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ラーメン道 地価押し上げる!? 埼玉・川越編1



  「川越の地価を上げる!? 名店!!」。食べログにこんな挑発的な口コミコメントが出ているのを見つけたら、チャレンジしないわけにはいかないでしょう。しかも、私が持っているラーメン雑誌のランキングでは、埼玉県ではナンバー1の評価。相手に不足なしとはまさにこのことでしょう。
  気象庁の長期予報によると、今年の夏は冷夏なのだそうですが、春先からすっきりしない天候が多く、確かにこれから夏が来るという実感が湧きません。それでも、昨日、東北の一部と北海道を除き、全国的に梅雨入りしたということなので、季節は確実に前に向かって進んでいるということでしょう。
  本格的に梅雨入りしてだらだらと雨が降る前に、外出して英気を養っておこうと、いろいろリサーチしていたら、このつけ麺店の情報にヒットしました。
  この日は、台風が本州に接近し、うっすらと雲がかかっていましたが、雨は降りそうになかったので、川越行きを決行しました。
  この川越も最近でこそ、昔ながらの蔵や民家が残る「小江戸」として、頻繁にテレビで取り上げられるようになり、何と年間600万人もの観光客が訪れるそうですが、ちょっと前までの感覚だと「川越ってどこ」「何があるの」という感じだと思います。メディアの影響力というのはすごいと思うし、そうしたものを利用して情報発信することで、観光地として売り出していくというビジネスモデルが確立しつつあるんだなと感じさせられます。
  個人的には、川越に住んでいる知人が、飲み会のたびに終電がどうのこうのいうので、「はるかかなたの地」という印象しかありませんでしたけどね。


  で、池袋から東武東上線の急行で30分とちょい。「意外と近いじゃん」という第一印象。駅前は駅ビルとか中型の商業施設、商店街がある、ごく普通の首都圏郊外の主要駅にありがちな風景が広がります。
  東武の川越駅はJRの駅に隣接し、そこから1キロもないようなところに東武の川越市駅があり、さらに旧市街地寄りに西武新宿線の本川越駅があるというごちゃごちゃしているところは、いかにも埼玉という感じです。交通の便はそこそこ良いのですが、整理し切れていないという。




  今回訪れた、埼玉ナンバー1ともいわれる、つけ麺(ラーメン)店「頑者」は、「地価を押し上げるかも」という評価の通り、本川越駅のそばの立地の良い場所にあります。もうちょっと情緒がある街並みかと思っていたのですが、PePeがあり、いかにも「西武王国」という雰囲気をただよわせていて、海外にも売り出し中の観光地の玄関口という感じはしませんでした。
  頑者はユニークなスタイルで、客が順番に入店するのではなく、一度に12人ずつの入れ替え制となっています。私は午後1時前に店に着いたのですが、なんとラッキーなことに、ぎりぎり行列の最後尾12人目ですべり込みセーフでした。この日はラーメンの神様が味方してくれたのでしょう。


  私の直後に来た人は一歩及ばず、12人が食べ終わるまで、さらに20~30分も待たなければならないという、ある意味理不尽なシステムで、さすがに食べログの口コミでも否定的な意見が目立ちますね。
  とはいえ、都心の新興店同様、接客は気合が入っていて、“定番”のがたいのいい黒Tシャツの4人衆がてきぱきと切り盛りしていて、不快な印象はありませんでした。
  せっかくなので、つけめんチャーシュー(1100円)の大盛(100円)を奮発して注文しました。列に並んで10分ほどして前の12人がすべて食事と会計を済ませたところで、店内に案内されました。


