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追い詰められる家電業界


  日々金融市場と対峙し、日本経済をウォッチする者としては、昨日流れたパナソニックのテレビ事業縮小のニュースはきちんと分析しておかないといけないでしょうね。
  このブログをよく読んでいただければお分かりの通り、折に触れて日本の家電メーカーについてコメントしてきました。パナソニックがプラズマから撤退して液晶に一本化すべきだという趣旨のことも述べています。見立てがほぼその通りになりつつあるのはうれしいですが、まさかこんなに早くそうなるとは思っていませんでしたし、予想以上に日本のメーカーが苦境に陥っていることが分かり、ショックでした。
  経済ジャーリストの財部誠一さんなんかが、かつて、中村邦夫社長(現会長)が、従来の松下電器産業の組織を大規模にリストラし、「中村革命」「中村改革」とかもてはやしましたが、プラズマ事業はその時の遺物であり、つい最近まではそこそこうまくいっていたわけですが、一気にお荷物事業に転落してしまった形です。
  日立製作所がすでにテレビの自社生産をやめるということを発表していますが、流れからすると、プラズマ、液晶ともに協力関係にあった(パナソニックのテレビ技術は日立に負うところが大きいです)、パナソニックが日立の事業を引き継いで、国内テレビ業界再編につながるのかなと思っていました。プラズマ事業に撤退、縮小の動きがあるとすれば、金融恐慌後にあわててアクションを起こすのではないかと予想していたので、このタイミングでの発表は意外感がありますし、英断だと思います。
  テレビは家電の花形ですが、世界トップの韓国・サムスン電子ですら、収益の上がらない事業になりつつあります。グローバルでの販売網が弱く、しかも、コストが割高な日本メーカーが太刀打ちできる状況ではありません。
  円高云々がいわれていますが、そうではありません。テレビは値崩れが止まらず、いまや平均1インチ=1000円の時代です。かつては、軽自動車が買えるくらいの値段だった、50型、60型テレビが20万円も払えばおつりがくるのです。
  パナソニックはリーマン・ショック前後に、尼崎にプラズマパネル工場、姫路に液晶パネル工場と、大阪湾岸で巨大な投資を行っていますが、投資を決めた当時、だいたい1インチ=4000~6000円くらいだったと思います。このままでは、投資の回収するすらおぼつかないですね。
  尼崎工場では、プラズマの生産ラインを一部、ソーラーパネルに回す計画もあったようですが、今朝の朝刊報道などを見る限り、それも白紙になったようです。中国メーカの台頭で、ソーラーパネルの価格下落も、テレビに負けず劣らず激しくなっているためです。
  テレビを収益の柱に位置付け、三洋電機を買収して、ソーラーパネル、自動車やパソコン向けリチウムイオン電池など繰り返し使える二次電池を成長のエンジンとするパナソニックの中長期の経営計画があったわけですが、根底から覆された形です。
  今のパナソニックで安定的に稼げる分野は、テレビなんかと比べると価格下落の影響が少ない、白物家電とか、住宅設備とかそんなところでしょうかね。ブランドの統一と先進的なイメージで社名を松下電器産業、松下電工からパナソニック、パナソニック電工に変更したわけですが、アップルのiPhoneとかiPad、サムスンのギャラクシーのようなスマートなイメージのある商品は何一つ打ち出せていません。はっきり言って見かけ倒し、看板倒れでしょう。
  国内に限っていうと「松下さん」「ナショナルさん」の方が親しみがあっていいと思います。ブランドが分裂すると維持費用がかかることも理由のようですが、今となってみれば単なるリストラにすぎず、日本的な経営で親しまれ、信用を得てきた企業にも、金融資本主義の毒が回ったという感じですね。
  日立や東芝、三菱電機といった関東のメーカーは、国策会社でもあるので、発電所とか鉄道などのインフラ、防衛、航空などの分野にかかわっているので、それなりに事業の柱はもっており、生き残っていくのでしょうが、家電オンリーの関西のメーカーは、生き残りの道筋が見えないですね。
  パナソニックと同じような事業構造を持つ、シャープも同様です。堺に大規模な液晶パネルとソーラーパネルの工場がありますが、シャープはプラズマがなく、液晶に特化し、パネルの外販でも稼いでいるとはいえ、価格下落でじり貧状態ですね。いずれ事業改革を余儀なくされるでしょう。
