラシア大陸をまたにかけたモンゴルは、まさに「世界史」というものを確立したダイナミズムがあるし、世界の辺境へと向かい、“世界統一”を実現した、欧州やその後の米国の動きは、日本列島という小さな枠内でだけ大騒ぎをし、それこそ「コップの中の嵐」にすぎない日本史とは、発想の大きさが違います。(もし「宇宙史」というものが存在するならば、世界史レベルの動きでさえ、地球上である特定のカビ菌が一時的に繁殖する程度ものなのでしょうけど)
だから、あまり大上段から「歴史」を前面に出されても、引いてしまいますが、日本はこれから“観光立国”として、大々的に売り出していくそうですから、全国各地で世界遺産や史跡、風景、地形、B級グルメなどなど、いろんな観光資源を発掘し、PRしていくのでしょうけど、多くの人の興味をひきつけ、地域自立に結び付くようなものはどのくらいあるのか? 興味のあるところです。
川越のアドバンテージは、何と言っても東京から近いことですよね。先日も書きましたが、池袋から東武東上線で約30分。ほかにやや時間がかかりますが、西武新宿線で急行が1時間弱、観光気分を高めたい人は、特急列車(小江戸号、所用45分)も運行しています。JRは新宿から約50分ということです。
東京から近くて、日本の古い建物を見られるというのは、確かに外国人旅行者にはいいアピールポイントだと思います。
また、何より、人口と経済力のある首都圏にあるのも大きいですね。いくら外国人観光客の掘り起こしに努めても、その時々の経済情勢や東日本大震災のような突発的な出来事があれば、変動も大きいでしょうから、手堅く集客が見込める層をきちんと固めておくことはとても大切です。東京ディズニーランドが長続きしている大きな要因でもあります。
西武の本川越駅前の有名つけ麺店「頑者」で食事をした後、早速、古い建物が集まる観光スポットへ向かったのですが、江戸時代から明治、大正、そして戦前の古い蔵や商店、民家などが1キロ四方ほどのエリアに集まり、「古い建物がこんなに残っているものなんだ」と驚きました。
歴史的な建造物は現在も、商店として利用されていて、地元特産の芋を使った和菓子とか、観光客向けの土産品、特産品店、食堂、そば店、喫茶店が多いのですが、理髪店や米穀店、種苗店といった地元の人が利用するお店もあって、地域の人も足を運べる街並みになっています。
世界的にどこの観光地も、大手の資本がおいしいところをほぼ独占していたり、地元の観光業者にしても、地域住民との接点がなかったりするので、川越の実態をつぶさに観察したわけではないので、軽々には評価できないのですが、近くに住む人たちも、観光客も幅広く集まり、交流できる街づくりという視点は大切ではないでしょうかね。
嫌なのは観光地だけが一部の利権集団に囲われてしまって、地元から乖離して浮き上がってしまっているパターンです。誰のための何のための観光開発かよく分かりません。恩恵は地域に広く行き渡るのが、雇用や地域の安定という意味でいいと思いますけどね。
時間の関係で、駄菓子店などが集まる、菓子屋横丁はスルーしてしまいましたが、個人的には食べ歩きできるような物が売っていればよかったですね。芋を使ったソフトクリームはありましたが、団子なりせんべいなりコロッケなりクレープなりあればよかったです。
川越にもB級グルメがあるようで太麺の焼きそばが有名なのだそうですが、歩いても食べられるような工夫をすれば面白いのではないでしょうかね。ただ、焼きそばをご当地グルメとして売り出す地域は全国あちこちにあり、以前横手焼きそばやら、富士宮焼きそばやらを食べ比べたことがありますが、正直、大きな違いが感じられず、もうひとひねりするか、別の地元食材を使った、グルメを開発しても良いのかなという気もします。
あと、メーンの古い建物が建ち並ぶ目抜き通りは、西武の本川越駅前から続く、路線バスなんかが通る幹線道路で、車がひっきりなしに通り、気を抜くと危ないです。写真もゆっくり撮影できません。車両をシャットアウトすればいいのではと単純に考えてしまいますが、地元の人は困るでしょうから、ここは、何とか知恵を絞れないものかと考えてしまいますね。
歴史的な建物とはいっても、もっとも古い建物でも1700年代なので、京都や奈良の歴史のある神社、仏閣などと比べるとやはり見劣りします。
外国人にとっては、ちょっと昔の日本が見られるということで、軽いノリでアピールするのもいいかもしれませんが、目が肥えている人をひきつけるのは、やはり、ちょっと苦しいかもしれません。世界に「カワゴエ」をアピールしようにも、所詮は郷土史の範疇ですからね。
せっかく空襲や大火事を逃れて、いろんな建物が残っているのだから、日本の建築史というか、学術的にいろいろと研究して、成果を展示する施設があってもいいのではないかと思います。世界的に注目に値すべきものがあるかどうかは分かりませんが、アカデミックなものがあれば、川越を訪れる価値が増すのではないでしょうかね。
古い建物が集まるエリアから約1キロ離れたところに川越城があり、徒歩で周辺を散策した後、川越大師を参拝。悪魔のささやきに誘われ、おみくじを引いたら、今年4度目の「凶」を引いてしまいました。出てきたおみくじの棒に書かれた番号は「八十八」で、「末広がりでいいことがあるかも」と思ったら、そんなに甘くはなく、「凶」でした。
せっかく、ゴールデンウイーク中に鎌倉の鶴岡八幡宮で「末吉」を引いて、連敗を止めたのに、何やってんだか。これだけ立て続けに「凶」ばかり引くのは、やはり異常ですね。おそらく何かのお告げだと思うのですが、渦中にいるとなかなか気付かないもので、困ったことです。すっかりへこまされて、西武線に乗って帰途に就きました。余計なことしなければよかった。