タグ別アーカイブ: B級グルメ

ラーメン道 とんこつの新境地 上野編2

  私はラーメン好き以前に日本そば党なので、日本そばの系統をひく、東京の醤油ラーメンが大好きです。最近は日経先物のブログでもラーメン紹介をするところがちらほらと見られますが、先物の日中の値動きがしょぼく、書くことがないということもあるし(単に文章力がないだけかもしれないですが)、ラーメンが根強いブームであるということもあるのでしょうが、伝統的な日本そば、東京ラーメンを踏まえた上で、論じる人は少ないですね。


  最近は、全国各地で、ラーメンで“起業”する人が増え、ご当地ラーメンや、東池袋・大勝軒、ラーメン二郎をはじめ、東京で修業したり、東京の人気店の影響を受けたラーメン店を地方でも見かけるので、全国各地のラーメンを知ることができて面白いですね。
  ただ、その半面、あくまでもラーメンなんて、所詮はB級グルメの範疇なので、「正統」とかいう概念を持ち込むのはどうかとも思うのですが、素材とか技術を駆使しているんだけれども、表層的な味覚に訴えかけるだけで、心に響かないラーメンも、ままあります。
  残念なのは、大阪のラーメン店ですね。大阪というと「きつねうどん」のイメージがあり、麺文化が栄えているようなイメージがありますが、大阪でおいしいきつねうどんのお店なんてほとんど見かけませんからね(それでも何店かは知っていますが)。
  大阪の日本そば店ははっきり言って終わっているし、あれだけ食に対する意識が高い地域にもかかわらず、ラーメンに関しては歴史が浅く、中には東京とか博多の味に影響されたりなんかして、おいしい店もあるのですが、全体的にどういう歴史的な流れを汲んでいるのか分からず、薄っぺらい感じは否めません。
  粉もん文化といいながら、広島ほどお好み焼き文化が根付いているわけでもないですからね。大阪の人はもう一度、自分たちの食文化を見直した方がいいのではないでしょうか。ポテンシャルはあるのですから、大阪の文化とか味覚に根付いたラーメンが出てきてほしいと思います。
  さて、私は日本そばと中華そばが融合した、東京ラーメンをこよなく愛するのですが、とんこつにも興味が湧いています。ほんのちょっと前までは無関心だったし、「あんなものはラーメンではない」という意識も強かったのですが。


  東京で開業する新興店は、伝統的な日本そば(魚介系)の流れを汲む店がやはり圧倒的に多いのですが、それと並んで、横浜の家系ラーメンとか、博多の影響なんかもあるのでしょうけど、とんこつベースの店も勢いがありますね。
  このブログでも、海外にも展開するラーメン界のキラ星、神奈川「なんつっ亭」の品川の支店を取り上げたことがありますが、とんこつラーメンに対する偏見を覆す、洗練された完成度の高いものに仕上がっていました。
  今回は新宿・小滝橋通りの「麺屋武蔵」の系列店、上野にある「麺屋武蔵 武骨」を取り上げたいと思いますが、麺屋武蔵もあちこちに系列店が増え、ラーメン界の一大勢力になりつつありますね。
  麺屋武蔵は昨年夏に初めて訪れたのですが、インパクトがありました。幅広く人気を取り込めるという点では、日本で1、2を争う最高水準ではないかと勝手に思っています。昨年12月に神田の辛くてしびれるミソラーメン店「鬼金棒」(厳密に言うと系列店ではなく系譜を引くお店なのですが)を取り上げましたが、今回は麺屋武蔵系の第2弾になります。
  なぜ、麺屋武蔵の系列店が新宿や渋谷、池袋、品川のような若者やビジネスマンが多くいるところではなく、上野にあるのかは分かりませんが、あちこちにおいしいラーメン店があるというのはいいことだと思います。街の名所になり、地域の活性化に役に立つでしょうからね。