  ソニーもテレビ事業が苦しいという点では同じで、かつて世界を席巻したAV事業の不振は目を覆うばかりですが、巨額投資が必要な液晶パネルは外部調達しており、パナソニックと違い、世界的な知名度、販売網があり、やり方次第では逆転が可能です。
  パナソニックは良きにつけ、悪しきにつけ、今の日本を象徴しています。ブランドスローガンの“ideas for life”ですが、社名同様、すべっています。そもそも、「まねしたさん」と揶揄されるぐらい、ソニーやほかのメーカーのモノマネ、追随でやってきた会社で、その企業体質は何ら変わっていない。最近では妙なプライドがじゃましているのでしょうか? それとも体力が相当消耗してしまったのか、モノマネすらままならなくなっています。ソニーのウォークマンをまねしたように、サムスンのギャラクシーを追随できないようです。
  モノマネどころか、M&Aで他社の事業を取り込んでしまうというのはいかがでしょうね。これこそが金融資本主義の害悪でしかないと思うのですが。中村革命で捨ててしまったソーラーパネル事業を三洋買収で、リカバーして、悪びれもせずしれっと、三洋の「Hits太陽電池」をパナソニックブランドで、しかもご丁寧に“ideas for life”のスローガンを付けて、さも自分たちのものであるかのように宣伝して売っていますが、そんな会社に未来はあるのでしょうか?
  もっと、苦しんで、苦しんで、苦しみぬいた上で、何かを生み出さないと、本当の意味で革命とか、改革は成し遂げられないのではないでしょうかね。
  今は、いろいろとちやほやされるアップルだって、試行錯誤と苦難の時代が続いて今の成功があるのです。それだってサムスンとの競争でいつまで続くか分かりません。常に試練を受け、それを乗り越えてこそ、真の強さを身に付けるのだと思います。まだまだ甘いでしょうね。
  従来の延長上で家電をつくっていても、激しい競争と価格下落で商売にはなりません。アップルのようにこつこつブランドイメージを築き、芸術性やストーリー性を追求するのは一つのサクセスストーリーですよね。
  あるいは泥臭く成長路線を追求するならサムスンのように地雷をかいくぐり、伝染病もものとしない営業で、世界のどんな僻地でも、商品を売り込むガッツがないといけない。物がなく、貧しかったころの日本で、多くの人のために手が届く範囲で商品を提供し続けたのが、創業者松下幸之助氏の功績ではないでしょうか。
  新興国にいきなり、ベンツやBMWといった高級車を売り込もうとして拒否されたような状況なのが現在のパナソニックであり、大衆車、軽自動車からこつこつと信用とブランドを築いて今があるのがサムスンです。
  人々に身近なラジオ、電球、延長コードから始めたように、小さなことから始めることこそ、「幸之助精神」につながるのではないでしょうか。新興国の富裕層に高級品を売って、攻め込もうという発想は楽して金を稼ごうというのと同じで安易で、本来の社風を忘れて、金融資本主義の毒が回ったというような感じですよね。
  まあ、「過ちて改むるに憚る勿れ」のことわざはあるものの、今から始めたとしても遅きに失した感はありますが、目標を完全に見失ってしまった以上、何らかの現実的な経営方針を打ち出さざるを得ないでしょう。
  多品種少量生産で、ちょっとユニークな商品で存在感を打ち出すという、三洋の戦略は面白いと思いましたが、三洋を吸収してより大規模になってその発想ができるのかどうか。今の経営陣ははっきり言って、金融資本主義に毒されているようなので、あっと言わせるような変化ははっきり言って期待薄です。もっともっと苦しむのではないでしょうかね。「艱難辛苦汝を玉にす」といいますが、苦しみぬいて、何か生み出せるのか、脱皮できるのか、長い目で見たいですね。

一勝の重み

  今年のプロ野球は、ようやく順位が確定し、いよいよ残すはクライマックス・シリーズ(CS)、日本シリーズのみとなりました。セ・リーグは、最後の最後に中日ドラゴンズが最大10ゲーム差あった、東京ヤクルト・スワローズを花一つの差で追い抜く、最後まで目を離せないスリリングな展開。パ・リーグは福岡ソフトバンク・ホークスが独走状態でしたが、一時は最下位に低迷していた埼玉西武ライオンズが土壇場で、3位に食い込み、例年にない興味深いペナントレースとなりました。
  このブログでも、ヤクルト・ファンの視点で、主に神宮球場でのプロ野球観戦記を中心に、プロ野球をウォッチし、分析してきましたが、中日にせよ、西武にせよ、それぞれの強さについて、しかるべく評価しており、その意味で的確な見立てができていたかなと自負しています。
