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自動車の未来~東京モーターショー2011⑤ 国内メーカー・マツダ・富士重工業・三菱自動車

  日本には一生懸命頑張っている自動車メーカーがまだまだあります。世界規模で生産、販売網を持ち、豊富な研究開発費を武器にグローバル競争での勝ち抜きを目指すメーカーがある一方、独自の技術やアイデアで、規模は小さくてもユニークな個性を発揮する会社もあります。
  日本のいいところは、多様性が維持されていることですね。勝ち組の一握りの者が、すべてを独占するのではなく、規模が小さく劣勢にある者も共存しています。もちろん勝ち組でない人たちは苦しい状況にはあり、円高や欧米の金融危機も追い打ちを掛け、存亡の危機と闘っているわけですが、苦境を乗り越え、独自の進化を果たしてほしいと思います。


  ハイブリッドでも電気自動車でもない、“第3の道”を目指すのか、マツダの動向は目が離せません。マツダのコンパクトカー「デミオ」は、「スカイアクティブ」という切り札の技術で、マイレージが30キロ/リッターで、同クラスのハイブリッドに肩を並べるレベルです。
  こうなると、わざわざエンジンを積み、さらに電池とモーターをのっけるのがバカバカしくなります。構造が複雑で、エンジンとモーターを制御するソフトの開発が必要になる分、開発費も割高になるでしょうからね。
  欧州勢の展示を見ていても同じようなことを感じたのですが、日本メーカーはハイブリッドに安住して、エンジンの開発がややおろそかになっているのではないかということです。
  数年前に自動車部品をつくっている、ある中小企業の社長に聞いたことがあるのですが、「中小企業の技術を結集すれば、エンジンの燃費は2倍にすることも不可能ではない」と。正直、話半分で聞いていましたが、あっさりとマツダが高性能のエンジンを生み出したことを考えると、難しいことではないのではないかという気がしてきました。




  注目したいのは、「CX-5」ですね。スカイアクティブのガソリン車に加え、クリーンディーゼル車もラインアップに加わります。
  日本、米国では劣勢ですが、欧州市場で強いマツダならではですよね。トヨタ自動車がいすゞ自動車と提携し、中小型車向けのディーゼルエンジンの開発を目指したものの、はかばかしい成果を挙げられないままであるのに対し、独自にディーゼルエンジンに挑戦する姿勢は面白いし、日本企業の底力を見せてほしいと思います。


  残念なのは、「RX-8」。世界で唯一のロータリーエンジン車でしたが、来年6月で生産を終了する予定です。ロータリーエンジンは、水素を直接燃焼できるという利点もあり、一つの可能性を示したわけですが、高い技術と市場の求めるニーズの間には大きなギャップがあったようです。
  ロータリーを完全に捨てるわけではないでしょうから、マツダには、エンジンの可能性を徹底的に追及してほしいですね。




  コンセプトカーも目を引きました。「雄(TAKERI)」。ミニバンやSUV、ワゴンタイプ、コンパクトカーなどが主流になり、各社ともセダンに力点を置く比重が下がりつつありますが、グローバル展開を考える上でも、セダンの開発は重要だと思います。韓国・現代自動車なんかは、米国市場向けにするどいところを突いてきていますからね。
  トヨタ、日産自動車、ホンダにはない視点、選択肢を示している点で、マツダの姿勢には非常に好感が持てました。


  富士重工業は、試練に立たされている会社です。元々はここも技術力に定評にある会社なのですが、研究開発費の問題で、低燃費競争からは脱落し、米ゼネラル・モーターズが放出した株式の一部を引き受けて筆頭株主となったトヨタとの関係で、どう活路を見いだせるかがポイントですね。
  レガシー、インプレッサ、フォレスターと、魅力的な車はあり、それなりの市場ニーズもあると思うのですが、販売網と認知度ですよね。東京なんかでは想像できませんが、雪深い北海道なんかでは、4輪駆動車が求められるので、「スバル」の存在感はかなり高いです。レガシーなんか使い勝手いいですからね。






   トヨタと連携して、スポーツカーに力を入れる路線は面白いと思います。トヨタの「86」が、昔の車づくりに引きずられて、ちょっと野暮ったい感じに仕上がったのに対して、スバルらしさをどう打ち出すか? 車のデザインとか、独特のセンスがある会社なので、欲しいと思える車が出てくるのではないかと、ちょっと期待しています。