  上野のいいところは、駅を出て、ちょっと歩くと、気軽に立ち寄れそうな飲食店がたくさんあることです。新宿、渋谷だと駅から遠いし、ビルの中にあるような店舗はちょっと敷居が高く、きっかけが必要なのですが、上野だとふらりと入れそうな気軽さがあります。
  武骨は、丸井上野店の東側の通りを御徒町方向に下った、以前紹介した油そば店「椿」と同じ通り沿いにあります。上野のアメ横やその界隈は、あか抜けないんだけれども、それでいてさすがに東京だけあって集客力はそれなりにあって、独特の雰囲気があります。


  お店は上野と御徒町のちょうど中間地点くらいにあり、メーンストリートから外れているので、人通りは決して多くはないのですが、平日午後2時前に到着したときには、満員で5人ほどが席が空くのを待っていました。
  メニューはスープの種類(色)に合わせて、大きく分けて3種類あります。ベーシックなとんこつと魚介スープを合わせた「白」、豆板醤を利かせた「赤」、そしてイカスミでつくった香油とマー油がスープを覆う「黒」です。私は「黒 武骨味玉らー麺」(850円)を選びました。
  店内は12席で、柱で席が二分され、それぞれ別の入り口からでないと入れないという、ちょっと変わった構造になっています。
  新宿の本店は店員がきびきびとしているのが印象的ですが、ここでも同様。麺をゆで上げたときの「よいしょ~!」という威勢のよい掛け声が気持ち良く響きます。


  黒を頼んだので、ある程度予想はしていましたが、イカスミの黒が強烈なインパクトでした。コーヒーの茶色がかった黒とは違う、藍色がかったインクのような黒光りが独特の彩りを放ちます。
  イカスミ香油はスープの表面を覆う程度で、れんげで軽くすくうと、すぐ下にはクリーム色のとんこつスープが見えました。独特の香ばしさを伴った、しかも、とんこつらしい丸みとこくのある味でした。それでいて普通のとんこつラーメンとは違う、さっぱりした後味という。
  麺は、太めの麺でした。本場のとんこつラーメンは、やや粉っぽい感じがしますが、武骨のものは、おそらく他の系列店と同じ系統の麺を使っていると思われ、透明感と弾力があります。ここも普通のとんこつラーメンとは一線を画しています。
  チャーシューは、武蔵おなじみの角煮を使っています。今年の冬は例年になく厳しいので、普通の平べったいチャーシューよりも甘みのある角煮の方がおいしく感じられますね。夏場は逆に感じるかもしれません。
  イカスミをはじめ、一ひねりも二ひねりもしているので、印象に残る味でした。「武蔵でラーメンを食べた」という達成感が感じられます。
  オーソドックスなスタイルのとんこつもいいですが、新しい可能性を切り開いたという感じです。独特のこだわりを持つ武蔵ならではですね。東京ラーメンの系譜を引いたからこういうつくりになるんでしょうけど、本場の人はどう評価するのでしょうか。とんこつの新しい形として好意的に受け止めるのでしょうか? それとも本場の味に慣れていると違和感を感じるのでしょうか? 興味があります。


  一部の飲食店が口コミを操作していた事実が発覚した「食べログ」ですが、麺屋武蔵に関しては、賛否が拮抗しているという印象を持ちます。
  私の場合、素朴な東京ラーメンや、日本そばを食べ慣れてきましたが、初めて麺屋武蔵のラーメンを食べたときは衝撃でしたけどね。「どうせ新興店なんてたいしたことないだろう」とタカをくくっていたのですが、よく考えてつくり込まれていているのに驚きました。
  味付けはどちらかというと若者向けなのですが、幅広い層に受け入れられる味だと思います。否定的なコメントをした人にはもっともっとほかのお店と食べ比べてみてほしいし、麺屋武蔵にも何度か足を運んでほしいなとおもいます。
  私には研究熱心さやラーメンにかける思いみたいなものが伝わってきました。


  都内には麺屋武蔵の系列店が本店を含めて11店ありますが、一つ一つ訪ねてみたいと思いますね。麺屋武蔵が出すラーメンだから何かやってくれるだろうという期待感があります。

