タグ別アーカイブ: 評論

無間地獄

  日本政府、金融機関が昨日、約3カ月ぶりに実施した、為替介入は日本経済新聞によると、史上最大規模の7~8兆円と言われています。いずれ、明らかになるでしょうが、昨年9月以降、今年8月までに行われた3回の為替介入で、すでに7兆3303億円が費やされており、これらと合わせると、累計でこの1年で15兆円近くが投じられたことになります。
  
【昨年9月以降の為替介入の状況(金融当局の資料に基づく、レートの動きについては独自)】
  2010年 9月15日 82.85 → 85.94(単独、2兆1249億円)
  2011年 3月18日 79.15 → 85.52 (協調、6925億円)
        8月 4日 77.10 → 80.22 (単独、4兆5129億円)
       10月31日 75.65 → 79.53 (単独、???)

  残念ながらというか、当然のことながら、市場は下に行きたがっているのに、無理やり上昇させても、一時的には跳ね上がり、ショート筋のストップロスも巻き込んで、派手な上昇を演じるものの、長続きはしません。
  特に今年8月の介入は規模が4兆5千億円と、かなりのボリュームなのに、介入効果は1週間も持続しませんでした。
  今回は、安住淳財務相が「納得いくまで介入する」と発言し、これが一定の牽制効果になっている面もあるようですが、所詮は口先ですからね。口先介入が役に立たなかったから、結局、実力行使に踏み切らざるを得なくなったわけで、あまり真に受けるのはどうかと思います。
  ただ、先に指摘した通り、安住氏が先週、「1ドル=76~77円台の円高は行き過ぎ」と述べているので、政府や金融当局が、このあたりのレベルと意識していることがうかがえるので、この辺のレンジの近くではショートはエントリーしづらいです。
  10年、20年のレンジで考えると、75円台というのは信じられないような円高なのですが、米国がすでに国家破綻状況にあることを考えると、むしろ高いぐらいで、昨年来。都合4回の為替介入がなければ、どこまで下がっていたのか考える必要があります。
  少なくともニクソンショック以前の固定レートだたT1ドル360円を基準に額面の5分の1である、72円割れとか、70円の大台割れとかはしていたのではないかと思います。
  米国はブッシュ政権まで、ドル高政策をとっていました。強いドルこそが米国の世界覇権を確実なものにするという考え方に基づくもので、実際にアフガニスタンやイランの戦争を強行するために、このドル高が大きく貢献し、米国の力が猛威を振るいました。
  ところが、米国の実体経済はボロボロだったので、強いドル政策を裏付けるものが何もなかった。そこで、日本に低金利やデフレを押し付ける円キャリーや、少ない資金で大きな投資が可能になるレバレッジ、デリバティブなどが暗躍するわけです。
  毎度言っているように「金融ばくち」により、自分を実体以上に大きく見せかけたわけですが、そんな不自然な状況が長続きするわけはなく、バブルは激しく炸裂し、米国経済は修復不可能なレベルまで、壊滅してしまいました。
  この期に及んでもなお、米国は軍事面で世界最強で、覇権国としての過去の積み重ねから政治力もあるので、ドルの威信の低下は、実体経済の崩壊のスピードほどは速くなく、また、中国や日本など、ドルが今すぐに暴落すると、困るという事情もあり、円高、円高と言われながらも、それなりの水準は維持しています。
  日本人にとって、最悪なのは、米国債やドル建て資産を抱えたまま、米国が正式に国家破綻してしまうことですが、十中八九これは避けられないでしょうね。
  だから、これまでに米国に投じた資金は「損切り」する覚悟でなければならない。いまさら「金を返せ」と言っても、すなおに返済してくれる人たちではなく、「どうせ死ぬなら、他人も巻き添えにしよう」という発想しかありません。だから、ドル建て資産はもうないものとしてあきらめるしかないでしょう。
  面従腹背でもうこれ以上、盗人に追い銭をやらないように立ち回っていく必要があるのですが、為替介入などまさに、米国にとっては願ったりかなったりでしょう。わざわざ、米国債を買い、ドルの価値をささえてくれるのですから、一石二鳥です。何もしなくても、1回あたり数兆円のお金が入ってくるのですからね。
  しかも、介入の間隔がだんだん短くなっており、これも問題ですね。たかだか、75円レベルでこんな大規模な介入をしていたら、とても持ちません。これから1ドル=60円、50円、40円、30円と下がっていくのですから、いったい、この調子でいけば、いくら貢ぎ続けなければいけないのか? という話になります。まさに無間地獄ですね。
  今、東北では復興で公共事業が増え、お金が回るようになり、仙台あたりはちょっとした好景気になっているようです。日本人が稼いだ金は日本のために使う。それをやっていれば、「失われた20年」なんていう状況はなかったわけで、お年寄りが老後の不安なく暮らせ、若者がもっと自信を持ち、生き生きと前に進んでいけるような国になっていたはずです。
  稼いだ金を米国債購入で搾り取られ、さらにドル下落で目減りさせられ、悪質な米国製のデフレスパイラルに入ってしまったのが、今の日本なのです。この悪循環を断ち切らない限り、未来への希望はありません。逆に米国から解放されれば、日本はもっと活力ある国になるはずです。
  政治家の皆さん、経済界の皆さん、学者、研究員の皆さん、いい加減この事実に気づきませんか?

