日中首脳会談で、日本と中国が貿易決済に日本円と人民元による決済拡大で合意しました。基本的には双方にとってメリットの大きい、いいニュースだと考えています。米国紙なんかでも割と大きく取り上げられていて、論調としては「人民元が国際通貨として大きな一歩を踏み出した」と好意的に受け止められているようです。
日本がこの十数年、深刻なデフレに陥った大きな原因は米ドルにあるので、どれだけ効果があるかは分かりませんが、少しはデフレを緩和する要因にはなるでしょうね。中国にとっても、ドル、ユーロで痛手を被っているので、現在、世界で最も安定している円、人民元決済を推進しない手はないでしょう。
米国とその手下である財務省に完全に支配されている、野田政権にしてはよくやるなと思いました。このニュースを見た時は目を疑いましたが、当然、裏があると考えておいた方がいいのでしょうね。
イラクはサダム・フセインが石油代金の決済をドル建てからユーロや円建てに変更すると表明したことが、米国の怒りに拍車をかけ、つぶされてしまいました。だから、米国は当然、自国通貨の価値や存在感を貶めるような動きには、常日頃から敏感であると考えられますね。
米国紙の論調からすると、米国は日本をけしかけて、中国の通貨を少しでもコントロールしたい、通貨政策に介入したいと考えて、野田政権に今回の合意をさせたと見ることができます。
キリスト教的な世界観、論理ともかかわるのですが、米国や欧州は、私企業や民間団体、個人間のビジネスで、政府が介入したり、人為的な操作を行うのを嫌います。だから、自由な経済活動を拡大することで、中国の国家が管理するやり方を変えたいという思いは強いでしょう。
それと合わせて考えておかなければならないのは、その「自由」を逆手にとって、世界秩序を自分たちの有利なものにしたいという論理もあることです。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)なんてまさにそうですね。「自由な経済活動を保障」するといいながら、その実は米国企業が協定締結国の市場を荒らし、政治的にも介入しようという思惑が見え隠れします。
このところ、米国の魂胆は、完全に見透かされているんですよね。したたかな中国のことだから、当然、米国の思惑も織り込み済みです。先述の通り、人民元・円決済を拡大すれば、“国際通貨”として対外的にアピールできるし、必要以上にドルやユーロを抱え込まずに済む。
多分、中国はその実だけをうまく取って、必要以上に通貨政策に介入されることはブロックするでしょう。何しろ、ニクソンショック以降、プラザ合意を経て、米ドルを大量に抱え込んだ日本がどういう目に遭わされたか研究し尽くしています。
それと同時に、中国は義務やコストのかかるかつての英国や米国型の覇権は求めていませんが、中国にとって都合のいい形で世界で主導権を確立するにはどうべきか考えているでしょう。こんかいの合意を利用して、ドルの価値をさらに低下させることで、中長期的に米国の国力を奪っていくことを計算しているはずです。
はっきり言って、野田政権に中国とこのような合意をさせた、米国の世界戦略はミスですよね。天文学的な借金を抱え、貧困国へ転落しようとする中で、せっぱつまって、何かを仕掛けようとしているのですが、何をやっても裏目裏目です。ダメ人間が陥るスパイラルに完全にはまってしまっていますね。
そのダメ人間に操られ、醜態をさらす一方の野田政権ですが、今回の合意は、今後の世界の動き、歴史を考えるうえでは、下手をすれば、ノーベル賞級の動きだと評価できます。ただ、当の本人たちは、米国の命令するままに動いただけで、自覚はまったくないでしょうけど。これは佐藤栄作首相のノーベル賞と同様ですね。
もっとドラスティックな動きを期待しているので、日々の動きは遅くて、かったるくて仕方ないですが、歴史は確実に前進しているのです。やはり日々の動きはしっかりウォッチしておかなければなりませんね。