  三菱自動車。この会社も技術に自信を持つ会社です。かつては現代自動車に技術を教える立場だったんですけどね。今も技術陣は精鋭ぞろいだとは思いますが、何せ経営が安定しません。自動車関係のジャーナリストと話すと「マツダとくっつけばいいのに」という声が多く聞かれますが、難しいでしょうね。
  マツダは三井住友と関係が深く、三菱はその名の通り、見捨てられつつありますが、三菱グループですからね。残念ながら、そこは冷徹な資本の論理が貫かれることでしょう。


  日産やホンダは、ダウンユースの電動自動車をコンセプトとして出してきましたが、三菱の「i-MIEV」はすでに具体化しています。
  環境への配慮をアピールするために、事業所なんかで導入するところが増えているようですけど、今後は一般のユーザーに浸透できるかどうかですよね。
  タウンユースならば、自宅に充電できる設備があれば用は足りるとは思いますが、街中で充電できないというのは心理的に普及のネックになることでしょう。
  日産同様、スマートハウスの展示がありました。これはすでに触れたことですが、車のバッテリーと家庭の電源がリンクするのは、なんとなく不自然で、実用的ではないと思います。自動車の用の電池が高性能、低価格化する頃には、家庭用の蓄電池も普及しているでしょうしね。
  
  
  

自動車の未来~東京モーターショー2011④ 国内メーカー・ホンダ



  ちょっと前までは、ホンダというとグローバル企業の象徴で、トヨタ自動車や日産自動車とはちょっと違った社風で、車に乗る楽しさや走りにこだわりたいユーザーの心をがっちりつかんでいるメーカーというイメージがありました。トヨタが国内で圧倒的なシェアを固める中で、「無党派層」の受け皿みたいな感じでしょうかね。「大阪維新の会」とか、勢いがあったころの「みんなの党」のような存在ですね。 






  ホンダの展示スペースも、トヨタ、日産に勝るとも劣らず盛況でした。ただ、残念なのは、トヨタもそうでしたが、スペースに限りがあるので仕方ないとは思いますが、係員の人が展示を見てもらうというよりは、混乱が起きないように人をさばいていると姿勢が感じられたことです。
  日産は、客の動線を考えた、展示スペースの配置で、「見てもらおう」という心意気が伝わってきただけに、惜しいですね。期待していただけにホンダの対応は非常に冷たく感じました。
  どのメーカーも、イベント専門の業者のアドバイスなんか受けていると思うし、モーターショーに精通している社員も多いと思うのですが、人が多くて時にはパニックのような状況になる中で、いかに楽しんでもらうか、メッセージを伝えるか、考えた方がいいと思います。しかも私が訪れたのは比較的人出の少ない平日ですからね。
  この辺も金融資本主義の弊害というか、それなりに人を集めて、イベントを無難にこなしたいという意図が見え隠れします。もっと素朴な思いとかアピールしてもいいと思いますけどね。
  ホンダも、ハイブリッドの先行メーカーなので、乗用車はやはりハイブリッドに重点を置いています。コンセプトカーもプラグインハイブリッドがメインでした。電気自動車も出していましたが、PHVの方がインパクトがありました。
  古くからF1をはじめ、モータースポーツに積極的に参加しているメーカーだけあって、内燃機関に対する思い入れというのも強いというのもあると思います。
  二輪車のコンセプトカーの方は、電動でしたね。二輪車なんかは、逆に電動にするメリットも大きいでしょうから、電動をもっと前面に押し出しても面白いのではないかと思います。


  ホンダのブースを見ていて、「どんな車があったっけ?」と思わず、逡巡してしまいました。売れる車は出していても、最近はやや存在感が薄くなったような気がします。トヨタのカローラに対してシビック、コロナやカリーナといったミドルクラスのセダンに対してはアコード、ヴィッツに対してフィットと、リーディングカンパニーに対して、常に別の選択肢を提案し、野暮ったいイメージのトヨタ車に対して、若々しく軽快なイメージをふりまいていました。
  市場の評価は、トヨタ車の方が故障が少なく、造りがしっかりしていて、私もホンダユーザーだったことがありますが、スタイルはいいのですが、ボディーが薄っぺらく、やや安っぽい感じがあったのですが、それでも、根強い支持がありました。景気の良かった時代は今の携帯電話みたいに2~3年で車を乗り換えていましたからね。
  国内市場が縮小する中、「選択と集中」が進み、売れる車に特化した結果、トヨタと真正面から対抗する姿勢が失われた感があります。