  勝負事は①基礎的な実力②運気は誰に味方をしているか③勢いはあるか-を見ていれば、かなりの精度で誰が勝つかという予想はできます。株式投資でどの銘柄を選ぶかや、どの通貨を買うか(ショートするか)、指数先物でどちらの方向に動くか、判断する際にも、応用することができます。
  中日は、8月下旬以降、怒涛の追い上げを見せたのですが、最後は、少し気が緩んでしまったのか、マジック1になってからが長かった。優勝が決まったのは、残り2試合を残してのところだったので、かなりきわどい価値だったということです。
  逆に言えば、ヤクルトは、中日との直接対決であと1勝していれば、優勝の目があったかもしれないのです。10月10日から13日の中日・ヤクルト4連戦で、ヤクルトが4タテを食らったことで、セ・リーグの優勝争いの帰趨が決まったわけですが、ここでヤクルトがもうひとふんばりして、せめて1試合で引き分けでもしていれば、最後までもつれた可能性があったのです。
  シーズン中は144試合を戦い、上り調子の時もあれば、下り坂の時もあるので、どうしても、流れに身を任せてしまうだけの試合も出てくると思います。それは仕方がないとしても、勝てる試合では確実に勝つ。負けてはいけないところでは踏みとどまる。そういう細かい努力の積み重ねが、優勝できるか、できないか、大きな差につながるのだと思います。
  中島、中村剛の華々しい活躍、そして、ベテラン投手、西口が奇跡の復活を見せ、一時期の絶望的な状況から這い上がった西武も同様です。勢いや運が味方した部分もありますが、元々、基礎能力は12球団でも1、2を争うポテンシャルのあるチームで、終盤、一試合一試合、丁寧に勝ちを積み重ねたのが、良い結果につながりました。
  中日、西武は投手陣も打線も、総じて恵まれているので、勝つべくして勝った側面はあります。ただ、ヤクルトやオリックスに比べると、勝ちに対する執念で上回っていましたし、ヤクルト、オリックスは実力では劣るのだから謙虚に試合に臨む必要がありましたが、雑でした。
  特に、ヤクルトはリードしている試合でも、代打、代走起用や、継投を誤り、明らかな勝ち試合を落としてしまうケースが終盤目立ちました。優勝したいという前向きな力が感じられず、それがファンにも乗り移ったのか、ホーム神宮の観客席は、「これが優勝をつかみかけているチームなのか?」と目を疑うほど、ガラガラでお寒いものでした。
  日々、トレードに携わる者として、学ぶべきところは多いのではないでしょうか。トレードの場合の勝ち負けは、単に1トレードで買ったか負けたかだけでは決まらないので、単純に野球とは比較できないのですが、絶対に負けてはいけないところで負けるとダメージは大きいですね。
  長年トレードをやっていれば、勝ちパターン、負けパターンは大体身についていると思うので、「どうやって勝ち逃げするか」に主眼を置くべきだろうと思います。
  私の場合、ロスカットが遅れるのは仕方がないと思っています。確信をもってエントリーするのですから、多少、歯を食いしばって我慢しなければならないことがあります。まあ、間違いに早めに気づけばいいのですが、なかなか、見えづらいこともあるわけで、結果として、ロスカットが遅れ、損を広げるのはしょうがないことかなぁと。
  逆に、どこで利食うかが重要なのではないかと思います。FXでぼろ儲けしている方のトレード方法を見ていると、30ティック利が乗れば確定するとか、50ティック以上は深追いしないとか、自分なりのルールを決めているケースが多いようです。
  深追いして、失敗するというケースは多いですからね。欲張って粘っても、利益を減らすということが往々にしてあります。よほど、明らかにここまで上昇、あるいは下落するという目標が見えているのでなければ、欲を捨て、吹いたところでさっさと売ってしまう方が、案外、いいような気がします。
  確定してから、さらに進んでしまうと、「もっと引っ張ればよかった」と、未練がましく思ってしまいますが、そういうところは、さばさばとした方がいいでしょうね。「利食い千人力」です。利益が乗っていたのに、いつの間にかロスカットというのは言語道断、最悪です。でも、たまにやってしまうんですけどね。
  確実に1勝を収めること。しかも、内容(そこそこの利幅)の伴った勝ちで逃げること。これを心がけたいですね。動きが読みづらく、目指すべき目標価格もいま一つよくわからないというところでは、勝手な期待で、だらだらとポジションを引っ張ってしまうことが往々にしてあります。
