来年の金融市場のことを考えると、どうしても憂鬱になってしまいます。普通の常識を持った人なら、欧州の金融問題が行き着くところまで行き、最終的には米国に燃え広がり、欧米の駄目人間たちが寄生虫と共に死滅すると考えるのが普通で、さっさとそうなってほしいものですが、最近の欧州情勢、イランをめぐる動きなどを見る限り、「悪あがき」を続ける可能性があります。
そもそも欧州が攻撃を受けるようになったのは2009年秋のドバイショックに端を発し、それから約半年後の2010年5月のギリシャ・ショックで、財政問題に対して本格的に注目が集まるようになりました。
背景には、米国が自分たちより弱い立場にある欧州を叩くことで、世界の関心を自らの巨額債務問題からそらし、資金を誘導することで、株高、通貨高を維持することにあります。また、ギリシャをはじめ、各国の国債を空売りすることで、不当な利益を得た輩もいることでしょう。
ただ、欧州全体としては、米国のように巨額な貿易赤字を抱えているわけではなく、問題となっているそれぞれの国が発行した国債も、ほとんどは域内で消化され、持ち合いの状態のようになっているので、ユーロ導入で暴利を得たドイツが相応の負担に応じれば、この問題は終わると考えて過言ではありません。
もちろん、米国に勝るとも劣らず、金融ばくちや不動産転がしに興じた揚げ句こういう問題が起きたわけで、問題が収束するからといって、何事もなかったかのように過ごせるかと言えばそうではないでしょう。日本のバブル崩壊と同様、不良債権の処理で今後10年、20年と苦しむはずです。
また、このところ欧州問題をめぐっては、「財政規律の強化」や「金融機関に対する規制」のようなことも、さかんに言われますが、要は、一部の人たちが、財政や金融、経済を管理しやすい体制に持っていきたいという思惑もあるのでしょう。フランスのサルコジ大統領、ドイツのメルケル首相のおバカコンビが、米国に操られて新しい秩序を構築する方向へ突き進んでいます。
最終的には米国の金融問題に対して、欧州の金融資産が投入されることになるのでしょう。現在の欧州問題をめぐる一連の動きは、その布石となるものと考えられます。
でもどう考えても、米国がやらかした金融崩壊は、欧州の金融資産や、今後、日本から搾り取ろうとするカネで、まかなえる規模ではありません。リーマン・ショックの時は、金融機関の倒産に備えた保険であるCDSが問題になり、結局、各金融機関の話し合いにより、取引をちゃらにすることで、ショックを軽減しましたが、さまざまな金融商品に組み込まれたサブプライム・ローンは、どうにもならず、無理なローンを組んだ人たちもカネを返すつもりはないでしょうから、いずれ償還を迎えた債券類が破裂することになります。
さらに金融危機に対処するために、刷り散らかされたドルをどうするか? どうにも手を付けられず、どうにかする気もないんでしょうけれどもね。究極的には米国債の購入者が借金を踏み倒されることになります。表面上は中国が最大保有国ということになるのでしょうが、国の特別会計で買わされていたり、民間金融機関や投資信託なんかに組み込まれた分を含めると、圧倒的に日本が買い支えているでしょうから、とんでもない目に遭わされることになります。すでに円高という形で表面化していますが。
まあ、米国としても、国が滅ぶのを放置するわけにはいかないし、中国がかなりしたたかで、一筋縄ではいかない国であることが分かってきましたから、覇権を維持するためになりふりかまわず何でもやってくるでしょうね。
と言ってもできることは限られているし、中国や日本と比べてカネを稼ぐ能力で極めて劣っているので、破れかぶれでイランを攻撃することぐらいしか思い付かないでしょう。米国というパトロンを失えば、イスラム諸国からたたきのめされ、地球上から消滅する恐れがあるイスラエルの利害とも一致します。
イラン攻撃に対して気を付けなければならないのは、予想もつかない大混乱が起きる可能性があるということです。おそらく株もドルも乱高下することでしょうね。
ただ、何とかイランに戦争を仕掛けて油田を奪い、当座の危機はしのげても、問題の根本的な解決にはつながらず、早晩、破綻することは目に見えていますが。