ラーメン道 スープを味わう 西荻窪編2

  西荻窪駅すぐそばのそこか昭和のにおいが残る商店街の一角。木造の味のある店舗にできる、ささやかな行列。西荻窪(のラーメン店「丸福」)を訪れるたびにいつも気になっていました。私が尊敬する美食家の方も、好意的に評価していたので、いつか訪れようと思っていて、寒さがゆるんだ日に思い立って、行ってみました。西荻窪の「はつね」です。


  はつねはラーメンもやっていますが、たんめんで知られるお店です。これこそまさに人それぞれ好みがあると思いますが、たんめんって、何か味気なくて、私はあまり進んで食べたことはありません。塩ラーメンも同様です。たんめんの存在自体は知っていましたが、学生時代に友人が中華料理店で注文しているのを見て、初めて実物を目の当たりにして、その後、自分でも頼んでみたのですが、あまり興味を持てる味ではありませんでした。
  北海道にいた時、「浜ちゃんぽん」というのがあったのですが、これは長崎ちゃんぽんと、たんめんの中間ぐらいで、海鮮(といっても冷凍のエビとかイカとかを解凍したもの)が入っていて、ちゃんぽんの方は割と好きなので、何度かこの浜ちゃんぽんを食べたことがあります。




  丸福の目と鼻の先にあり、いつ行っても店の前に5、6人が並んでいて、「そんなにおいしいのかな」と、いつも興味深くみていたものの、「わざわざ西荻窪まで来てたんめんもなぁ」という意識もあって、はつねを素通りして丸福へ向かっていましたが、意を決して行列の最後尾に並びました。
  西荻窪に到着したのは午後2時前くらい。何の根拠もなく「並んでなければいいな」と期待したのですが、全くもって身勝手な期待で、店の前には5人ほど並んでいました。店内は6席なので、ちょうど1回転分の待ち時間ということになります。
  外回りの人でしょうかサラリーマン風の人や、学生っぽい若い男性、主婦だと思われる女性、常連とおぼしき年配の男性などさまざま。私がいたときは皆さん「おひとり様」でした。地味なファン層に支えられているんでしょうかね。新宿あたりの新興ラーメン店なんかは、カップルとか友人同士とか、連れ立って来る人がいますが、客層の違いなんでしょうね。
  私は行列嫌いなんですけど、このくらいの行列は期待感が高まるので、むしろ気持ちがいいですね。ただ、牛丼チェーンの「松屋」の真裏にあり、松屋の排気口からのにおいが漂い、「たんめんより焼き肉定食の気分なんだよな」と不覚にも思ってしまいました。
  店の外から店内を見ると、ちょっと気難しそうな感じのご主人と、奥さんらしい方が切り盛りしていました。以前に食べログの口コミを見たときに、「並んでいる間に注文をとればいいのに」みたいなことを書いていたのですが、改善されたようで、並んでいる間にたんめん大盛り(800円)を頼みました。


  かねてずっと気にかかっていた、たんめんです。もやしやキャベツがトッピングされていて、無造作なんですけどどこか整々としていて、本格的な中華料理店で出てくるような麺料理を思わせます。
  スープを一口。「これぞ、たんめん」という味でした。鶏ガラベースということですが、控えめであっさりしていました。私はやや脂が乗り、こくのある感じが好きなのですが、それではたんめんではなくなってしまう。たんめんは、やはり、たんめんなのです。
  テーブルにあったコショウをかけると、風味がつき、いい感じになりました。最初はちょっと物足りないかなと思ったスープも、神経を研ぎ澄ませて味わうと、奥深いなと思いました。
  何よりうれしいのは、野菜が多いことですね。肉類が一切入っていないので、ダイエットを気にする女性に好まれると思います。
  麺は細くて軟らかめです。これもオーソドックスなスタイルですね。あっさりとしたスープと相性がいいと思います。
  たんめんに詳しいというわけではないのですが、はつねのたんめんが一番たんめんらしいたんめんなんだろうと思います。それが人気が続いている理由でしょう。食べ始めは味がわかりにくかったですが、最後の方はとてもおいしく感じられました。