トレーダー失格

  今回の為替介入にあたって、安住淳財務相の「納得いくまで介入する」旨の発言が、先物やFXをテーマにしたブログ上で話題になっていますね。「納得いく水準ってどこだよ」みたいなブログコメントがたくさん見られます。
  まあ、これを見ての私の率直な感想は「こんなことをブログに書いているようなダメ人間は所詮、ダメ人間だ」ということです。
  先週来、いつ為替介入が行われるかがずっと注目されており、財務大臣のコメントから読み解いていかねばなりません。タイミングや規模をそこから推し量る必要があります。
  先週の半ばに安住氏は「1ドル=76~77円は行き過ぎだ」というような内容のことを言っていますね。私は、78円くらいまで介入で上昇するんだろうなと思って、用意していました。
  旅行中だったので、詳しいチャートが見れず、78円を超えたところで確定しました。勢いがあったので、約定価格は78.20台でした。その後、79円台まで上昇した時は、「しまった」とも思いましたが、その後、効果が剥落したことを考えると、利食い千人力であり、まあまあの結果なのではと思っています。2円強の値幅を取れるなんて最近では、めったにないですからね。
  日頃、金融市場をウォッチして、先物やFX投資にかかわっている者なら、介入に備えて何らかの準備をしておくべきだし、当たるかどうかは別にして、自分なりのシナリオも用意しておくべきでしょう。
  財務大臣のあの程度の発言に飛びついて、書いた本人は悦に入っているんでしょうけれども、「どこまで上げるんだ」なんて、右往左往しているようでは失格ですね。
  まあ、私も先週の先物の上昇は完全に乗れなかったので、あまり偉そうなことは言えませんが、為替ではそれなりにお返しをさせてもらいましたし、このために先物を犠牲にしたのだと思っています。
  あと、目につくのは、先物もFXも踏みあげられた人が多いですね。暴落よりも、踏み上げで財産を失うケースの方が、私が知る限り多いです。先物で1000万円損したみたいなつわものもいるようです。FXも同様ですね。
  基本的には、世界は金融恐慌に突入しつつあり、ショート目線でいいとは思いますが、先物がユーロ問題を材料にして、いったん上昇しそうであること、為替介入が入りそうなことは、大体、予想がつくし、もし、本気で先物、FX投資にかかわりたいのであれば、そのくらいは当然です。
  こんなところで損をしているようでは、「ダメ人間」としか言いようがないですね。前にも言った通り、最下位チームでも、たまには2連勝、3連勝することはあるんです。その連勝に素直に乗るのが、勝ち組トレーダーの条件ではないでしょうか。
  まあ、この局面で、私もいろいろと反省すべき点は多いのですが、少なくとも、トータルでロスが出るようなトレードはしていません。というか、今年、数少ないボーナスでした。
  もし、ここでロスが出ている人は、もう一度、しっかり自分を見つめなおすべきでしょうね。トレードの才能がないと早めに気づくのも、それはそれで大切なことだと思います。