  事前に注文を取った割には、つけ麺が出るまでには時間がかかりましたね。5分ほどして、ようやく“着丼”。鶏ガラ、豚骨の動物系とカツオ、煮干し、昆布の魚介系をミックスした、つけ汁とのことですが、動物、魚介のダブルスープの場合、往々にして濃厚になりがちなところを、澄んだ、さらっとした感じに仕立てていました。興味が湧きます。
  つけ汁を最初に口にした印象は、見た目通り「あっさりしているな」という感じでした。というより、濃厚タイプのものばかり口にしているせいか、やや物足りなさがありました。動物系よりもむしろ魚介系を前面に押し出しているようなのですが、太めで弾力のある麺に押されてしまいます。魚粉が添えられているんですけど、これをつけ汁に溶いたり、麺にからませたとしても、力不足でしたね。
  豚骨魚介系のつけ麺は、どうやら同じような味に収斂しつつあり、悪くいえば画一化しつつあるようなのですが、理由はわからないでもないですね。重量感のある、もちもちした麺をつけ汁で包み込むとしたら、豚骨あるいは動物系の味を強めに出さないと、麺の迫力に負けてしまいます。魚介はつけ汁を引き立てるにはいいですが、主役を張るのは難しいということでしょうね。細麺なら、まだよかったのかもしれませんが。
  だからパンチがないというか、もうひと味ほしかったですね。例えば東池袋「大勝軒」系のような酸味を加えるとか、大泉学園の「蕃茄」なんかのように、トマトソースやチーズなどイタリアンテイストに仕上げてしまうとかしないと、物足りなさを解消できません。ちなみに300メートルほど離れた場所に中野の「大勝軒」系の「川越大勝軒」もありますが、そこは行列はできていませんでした。


  全体としては素材が厳選されていて、つくりはしっかりしていると思うので、ちょっと改良すれば、ものすごく良くなると思います。
  この日は平日だったので、それほど混雑はしませんでしたが、土日などは混むんでしょうかね。過去の写真を見ると、かつては何十メートルにも及ぶ行列ができていたようですが、舌の肥えている人からすると、「そこまでして」という評価が出るのではないかと思います。
  私と同じタイミングで入店したのは、サラリーマン風の人が6割強、あとは私も含め観光、散策目的で川越にやってきた感じでした。地元の人に愛されるのはいいですね。
  食べログでは、入れ替え制になじめないという声が散見されましたが、同感ですね。私は食べるスピードは決して遅い方ではないのですが、つけ麺を食べるときは、汁はねを気にして、どうしてもゆっくりになってしまいます。
  周りの人は結構、速いペースで食べていて、麺が5分の1ほど残っているときにすでに、早い人はお勘定を済ませていました。最後の方はせかされるような感じで、あまり居心地はよくなかったですね。
  つけ麺の根強いブームが続いていることに加え、川越自体が注目されているスポットなので、人気があるのでしょうが、他の有名店、人気店と食べ比べると、「おやっ」と感じさせられるでしょうね。
  さすがに地価上昇は持ち上げすぎでしょう(まあ、口コミのコメントは冗談めかしているのでそこまで本気に受け取らないでください)。「六厘舎」あたりなら分からないでもないですが(笑)。


  埼玉ナンバー1については、ラーメンの方を食べていないので、何とも判断できないですね。ただ、行列だけで判断しているなら、ちょっと的外れかもしれません。ラーメンブームで一躍脚光を浴びもてはやされたはいいが、その後鳴かず飛ばずのお店は何軒もありますからね。
  私が店を出た後も、頑者の行列は途切れず、最後尾の人は2回転ほど待たなければいけない状況でした。まだまだ支持は高いようです。

ラーメン道 地元じゃ負け知らず! 江東区編1



  味がはっきりした方が好きなので、これまで、タンメンにはあまり関心がなく、あまりいろいろとお話しする知識もないのですが、つけ麺の横綱「六厘舎」の姉妹店だということで興味が湧き、東陽町(と木場のちょうど中間地点の)「トナリ」を訪れてみました。
  タンメンといっても、生活保護問題の渦中の芸人さんに触発されたわけではなく(笑)、以前から超有名で行列のできるお店ということは知っていて、「いつか行かなきゃな」とは思っていました。ただ、ラーメンほどの情熱はなく、ほったらかしにしていました。最近なぜかテレビでやたらとこのお店のことが取り上げられ、しかも食べログによると、六厘舎の姉妹店ということを知り、俄然やる気が起き、チャレンジしてみようということになりました。