  ただ、海外では二輪メーカーとして、知名度が確立していて、これは欧米の自動車メーカーを含めて、ほかにはない(スズキがありますけども)、ホンダならではの強みですね。
  ベトナムなんかに行くと、排気量の少ない、スーパーカブをはじめ、ミニバイクの総称が「ホンダ」だし、欧米なんかだと、中大型バイクの代表的なメーカーとして認知されています。
  リーマン・ショックで、主要メーカーが軒並み、それまでのバラ色の販売計画と、業績の大幅な下方修正を迫られましたが、ホンダは乗用車では痛手を被ったものの、二輪車があったおかげで、ダメージが緩和されたのが今でも印象に残っています。
  最近のホンダを見ていると、株主構成からして仕方ないのでしょうけど、「無難に」「手堅く」といった姿勢が目立ちます。
  先日の大阪知事選、市長選の結果で表れたように、一般の人は、そろそろ閉塞感に対して、何か変えたいと思っています。トヨタ、日産ではない、常に“第3の道”で、ユーザーの心をつかんできたホンダだからこそ、できることがあるのではないか、と期待するのは過大でしょうかね。欧米、日本、韓国の主要メーカーにはないポテンシャルを秘めた会社であることは間違いないと思います。何か一つでもとんがったものをアピールしてもいいのではないでしょうかね。




  ホンダの展示スペースがある一角は、カワサキやヤマハといった二輪車メーカーが集まっていました。このことなんかも、ホンダがユニークな存在であることの証左だと思うんですけどね。
  従来の価値観にとらわれない、独自の存在であり続けてほしいと思います。



自動車の未来~東京モーターショー2011③ 国内メーカー・日産自動車



  今回のモーターショーで一番、アトラクティブだったのは日産自動車でしょうね。トヨタ自動車がいい意味で横綱相撲、ちょっとうがった見方をすると、放っておいても客が入るみたいな殿様商売だったのに対し、魅せるプレゼンテーションで引き付けようとしたのが印象的でした。
  これは経営トップや社風の違いでしょうね。グローバル化が進んだとはいえ、純日本的な経営方針のトヨタ、外資が入り、トップも外国人が就き、経営方針も欧米流のスタイルが色濃い日産、日本的なやり方を残しつつ、独自のやり方でグローバル展開を目指すホンダ。それぞれ個性的ですね。


  カルロス・ゴーンCEOに対する評価は様々ですが、一時期、瀕死の状態だった日産が復活したのはまぎれもない事実です。
  もちろん、リーマン・ショック前のバブル時代だったからこそ、うまくいったという側面もあるし、日産が売れる車を次々に出して回復したというよりは、リストラの断行と、世界的に自動車市場が拡大する中で、それなりにその恩恵を受けたという部分は大きいでしょう。
  ただ、日本人だと思いきった、外科手術が可能だったかどうか? 荒療治をとらなければ、日産はつぶれていた可能性が高いし、それを回避し、V字回復を成し遂げたゴーン氏の手腕はやはりしかるべく評価すべきでしょう。






  日産が大々的にアピールするのは、やはり電気自動車ですね。ハイブリッド車の開発では、完全に出遅れましたが、元々は技術力に定評のある会社です。ハイブリッドはトヨタとの提携でやり過ごすとして、一足飛びに電気自動車で先んじようという戦略のようです。
  日産のプレゼンテーションはまさに“ショー”でしたね。自動車ショー会場で、公開放送をしていたTOKYO FMのDJが面食らったような様子で、日産の展示について話していました。