  でも、だらだらとやるんであれば、分かりやすいところ、見えているところで、さっさと利益確定してしまった方がいいんですよね。よく言われるようにたい焼きの尻尾と頭はくれてやればいいのです。
  これはメンタル面にも関わることなので、実行は難しいのですが、1勝、1勝をいい形で積み重ねることが、好循環につながるのではないでしょうか。

ささやかな楽しみ

  割と重宝していた、近所のコンビニが閉店し、1年ちょっとテナント募集中だったのですが、最近、内装工事を始めたので、どんな店が入るのかと思っていたら、緑の看板が取り付けられ、モスバーガーがオープンしました。隠れ(隠す必要もないのですが)モスバーガーファンとして、思わずガッツポーズをしてしまいました。
  やっぱりモスバーガーいいですよ。素材に質感がありますし、食べた後の満足感が違います。とびきりハンバーグサンドとチキンバーガー、サウザン野菜バーガーがツボですね。あと、チリドッグも好きです。
  これまで、最寄りのモスバーガーは地下鉄で2駅の距離だったので、どこかにいった帰りしなとか、気合をいれないと、行けなかったのですが、徒歩で5分かからない距離なので、これでいつでも好きな時に行けることになり、今からわくわくしています。
  ついでに吉野家とケンタッキーフライドチキンもできないでしょうかね(笑)。ケンタッキーは出店ハードルがかなり高いのでしょうか? 手ごろな場所にないんですよね。錦糸町にあったケンタッキーが最も近かったんですが、駅ビルの改装で消えてしまい、空白地帯になってしまいました。自転車で20分以上かけて行かないと最寄りのケンタッキーにはたどり着けません。
  マクドナルドは頼みもしないのにあちこち出店してくれるんですけどね。ケンタッキーはあるところにはあるんですけど、空白地帯の方が多いような気がします。米国のアニメ「サウス・パーク」でケンタッキー禁止令が出て、エリック・カートマンがKFCのフライドチキンの密売をするというストーリーがありますが、私も結構中毒です。オリジナルチキンが一番好きですね。
  モスバーガー最高なのですが、ロッテリアも好きです。おそらく生まれて初めて食べたハンバーガーはロッテリアです。幼い頃、某ニュータウンに住んでいて、近くの鉄道駅のショッピングセンターにロッテリアがあり、祖母に連れられて食べた味は忘れられません。ロッテリアのハンバーガーの味は、特別な記憶を呼び起こしてくれます。セットにロッテシェークがつけられるのもいいですね。チーズバーガーとポテト、ストロベリーシェークの組み合わせは最高です。
  牛丼チェーンは、モスバーガーを越えてちょっといったところにすき家と松屋があって、充実しているんですが、吉野家だけがないんですよね。定食があるので私は松屋党なのですが、牛丼に関しては、吉野家はいい味出してますよね。時々無性に食べたくなります。すき家の代わりに吉野家でいいんですがね。
  あと、蛇足ですが、餃子の王将もいいですね。私、ラーメン店めぐりのついでに、あちこちで餃子を食べますが、手ごろな価格と味という点で、王将よりおいしい餃子はありません。餃子どころとして知られる宇都宮で、何店か食べ歩いたこともありますが、餃子の王将3人前を一気に食べた時のような満足感は得られませんでした。
  最近は全国展開しているようですが、王将は関西が中心で、東京には数えるほどしかなかったんですよね。12、3年ほど前に高円寺で初めて王将に行った時は、感動しました。餃子2人前と、焼きそばが私の定番メニューです。
  すっかり、ジャンクフードに毒されてますね。でも、日本の外食業界は、競争が激しく、商品開発やサービスがきめ細かく、バラエティーに富んだメニューを楽しめます。時代の流れや勢いを感じるという意味でも、非常に興味深いですね。どうでもいい話で失礼しました。

ガス抜き

  「よっ!ダメ人間。お前ら、相変らずバカか?」。寅さんが生きていたらそう言っていたかどうかは分かりませんが、ニューヨークのウォール街から始まった、反格差、貧困デモは世界中に広がり、日本でも昨日、新宿や日比谷公園で、訳の分からない集会と行進が行われていました。反原発の人たちも、もぐり込んでいて、日本は際立って特異な状況でした。
  ゆとり教育の影響なんでしょうかね? 日本だけでなく海外でも。もちろん、中にはいろいろと考え抜いて抗議行動に参加した人もいるとは思いますが、「金持ち=悪」という単純な構図をつくり上げて、怒りをぶちまけていましたけど、そんなことやってどうなるの?