  結論から言うと、東京ではこのタンメンのジャンルはまだよく追究、開拓されていない分野であり、ジャンルの一つとして確立すれば、つけ麺ほどじゃなくても、野菜それなりにブレークするポテンシャルがあるのではないかということを感じました。
  一口にタンメンといっても、店によって全然違います。2月に西荻窪の「はつね」を紹介しましたが、はつねのタンメンは塩ラーメンをさらにあっさりさせた味付けで、肉類は入っておらず、トッピングは野菜のみで、純粋に鶏ガラベースのスープが味わえる、とても上品に仕上げてあるのですが、精進料理の領域で、こってり感とか筋のしっかりしたラーメンが好きな人には物足りないかもしれません。
  テレビやラーメンに関する雑誌の記事と写真を見て、トナリのタンメンは、長崎チャンポンに近い味なのかなと予想していました。実際に食べてみると、ほぼ想定通りの味でしたね。野菜たっぷりなのは、はつねのタンメンと共通なのですが、スープが鶏ガラ、豚骨ベースのコクがあるもので、トッピングにも豚肉やイカげそといった動物、魚介系のものがふんだんに盛り込まれています。
  私は初めて長崎に行った時、本場のあまりのおいしさに感動して、1日にちゃんぽん→皿うどん→ちゃんぽん→皿うどんと4軒はしごしたことがありますが、長崎ちゃんぽん系の味は好きですね。時々、リンガーハットに行ったりもします。
  あまりタンメンを食べたことがないので、細かいことは分かりませんが、東京でタンメンというと、はつねのようなごくあっさりしたものを出すお店と、中華料理店のメニューの一部で、中華丼にかかっているあんに近い中華テイストのものを出すお店、そしてトナリのように長崎チャンポン系のものを出すお店の主に3パターンあると思います。
  醤油ラーメンとか味噌ラーメンとかのように“色”がはっきりしているわけではないので、定義がややあいまいで、ジャンルとしてははっきりしていないですね。どこかのお店が有名になり、タンメンのスタンダードになればわかりやすいと思いますが、トナリはその可能性を秘めているかもしれません。




  トナリは地下鉄東西線の木場と東陽町のちょうどど真ん中にあります。平日の午後1時半ごろ、トナリに到着。店の前には十数人が列をつくっていました。テレビにたびたび登場するお店なので仕方がないかな、ということで列に並びました。
  よく見ると、店内も行列もほとんどはサラリーマン風の人でしたね。東陽町や木場周辺はいろいろなオフィスがあるので、ランチの定番になっているのでしょう。
  カップルとかいると、女性の方が食べるのが遅く、大概の男はバカだから、さっさと食べ終わったら店から出ればいい物を、女性が食べるのを待つので、どうしても回転が悪くなるのですが、時間勝負のサラリーマンが多いので、こういう行列は楽ですね。並んでいる人から事前に店員さんが注文を取るという手際の良さもあって、予想通り早く店内に入ることができました。
  お店の看板に「タンギョウ」とあるように、タンメンとギョウザのセットのタンギョウ(880円)が一押しメニュー。タンメン(720円)とギョウザ(400円)を単品で頼むより240円安いというお得なセットなのです。タンメンと唐揚げの「タンカラ」(880円)もあります。サラリーマンが多いという客層を意識したということでしょうか。がっつり食べたいという人にはうれしいですね。
  ということで、私もタンギョウの大盛(+100円)を注文しました。厨房では大量の野菜を炒めるため中華鍋を忙しそうに振っている様子がうかがえ、期待が高まります。


  先にギョウザが出来上がったので、まずはこちらから。880円のセットで付いてくるギョウザなので2、3個程度かなと思っていたら、6個もついていて、焼き加減もちょうど良く、具も野菜を売りにした店だけあって、しっかりした作りでした。
  ギョウザを2つほど食べた頃合いでタンメンが登場。提供直前にショウガを入れるかどうか聞かれます。全体のボリュームにやや押され気味なのですが、ショウガがあると味のアクセントになって最後までペースを落とさずに食べることができますね。ふんだんに盛られた野菜にテンションが上がりますね。はやる気持ちを抑えつつ、スープを一口。豚骨、鶏がらベースに、炒めた野菜のスープが融合して、奥行きを出していて、好きな味でした。予想通りのちゃんぽんに近い味でした。