  プレゼンテーションには二重三重の人垣ができていて、ゆっくり見るということはできませんでしたが、無人自動走行で車庫入れしたり、電気自動車のシンプルな構造を生かし内輪差を少なくして、Uターンがしやすくなるなど操作性をアピールしたり、携帯電話との連携で自動的に車庫から車を出したりと、華やかなパフォーマンスの一方で、かなり具体的な提案をしていました。
  電気自動車のメリットというのは、燃費とか環境性能に目が行きがちですが、いろんな可能性があることがわかるいいプレゼンテーションだったと思います。
  ただ、電気自動車が主流になるということは、自動車の構造がシンプルになり、製造しやすくなるということでもあります。だから、家電業界同様、競争と価格下落圧力が強まり、電気自動車メインの時代になれば、果たして、今のような形で自動車メーカーが存続しているのか疑問な部分もあります。
  みんな薄型テレビは未来のテレビ、夢のテレビと思って、一生懸命開発競争をしたのですが、ブラウン管テレビと違って簡単につくれるため、過剰生産と値崩れで、NEC、富士通、三洋と相次いでテレビ事業からの撤退を余儀なくされました。日立も事実上、テレビ事業から手を引き、パナソニック、ソニーも縮小の方向です。
  電気自動車というのはいろんな意味で自動車の“家電化”ですよね。そういう危険な部分もあることをメーカー自身がどう認識しているのか?
  構造が複雑だからこそ、日本のモノづくりの真価が発揮できるわけです。ブラウン管テレビ、ラジカセ、ヘッドホンステレオ、オーディオ機器、VTRなどが主流の時代、日本の家電メーカーは輝いていました。
  その構図が分かっていれば、ハイブリッドでとどめておいた方がいいというのが、本音ではないでしょうかね。




  電気自動車の高容量のバッテリーを利用した、スマートハウスの提案もありました。最近は太陽光発電や家庭用燃料電池で、自家発電できるようになり、電気が余ったら売り、足りなくなったら受電することになり、送受電網への負担が増すため、効率的に発電と送電のバランスを取る「スマートグリッド」の研究が世界的に進んでいます。オバマ大統領のグリーン・ニューディールの肝の部分でもありますね。
  ただ、太陽光発電をはじめ、新しいタイプの発電量などたかだか知れており、ベース電源は火力や原子力に依存するという構造は変わるとは思えず、単に電気の供給体制を混乱させるだけなのではないかと、個人的には考えますが、いろいろと利権がからむので、そういう人たちの後押しを受けて、強引に推進されるのでしょう。
  東京電力福島第1原発の事故もあり、電力の供給体制については、こうしたスマートグリッドの進展と合わせて、今後、議論が活発化するのでしょう。
  まあ、家庭に電力を供給するために自動車のバッテリーを使うのはあくまでも災害時のような非常時であって、ありえないと思いますけどね。
  自動車に積むようなバッテリーが高性能化、低価格化すれば、家庭用のバッテリーも普及しやすい状態になるような気がします。
  夢物語だけでなく、商売人としての計算、将来予想も必要なのではないかなと思うのですが。

自動車の未来~東京モーターショー2011② 国内メーカー・トヨタ自動車

  リーマン・ショック後、せっかく立ち直りかけた国内自動車メーカー各社の業績でしたが、東日本大震災でサプライ・チェーンが寸断し、数カ月にわたり生産に支障が出ました。さらに追い打ちを掛けるようにタイ洪水。欧州財政問題に端を発する金融恐慌も間近に迫り、まさに試練の時を迎えています。
  日本のものづくりをリードし、輸出の稼ぎ頭である自動車産業ですが、二重苦、三重苦を乗り越えられるか、真価が問われます。


  こういう時だからこそ、夢や希望など、前を向いた展示を期待したいところですが、トップ・メーカーのトヨタ自動車のスローガンは「Re BORN」。再生、とか新しく生まれ変わるという意思を込めたのでしょうが、後ろ向きなイメージを持つのは私だけでしょうか?
  「ドラえもん」をテーマにした実写版コマーシャルが話題になっていますし、それなりに面白いと思いますが、業界をリードする会社が、パロディーに走るというのは、国内自動車産業の苦境ぶりがうかがえます。
  ストレートに、新しい価値を打ち出し、心を動かすような車を見せてほしかったですが、トヨタという会社自体が保守的な会社なので、難しいでしょうかね。




  でもさすがは堅実な社風のトヨタです。要所はきちんと押さえた展示でした。プラグイン・ハイブリッドと、コンパクトカーのヴィッツクラスのハイブリッドタイプ戦略車「アクア」がまず目を引きます。さらには今後、販売が本格化するプラグイン・ハイブリッドの「プリウス」。さすがにハイブリッドの先駆メーカーだけあります。
  まあ、アクアにせよ、PHV型プリウスにせよ、すでに知られているので、目新しさはないのですが、モーターショーで大々的に展示することで、トヨタの戦略と本気度が分かります。