投資事情

  先日、とある集まりがあり、中国・北京出身の30代の女性と話す機会がありました。彼女は、日本の大学を卒業し、システム関係の技術者をやっているそうで、日本語は堪能、かなり微妙なニュアンスの言葉も話すことができ、それだけでも優秀な人だと評価できました。
  で、お話しをしていると、ひょんなきっかけで、彼女がFXをやっているという話になり、皆さんもそうだと思いますが、とても興味がわきました。あまり一般の人と話していて、FXの話にはならないですからね。しかもFXをやっているのが中国の人という。
  彼女はこのまま日本に住み、仕事を続けることを希望しているようですが、おそらく中国籍のままだと思うし、各社が口座開設をさかんに勧めてはいるものの、さすがに外国人が口座開設をする場合は、ハードルが高いのかなぁなどという野暮な質問もしたかったのですが、それは措いておいて、最も聞きたいことを単刀直入に「どの通貨を取引しているの?」「かなり儲かってるでしょう?」と、大阪のおばちゃんばりにぶつけてみました。
  彼女は屈託なく、「豪ドルです」「全然儲かってませんよ、あはは」と答えてくれました。一応、こちらは素人のふりをして話しましたが、経済指標が発表されると値動きが激しいことなど、私たち日本の一般の個人投資家と変わらない認識で、「ドル・円は全然動かないし、ユーロは値幅は大きいけど、動きが読めないのでリスクが大きい」ということまで話してくれました。
  また、「中国は金利が高いから銀行に預けた方がいいんじゃないの? 人民元強くなりそうだし、うらやましいよ」と聞くと、「インフレだから誰も銀行に預けたらがないですよ(笑)」との答え。中国人の経済感覚も何となくわからいました。
  「中国人は私たち日本人が考えも及ばないような特別な奥義を持っているだろう」という私の偏見に基づく、勝手な期待は打ち砕かれ、よくFXブログなんかで目にするような話がほとんどでした。もしかすると、本当は秘密のトレード手法があるのかもしれませんけどね(笑)。
  儲かっているかどうかも、言葉を額面通りに受け取ると、収支トントンか、ややマイナスかみたいな感じでしたけど、中国の人がこういう時にどういう答え方をするかわからないので、これもひょっとすると、アキバにビルが買えるくらい儲かっているかもしれないのですが、判断の根拠がないので、素直に受け止めておきましょう。
  本当は、「ドル・円が一番、安全に稼げるんだよ」とか、「チャートはこう読み解けばいいんだよ」といった話をしたくて仕方がなかったのですが、いったん素人を装ってしまった以上、貫くことにしました。
  中国人のFXトレーダーと話してみての感想としては、投資の手法はあまり変わらないんだなぁというのが率直な印象です。私がお話をした人は、割と温厚でおっとりとしたタイプだったので(ただ、間違って「上海出身」といってしまった時は、対抗意識があるようで「北京ですよ!」ときっぱり言われました)、がつがつしていないんでしょうね。
  本気でチャートから何から研究している人がいれば、おそらく、その熱意は日本人の比ではないと思うし、テクニカル面に加え、欧米金融機関の仕掛け方みたいな、ちょっと込み入った事情なんかも詳しく分析するでしょうから、技術的にはものすごいレベルに達するんではないかと思います。
  私の知っている限りでは、日本の個人トレーダーは、何か一つ偏っているんですよね。フィボナッチとかエリオット波動を駆使してそれなりにテクニカルの理解は高いんだけれども、ファンダメンタルに対する理解がなくて、介入相場とか、最近のようなレンジ相場には十分対応できないとか、職人技みたいに10分足とボリンジャーバンドにこだわる人とか(マネックス証券の10分足チャートで解説している御仁)、経済ニュース(指標)ばかり気にするとか、システムトレードにこだわり続けるとか、知識の幅広さや、柔軟性がないケースが多すぎます。それにトレード好きといいつつも、どん欲に研究する人は見たことがないです。いたら紹介してほしい。
  お金が好きで、向上心が強く、基礎学力が高い中国の人が、本格的に投資について学んだら、すごい人が出てきそうですけどね。欧米金融機関のインチキがまかり通っている、現在の金融市場なんて、簡単に化けの皮をはがしてしまうでしょう。その時は、欧米が本当に終わってしまうときなのでしょうけれども。