  麺は六厘舎同様、浅草・開花楼製。やや平打ちの太麺でした。これもちゃんぽんを彷彿とさせるものがあるのですが(ちゃんぽんの麺は太くてやや丸型のものが多いですけどね)、弾力やかん水の配合具合などは、ラーメンですね。
  先述の通り、もやし、キャベツ、ニンジン、白菜、たまねぎ、青菜(小松菜?)、コーンなど野菜ふんだんな上に、豚肉、イカげそにかまぼこと、質、量ともにトッピングに力強さがあります。
  これで880円(と大盛で+100円)ですよ。「良心的」以外に形容する言葉が見つかりません。サラリーマンの人が多く集まるのがよくわかります。野菜が多いので週末なんかには、女性客が多くなるというのもうなずけますね。
  私が並んだ後、いったん行列は途切れたのですが、店を出た頃には、午後2時すぎにもかかわらず、再びサラリーマン風の人を中心に10人以上の列ができていました。
  リンガーハットも好きなのですが、近くにあれば間違いなくトナリしか行かないと思います。質、コストパフォーマンスともに充実していますからね。
  ただ、思ったのは、ちゃんぽんを食べなれている、長崎の人なんかからすると、「東京の人ってこの程度で満足しているの?」という感じかもしれません。
  長崎に行けば、もっと野趣あふれる、力強いちゃんぽんがたくさんありますし、長崎に限らず、地方に行けば、野菜が安く仕入れられるでしょうから、これくらいの量の野菜をつかった麺料理は簡単に出てくると思います。
  これまで東京にこういうお店があまりなかったから、長い行列ができているという事情はあるでしょうね。おいしいけれども、六厘舎のように他店と比べて、飛び抜けた味なのかどうかは、評価が分かれるということだと思います。


  たまたま、この時聴いていたTBSラジオの「たまむすび」のMCが博多大吉さんで、カラオケでは相方の華丸さんとデュエットで、修二と彰の「青春アミーゴ」を十八番としているということを語っておられ、吉本興業の中でも有名なんだそうで、この曲がかかっていました。
  サビを越えた部分の「地元じゃ負け知らず~♪」が妙に耳につくのですが、まさにトナリはそんな感じですよね。全国区のタンメン店になり得るのかどうかは分かりませんが、地元の人に熱烈的に支持され、愛されるお店であることは間違いないと思います。
  トナリのような良心的な路線に徹すれば、東京ではまだまだタンメン市場開拓の余地は大きいでしょうね。逆にこういうお店が少なすぎます。「幸楽苑」とか「東秀」とか「餃子の王将」といった中華系のチェーン店や、牛丼店が幅を利かせていますが、チェーン展開しなくても、ちょっとやり方を工夫すれば、ブレイクする可能性は大きいと思います。




  ちなみに、私は平日の午後1時から午後2時にラーメン店を訪れることが多く、大体はラジコでTBSラジオを聴いています。辛口の小島慶子さんのトークが大好きだったのですが、3月末で「キラ☆キラ」を電撃降板し、赤江珠緒さんの新番組を惰性で聞いています。
  最近、小島さんはテレビに出まくっていますが、“ラジオの女王”の称号通り、ラジオ向けの人だと思います。あの毒舌っぷりは天才的です。逆に赤江さんは優等生キャラなので、朝の情報番組に適任で、テレビ向けでしょうね。日替わりのゲストMCが、ピエール瀧さんとか、玉袋筋太郎さんとか、トークが面白いので裏番組の大竹まことさんの文化放送には走らず、TBSラジオを聴き続けています。
  テレビは全くダメですが、ラジオはまだTBSは存在感があると思います。小島さんを逃したのは最大の失策だと思いますけど・・・。ラジオって好きな番組があればそのまま選局を変えないですからね。以前は、スワローズナイターをやっていたので、ずっとニッポン放送だったのですが、最近は巨人戦しか中継せず、オールナイトニッポンも以前ほど魅力を感じなくなりました。


  まあ、TBSラジオも古臭いんですけどね。「ゆうゆうワイド」の毒蝮三太夫師匠の「ばばぁ、まだ生きていやがったんだ」の毒舌商店街中継とか、「あんたこそまだ生きてたの?」って感じだし、小沢昭一さんとかもそうですよね。結局は、昔ながらのやり方が安心できるということでしょうか。

ラーメン道 若者でにぎわう店 新宿編4



  4月に東京中の有名なつけ麺店を駆け回ったので、しばらくは距離を置こうと思っていたのですが、どうやら“中毒”になってしまったようです。10日に1度くらい豚骨魚介の濃厚なスープに漬けた、弾力のある麺が無性に食べたくなるときがあるんですよね。
  豚骨ラーメンは“常習性”があるといわれますが(笑)、豚骨スープは一度はまると、やみつきになる何かがひそんでいるのでしょうかね。今まで豚骨ラーメンに情熱を燃やしたことはありませんでしたが、私が大好きな、荻窪「丸福」は豚骨と鶏ガラのダブルスープで、これも時々、懐かしくなります。