だから、基本的には経済の実態が示す方向に進み、株、ドル、ユーロが大暴落すれば、万々歳なのですが、ここへ来て、生存本能を発揮し、無駄な抵抗を始めたので、新たな状況に対応しなければなりません。来年は、スムーズに事が進めばいいのですが、面倒な一年になりそうです。
そうなればそうなったで、それに合わせて行動すればいいだけの話で、そこは冷徹に考えればいいと思います。とは言っても、経済の法則に明らかに反した動きになるでしょうから、常にリスクと隣り合わせで、釈然としない思いを抱えながら、金融市場と付き合わなければならないのですが・・・。
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袋小路
この一週間の金融市場の動きを見て、完全に行き詰った感があります。インチキで成り立っていた相場なので、早晩、崩れるのは当たり前のことですが、ここまでだましだましやってきたので、しばらく堅調さが続くと錯覚してしまいます。
クリスマスまであと1週間。これまで値崩れしてもゾンビのようにしつこくよみがえってきたので、日経平均8500円、NYダウ12000ドル回復と、最後のひと吹きがある可能性もありますが、そろそろ来るべき時が来たのかなぁと思ってみています。
潮目が変わったなと感じたのは、月曜日(12日)の値動きですかね。先週末の欧州金融問題に関する、欧州連合や欧州中央銀行などの会合をやり過ごして上昇しました。11月以来、上値(8700~8800)に未練を残しながら下落してきたので、そのまま上抜けして、8700台、8800台を目指しても、おかしくはないなと考えられましたし、8660でしつこく買うので、もしかしたら米国時間に動かすのかなと思ってみていました。
個人的には、先週金曜日の夜、上昇したのについていけず(飲み会があったので関わることができず)、吹き値売りを狙っていたので、もうひと伸びほしいところでしたが、8670をつけた後は、ずるずると後退。この時点で、すでにほぼ決着がついたような感じではありましたが、下がったところでしつこく買うので、気持ち良い下落とはならず、8500を防衛するような動きもあり、やりにくい展開でした。
週末の8400の攻防もそうでしたね。クリスマスにかけて何か仕掛けるならば、ここで打って出てもよかったような気がします。シカゴ終値が8375なので、下値を確認して反転する可能性もなきにしもあらずですが、ムーディーズがベルギーの格下げなんかを行った以上は、よほどのインパクトのある材料が出ない限りは、上昇は難しいと考えています。
この1、2年は米国の金融緩和をはじめ、無理やり政策介入で株価を粉飾している状態なので、経済の実態と株価は相当乖離していると考えるのが自然でしょう。これだけ膨大な額の介入をしたにもかかわらず、大した効果もなく、いずれ綻びが表面化するのは不可避です。
ギリシャだのイタリアだの言っても、まだ、多くの市場参加者の意識が新たな政策期待なんかもあって上目線なので、なかなか下落しないですが、相場を上昇させる力などあるわけもなく、じりじりと下げた後、いずれパニック的な売りにつながると思われます。
ドル・円なんかもそうですよね。10月末に異例の巨額ドル買い介入をして、さすがに日銀の顔を立てて、ドルは“高値安定”していますが、オセアニア時間に記録した最安値からわずか3円弱上昇したにすぎません。
欧州問題もあって、世界的に資金がドル、米国株に向かっている事情もあって、ドルもダウも高値安定していますが、欧州よりもひどい状態にある米国の実体経済を考えると、崩壊するのは時間の問題でしょうね。
一見、世界の金融市場は、爆弾を抱えながらも、安定したような動きを見せていますが、そろそろやばいよ、という状況になりつつあります。
このまますなおに暴落するのが一番ですが、気を付けなければならないのは、新たな政策介入ですね。今回の元凶はドイツにもあるので、もっとババをつかまされ、ドイツ経済が壊滅に追い込まれるべきだと思いますが、国債買い入れを行うとアホ女が表明すれば一時的にでも、株価は急騰するでしょう。日経も9000円手前まで行く可能性があります。