  かつて、学生運動をやっていた人たちも、たいがい馬鹿でしたが、人間は過去からは何も学ばないのですね。彼らはマルクスを信奉していました(するふりをしていました)が、世の中の何が間違っているのか、何がおかしいのか、論理的な筋道がまったく示されていません。
  貧困から這い上がれる人、あるいは金持ちになる資格のある人は、デモなんかやっている暇があれば、どうやったら困難な状況から抜け出すか、勉強して、努力して、働いていると思います。自分たちの無能さを棚に上げて虫のいいことだけを並べ立てて、どうしようというのでしょうか? そんなくだらない人間のいうことを誰が真剣に聞切れるのでしょうか?
  学生運動と適当に距離を置いていた人たちは、良い就職先をさっさと見つけ、過去とはきれいさっぱり決別し、今頃は、重役とか経営者になっています。世の中、そんなもんです。だから適当なガス抜きにはなるでしょうが、世の中を本気で変えるような力にはなりえないでしょうね。何より迫力がありません。
  確かに今の世界経済はおかしいんですよ。でも何がおかしいのかきちんと筋道立てて説明し、多くの人に納得してもらい、たとえば選挙で代表を送り込んだり、株主総会で議決権を行使するようにしないと何もいみがありません。
  リーマン・ショックで、経営破綻の危機に瀕し、公的資金で生き延びた金融機関の経営者や役員、社員が高給をもらっているという状況は、本来、破産して、株主代表訴訟を起こされたり、失業者として職探しをしなければならないわけで、どう考えてもおかしい。それは、しっかり追及するべきでしょう。ウォール街のデモを報道などを通じてみる限り、確かにそういう点をアピールしていますが、甘いですね。具体的に「戦犯」をあぶりだして、“金融犯罪人”として訴追するぐらいの迫力がほしい。
  日本や韓国、台湾なんかでもデモが行われたようですが、アジアの若者が貧しいのは、金持ちが原因ではないですよね。まあ、金持ちが米国の金融資本主義を牛耳っている人たちであるならば、それは正しいとは思いますが、漠然と金持ちに対して抗議していますよね。彼らのアピールを見る限り。
  米国そして欧州が金融ばくちを繰り返し、身の丈に合わない消費を繰り返し、返済する当てのない借金を積み重ねたから、そのとばっちりを受けたのです。いくら貿易でお金を稼いでもドルの暴落で、利益が目減りしたり、米国債を購入させられ、しっかり利益を搾り取られ、本来、国内に回るべき金が回らないから不景気が続くのです。
  日本や韓国、台湾の若者はかわいそうだと思いますが、単に金持ちを批判するのではなく、欧米がつくって、自壊しつつある金融経済システムについて、もっとしっかり勉強し、批判すべき点を批判すべきでしょうね。
  米国がきちんと経済運営し、正しい経済原則がはたらけば、アジアには、もっと巨額のお金が回っていたはずだし、とっくに欧米は没落していたほどの繁栄を享受していたでしょう。
  「ウォール街を占拠せよ」をただ単にファッション感覚でまねているだけなんでしょうね。ウォール街に集まっている人たちはアジアにとっては、「敵」ですからね。「おまえらの国はちゃんと借りた金を返すべきだ」と言ってやることです。奴らの国が私たちにやってきた仕打ちは、決して許すことができない暴挙です。
  この構図をわかっていないんでしょうね。ゆとり教育にどっぷりつかってしまった若者は、もっとものを考える習慣をつけた方がいい。金融経済の支配者を脅かすような、鋭い批判は何か考えるべきです。
  アジアでは「○○を占拠せよ」ではなく、ずばり「反米」あるいは「反欧米」で、いいのではないでしょうか。そうすれば、敵は何かをはっきり識別できる。
  それに、政府と結託して暴利をむさぼる連中を除いて、金持ち自体は敵ではないでしょう。人間にはそれぞれ才覚があり、金持ちになる人なれない人、人望を集める人、人望のない人がどうしても出てきてしまいます。それが人類の歴史です。また、お金という動機で、世の中、華やかになったり、新しい技術が生まれたりもせ売る。