  まさに五月晴れというにふさわしい、きれいな青空が広がる日曜日。西新宿の「俺の麺 春道」を目指しました。5月も天候不順で温度差があったせいか、軽度の風邪をひいてしまい、その日は家で積ん読していた本を片付けてしまおうか悩んだのですが、せっかくいい天気になったのだからと、自分を奮い立たせました。
  豚骨魚介のつけ麺を食べたかったのですが、日曜日が休業の店が結構あり、長い行列ができそうなところも嫌だったので、なかなか適当なところが思い浮かばず逡巡。情報誌でやっとこさ見つけたのが、このお店でした。
  正直、新小岩の「一燈」、東京駅八重洲地下の「六厘舎」、住吉の「中川會」を上回るレベルのつけ麺店はそうそうなさそうなので、「新規開拓してやろう」というほどの意気込みはありませんでしたが、有名店が集まる西新宿で、開店したつけ麺店というものがどういうものなのか、興味がありました。
  久しぶりに西新宿を訪れたのですが、日曜日の午後2時ごろって、そんなにラーメン店は混まないものなのか? それとも、スカイツリータウンとか新しいスポットに人が集中している影響なのか? よく分かりませんが、「麺屋武蔵」「味噌屋八郎商店」「蒙古タンメン中本」など、小滝橋通り沿いに居並ぶ有名店はどこも盛況なのかと思いきや、行列は全くみられませんでした。
  今回の目的地の春道も多少の行列覚悟ではいたのですが、小滝橋通りから西寄りに少し入ったお店に着くと、店内にはわずか2人しかおらず、閑散としていました。


  外出は気乗りしなかったのですが、がっつり食べたい意欲だけは強かったので、特製つけ麺(1000円)の大盛(+100円)を注文しました。
  つけ麺を待っていると、ぽつぽつと客が入り始め、近くの専門学校生か、それとも大学生かとおぼしき、20代前後の男性6人組が入店し、一気に満員になりました。しかも、直後に来た、年配の夫婦と娘とみられる客は店外で待つという状況。つけ麺ブームといわれますが、やはり、人気があるんですね。
  西新宿という立地も有利に作用しているのでしょう。情報通信系の企業のオフィスや、大学、専門学校が集まるので、平日はサラリーマン、学生が中心、週末は買い物客なんかも足を運ぶでしょうから、それなりの集客が見込めます。若い世代が集まりやすい場所なので、つけ麺という選択肢は受け入れられやすいでしょう。
  多くの店で、麺を水でしめて冷ましてから提供するつけ麺と、熱々の状態で提供する「あつもり」は分かれていて、この店では「あつもり」がメニューに書かれていなかったので、つけ麺オンリーかと思っていたら、6人組の人たちは、店員さんに食券を出す際に「あつもり」と言って通な感じで注文していました。すっかり常連さんなんでしょうね。
  ちなみに春道では昼と夜とではスープの味を変えているらしいです。昼は「豚骨×鶏×魚介」で、夜は「豚骨×鶏×煮干し」なのだそうです。
  客がほとんどいなかった時に入店したので、やや時間がかかり5分強でつけ麺が出てきました。つけ汁に七味がちょこっとふりかけられているのが印象的です。チャーシューが低温調理とやらのハムのような食感のもので、新小岩・一燈と同じようなタイプですね。私は煮豚よりもこちらの方が好きなので、うれしいです。
  そして、つけ汁をひとすくいして口に入れた感想。「薄っ・・・」。一瞬、面食らいました。味が感じられず、濃厚なスープを期待していたのに、「もしかしたら大失敗」と、背中にひやりとしたものが走りましたが、「何かの間違いだろう」と思い直して、つけ汁をれんげで底の方から上へとかき回してみると、豚骨魚介の独特の味が感じられ、胸をなで下ろしました。


  味は、それなりのレベルのつけ麺店で比較すると、平均的な味でしたね。まさに私が食べたいと思っていた味であり、期待を裏切らない味でした。麺も程よい弾力と太さで、つけ汁にマッチしていました。このクラスの味のお店はもっと増えてほしいですね。いつでも好きなときに気軽に足を運べるようになればありがたいです。
  もっとも、さすがに一燈、六厘舎、中川會といった大御所をひっくり返すような実力があるかというと、そこまでのパワーは及ばず、そういう意味でも期待は裏切られなかったわけですが・・・。
  とはいえ、このクオリティーなら余裕で合格点をクリアできています。新宿に用事があってふと、「つけ麺が食べたい」と思ったときに、立ち寄ってみたいお店です。