  これからもちょくちょく西荻窪を訪れるでしょうし、圧倒的に丸福に訪れる回数が多いと思います。ただ、ときどきは気分を変えるためにも、自分自身の行動にバリエーションを持たせるためにも、たんめんという選択肢もありかなと思いました。
  店を出るとき、ご主人と奥さんが「お忘れ物ないように」と気持ち良く送り出してくれました。
  ちなみに東陽町にもたんめんの有名な店があるので、訪れてみたいと思います。

ラーメン道 寒い日はこれしかない! 高田馬場・早稲田編1

  この冬は例年より寒さが厳しいですが、雪は全然降っていなかったんですね。東京に平年より2週間以上遅い初雪が降った日、「寒い日は味噌ラーメンしかないだろ」ということで、味噌ラーメンを食べに行ってきました。
  話はそれますが、先日(1月11日)に荻窪の二葉を紹介しましたが、10日ぐらいたってからラーメン好きみたいな人からわざわざコメントをいただき、「客が少なくなったから閉店するというのは、勝手な判断ではないでしょうか」みたいな頭の悪い内容だったのですが、面倒なのでばっさり切らせてもらいます。荻窪の教会通にある二葉の店舗は客の入りが悪いからいったん閉店するんです。断言します。
  昔は、行列ができるほどの人気店だったんです。でも地の利が悪いからだんだん客足が遠のいて、メニューも、素朴な醤油ラーメン一本(チャーシューとかワンタンのバリエーションは別にして)だったのですが、味付けを変えたり、つけ麺を始めたりして、客のニーズをつかもうと努力していたのです。それに教会通の店で客が入るならわざわざ駅前に店を設けないでしょう。
  昔の味で客がわんさと入るなら閉店する必要はあるのでしょうか? それとコメントの中で、教会通の店は完全に閉店するみたいなことが書かれていましたが、わざわざ張り紙の画像をアップしています。塩ラーメン主体で「リニューアルオープン」をするんです。あと「あの味は」とか書いていましたが、何度も繰り返しますが、味は昔の味とがらりと変わっていますからね。したり顔で評価しないでください。
  まあ、言葉足らずな部分もあったとは思いますが、最近はゆとり教育の影響なんでしょうかね、やはり。頭の悪さが際立ちます。もうちょっと内容をよく読んで、想像力を働かせろよと。
  前に韓流について書いたときも、批判的だったので「ネトウヨか」みたいなコメントいただきましたが、普段の記事を読んでから書き込めよと。サムスン電子などリスペクトするところはしますが、基本的には韓国なんて中国や日本に占領され、卑屈な歴史をたどってきた人たちで、性格もじめじめしてひん曲がっているので、軽蔑しています。戦後70年近くたって賠償を求めてくる卑しさですよ。
  ラーメンとか、韓流とかに興味がある人がわざわざ先物ブログまでやってきて、コメントを寄せてくれるのですが、よほどの暇人なんでしょうね。あー、毎度、頭の悪い奴からコメントもらうと運気は落ちるし、疲れます。


  さて、本題。私は札幌に住んでいましたが、やはり寒い日は味噌ラーメンがいいですね。雪道を歩いて冷えた体で味噌ラーメンのスープを一口すする瞬間は至福の時だと思います。とんこつラーメンはこれまで、あまり興味はなかったのですが、年中食べられているとはいえ、あれも寒い日に向いている気がします。
  で今回訪れたのは、見る人によっては「そこかよ!」と突っ込まれそうで、非常にベタなのですが、西早稲田の「えぞ菊」です。私がずっと本店だと勘違いしていた戸塚店(早稲田通り沿いのお店)は、高田馬場と早稲田のちょうど中間地点の明治通りと早稲田通りが交差する地点の近くにあり、以前は駅から歩くのが面倒だったのですが、東京メトロ副都心線が開業し、西早稲田駅が最寄り駅になりました。しかも、駅の近くに「本店」があります。