また、イラン情勢ですね。いよいよ金融問題で行き詰った時には、いろいろと難癖をつけてイランと戦争に突入することでしょう。そうなった場合、ドル、株価がどういう動きをするのか? ちょっと読めない部分もありますが、売り一辺倒にもなれません。
今まで以上に、得体のしれない値動きになる可能性があるので、心して臨む必要があります。
クリスマスまであと1週間。これまで値崩れしてもゾンビのようにしつこくよみがえってきたので、日経平均8500円、NYダウ12000ドル回復と、最後のひと吹きがある可能性もありますが、そろそろ来るべき時が来たのかなぁと思ってみています。
潮目が変わったなと感じたのは、月曜日(12日)の値動きですかね。先週末の欧州金融問題に関する、欧州連合や欧州中央銀行などの会合をやり過ごして上昇しました。11月以来、上値(8700~8800)に未練を残しながら下落してきたので、そのまま上抜けして、8700台、8800台を目指しても、おかしくはないなと考えられましたし、8660でしつこく買うので、もしかしたら米国時間に動かすのかなと思ってみていました。
個人的には、先週金曜日の夜、上昇したのについていけず(飲み会があったので関わることができず)、吹き値売りを狙っていたので、もうひと伸びほしいところでしたが、8670をつけた後は、ずるずると後退。この時点で、すでにほぼ決着がついたような感じではありましたが、下がったところでしつこく買うので、気持ち良い下落とはならず、8500を防衛するような動きもあり、やりにくい展開でした。
週末の8400の攻防もそうでしたね。クリスマスにかけて何か仕掛けるならば、ここで打って出てもよかったような気がします。シカゴ終値が8375なので、下値を確認して反転する可能性もなきにしもあらずですが、ムーディーズがベルギーの格下げなんかを行った以上は、よほどのインパクトのある材料が出ない限りは、上昇は難しいと考えています。
この1、2年は米国の金融緩和をはじめ、無理やり政策介入で株価を粉飾している状態なので、経済の実態と株価は相当乖離していると考えるのが自然でしょう。これだけ膨大な額の介入をしたにもかかわらず、大した効果もなく、いずれ綻びが表面化するのは不可避です。
ギリシャだのイタリアだの言っても、まだ、多くの市場参加者の意識が新たな政策期待なんかもあって上目線なので、なかなか下落しないですが、相場を上昇させる力などあるわけもなく、じりじりと下げた後、いずれパニック的な売りにつながると思われます。
ドル・円なんかもそうですよね。10月末に異例の巨額ドル買い介入をして、さすがに日銀の顔を立てて、ドルは“高値安定”していますが、オセアニア時間に記録した最安値からわずか3円弱上昇したにすぎません。
欧州問題もあって、世界的に資金がドル、米国株に向かっている事情もあって、ドルもダウも高値安定していますが、欧州よりもひどい状態にある米国の実体経済を考えると、崩壊するのは時間の問題でしょうね。
一見、世界の金融市場は、爆弾を抱えながらも、安定したような動きを見せていますが、そろそろやばいよ、という状況になりつつあります。
このまますなおに暴落するのが一番ですが、気を付けなければならないのは、新たな政策介入ですね。今回の元凶はドイツにもあるので、もっとババをつかまされ、ドイツ経済が壊滅に追い込まれるべきだと思いますが、国債買い入れを行うとアホ女が表明すれば一時的にでも、株価は急騰するでしょう。日経も9000円手前まで行く可能性があります。
また、イラン情勢ですね。いよいよ金融問題で行き詰った時には、いろいろと難癖をつけてイランと戦争に突入することでしょう。そうなった場合、ドル、株価がどういう動きをするのか? ちょっと読めない部分もありますが、売り一辺倒にもなれません。
今まで以上に、得体のしれない値動きになる可能性があるので、心して臨む必要があります。
テクニカル
普段、デイトレードをしていると、目先の値動きや売買動向に気を取られてしまい、なかなか、長期的な視点が持てませんが、たまには、月足、せめて週足くらいは観察しておきたいものです。