  脱ハイブリッドということになるのでしょうか、都市での移動をコンセプトにした、電気自動車のコンセプトカーもありました。
  内燃機関を動力とする自動車は今後も主流となるのか、それとも、モーターと電池の比重が高まるのか、メーカー自身も見極めがついていないのではないかと思います。
  ただ、現在のモーター、電池の性能だと、電気自動車はママチャリ感覚ですよね。電動アシスト自転車の延長上みたいな。高速道路を走ったり、信号の少ない郊外、起伏のある道を走るには、まだまだ物足りないのではないでしょうか。
  ハイブリッド、プラグインハイブリッド、電気自動車のいずれにも対応できるのが、トヨタの強みですね。技術の厚みもあるし、市場のニーズや、技術のブレークスルーに合わせて、機動的に展開できるでしょうね。
  米ビッグスリーが巻き返し、欧州勢も環境対応に力を入れ、韓国勢、さらには中国勢も気になりますが、今すぐ商品化できるメーカーは、トヨタのほかにまだないのではないかと思います。


  各社とも思い切った、コンセプトの提案が乏しい中、チャレンジとして評価したいのは、車体の色が変化する「Fun-Vii」です。
  車の色は、買う時に一度しか選べませんが、これだとボディーカラーの可能性は無限に広がりますね。海のものとも山のものとも、分からないアイデアな感じもしますが、若い世代には受ける可能性があります。
  ハイブリッドとか、低燃費車とか、ローエミッションとか、車の性質がどんどんおとなしく、優等生化する中、何に楽しさを見出すかという意味では、重要な提案かも知れません。


  トヨタが久しぶりに出したスポーツカー「86」もばっちり展示されていました。かつては「スープラ」「セリカ」など、人気を博しましたが、今や売れ筋はミニバンやSUV、コンパクトカー。時代の変化を感じさせます。
  今後は、スバルとの共同開発による第2弾、第3弾のスポーツカー開発も予定されているようですが、固定ファン層はいるにしても、どれだけ新たな顧客の心をつかみ、売れるかは未知数ですね。
  余裕のあるトヨタだからこそできることでしょうけど、金融恐慌に突入すれば、真っ先に割を食うセグメントでもあります。






  レクサスはあまり細かく見ませんでしたが、歴史的な円高が続き、まだまだこの勢いはとどまりませんが、日本から輸出して売れる車はレクサスしかありませんね。
  恐慌だろうがなんだろうが、金持ちの富裕層は車にカネをかけます。円高もなんのそのです。日本経済を考えると、一番重要なのは、利幅の薄いハイブリッドやら電気自動車ではなく、レクサスのような高級車部門ですね。
  日本の技術力がいかんなく発揮できる分野でもあり、欧州勢に負けず、存在感を示してほしいです。