  ネットによると、開店は1968年。東京で味噌ラーメンというと、とりあえずこのお店が頭に浮かびます。食べログで北海道出身の方が書き込まれていましたが、「東京風札幌味噌ラーメン」という表現がぴったりです。本場の味を意識しながら、どこか違うという。
  このえぞ菊戸塚店は、店内は広いのですが、ランチ時や夕方は結構、混雑します。以前日曜日に新大久保で韓国料理を食べようと思ったら、どの店も混んでいたので、次善の策としてえぞ菊を訪れたときも、午後3時すぎだったにもかかわらず、かなり混み合っていました。今回は2時すぎだったのですが、平日のせいか、珍しくがらがらでした。


  味噌チャーシュー麺を注文しました。ランチタイム(11時~15時)は麺か野菜を大盛りにできるということなので、野菜大盛りです。学生街だけあってこのボリューム感は、さすがだと思います。
  北海道の人のコメントでは、塩分が多くて、麺が好みの堅さでなかったとありましたが、何となく分かるような気がします。塩分に関しては1968年の創業当時は札幌でもこんな味だったのかなという気もしますが、微妙に札幌の味噌ラーメンと違うんですよね。それでいてこの方もかかれているように「札幌を思い出して懐かしい味だ」という。好意的に評価する人が多いのではないでしょうか。麺の堅さはリクエストすれば変えてもらえると思いますが、本場札幌は固ゆでが多いですね。
  本場札幌でもそうですが、それぞれの店で、味噌、スープの原料、麺、具材などへのこだわりがありますが、大事なのは「勢い」ですよね。極端な話、カレーと一緒で、味噌を入れれば、味は調うんですよ。だから、味噌ラーメンらしさをのびのびと出せるかが勝負。繊細な部分を持つ醤油ラーメンと違う点で、そこが醍醐味でもあります。
  もちろん味付けによって好みが分かれる部分はあることは承知ですが、がっつりと味噌ラーメンを食べたい人はぜひチャレンジしてみてほしい味です。
  ただちょっと気になるのは、これは本場札幌でもそうなのですが、チャーシュー麺を頼むと、チャーシューが冷えていて温度差があるのと、冷えている分、脂肪の部分がカチカチになっていること。熱々のスープに浸して軟らかくなるまで待てばいいのですが、これはどうにかならないかといつも思います。


  それと食べログで非常におもしろいコメントがあったのですが、「味噌ラーメン屋で醤油ラーメンを頼むのがミソ」とあったのですが、うなずけます。味噌ラーメンのベースのスープを醤油味にしてもなかなかいけるケースは多いです。
  ただ、麺が味噌ラーメン用なので、鹹水臭さがあり、普通の醤油ラーメンとは別物と考えた方がいいでしょうね。

ラーメン道 時代の流れ 荻窪編2

  新年初のラーメン店紹介はどこにしようかと思案していたのですが、久しぶりに煮干しの味が懐かしくなり、荻窪「二葉」を訪れることにしました。独特の香ばしさの中に、ゆずの香りがほんのりとただよう、東京ラーメンらしいオーソドックスなスタイルで、私は勝手に「荻窪御三家」の一つに位置付けているのですが、近々閉店するらしいという衝撃的な事実を知ってしまいました。


  虫の知らせみたいなもんでしょうかね。飲食店も競争が激しいし、だらだらと続く不景気で、東京のそこそこ人が集まる地域に開店しても経営が厳しいであろうことは推察できましたが、まさか、あの二葉までもが・・・、という思いでいっぱいです。
  二葉に似た系統の煮干しラーメンの店は東京のあちこちにあるので、しばらく足が遠のいていたのですが、ラーメン店に関しても「いつまでもあると思うな」ということなんですね。