月足を見る限りは、2007年7月をピークに、緩やかな下落トレンドを形成していることが分かります。ファンダメンタルを意識しつつ、テクニカル的にも忠実に値動きしているといえると思います。
以前に一部の人には、お示ししたことがあると思うのですが、エリオット波動を形成しながら下落しつつあるんですよね。だから、いずれ7000円を割り、リーマン・ショック後の安値を更新する可能性があります。あくまでもテクニカルに忠実に動けば、の話ではありますが。
難しいのは、7000円を割るのがどのタイミングかということ。そして、時間稼ぎのためにレンジ相場で推移し、しかもところどころで上昇を入れ、メジャーSQなんかもからんでくるので、安易にショートをキープできないです。
時々、オプションを買ったという相談をしてくる人がいますが、月の値幅が1000円もないのに、オプションなんかやる意味がありますか? あれはあくまでも先物、株式投資と組み合わせたうえでの保険です。でなければ、単独でオプションの値動きを狙っているとしたら、ばくちにすぎません。そんなことも分からないようなら、トレードなんかやめた方がいい。センスなさすぎです。素直に能力がないことを認めて撤退すべきです。
ドル・円なんかは昨年秋までは、テクニカルに忠実な動きをしていました。昨年9月に介入があり、それからしばらく、テクニカルに決着をつけた後、訳の分からない動きになってしまいました。東日本大震災直後の今年3月の介入以降は、完全に政策介入なしでは値動きできなくなっています。
NYダウは追加緩和やら何やらで、不自然な価格操作が当たり前になっているので、テクニカルが通用しない世界になっています。
日経平均がおそらく世界で最後に残された唯一のテクニカルが通用する相場でしょう。ただ、7000円を割り込んで、テクニカル的な目標を達成したら、おそらく訳の分からない動きになってしまうのでしょうね。
7000円割ったら、さすがに欧州だけでなく、米国の金融詐欺にも決着をつけなければならないでしょうから、金融恐慌が本格化しているでしょう。
月足を見る限り、金融恐慌が間近に迫っているとしか思えませんが。
自動車の未来~東京モーターショー2011⑦終 総括
東京モーターショー2011の期間中の入場者数は約84万人。主催者側の目標が80万人とのことなので、東京で開催した効果もあるのでしょうが、まずまずの客の入りだったのではないでしょうか。
私が訪れた12月6日は入場者数が6万5千人と、期間中の1日当たり入場者数が最も少ない日でしたが、それでも人気の展示には、二重三重の人だかりができ、写真を撮るための場所取りもままならないほどで、人気のあるイベントであることを実感させられました。
ただ、高度成長期やバブル期との勢いの違いは比べるべくもないし、まだ未来に対して単純に希望が持てていたリーマン・ショック前と比べても、一般の人々の自動車にかける思いというのは冷めており、自動車メーカーにとって厳しい時代であることに変わりありません。
全体的に見て欧州メーカーの環境対応車など、ところどころで「おもしろいな」と思ったものはありましたし、どの展示もそれなりに興味深かったのですが、正直、心躍るようなものはありませんでした。
技術やアイデア、商品自体がすでに発表済みのものがほとんどで、未来に向けて我々が想像もしていなかったような提案は何一つありませんでした。
実現できなくてもいいから突拍子もないアイデアの提案があってもいいのではないでしょうか? 2、3年後には実用化されるであろうコンセプトカーや、既に発売済みの車の展示だけだったら、東京ドームでも借り切って「見本市」として開催すればいいだけのことです。
たとえば、ジェット噴射あるいはリニアモーター方式で浮き上がって推進する車輪がない浮上式の車とか、安全にこだわるというのなら、完全無人走行の車とか、セグウェイのような形の都市型交通システムとか、もっともっと夢のある展示があっていい。
それぐらい野心的な目標がないと、自動車ってどんどんつまらない方向に行ってしまいますよね。遊園地のゴーカートに毛が生えたような電気自動車あたりで進化は止まってしまうのでしょうか。