サバイバル

  このブログで米国の国家破綻や、金融恐慌に関するテーマで書くと、割と注目度が上がり、関心を持ってみられていることを実感します。いわゆる世間でいう「陰謀論」めいたことに興味を持っている人も多いと思いますが、そういう層から受けているのでしょうね。ただ、私は陰謀論のような単純な構図はありえないと思うし、決してくみしないので、一応、おことわりしておきます。なので、あまり期待されても面白いことは何一つ書けませんのであしからず。
  その代わり、日々の金融市場の動きとか、国内外のニュースから、世界がどういう方向に向かっているか、経済がどういう状況になるかといった、事実に基づいて、現状分析や将来予想をしていくだけだと思っています。
  陰謀論が面白いと思えるのは、余裕のある人だけであって、普通の人は陰謀論が予想する通りに何かが起きるとして、非常に苦しい状況に追い詰められると思います。特に安定した職を持たない人とか、病気や障害を抱えている人とか、高齢の方とかは厳しいですよね。
  天変地異とか、経済パニックが起きれば、「一発逆転」できるのではないかという期待もあるんでしょうけど、世の中そんなには甘くないし、危険な考え方だと思います。
  東日本大震災が起き、東京電力福島第1原子力発電所が深刻な状況に陥り、陰謀論を支持する人たちが喜びそうな状況になったわけですが、被災した人たちは現実の生活を生きていかなければならないのです。お金持ちや余裕のある人は、避難所など必要とせず、いち早く、よその地域に引っ越してしまいましたが、大多数の人たちは古里を捨てられない、あるいはその土地から逃げられないという状況で、現状を受け入れて歯を食いしばって生きていかなければなりません。
  今回の場合、財政難とはいえ、国に余裕があり、東京電力も賠償に応じる余力があるので、何とか最低限の生活保障や損害賠償はできますが、もっと大規模な天変地異が起きた場合は、誰にも頼れないし、自分一人で生き残っていくすべを考えていかなければならないのです。そうなった場合、陰謀論支持者の皆さんは生き残っていく自信はあるのでしょうか?
  金融恐慌、経済パニックの場合もそうですね。これに関してはさまざまな状況からして、かなり可能性が高いと思うし、このブログでも、何が起きそうか予測してきましたが、現実に起きた場合、サバイバルできる人は、あまりいないのではないでしょうか。私自身、生き残れる自信はありません。
  普段から何の努力もせず、ネットで流れる情報だけをうのみにして、社会に対して何事も責任を取らないような人間が、裸のままのような状態で、過酷な状況に放り出されて、生きていけると考える方が無理がありますね。
  「芸は身を助ける」と言いますけれど、どんな小さなことでもいいですが、何か一つでも、自信が持てること、得意なことを身に付けた方がいいでしょうね。
  天変地異あるいは、金融恐慌が起きて、原始的な状況に戻ったとして、やはり、人間同士助け合ったり、新しい社会を形成したりして生きていくことになると思うのですが、こうした状況に柔軟に適応できない人は、淘汰されていくでしょうね。
  結局は、どういう状況であれ、一時的には大混乱、パニックになるでしょうが、収まれば、実力ある人はリーダーシップを発揮するでしょうし、個性や技能を持つ人は、器用に生き残っていくことでしょう。今の社会秩序と大して変わらない状況になるでしょうね。もちろん死んだりしてメンバーが入れ替わったり、これまで注目されていなかった人が脚光を浴びたりなんかするんでしょうけども。
  だから、一発逆転なんてありえないのです。もしあるとすれば、未来予想をしっかりしていれば、次に何が起こるか、来たるべき自体を予測して、先回りして、行動できるので、多少は有利な立場に立つことができる。例えば、米ドルが紙屑になることを人より早く知っていれば、金なり石油なり食料なり価値のあるものを買っておくことで、リスクヘッジすることで、万一の時、慌てなくてすむし、嵐が収まった時に、新しいことを始める原資にすることもできるでしょう。
  先物なり、FXをやって小金を稼いでも、しっかり脇を固めておかないと、足元をすくわれかねないし、このブログでも偉そうに講釈は垂れていますが、マーケットがなくなれば、投資について勉強しても何の役に立たないのです。
  今の世界がリセットされたとして、待ち受けているのは決して楽な道ではない。むしろいばらの道でしょう。自分自身を謙虚に見つめなおし、一つでいいから、何かを磨いておくこと。サバイバルにはそれしかないですよね。多くの人が困った状況に陥るということは、その状況から脱するために欲しいものがたくさんあるということでもあり、そのニーズに応えるというのは、ある意味チャンスでもあるのでしょうけれどもね。