  二葉はJR荻窪駅北側の「教会通」というちょっとひなびた感じの商店街の奥の方にあります。春木屋や丸福が駅から歩いてすぐの青梅街道沿いにあるのとは対照的で、ちょっと足を伸ばさなければなりません。
  お店の周辺は昭和な感じが残っているところがいいのですが、商店街の入り口付近には近年、新しいラーメン店が何店かできていて激戦区の上、地の利が悪いというハンディキャップを抱えていました。
  昔は醤油ラーメン一本勝負だったのですが、最近ではつけ麺や塩ラーメンなんかもやっていて、バラエティに富んではいるのですが、ややピントがぶれているのではないかという感は否めず、ここにも苦しさが見て取れます。


  ここでは、やはりラーメン(700円)を注文したいですね。冬は醤油ラーメンより、味噌ラーメンの方がおいしく感じられますが、ここのラーメンは冬に食べてもおいしいと思えます。トッピングのゆずの皮が感覚を研ぎ澄ませてくれ、食べた後に体が温まります。
  ただ、このラーメンも以前と比べると、味が変わりました。以前はスープに透明感があるのが特徴でしたが、最近はにごりがあり、煮干しを前面に押し出そうとしている様子がうかがえます。かつての日本そば感覚のさっぱりスープが好きだったんですけどね。
  こってり感をださないと受けないのでしょうか。いろいろとお店の側でも試行錯誤している様子がうかがえます。
  スープは煮干し、さば節を中心に北海道産野菜も一緒に煮込み、お店のホームページでも紹介されていますが、厳選素材です。麺もスープと相性がいいですね。
  チャーシューも変わりました。他店でも割とよく見かける軟らかい角煮タイプのものです。以前は硬いタイプで、私はどちらかというと昔のものの方が好きですが、これも顧客の好みに合わせたんでしょうね。
  味は変わっていますが、作り方のベースは受け継がれているので、かつての面影は感じられます。


  で、スープを飲み終えて、店内に張り紙があるのをふと発見。「閉店のお知らせ」・・・。えっ!という感じ。なかなか事実をのみ込むまでに時間がかかりました。
  5年ほど前に開店した駅前の支店(?)で今までの味を受け継ぐとのことでちょっと安心しました。そして商店街の方にある、この店は「らーめん ねいろ屋」として、塩ラーメン主体で際スタートするようです。
  二葉の味は、東京ラーメンの原点の味なので、なくなってしまうわけではないということで、胸をなで下ろしていますが、この味だけでは勝負できないというのは、ちょっと寂しいというか、「厳しい時代なんだなぁ」と感じさせられました。
  商店街のこの地にあってこそ二葉とは思うのですが、一人の客の思いだけではどうにもならないということでしょう。栄枯盛衰はつきものであり、ラーメン界でも、この先いろいろとドラマがあることでしょう。
  東京ラーメンといえば醤油なので、塩ラーメンは正直、どうなのかと思いますが、二葉のスープをベースにしたものならどんな味になるのか、興味が湧くところではあります。2月上旬オープン予定とのことですが、開店したら一度試してみたいと思います。

ラーメン道 辛さを究める 神田編2

  今年は11月半ばくらいまで、平年よりかなり気温が高い日が続いていましたが、ここへ来て、いままでの借金を取り返すかのように、真冬並みの寒い日が続いています。
  年がら年じゅうラーメンを食べていますが、夏はどちらかと言えば、つけ麺、醤油ラーメンがいいなと思いますし、冬は、味噌ラーメンや豚骨系のこってりしたラーメンがおいしく感じられます。
  神田へ行く用事があり、今回は、冬の寒さを吹き飛ばすため、辛くてしびれる味噌ラーメンのお店「鬼金棒(きかんぼう)」を訪れてみました。
  師走の神田は、独特の雰囲気がありますね。年の瀬が迫り、凛とした寒さの中に張り詰める緊張した空気と、一年のうち最も書き入れ時の忘年会シーズンのにぎやかさが同居し、「いよいよ今年も終わるんだなぁ」としみじみと感じさせられます。