世界経済の閉塞感が強まっているのも、そのあたりが原因ですよね。住宅も自家用車も家電製品も行き着くところまで行き着いてしまい、物質面だけでなくソフトも、どうやら人間の考えることには限界があるのではないかと、みんなうすうす気付き出しました。
だからこそ、限界を突破する努力が必要だし、何かやれば何か変わる部分もあるんだろうと思います。自動車メーカーは紙の目先のお金に対しては、最近は恐ろしいほど貪欲に執着しますが、奇想天外な商品で世間をあっと驚かせようということには消極的のようです。企業家精神までゆがんでしまいましたね。
今回のモーターショーで忘れてはならない存在が、部品メーカー群です。自動車メーカーの展示スペースと比べると、人の集まりは、それほど多くはありませんが、各企業が自慢の技術を競って持ち寄り、非常にためになる展示が多かったと思います。
自動車って実は自動車メーカーが造っているわけじゃないんですよね。2万点に上るといわれる、自動車部品のほとんどは、何次にもわたる下請け業者がつくっています。それをメーカーが集めて完成車に仕上げるわけです。
自動車の性能はこうした下請け業者の技術と、品質管理によるところが大きいのです。こうした質の高いもの同士を組み合わせて、全体の整合性を取って、高い能力を発揮する製品を造り出す「擦り合わせ」というのは日本人の得意とする分野です。
細かいところまで妥協を許さない職人気質と、使う側のことを思いやる繊細な心遣いがそれを支えてきました。残念ながら欧米人には太刀打ちできず、製造業から駆逐されたために金融ばくちと不動産ころがしぐらいしかできなくなってしまったのです。
そして、自動車産業が今も日本の屋台骨であるのは、鉄鋼、金属、ガラス、ゴム、電子部品をはじめ、幅広い業種の企業を巻き込む裾野の広い産業であるからで、しかも日本には各分野で精鋭企業がそろっています。
東日本大震災やタイの洪水では、部品の供給網が寸断され、数ヶ月もの間、完成車の生産計画の下方修正を迫られるなど大きな影響がでるとともに、日本の自動車産業の層の厚さと、技術力があらためて見直されました。
ただ、電気自動車について触れた回で述べた通り、完全にモーターとバッテリーだけになる状況まではいかないまでも、低燃費、省資源、生産効率化の観点からも自動車の構造そのものは簡素化される方向にあり、家電業界同様、多くのメーカー、部品メーカーが共存共栄するモデルは成り立たなくなりつつあります。
また、今朝の一部報道では、トヨタ自動車が韓国・現代自動車グループから部品の調達を検討しているとのこと。リーマン・ショック以降、トヨタに国内産業を守る気概がないということがどんどん明確になってきますね。がっかりさせられます。
経済全体に占めるものづくりの割合はどんどん低下していて、世界的な生産の効率化と、過剰生産の動きも激しく、自動車をはじめメーカーの置かれている立場は非常に厳しいものがあります。
でも、これまでの日本の製造業の進んできた道を考えると、日本人にはものをつくる才能に非常に恵まれているとしか思えません。愚直にものづくりをして、多くの人に喜んでもらえる製品を生み出す。これによろこびを感じされる国民はあまりいないでしょう。
だから、ものづくりを捨てることは“死”を意味するに等しく、死守しなければなりません。
そのためには、世界を驚かせるようなものを次から次へと繰り出していく必要があります。欧米人でも考え付くような電気自動車の域でとどまっていてはいけないのです。
日本人の英知を結集すれば、もっともっと新しいもの、高度で複雑な技術の組み合わせで、他の追随を許さないものを生み出せると思います。
ポテンシャルを眠らせておくのは惜しすぎます。「これはすごい」「日本人にしかつくれない」ものを生み出せるのに、それをしないのは、日本にとっても世界にとっても不幸です。
来年になれば、金融恐慌が本格化し、世界を取り巻く情勢は一変していることでしょう。だから自動車に対する考え方も大きく変わるはずです。
自動車メーカー各社も未曾有の苦境に陥ることが必至ですが、そこから這い上がることができるか? そして苦しみもがき続ける中でで何が生み出されるのか?