パール・ハーバー

  12月8日は真珠湾攻撃の日。ちょうど70年前のこの日、日米開戦の発端となり、日本にとっては米国に“永久”占領されることになる、第一歩を踏み出した出来事といっていいでしょう。
  旧日本軍による真珠湾攻撃により、それまで戦争に消極的だった、米国の世論が一気に、主戦論に傾くわけですが、2001年の米中枢同時テロ同様、いかにも絶妙なタイミングで事は起きました。「米国の挑発に乗って日本は戦争に引き込まれた」という説がありますが、大筋で当たっているでしょうね。
  そして、真珠湾攻撃についてもあらかじめ当時のフランクリン・ルーズベルト大統領ほか、米政府首脳は予見していたというのは真実でしょう。米国は「戦争がしたくて仕方がなかった」のです。
  だからと言って、“無理やり”戦争に引きずりこまれた日本に理があるかというと、必ずしもそういうわけでもありません。日本国内でも世論は好戦的だったし、陸軍を中心に戦線拡大をもくろむ動きがありました。
  日本国内の世論が日米開戦に好戦的だった伏線として、日露戦争に(一応)勝利したにもかかわらず、大した対価(賠償)を得ることができず、国民のフラストレーションがたまっていたことがあります。また当時、日本が保有していた中国大陸の権益に対して、米国が執拗に放棄を求め、厳しい要求を日本に突き付けており、米国に対する不信、不満が高まっていました。
  また、黒船が来て、“尊王攘夷”を旗印に江戸幕府倒しに動いたわけですが、明治維新は現実路線を選択し(真実は英国にあやつられて)、尊王は維持したものの、“攘夷”は捨てて、近代国家建設に走り、国民が不条理な思いを抱えたままであったこともあり、欧米の世界支配に対する抵抗という側面もあったと考えられます。
  だから、太平洋戦争は、むしろ日本人が望んだ戦争(もちろん反対姿勢を貫いた人も少なからぬいますが)であって、一般の米国人の方が消極的だったと言えると思います。
  日本人は日清戦争、日露戦争、第1次世界大戦と勝ち進んで、自信過剰になっていた面もあるでしょうね。向う見ずに太平洋の向こうの大国を相手に戦争を仕掛けて、自業自得の側面は大きいでしょう。
  ただ、米国としても、当時の新興国で勢いがあった、日本、ドイツを叩き世界での主導権を確立しておく必要があり(そのように米国のエリートたちは考えており)、参戦の口実がほしかったのです。
  日本側に米国との内通者がいて、戦争を煽ったたことも忘れてはいけません。戦後、「海軍善玉論」なるものが広がりましたが、まったくの嘘っぱちです。陸軍や国民世論をたきつけたのはほかならぬ海軍です。真珠湾攻撃で日本軍が深く攻め込まなかったという点は最も不可解な点であるし、太平洋戦争に先立つ日中戦争で、中国の都市を空爆したのは、ほかならぬ海軍が主導で行われていますね。
  黒幕は海軍大臣であり総理大臣も務めた、米内光政だったという説を私は強く支持します。これほど戦争に深くかかわったキャリアがあるにもかかわらず、戦争責任はまったくとわれませんでした。
  終戦の日、阿南惟幾陸軍大臣は「米内を斬れ」と言い残して自害しました。米内ら海軍一派が米国に日本を売り渡し、戦争をたきつけたという事実に最後の最後に気づいたということでしょう。しかし、その時はすでに遅し、広島、長崎への原爆投下で日本は徹底的に叩きのめされており、米国に命乞いをしなければならないような取り返しのつかない状況に陥っていました。
  太平洋戦争の総括は、日本人自身でもう一度やらなければならないと思いますが、米国の世界支配の“正統性”の根拠ともなっているため、米国が倒れない限り、難しいでしょう。確実に妨害してくるはずです。ただ、米国の国家破綻が迫っている今、歴史を再度評価し、未来につなげる努力は早急にやらなければなりません。まあ、今の日本人にそれができるのかどうか?
  それと、私たちは米国がイスラエルとともに新たな戦争に乗り出そうとしていることにも警戒しておく必要がありますね。日本では不思議なほどニュースになりませんが、イランをめぐる情勢がかなり緊迫しています。駐テヘランの英国大使館を襲撃したというニュースは衝撃的でした。
  現在のアハマディネジャドという大統領は表向き反欧米、イスラエル色を鮮明にしており、欧米から「おたずね者」としてみられていますが、使い勝手のいいコマですね。アハマディネジャドを使って、戦争を起こし、油田を乗っ取ろうという思惑が見え隠れします。米内光政みたいなものですね。米国と内通していると思います。
  それと、欧米が金融、経済面でいよいよ立ち行かなくなり、後ろ盾を失うことになるイスラエルがかなりあせっていますね。欧米諸国自体も何とか事態を打開したいと考えているフシがあります。戦争で景気を浮揚するという、伝統的かつ野蛮な手法をとらざるを得ないということでしょう。
  このところ、中国が欧米をけん制するような動きを見せていますが、果たしてどうなることか? 単なるポーズである可能性もありますが、「お前らいいかげんにしろよ」という思いもあるでしょう。
  少なくとも今の日本はイランに対する攻撃に必要以上に深入りしないことと、東アジアの平和を維持する姿勢を堅持することです。
  先日も紹介しましたが、内閣府の調査で「米国に親しみを感じる」という日本人が約8割。このタイミングでこういう調査結果を発表するのは単なる偶然か? 背筋がぞくっとするような気味の悪さを感じます。
  自虐史観がいけないとかどうのこうのいいますが、太平洋戦争、それに先立つ日中戦争は日本にとって、反省すべき点は多いと思います。なぜ、日本がこんな状況になってしまったのかも含めて、いろいろ示唆することは多いですね。