  鬼金棒は、辛いもの好きにとっては、知る人ぞ知る有名店です。私も担々麺仲間の知り合いから教えてもらいました。麺屋武蔵で修業された店主が独立したことでも知られ、先週土曜日(12月17日)のテレビ東京系の「アド街ック天国」の神田鍛治町編で、「〆のラーメン」ということで、ほんの一瞬紹介されていました。
  1年ほど前に、フジテレビ系の「人志松本の○○な話」でも、「ヨダレの出る話」で、勝俣州和さんがおすすめの店として取り上げられていたと思います。


  鬼金棒は、1年くらい前は、店の前に行列が途絶えず、最低でも30分待ちは覚悟しないといけなかったのですが、30メートル離れた場所に、以前は限定メニューだった、辛くてしびれるつけ麺専門店ができ、客足が分散し、昼時など混雑する時間帯を除いては、すぐに入店し、着席できるようになりました。
  今回、私が訪れたのは午後2時過ぎで、カウンターのみ8席の店内には、サラリーマン風の人たちがほとんどで、2席ほど空いていたため、入り口で食券を買ってすぐに座れました。
  夜なんかは、結構、女性客も多くて、「世の中には、辛い物好きが結構いるんだなぁ」と認識させられます。


  「もやしカラシビ味噌らー麺」(880円)と、辛いラーメンのお供の半ライス(100円)を選びました。「カラシビ」とは、赤唐辛子の辛さと、舌をしびれさせる山椒のことを指すのですが、唐辛子、山椒ともに量を調節できます。
  辛いものが苦手の人は「抜き」か「少なめ」、辛い物好きの人は「普通」、ちょっと物足りないと思う人は「増し」、強烈な辛さを求める人は「鬼増し」(+100円)の5段階から選択できます。
  実は私は昨年、「増し」を食べたら、当時患っていた、逆流性食道炎を悪化させてしまい、辛いのを食べたいのはやまやまなのですが、以来、「普通」に抑えることにしています。
  「普通」でも相当、辛くてしびれるので、普通の辛い物好きの人なら、十分満足感を得られると思います。今回も私は辛さの程度は「普通」にしています。
  四川風汁なし担々麺を味噌ラーメン風にアレンジした味と言えば分かりやすいでしょうか。スープは豚骨ベースで、そこに味噌が加わるので、ごま油や辣油などで味付られた担々麺とはまた違った、独特の奥深い味を併せ持ちます。
  麺は太めで、やや平たくて、長方形型をしているのですが、スープとよく絡みます。辛くてしびれるので、ライスを注文すると「逃げ場」ができますし、トッピングのチャーシューも、武蔵の系統をひく角煮タイプで、全体に甘みがあり、これもしびれた舌を癒すのに最適で、どんなに辛くてしびれても、後を引くおいしさを引き立てます。
  私はラーメンの具で一番好きなのがもやしですが、特に味噌ラーメンにはよくマッチします。これもチャーシューやライス同様、カラシビらー麺に味の変化を与えてくれるので、ぜひもやしの増量をお勧めします。
  普通の味噌ラーメンと比べると、辛くてしびれる分、食べるペースは落ちるのですが、スープを飲み干し、間食した時の達成感は、ひと味違いますね。大きな仕事をやり遂げた時のような、すがすがしさがあります。




  気持ちよく完食して体も温まり、いい気分で店を後にしました。今回は寒さを吹き飛ばそうということで、紹介しましたが、山椒が効いたこの辛さは、夏の暑い時に食べても、おいしいと思います。
  辛いものが苦手な人や、胃腸の弱い人は、カラシビ「抜き」も選べますし、私は試したことはないですけど、普通の味噌ラーメンとしても、レベルは高いと思いますので、お勧めしたいと思います。
  辛い味噌ラーメンというと、赤唐辛子味噌を効かせたものや、オロチョンラーメンなんかをよく見かけますが、山椒と組み合わせ、四川風の要素を取り入れたのは、ユニークな発想だと思います。さすがは店主が麺屋武蔵で修業しただけあるなと思わせますね。
  正直、東京の味噌ラーメンで、私が紹介できる引き出しは限られていますが、鬼金棒は胸を張って、「これはいい!」と言えるお店です。