2年後にまたモーターショーが開かれるのか、それすら分かりませんが、新しい境地が切り開かれていることに期待したいと思います。
私が訪れた12月6日は入場者数が6万5千人と、期間中の1日当たり入場者数が最も少ない日でしたが、それでも人気の展示には、二重三重の人だかりができ、写真を撮るための場所取りもままならないほどで、人気のあるイベントであることを実感させられました。
ただ、高度成長期やバブル期との勢いの違いは比べるべくもないし、まだ未来に対して単純に希望が持てていたリーマン・ショック前と比べても、一般の人々の自動車にかける思いというのは冷めており、自動車メーカーにとって厳しい時代であることに変わりありません。
全体的に見て欧州メーカーの環境対応車など、ところどころで「おもしろいな」と思ったものはありましたし、どの展示もそれなりに興味深かったのですが、正直、心躍るようなものはありませんでした。
技術やアイデア、商品自体がすでに発表済みのものがほとんどで、未来に向けて我々が想像もしていなかったような提案は何一つありませんでした。
実現できなくてもいいから突拍子もないアイデアの提案があってもいいのではないでしょうか? 2、3年後には実用化されるであろうコンセプトカーや、既に発売済みの車の展示だけだったら、東京ドームでも借り切って「見本市」として開催すればいいだけのことです。
たとえば、ジェット噴射あるいはリニアモーター方式で浮き上がって推進する車輪がない浮上式の車とか、安全にこだわるというのなら、完全無人走行の車とか、セグウェイのような形の都市型交通システムとか、もっともっと夢のある展示があっていい。
それぐらい野心的な目標がないと、自動車ってどんどんつまらない方向に行ってしまいますよね。遊園地のゴーカートに毛が生えたような電気自動車あたりで進化は止まってしまうのでしょうか。
世界経済の閉塞感が強まっているのも、そのあたりが原因ですよね。住宅も自家用車も家電製品も行き着くところまで行き着いてしまい、物質面だけでなくソフトも、どうやら人間の考えることには限界があるのではないかと、みんなうすうす気付き出しました。
だからこそ、限界を突破する努力が必要だし、何かやれば何か変わる部分もあるんだろうと思います。自動車メーカーは紙の目先のお金に対しては、最近は恐ろしいほど貪欲に執着しますが、奇想天外な商品で世間をあっと驚かせようということには消極的のようです。企業家精神までゆがんでしまいましたね。
今回のモーターショーで忘れてはならない存在が、部品メーカー群です。自動車メーカーの展示スペースと比べると、人の集まりは、それほど多くはありませんが、各企業が自慢の技術を競って持ち寄り、非常にためになる展示が多かったと思います。
自動車って実は自動車メーカーが造っているわけじゃないんですよね。2万点に上るといわれる、自動車部品のほとんどは、何次にもわたる下請け業者がつくっています。それをメーカーが集めて完成車に仕上げるわけです。
自動車の性能はこうした下請け業者の技術と、品質管理によるところが大きいのです。こうした質の高いもの同士を組み合わせて、全体の整合性を取って、高い能力を発揮する製品を造り出す「擦り合わせ」というのは日本人の得意とする分野です。
細かいところまで妥協を許さない職人気質と、使う側のことを思いやる繊細な心遣いがそれを支えてきました。残念ながら欧米人には太刀打ちできず、製造業から駆逐されたために金融ばくちと不動産ころがしぐらいしかできなくなってしまったのです。
そして、自動車産業が今も日本の屋台骨であるのは、鉄鋼、金属、ガラス、ゴム、電子部品をはじめ、幅広い業種の企業を巻き込む裾野の広い産業であるからで、しかも日本には各分野で精鋭企業がそろっています。
東日本大震災やタイの洪水では、部品の供給網が寸断され、数ヶ月もの間、完成車の生産計画の下方修正を迫られるなど大きな影響がでるとともに、日本の自動車産業の層の厚さと、技術力があらためて見直されました。
ただ、電気自動車について触れた回で述べた通り、完全にモーターとバッテリーだけになる状況まではいかないまでも、低燃費、省資源、生産効率化の観点からも自動車の構造そのものは簡素化される方向にあり、家電業界同様、多くのメーカー、部品メーカーが共存共栄するモデルは成り立たなくなりつつあります。
また、今朝の一部報道では、トヨタ自動車が韓国・現代自動車グループから部品の調達を検討しているとのこと。リーマン・ショック以降、トヨタに国内産業を守る気概がないということがどんどん明確になってきますね。がっかりさせられます。
経済全体に占めるものづくりの割合はどんどん低下していて、世界的な生産の効率化と、過剰生産の動きも激しく、自動車をはじめメーカーの置かれている立場は非常に厳しいものがあります。
でも、これまでの日本の製造業の進んできた道を考えると、日本人にはものをつくる才能に非常に恵まれているとしか思えません。愚直にものづくりをして、多くの人に喜んでもらえる製品を生み出す。これによろこびを感じされる国民はあまりいないでしょう。
だから、ものづくりを捨てることは“死”を意味するに等しく、死守しなければなりません。
そのためには、世界を驚かせるようなものを次から次へと繰り出していく必要があります。欧米人でも考え付くような電気自動車の域でとどまっていてはいけないのです。
日本人の英知を結集すれば、もっともっと新しいもの、高度で複雑な技術の組み合わせで、他の追随を許さないものを生み出せると思います。
ポテンシャルを眠らせておくのは惜しすぎます。「これはすごい」「日本人にしかつくれない」ものを生み出せるのに、それをしないのは、日本にとっても世界にとっても不幸です。
来年になれば、金融恐慌が本格化し、世界を取り巻く情勢は一変していることでしょう。だから自動車に対する考え方も大きく変わるはずです。
自動車メーカー各社も未曾有の苦境に陥ることが必至ですが、そこから這い上がることができるか? そして苦しみもがき続ける中でで何が生み出されるのか?