  金持ちがいなくなったソビエト連邦では、今度は、権威主義がはびこり、共産党での地位がどうとか、町内会での地位がどうとか、お金とは違う尺度で、人間の差別が行われるようになりました。「格差」が起きるのは必然なのです。
  ただ、過度な格差や、理不尽な格差に対しては、何らかの対処をしていかなければならないでしょう。そこはしっかり訴えるべきでしょうね。
  チュニジアやエジプト、そしてイスラム諸国で起きている、反政府運動も根底には「反米」「反金融資本主義」があったのですが、欧米やイスラエルなんかが巧妙にコントロールして、結局はおかしな方向に進んでいます。
  何が問題なのか、はっきりさせないと、いつまで経っても、何も変わらないし、単なるガス抜きで終わってしまいます。いずれ内部分裂して、内ゲバみたいなことも起るんでしょうね。それこそが支配者層を喜ばせることではないでしょうか。

道連れ

  昨日、一昨日あたりは米国と韓国のFTA締結のニュースがやたら流れました。ああいうのは明らかに洗脳というかプロパガンダですね。「日本もバスに乗り遅れるな」という危機感をあおって、環太平洋連携協定(TPP)参加に持ち込もうという意図が露骨に感じられます。経団連(その上部団体が米国政府)の意向を受け、メディアが操作されたということでしょう。
  ウィキリークスでも流出したので、米国が何を考えているのかは明白ですね。“自由経済”の名の下、アジア太平洋地域でイニシアチブを取り、自分たちの都合よく支配しようということです。10年前に日本の金融機関を攻撃して、完膚なきまでに叩きのめして、支配下に置いたように、農業や保険などさまざまな分野に触手を伸ばそうとしているわけです。
  日本のメディアはアホなんですかね? そもそもFTAとTPPは似て非なるものです。FTAは2国間の協定なので、細かい条件は2国間の交渉で詰めることができますが、TPPは多国間なので、有象無象、さまざまなわなが仕掛けられていてもなかなか、覆すのは難しい。しかもいったん締結した後に「足抜けしたい」と言っても、他の参加国から一斉に攻撃されるのは必至で、自主、自立を捨ててまでそんなものに参加する必要はあるのかということです。
  しかし、まともに同じ土俵で競争したら、はっきり言って、日本が米国に負ける分野は何一つないと思います。米国が力でねじふせようとして、政治力を行使するから負けるのであって、例えば金融なら、本来、日本の金融機関が持っていたきめ細かなサービスや、取引先との綿密なコミュニケーション、業務の正確性など、金融機関として当たり前の業務は、米国の金融機関にはできません。
  こちらを丸腰にさせておいて、暗闇で棍棒で殴りつけるという、強盗のようなことを米国はやったのです。TPPによってさらに、広い範囲で強盗行為を働こうとしているのです。
  韓国がFTAで米国への輸出で有利になるといいますが、一国が輸出でぼろ儲けしようという時代はもう終わっています。貿易摩擦や為替、資源調達、災害などさまざまなリスクを勘案して、消費地に近いところで生産を行うというのが世界の流れで、日本は韓国の一歩先どころか、背中が見えないくらい遠くに進んでいます。
  米国でのビジネスを拡大したいなら、日本から船でモノを運ぶよりも、ドルが暴落中の米国で生産したほうがコストは安く、効率的だし、さらにコストを下げたいなら、メキシコに工場をつくって、輸出する方法もあり、日本の技術や商品開発力を生かして、メキシコでモノづくりをした方が、韓国から輸出したものよりもはるかに競争力が高いです。