ラーメン道 完成度の高さに脱帽 葛飾区編1



  つけ麺に関心を持ったので、4月に集中して、気になるお店、メディアによく取り上げられて評判も高いお店を難店か回りました。自分の中ではある程度、ランク付けができていたつもりなのですが、まだまだ、つけ麺を語る上で知っておいた方が良い店はあるんだな、と思ったのが、今回紹介する、新小岩の「麺屋 一燈」です。
  おそらく、つけ麺通の方からすれば、「そんなの常識じゃん」というほど、超有名なお店で、私自身昨年夏ごろから、訪れてみたいと思っていたのですが、それほどつけ麺に対して情熱を抱いていなかったことや、新小岩方面はあまり足が向かなかったので、放置したままになっていました。


  最近出版されているラーメン雑誌で、この一燈はことごとく登場しますし、食べログの評価でも、4.0点超と、絶大な支持を誇ります。そんなすごい店をこれまで“無視”してきたわけですから、つけ麺に関しては、まだまだ知識が浅いなと、痛感させられます。
  一燈を訪ねたのは、5月22日。東京スカイツリー開業日で、スカイツリータウンを見学した帰りでした。ソラマチのグルメ街で、「六厘舎」の前に長蛇の列ができているのを見て、「久しぶりにつけ麺を食べたいな」と思ったのがきっかけです。
  ソラマチはどこも混んでいたので、どこで昼食をとろうか思案していて、新小岩なら錦糸町まで出れば、総武線の快速で1駅なので、そんなに遠くないので、思い立ったが吉日ということで行ってみることにしました。


  土砂降りの雨の中、午後2時すぎに店に到着。食べログの口コミから、行列を覚悟していましたが、私が着いたときには、お昼時は過ぎていて、雨も降っているせいか、並んでいませんでした。
  それでも10席ほどの店内は満席。「特製濃厚魚介つけ麺」(950円)の中盛(+50円)を選択しました。店内はサラリーマン風の人が目立ちましたが、地元の主婦と見られる人や、若い人もカップルを含めて、そこそこいました。私が入店した後に何人か、やってきて雨が降る中、店の外で待っていました。
  店内は若い男性の店員さんが3人ほど。声を出し合い、きびきびと動く姿は、新興ラーメン店にはおなじみの光景になりました。時間がたてば、客層も変わるだろうし、それに合わせてスタイルも変化するんでしょうけどね。
  券売機で食券を買う横から、そばについていた店員さんが、注文内容を厨房に伝えるんですけど、席に着いてからつけ麺が出てくるまで、ちょっと時間がかかりました。といっても10分ほどでしょうか。


  そして、待ちに待ったつけ麺が出てきたときの第一印象が、「ビジュアルがいい!」でした。つけ麺というと見た目よりも、どちらかというと中身で勝負みたいなところがあるのですが、麺にトッピングされた煮玉子、鶏と豚各2枚ずつのチャーシューがとても整然と盛りつけされていて美しく、つけ汁もちょっと上品な和食の煮物か、お吸い物のようなルックスでした。このお店は女性のファンも多いそうですが、納得です。
  いつものように最初の儀式である、まずはつけ汁の吟味。ほんの一口含んでみると、「ふーっ」と思わず、ため息が漏れてしまう味でした。この味は別格です。六厘舎のつけ麺を食べた時も、最初の一口は衝撃でしたが、私の個人的な感想では、一燈が六厘舎を上回っていると感じました。
  六厘舎をはじめ、多くのつけ麺店では豚骨魚介が主流ですが、一燈は鶏と魚介のコンビネーション。これまで豚骨魚介ばかりを食べてきたので、味付けが変わって、インパクトが大きかったというのもありますが、「濃厚」と銘打っているので独特の濃さはあるのですが、豚骨でなく鶏を前面にだしているので、すっきりと仕上がっていて、甘みに深さがあり、やわらかい味でした。
  チャーシューも、煮豚を使うお店が多いですが、素材の味を生かした、ハムのような感じで、おつまみとして単独で食べたくなるような味で、つけ汁とよく合っていました。
  さらにうれしいのが、つけ汁の中に鶏つくねが入っていて、シソ風味(柑橘類の皮も入っているのか?)と食感で楽しませてくれます。ホウレンソウも名脇役で、自家製麺の麺もほどよい太さと弾力でおいしいのですが、トッピングや具にも配慮が行き届いていて、この辺は間違いなく六厘舎を上回っているといえます。
  六厘舎との決定的な違いは、豚骨魚介か、鶏魚介かですね。ここは好みによって評価が分かれるところでしょう。私にはとても新鮮でした。おそらく一燈の店主もつけ麺を開発する際に豚骨を研究したと思うのですが、鶏を選んだところにセンスを感じさせます。麺はややもっちり感が強い、六厘舎の浅草・開花楼製の麺が好きですけどね。