2年後にまたモーターショーが開かれるのか、それすら分かりませんが、新しい境地が切り開かれていることに期待したいと思います。
自動車の未来~東京モーターショー2011 軽自動車・大型車
最近、軽乗用車の燃費競争が激しくなっています。代表格はダイハツの「ミラ イース」とスズキの「アルト エコ」。どちらもリッター30キロクラスの低燃費車です。
でも、軽乗用車って、エンジンスペースなどに制約があるので、意外と燃費を食うんですよね。走行の仕方やモードにもよるので、一概に比較できるのかどうかは分かりませんが、トヨタ自動車の最新鋭のハイブリッド型コンパクトカー「アクア」なんかはリッター35キロで、プリウスも最新モデルは余裕で30キロを超えてきます。
自動車工業会なんかは、普通乗用車の方が燃費がいいのに、軽自動車より割高な税負担を強いられているなんて主張して、是正を求めていますよね。
普通乗用車の税負担が軽減されれば、車両本体価格は安くても、トータルでは普通乗用車を購入した方が、お得なんてことになるかもしれませんね。
軽は軽で小回りが利き、運転しやすいし、駐車スペースが小さくてもすむので、特有のメリットもあるのですが。
スズキは資本・業務提携をめぐって、独フォルクス・ワーゲンと泥沼のバトルを繰り広げていますが、魅力的なのはインドでの圧倒的なシェアですよね。
トヨタ自動車や日産自動車、ホンダなどが総じて、欧米で販売が強く、新興国で出遅れていて、VW、韓国・現代自動車、米ゼネラル・モーターズなんかの後塵を拝していたりするのですが、その点で、スズキは非常にユニークですね。
インドでは、大衆車として比較的コンパクトな乗用車が好まれ、売れ筋となる傾向にあり、スズキが最も得意とする分野であるのが大きいですね。
トヨタ、日産、ホンダだけが自動車メーカーではない。多様性を維持してきた日本だからこそ、こうした面白い現象がみられるんだと思います。
いつどこで何がブレイクするか分かりません。韓国のように1990年代の金融危機で、国際通貨基金(IMF)に徹底的に経済を改造され、1業種1社にされてしまった国と、多様なメーカーが共存する日本。
どちらがいいとは断言はできませんが、日本人のマインドとしては、選択肢はたくさんあった方がいいですよね。
日本の乗用車メーカーは本当に多様ですが、トラックも負けていません。時間がなくて、駆け足で見て回るような状況でしたけど、トラック・バスの展示スペースもそれなりの規模でした。
トラックもやはり、低燃費のアピールが中心でしたね。日野自動車はトヨタグループらしく、ハイブリッドタイプのバス、トラックを提案していました。
大型車に関しては、正直、あまり明るくないのですが、走行距離がハンパではないし、当然、使う燃料の量も膨大になるでしょう。乗用車よりもむしろ、大型車の方が日本の強みが発揮できるのではないかと思いますね。
軽油なんてもともと割安ですけど、それでも、低燃費技術で、1割でも、1.5割でも燃費を向上できれば、運輸事業者にとってはかなりの経費節減につながるのではないでしょうか。
日本の大型車メーカーの弱みはやはり、海外での販売網の弱さでしょうかね。海外旅行に行くと、どの地域に行っても、燃費が悪く、頭も悪そうな某欧州メーカー製のトラック、バスが幅を利かせています。
それに比べると、日本の大型車は何とスマートに見えることか。
バスなんかもよくよく観察すると面白いんでしょうね。日本のバス会社は結構、早いサイクルで新型車を投入しています。
今は、かなり大型車も業界再編されてしまいましたが、国内市場がそこそこ大きいので、乗用車同様、多くのメーカーが共存してきました。
大型車の展示スペースを回ってみて、日本は本当に自動車大国なんだなと、あらためて感じさせられました。