  それに、韓国が輸出を拡大させているといっても、ウォン安の影響はやはり大きいです。別に韓国製品が魅力的だから買っているわけでなく、リーズナブルな値段で、そこそこの商品がつくれるから選ばれているわけであって、貧乏な米国人は韓国車やサムスンのテレビしか買えなくなっていますが、“日本ブランド”が浸透している金持ちの中国市場ではトヨタやニッサンのそこそこのクラスの車がばんばん売れ、海外メーカーでは断トツで日本のソニーやシャープのテレビが人気です。
  今の李明博政権は、完全に米国の傀儡政権であるので、韓米関係は、小泉政権時代の日米関係以上に良好です。だから、韓国を優遇することで日本をけん制しようという意図はありありと感じられますね。そんな単純なトリックに引っかかってはいけません。米国は韓国など北朝鮮の恐怖を利用して、いつでもひねりつぶせると考えているから、泳がせているだけです。
  何で落ち目の米国の言いなりにこれ以上従わなければならないのか? もちろん、日本の農業は問題を抱えているし、地方活性化、過疎の問題を合わせて、抜本的な改革をしなければならないのですが、その解決策をTPPに求めることは筋違いでしょう。保険などの目玉分野も同様です。
  得体のしれない遺伝子組み換えの農作物や、ジャンクフード漬けにされて、もはや末期症状の米国人のようになりたくないし、アヒルが出てくる、気色の悪いCMでおかしな保険商品を買わされ、健康や老後の不安を増大するのも断固としてお断りです。
  米国が没落したら、韓国という国は苦境に陥るでしょうね。今はジャイアンの力を背景に、虎の威を借るスネ夫みたいなもので、いろいろと偉そうにしていますが、一皮むけば貧しい国なのです。
  朝鮮半島が統一されたら、韓国がイニシアチブをとるような考えを多くの人が持っているかと思いますが、私は全く逆の立場ですね。北朝鮮が韓国を吸収するのではないかと思っています。中国やロシアの影響下にある北朝鮮の方がポテンシャルがあると考えた方がいい。
  米国は、国家破綻して中国やロシアに国力で抜かれるのです。その米国の威光を背景にしているにすぎない韓国がのさばるのを中国、ロシアが許すのか? 朝鮮半島は両国にとって安全保障上重要な位置にあり、まずは韓国をつぶすというのが常識ではないでしょうか?
  国の成り立ちからしても、第2次世界大戦後、どさくさにまぎれて韓国という国がつくられ、出自があやしいのに対して、北朝鮮もでたらめな部分が相当あるのですが、金日成を中心に朝鮮人が団結してみずから建国したという「正統性」があるのです。韓国人が北朝鮮にシンパシーを感じるのは建国の歴史の違いがあるという面は大きいと思います。
  中国の軍人は朝鮮戦争を戦った世代は、北朝鮮については思い入れが強いですね。みすみす米国の息がかかった韓国に主導権をゆだねるとは思えないし、もしそうなれば、中国の指導層は軍人を敵に回すことになりかねない。
  こうしたこともあって、米国がいなくなれば、中国、ロシアによって朝鮮半島は処分されることになるでしょう。統一朝鮮半島は北朝鮮が主体となって、(中国、ロシアの意向を受けて)統治する方向になります。そのことを謙虚に認識しておかないと、韓国人は再び悲劇に見舞われることになります。
  台湾についても同様ですね。ただ、台湾については、国際政治を超えた部分で、日本との精神的な結びつきが強いので、実質的には中国の配下にありつつありますが、独自の日台交流は続くでしょう。東日本大震災の時の台湾の反応は忘れてはならないでしょうね。米国の没落で世界の勢力図が変わる一方で、国家がしゃしゃり出るよりも、民間の交流が地域を動かす時代になっています。どれだけ中国の存在感が増そうとも、人々の意識の方が先を進むでしょうね。
  まあ、とにかく、TPPについては、もうちょっと大局的に考えるべきでしょうね。韓国は意図しているかどうかは別として、米国と道連れ心中するつもりのようです。素人感覚で米国と、中国、ロシアのいずれにつけばメリットは大きいか、分かりそうなもんですがね。小国、属国の悲しいところです。