  新小岩はなかなか行きづらいのですが、この味を求めて、ぜひまた再訪したいと思いましたし、つけ麺だけでなく、ラーメンも試してみたいです。近くに系列店があるらしく、ラーメン二郎のインスパイア系らしいのですが、ちょっと気になりますね。
  雨が降っていなければ、新小岩周辺をもっと散策してみたかったですね。かつて花街だったということで、ちょっと興味深いものがあります。
  今回、一燈を訪れたことで、私が考える東京のつけ麺店ランキングは、
    ①一燈(葛飾区・新小岩)
    ②六厘舎 TOKYO(中央区・東京駅八重洲口・東京ラーメンストリート)
    ③中川會(江東区・四ツ目通り)
    ④蕃茄(練馬区・大泉学園)
    ⑤麺爽 かしげ(杉並区・阿佐ヶ谷)
    ⑤麺や ポツリ(港区・浜松町)
ということにしておきたいと思います。

ラーメン道 ワンタンの存在感 西荻窪編3

  東京ラーメンの源流を探るシリーズ。源流というほど古いお店ではないのですが、ワンタン麺で一世を風靡したお店があります。ワンタン麺好きならば知る人ぞ知る浜田山「たんたん亭」なのですが、その創業者が新たに西荻窪で開業したのが「支那そば いしはら」です。


  たんたん亭の創業は1977年で、終戦直後に開業したラーメン店とは一線を画します。むしろ「新興店」ともいえるのですが、味のつくりは伝統的な東京ラーメンを踏襲しています。いしはらは2007年オープンで、店主がたんたん亭を開いた当初の原点に戻りたいという、強い思いを抱いて始めたお店ということです。
  都内各所で若い世代による新規ラーメン店の開業ラッシュという状況ですが、全くゼロから味を組み立てて、オリジナルの味を生み出すケースというのは、皆無といっていいと思います。どこかのお店で修業、または直接教えを乞うなどしなくても、触発されたり、影響を受けたりして、味をつくりだす、いわゆるインスパイア系がほとんどだと思います。


  たんたん亭は、東京ラーメンの骨格の部分を忠実に受け継いでいる点で、まさにインスパイア系で、ラーメン専門店がまだ少ない時代に、支那そば一本で道を切り開いたといういう意味で、“ラーメン起業”の先駆的存在だと思います。東京ラーメンの歴史を考える上で、押さえておきたいお店です。
  私が注目する美食家の方が「西荻窪は駅前が再開発されなかったおかげで、多種雑多な昔ながらの飲食店が残っていて、東京で一番おもしろい」と指摘していたのですが、確かに派手さはなく、ちょっと地味なのですが、味わい深い街並みが残っています。


  しかも単に古いお店が残るだけでなく、居抜きで若い世代が経営する、ちょっとしゃれた、創意工夫が光る料理店や雑貨店なんかが入店し、新しい活力も芽生えつつあります。
  支那そばいしはらも店主は、それなりにお歳を召されていますが、店の創業年数は5年足らずで、新しいお店ととして、西荻窪の街に新風を吹き込んでいます。


  お店の外観は、ラーメン店というよりは、小じゃれた料理店という感じです。実際に夜はラーメン店というよりは、むしろ居酒屋で、店内にはホワイトボードが掲げられ、「焼はまぐり」「鶏唐揚」「クジラベーコン」といったその日のお薦めメニューが書き込まれています。