破滅までの道

  このところ、米国国家破綻あるいは世界恐慌まで、ずっと「長丁場」「長丁場」と言っているので、「もう聞き飽きた」と思われるでしょうし、そろそろオオカミ少年化しつつあります。もちろん、米国のデフォルトは回避されるかもしれないし、恐慌など今の時代にありえないかもしれません。そういう考え方もありだと思います。あくまでも未来予想は個々人の判断だし、「そういう考えもあるよね」程度に話半分に聞いていただければと思います。
  ただ、昨日、ドル・円が一時1ドル=75円70銭台と、戦後最高値を一瞬、更新し、あらためてドルの問題がクローズアップされるところとなりましたが、大渋滞中にちょっとだけ車の流れがよくなったような感じで、ひと心地ついたような気になりますね。私もちょっとだけホッとしました。どうせなら75円割れまで行ってほしかったですが。
  現時点では、私自身はやはり、流通しているお金の量や各国、各金融機関が抱える債務、金など価値あるものの裏付けを持たない不換紙幣の抱える矛盾、(真の意味での)勤勉さを捨てた欧米人の状況などから、破滅的な状況は回避できないと考えてますし、金融市場がどうとか、国家財政がどうかという小さなレベルを超えて、100年、200年、500年あるいは1000年のサイクルの歴史のサイクルからみて、大きな転換点を迎えており、その際に大きな乱気流のようなことが起きるんだろうと予想しています。
  最近は、エコノミストやアナリストといった職業の方からも、現在の状況はリーマン・ショックの前哨となった、2008年3月のベア・スターンズ危機の段階にあるみたいなコメントがよく見られるようになりました。この法則を単純にあてはめると今から半年後くらい、来年前半に大きな動きがあるということになりますね。
  このところ、欧州の要人からは、結構過激な発言が相次いでいます。「ギリシャは破たん処理すべきだ」「欧州は破滅的な状況を回避できない」みたいな。ついこの間までは「ギリシャが破綻すれば世界の金融システムが混乱する」とか「欧州発の世界恐慌は回避しなければならない」といった控えめで、しかも危機にしっかり対処しますというようなニュアンスが込められていたので、かなり状況は煮詰まっていることがうかがえます。
  ちょっと前なら、こんなヤバい発言をすれば、金融市場は敏感に反応していたと思いますが、あまり重要視されていませんね。ドルは下落しましたが、ユーロは一時期の軟調から比べると、「安全圏」といってもいいくらいのレベルです。油断は禁物なのですが。
  欧州金融安定化基金(EFSF)の基金拡充や拠出方法をめぐってフランスとドイツが対立していて、一見、不透明感が強まっていますが、おそらく、米国あたりが脅しをかけて、何とかまとめあげることになるのではないでしょうか。結局、何らかの形で基金拡充することは既定路線であって、不利な条件を押し付けられる側のドイツサイドから「ギリシャ破綻させちゃえよ」みたいな、恨み節が出たような感じでしょうね。基金拡充はほぼ決まっているので、だれもその発言をまともに取り合わないということなのでしょう。
  あくまでも個人的な感覚なのですが、前にもマーケットの動きを受けた、簡単なコメントの中で、「クリスマス、正月は楽しく過ごしたいなぁ」みたいなことを言ったと思います。皆さんそのように考えているのではないのでしょうかね。
  リーマン・ショックの際も、米国の金融機関の危機が表面化したのは、約1年前の2007年秋でした。ベアー・スターンズの半年くらい前ですよね。シンガポールや中東のSWFがシティの株を引き受けるみたいな話が次々と出てきて、金融市場は小康状態になりました。
  ただ、その時は、たしかクリスマスはぎりぎり乗り切ったと思いますが、年の瀬に崩れて、年末の大納会、年初の大発会ともに、暴落だったと記憶しています。
  私は現状は、ベアー・スターンズ危機というよりは、さらにその前の段階なのではないだろうかと考えています。ベアー・スターンズ危機は、本当にギリシャが破綻した時でしょうね。今はまだ破綻させないという印象です。こればっかりは急転直下何があるか分からないので、安易な予断は徹底的に排除すべきだとは思いますが。
  ギリシャ破綻で、いったん、金融市場が小崩落して、また、あらためて危機回避のスキームを練り直す、しばらくだらだらとやって、ポルトガルだ、スペインだ、イタリアだみたいな話になって、さらにはGSE問題などが導火線になって米国にも火がつく。
  現段階では、オオカミ少年はこのように予想します。東日本大震災やタイの洪水みたいな、不可抗力もあるので、何かあればその都度予想は修正していかないといけない思っています。予想に固執して意固地になって、柔軟さを失うのもだめですね。あくまでも一つの尺度であって絶対ではありません。
  そういったことを肝に銘じつつ、もし、世界経済の破滅があるとすれば、どういう道筋を進んでいくか、頭を悩ませながらも、ヘボ予想をするわけです。