  私は浜田山のお店には数度行ったことがありますが、西荻窪の新規開業したお店を訪れるのは初めてです。
  正直言うと、あまりワンタン麺にはこれまで、思い入れはありませんでした。決して嫌いではないのですが、ラーメンと食べるのであれば、焼き餃子の方が好きだし、ワンタンだとそれほど腹持ちがよくないというか、ボリュームがないので、ワンタン麺を選ぶなら、むしろ麺を大盛にしたり、チャーシュー麺でがっつりいきたいという思いが強かったですね。
  ただ、たんたん亭のワンタンは、そこら辺のお店とは別格で、ワンタンの中に餡がぎっしり詰まっていて、小龍包ほどではないですが、それに近いものがあります。食べごたえがあり、焼き餃子の食感に飽きた時や、水餃子っぽいものが恋しくなったときに、食べたくなりますね。
  ネックはややお値段が高めであることと、浜田山という、ちょっと足を運びにくい場所にあるので、荻窪駅前なんかにあれば、頻繁に通っていたでしょうが、ラーメンとしての完成度も高いのですが、これまで頻繁に訪れることはありませんでした。
  西荻窪というと、大好きな荻窪・丸福の支店があり、本店が割と午後の早い時間帯に閉まっていたりすることがあるので、どうしてもこちらの方に足が向いてしまうのですが、今回はたんたん亭にも久しく行っていないことや、新しく開店したお店の雰囲気が知りたいということもあり、訪れてみることにしました。
  支那そばいしはらは、西荻窪北口の細い路地沿いにあります。ワンタン麺好きの人は、かなりいるし、超有名店ということもあり、行列覚悟だったのですが、午後1時半ごろ、店に着いた時は、店の前には誰もおらず、店内に入っても、7席の小さなスペースなのですが、年配の女性と、昼間からビール中瓶で一献傾けている近所の人らしき60代後半ぐらいの男性1人しかおらず、ちょっと肩透かしを食らった感じでした。


  肉ワンタンと海老ワンタンの二つの味が楽しめる「ワンタンメンミックス」(1100円)を注文しました。普通ワンタンというとひき肉が入ったものがほとんどだと思いますが、海老入りのワンタンは面白いですよね。
  もし、支那そばいしはらに行かれる方がいれば、是非注目してほしいのは、麺を引き揚げるのに平ざるを使っていることです。昔ながらの職人気質が感じられますね。
  平ざるで麺をすくうのは技術がいるし、一度に3人前、4人前の麺をゆで、平ざるの微妙な加減で、1人前ずつ、ラーメン鉢に麺を持っていくシーンは、魅せられます。大盛の注文が交じっていても、事もなげに、きっちり計ったように麺を一度で引き揚げていきます。これも東京ラーメンの神髄ですね。
  最近はどこも、1人前ずつゆでる専用のざるを使うので、平ざるを器用に使って、機械のように正確に麺を引き揚げる職人芸を目にすることはめっきり減りました。
  3~4分で出来上がり。前回、たんたん亭に行ったのは10年以上前で、記憶はやや薄れていますが、懐かしい盛り付けのワンタン麺と対面しました。
  スープは鶏がらをベースにしつつ、魚介が立っています。味としては荻窪・春木屋に近いですね。支那そばと銘打っていますが、日本そばの要素もつよいラーメンです。
  久しぶりにワンタンを食べたのですが、このトッピングもいいですね。ラーメンのスープとは別に、ワンタンのなかの肉汁やだしが感じられ、飲茶を食べているような感覚になります。
  トッピングとしては、2種のワンタンのほか、チャーシュー一切れとメンマ、海苔、ネギと、シンプルなスタイル。チャーシューは小さめなのですが、これも肉汁が感じられてちょっとおいしかったです。メンマもしゃきしゃき感がありました。
  麺は、やや細めで、これは、まさに支那そばを意識したのでしょうね。ワンタンが入っているので、太目の麺だと、麺に意識が集中して、ワンタンのインパクトが薄れる可能性もあるので、いいマッチングだと思います。全体的に一体感が感じられました。


  繰り返しになりますが、このお店は終戦直後とか、昭和30年代とかに開業したお店ではないにもかかわらず(たんたん亭は昭和50年代ですね)、創業65年といってもおかしくないような、オーソドックスな東京ラーメンを味わえます。
  ワンタン麺を最初に始めたのは、どのお店なのか分かりませんが、今や押しも押されもせぬ、ワンタンメンと言えば、たんたん亭あるいは、支那そばいしはらと言われるぐらいの存在感があるのです。老舗と比べると、歴史は浅いのですが、風格があり、東京ラーメンの原点の一つとして考えたいお店ですね。